SARS後に再開した中国の観光業

魯 皮

6月24日、世界保健機関 (WHO)は「北京への渡航延期勧告」を解除した。2カ月余りの静寂を経た中国の観光市場はまたも次第ににぎやかになってくる。

6月30日午後、北京は「2つの解除」(感染地域指定と渡航延期勧告の解除)後に訪れた最初の外国観光団――60人からなる韓国観光団を迎えた。これは韓国の観光代理店、航空会社とメディアの代表からなる視察団であり、その目的は主にSARS後の中国の観光市場を視察し、それによって韓国の中国観光の快速の再開を推進することにある。

6月27日、北京への渡航延期勧告が解除された2日後、北京市観光局は観光再開の一連の計画の全面的実施を始めると発表した。北京市観光局の于長江局長は、「北京市観光局は350万元を出して、先に北京に到着した1000人の観光客を北京の人民大会堂で食事に招待し、年内に100の外国の会議を北京で開催させ、観光業者の北京視察を奨励する」と語った。于長江局長は、北京市の観光市場は今年の9、10月に全面的に再開する見込みがあると予想している。

SARSが中国をほしいままに襲ってから、WHOは「SARS感染地域」に対し「全世界の渡航延期勧告」を出し、最も多い時は世界の120余カ国が中国への観光を制限した。SARSの観光活動を通しての伝播と蔓延を防止するため、中国の国内観光もほとんど中断した。

「SARS」が効果的に抑えられるにしたがって、各地は次々と観光プロジェクトを再開し、2カ月余りの静寂を経た中国の観光市場は次第ににぎやかになってきた。

「ここ2日に公司にかけてきた問合わせの電話はまたも増えてきた。忙しくて疲れるが、中国観光業の曙光はすべての業者に興奮を覚えさせている」と中国青年旅行社持株株式有限公司海外部の韓葵副総経理は語った。

北京の業界筋は、しばらくの間衝撃を受けたが、中国の観光資源は依然として大きな吸引力があり、中国公民の観光のニーズと消費能力は依然として盛んである。始動と再開の過程から見て、「省内が先、省外が後、東部が先、西部が後、国内が先、国際が後、周辺諸国が先、中国から遠く離れた諸国が後、ビジネスが先、観光が後、ばら客が先、団体客が後」という趨勢を呈するだろうと語った。

国家観光局計画発展・財務司の魏小安司長は、SARSのあと、観光業全体は成長の段階に入るが、これは市場総量と経営レベルが元の状態に回復したことを体現しているだけでなく、業界全体の資質、構造、利益も新たな成長をとげるだろうと語った。

再開中の新たな変化

北京市観光局の温子吉副局長は、「渡航延期勧告の解除」が北京の観光業がSARSとのたたかいから解脱し始め、全面的な再開のラッパを吹き鳴らしたことを示していると語った。北京市観光局からの消息によると、故宮、天壇など21カ所の主だった名所はくりあげてオフ・シーズン(毎年4月1日から10月31日までは、入場券はゴールデン・シーズンの価格を実行する)の価格を実行する。条件を下げ、収益を減らして販売を促進し、観光市場を活性化させることが、一大特色となっている。

「北京市民の健全で文明的な観光」が全面的に始動する。北京観光ではレストランや観光地の衛生、トイレの衛生などが大きく改善され、観光客がやたらに痰を吐き、ごみや吸い殻を捨てる不良な習慣も断固として改められるだろう。

北京の入国観光も直ちに始動する。国際旅行社総社の関係者によると、7月に、国際旅行社総社関係で6団体、500人が北京を訪れるという。できるだけ早く市場を始動させるため、わりに柔軟な価格をとることになるが、航空公司、観光地、ホテルと共に販売促進活動をおこなう可能性もある。聞くところによると、中国旅行社総社はいまから来年の2月まで、観光客に北京観光の「特価観光団」を売り出し、一週間観光の価格は135ドルで、これまでの最低価格は150ドルであった。

中国旅行社総社部門経理の王良氏は、SARS後に入国した観光団に対する地方受入サービスはそれ相応に変化する」、北京は観光地を遊覧するほか、観光客により多くの自由時間を与え、秀水街や王府井のようなところでショッピングできるようにすると語った。

市場からの消息によると、旅行社は多くのセルフサービス観光プロジェクトを開発して、観光客に選ばせるだろう。そのうち、三峡観光は国内観光の最も早い観光プロジェクトになろう。そのほか、海南という成熟しているセルフサービス観光コースのほか、大連、青島、秦皇島などもセルフサービス観光を売り出すだろう。

国家観光局の関係通達の要求に基づいて、全国各地は6月から次々と新しい観光コースと観光プロジェクトを売り出し、各省、自治区、直轄市内の住民観光も速やかに回復している。

全国のほとんどの省、自治区はいずれも「陽光の旅」、「自ら車を運転しての観光」、「自転車観光」などの短コースの観光を提唱している。観光業が回復した地区では、地域的な相互促進を始め、共同で精品観光コースを開発している。広州市観光局の李文耀局長は、広州市、深?市、珠海市は共通の顧客マーケットがあり、3市が協力すれば、「広東・香港・澳門観光ゴールデンデルタ」に拡大することができると語った。寧波、紹興、舟山、台州は提携して浙江省東部の観光市場を始動させ、市場を始動させる主なプロジェクト、たとえば寧波余姚の四明山の旅、紹興の水郷観光などを売り出す。四川の楽山、自貢、宜賓、瀘州、資陽、内江の6市も近いうちに観光の相互促進で合意に達し、四川南部の精品観光コースを売り出す。

香港観光発展局は先般世界観光普及計画を公表し、今後の9カ月に、香港は香港の夜景を際立たせる大型の照明、レーザー、花火のエキジビションを売り出し、全世界の観光客に香港の光り輝く景色を展示する。この計画はまた各業種のショッピングと消費優遇を含んでいる。同時に、香港は世界の28の主要都市の巡回展覧に参与し、香港の観光の特色を推薦、紹介する。

聞くところによると、国家観光局は近いうち観光団による観光を解禁するという。大手旅行社は次々と時間が短く、観光団の規模が小さいことを特色とする観光を売り出し、人々の観光の願望を満たしている。南アフリカ、ドイツなどの国はすでに中国市場での宣伝活動を続けると発表し、中国公民の訪問を情熱こめて歓迎している。観光企業が絶えず努力すると同時に、各地の政府も力強く助成している。北京市観光局は、国際観光振興の重点を地域協力に着眼し、どちら側にも有利なアジア観光の局面をつくることに力を尽くしている。上海市は江蘇・浙江・上海を主体とする「ロングデルタ」観光を積極的に準備するとともに、早目に再開することを目指しており、海外メディア、観光業者を続々と上海視察に招いている。

再開の中での反省

SARSは観光業に反省の機会をもたらした。SARS後の観光市場の新たな特徴を前にして、観光業界は業界の発展を分析、調整し、「さらに整頓して」、再び大きな成果をあげることを期待している。

観光業が停滞した2カ月の中で、多くの観光企業はこの危機を管理レベルアップのきっかけと見なし、一部の星クラスのホテルは客が少ない機会を利用して更新と改造を行った。中国青年旅行社グループの劉家驤総経理は、「SARS後の観光市場はもはや簡なる再開ではなく、かなり大幅にグレードアップする。中国青年旅行社はこの時間を利用し、内部構造を調整し、詳しい市場計画を制定し、SARS後の新しい観光プロジェクトを画策した」と語った。

中国最大の観光電子ビジネスウェブサイト――携程旅行ネットワークは先般アンケート調査を行い、80%近くの被訪問者はSARSの感染発生状況が抑えられてからの2カ月間内に観光に出かけると表明した。公衆の自信は観光企業の再開を大きく推進している。

SARSの衝撃を経て、観光業界の人びとは自身の不足を反省し始め、第一、観光業が国際化程度の最も高い産業の1つであり、国際協力を強化し、突発的事件に対応する国際協力メカニズムを形成することは、中国観光業の国際化プロセスをいちだんと推し進める重点であり、次に、観光業は人の流れが高度に集中した敏感な業種に属し、災害、戦争、突発的事件の影響を大きく受ける。今回の「SARS」の感染発生状況は人々に敏感な業種の特徴をいちだんと認識させ、そのため、普通の時期と特殊な時期の2つの運行メカニズムを作り上げる必要がある。第三、観光企業と地方にとって言えば、観光を発展させるのはリスク意識を持たなければならず、突発的事件を処理する心構えとメカニズム上の能力を持たなければならない。

「SARS」の感染発生状況は中国消費者の自己保護意識を高め、観光心理に変化が生じた。消費者は流行をもう盲目的に追求せず、休暇型観光は観光型の旅行に取って代わって主流となる見込みがある。より多くの人は観光の健全な機能に関心を持つようになり、体の健康、保健と関係のある観光活動に人気があり、エコロジー観光がいっそう提唱に値し、大規模な観光団が圧縮され、セルフサービス式、小型の観光団の個性化の観光が盛んになり、新しい観光プロジェクトづくりに対し積極的な推進役を果たすことになろう。

小さい、分散している、弱い、わるい――この四つは中国の観光企業のリスク対抗能力の悪い重要な原因である。SARSの衝撃は客観的に観光企業の再編を推進する機会を提供した。

日に日に再開、発展する市場を前にして、観光業界の人びとは、6月に入ってから国内各地の観光の速やかな再開は、潜在的市場のニーズをはっきり示しており、中国の観光業の見通しは依然として明るく、観光業は依然として内需促進の面で重要な「役割」を果たすだろうと広く見ている。