開放的なマルチラテラリズムを促進するアジア
欧州経済協力

趙俊傑

第5回アジア欧州経済閣僚会合(EMM)が7月23、24の両日遼寧省の大連市で開かれた。今回の経済閣僚会合は、中国政府が主催した今年最初の国際フォーラムであり、世界経済の回復が遅れ、ブロック経済の協力が強い勢いを見せ、中国全土で重症急性呼吸器症候群(SARS)が沈静化に向かっている中で、国際社会から大いに期待され、注目されている。

20世紀90年代中ごろ以来の経済のグローバリゼーションのプロセスの中のアジア欧州経済協力を振り返るならば、アジア欧州経済閣僚会合はその中で重要な役割を果たしてきたことが見てとれる。1997年の千葉・幕張会合から2002年のデンマーク・コペンハーゲン会合まで、この短い数年間に、アジア欧州経済協力は新たな歴史的時期に入った。なかでも、「第1回アジア欧州経済閣僚会合議長声明」は、アジア欧州経済協力のために、無差別、自由、透明及び開放的なブロック主義などの5大原則と3大政策を打ち出し、アジア欧州経済協力の主旨を具現化した。「貿易円滑化行動計画」(TFAP)と「投資促進行動計画」(IPAP)の制定と実施は、アジアと欧州の貿易円滑化を推進し、相互投資を促進するために基礎を固めた。また、貿易と投資に関する高級実務者会合(SOMTI)、投資専門家会合(IEG)及びアジア欧州ビジネスフォーラム(AEBF)など一連のそれに続く会合とフォローアップ行動は、成果のあがるアジア欧州経済協力を展開するために数百の協力プロジェクトを決定し、しかも著しい成果をあげた。アジア欧州経済閣僚会合の推進の下で、アジア欧州経済協力は目覚しい発展の勢いを示し、2002年だけでも中国とASEM加盟国との貿易額は2874億9600万ドルに達し、中国の貿易総額の46.3%を占め、2001年より18.8%増えた。経済協力の着実な発展は、ASEM加盟国が幅広い政治的対話、安全協力及び文化交流を展開するために望ましい雰囲気をつくり出した。

当面、アジア欧州経済協力がめざましい発展をとげつつあるとはいえ、多角的で安定したアジア欧州経済協力関係を構築し、より開放的なマルチラテラリズムを促進することは、依然としてアジア欧州経済閣僚会合の直面する差し迫った課題であることを見て取らなければならない。歴史的原因により、東アジア諸国の多くは国際政治と経済関係においてはアメリカに依存している。アメリカが不景気に見舞われるならば、東アジア諸国も影響を受けることになる。EU加盟国は長期にわたり欧州の範囲での貿易と投資を重視しており、東アジア諸国との密接な経済関係が足りず、しかもEUの対アジアの経済政策では実務的な内容が少ないようである。総じて言えば、アジア欧州経済協力はスタートしたばかりで、いまなすべきことはたくさんあるが、ASEM加盟国は世界経済の発展に関わる重大な問題をめぐってのハイレベルの対話や、各方面の意見をまとめることを通じて活動のテーマを確定し、世界経済の回復とアジア欧州経済協力の深化を推進することが当面の急務となっている。

そのため、今期の経済閣僚会合は任重くして道遠しの感があり、以下の三つのテーマをめぐって協力活動を行い、対話と協議を通じて一致した認識に到達し、今後のアジア欧州経済協力の重点を確定することになっている。

一、WTOの新たなラウンドの交渉を推進し、いくつかの重要な問題で合意に達することに努める。WTOドーハ交渉ラウンドはすでに始まっているが、アメリカからの影響を受けたため実質的な進展を見せていない。しかもアメリカの保護貿易主義政策がWTOの権威性を脅かしているため、WTOはいまだに効果的な活動を行っていない。したがって、今期の閣僚会合はこの問題について引き続き突っ込んだ対話や意見交換、立場の調整を行い、9月にメキシコ・カンクンで開かれるWTO会議のために準備作業を行うことになる。ASEM加盟国はほとんどWTOの加盟国であるため、非差別や市場経済、開放的な多角貿易体制、ブロック主義、及びWTO体制下の原則の実行を強調している。これはWTO交渉のプロセスに大きな影響を及ぼすにちがいない。

二、今年上半期以来世界で起こったいくつか主な出来事と問題について討議することになる。今期の会合では、イラク戦争後の世界経済の動きについての予測や、アメリカの極端なユニラテラリズム主義と保護貿易主義についての見解発表、SARSによって世界経済と一部のASEM加盟国にもたらされたマイナスの影響についての判断、ドル安とユーロの上昇及びEUの来年の拡大についての意見交換などが話題となり、これらの問題の討議を通じて、アジア欧州諸国の対策制定のためによりどころを提供することになる。

三、今期の会合では、「貿易円滑化行動計画」と「投資促進行動計画」の執行状況の審議や、「アジア欧州経済協力審議報告」の採択、今後のアジア欧州経済協力のテーマと優先的に発展させる分野の制定などが行われる。この二つの行動計画が実施されて以来、アジア欧州経済協力は著しい成果をあげ、アジア欧州の投資と貿易自由化政策の実施及び互恵協力と共同発展の実現を推進することはASEM加盟国の一致した認識となっている。にもかかわらず、アジア欧州経済協力にはまだかなり大きな潜在力と発展のスペースがあり、解決を要する問題が山積しているため、実務的な活動の展開、貿易・投資の障壁の解決、二つの行動計画の具体化は依然として今期の閣僚会合で優先的に取り上げる話題となる。

アジア欧州経済協力のこれまでのプロセスが立証しているように、アジアと欧州は手を携えて協力し、共通点を求めて相違点を残すとともに、平等な対話を行い、平等互恵と実務に取り組んでこそはじめて、アジア欧州関係の発展に新たな活力と原動力を注ぎ込むことができるのである。中国政府は一貫して、ASEM枠組の下でアジア欧州の協力プロセスに参与し、責任を負う大国としての尽くすべきな職責を果たし、アジア欧州経済協力を積極的に推し進めるうえで、ASEMの政治的対話と文化交流という2大テーマを促進することを重視している。中国政府は2001年の第3回アジア欧州外相会合と今期のアジア欧州経済閣僚会合の主催では、建設的な役割を果たした。

中国政府はASEMが南北対話と協力の新しいタイプのモデルとなり、より開放的なマルチラテラリズムと互恵協力のためのブロック主義の遂行によって、東方と西方の文明的な対話と文化交流の重要な紐帯となり、世界構造の多極化への移行を促す中で、アジア欧州諸国にともに覇権主義に反対し、世界平和の維持、世界の経済成長の促進などの面でそれなりの役割を果たさせ、また今期のアジア欧州経済閣僚会合が円満な成功を収めることを期待している。