SARSの暗影から抜け出した公演市場

                    欒 頡  

6月20日、北京人民芸術劇院の新劇――『私は桃の花が好き』が同劇院の実験劇場で上演された。北京市がSARS感染指定地域から解除された後の第1回の公演として、今回の公演はSARS終息後の北京市の公演市場に現れた最初の陽光と言われている。

4月と5月は従来から北京市の公演市場のゴールデン・シーズンである。大まかな統計によると、この期間に北京で上演が予定されていた公演は140余回ある。しかし、事実は、SARSの影響で、4月下旬から6月中旬までの間、各芸術劇団の正常な公演、公演シーズンの夕べ、商業ベースの公演、政府が組織に参与するさまざまな公演を含めて、北京での公演はすべて取り消されるかあるい延期せざるを得なくなった。とくに人々に残念がらせたのは4月28日に開幕を予定していた第4回「北京と約束」という大型総合芸術祭が期限どおりに開催できなかったことである。もとの計画によれば、今年の「北京と約束」イベントは世界優秀舞台劇公演シリーズ、国際芸術回廊展覧シリーズ、国家芸術劇団公演シーズン、サンリト・ホリディ・プラザ交歓イベント、2003年北京国際文化フォーラム、第3回中国国際ピアノコンクールの6つの部分からなっており、まず始めにロシア主賓国イベントが開催されることになっていた。

大きな損失

数多くの公演が取り消されるかあるいは延期されたため、公演プロダクション公司、芸能団体、公演場所、入場券発売担当公司、公演プロジェクトの出資者などはいずれも大きな損失を蒙った。

人民芸術劇院が3月28日に初演した『私は桃の花が好き』は、北京人民芸術劇院が500万元を出して改造した実験劇場で最初に上演された新劇である。この新劇は同劇院の有名な監督である任鳴さんが監督し、荒唐無稽の手法で構想した古代の恋人のあいびきに関する物語である。初演から4月19日までに、連続20余回も上演され、200人が入れる劇場の入場率は95%以上を保っていたが、SARSの深刻化につれて、公演が中止せざるを得なくなった。

人民芸術劇院が同じ時期に上演した大型新劇「趙氏の孤児」の運も同じであった。同新劇は人民芸術劇院が70万余元を出してリハーサルした歴史劇である。その独特な視角、強大な俳優陣及び成功を収めた前期のPRによって、この新劇は初めから多くの人を引きつけた。公演が行われた1500人を収容できる首都劇場の入場率は90%を上回った。この新劇は本来2ヵ月にわたって50回公演する予定であったが、SARSの発生によって、実際には4月中旬に4回上演しただけであった。

北京人民芸術劇院芸術処の劉章春副処長は「SARS期間に、北京人民芸術劇院の売上げの損失は500万元に達した。同劇院の年間の売上げは普通は900〜1000万元であるが、今年は500〜600万元しかないだろう」と語った。

中国対外演出公司は北京の最も重要なプロダクション公司の1つである。SARS期間に、同公司傘下の中国公演文化娯楽公司と四海一家文化公司などが仲介していたいくつかの大型公演イベントもそのために中止せざるを得なくなった。同公司は損失の具体的な数字を明らかにしていないにかかわらず、「この数字が普通の小型公司にとって耐えられないもの」だという。

SARS期間に、最も大きな損失を蒙ったのは中国出演文化娯楽公司、上海大劇院が国外の出資者とともに出資して行うブロードウェイの有名なミュージカル『猫』の中国での公演であった。計画によると、3月28日から5月11日まで、イギリスの作曲家ウェーバーの創作したミュージカル作品『猫』は上海大劇院で6週間にわたって53回上演され、5月18日から、北京の天橋劇場で72回も連続上演されることになっていた。『猫』は予定どおりに上海で上演され、人々の異常なほど高い情熱を引き起こし、入場券はすべて売り切れた。北京では、3月28日からの10日間の最初の8回の公演の前売り券があっという間に早く売り切れてしまい、4月16日、天橋劇場は『猫』の公演に適する「猫の巣」の改造に成功し、その前に、60万元の競売価格で天橋劇場の3ヵ月の広告代理権を手に入れたある公司も忙しく作業を進めていた。しかし、SARSによって、『猫』の北京での上演は延期せざるを得なくなり、そのため、主催者は100万元の損失を蒙った。

同じ時期に、「大河の舞」という演目に取りかかっている四海文化公司はすでに公演用の床板を上海に運んだが、これもSARSによって、公演が延期せざるを得なくなり、前期の広告への投入や床板の輸送料及び入場券発売担当公司の入場券払い戻しなどで数十万元の損失を蒙った。

各方面は北京の公演市場ができるだけ速く繁栄を回復させ、損失を減らすことに極めて大きな期待をかけている。

徐々に活力を回復

SARS感染指定地域から解除されるにつれて、一部の国クラスの演劇団体は率先して自らの演目を上演した。

北京人民芸術劇院芸術処の劉章春副処長によると、実験劇場の小劇場で新劇『私は桃の花が好き』が引き続き上演されるほか、劇院が目下、リハーサル中の『北街南庭』は8月6日から上演される。SARS発生期間を特定の時間的背景とするこの新劇は、濃い北京の地方色を帯びている。この演目は2ヵ月間に50回公演する予定である。10月から、すでに83回も上演され、人々の好評を博した新劇「きらめく灯火」が再演され、年内に上演回数が100回に達するという。来年元旦の前後に、『趙氏の孤児』が重点として公演される。

6月22日、有名な指揮者余隆氏が指揮し、有名な中国系のバイオリニスト林昭亮氏が独奏を担当する中国フィルハーモニー・オーケストラのベートーベンコンサートが中山公園ミュージック・ホールで催される。林昭亮氏はSARS終息後の真っ先に中国に公演に来る海外芸術家である。SARSで中止した中国フィルハーモニー・オーケストラの年度音楽祭の公演も回復される。

東方歌舞団は7月2日から、北京市の朝陽公園で5日間連続して『藍色のロマンス』という大型民族歌舞を上演した。

中央バレエ団は目下、8月の第1回の公演と9月の中仏文化年などの公演のために準備を進めている。

もとは「北京と約束」イベントの開幕式で上演を予定していた『大河の舞』は今年末に中国に巡回公演に来る予定である。

もとは「北京と約束」イベントの閉幕式で上演を予定していたミュージカル『猫』が今年末かあるいは来年初めに北京で再演する可能性がある。『猫』のPRを担当する曹維さんによると、上演日程の手配によって、そのとき北京に来る公演団体がヨーロッパ巡回公演団である可能性がある。この公演団の公演の歴史は北京へ公演に来る予定だったアジア巡回公演団より長く、したがって公演のレベルはより高いはずである。

公演日程が出演者にとって具合がわるいため、上演を続けることができない演目もいくつかあり、そのため、芸能プロダクション公司は新しい公演プロジェクトを探している。

四海一家文化公司総経理補佐の王?さんは「9月から10月にかけて、北京の公演市場に回復後の最初の高まりが現れるはずで、来年の元旦前後には2番目の高まりが現れるだろう」と語った。