北京オリンピックに“ゴーサイン”

―――第29回北京オリンピックの準備作業は現在、着々と進んでおり、建設工事のフィナーレは既に幕を開けた。

唐元かい

IOC(国際オリンピック委員会)の2008年オリンピック協調委員会のケビン・ゴスパー副委員長は先ごろ、北京オリンピック組織委員会(組委会)の于再清副委員長から準備状況の報告を受け、「組委会の努力を高く評価する。準備作業はスムーズに進んでいると思われ、“ゴーサイン”を出してもいいだろう」と語った。

市場開発の開始

組委会の蒋効愚副委員長はこのほど、2008年オリンピックに向けた市場開発計画を9月1日に正式に開始することを明らかにした。

オリンピックに資金や物資、技術、サービスを提供するための市場開発計画は、組委会がオリンピック市場の開発ルール、潜在的賛助企業や企業への調査・評価に基づき、また過去のオリンピック開催の経験を参考にすると共に、IOCと十分な意見交換を行った上で制定したものだ。

蒋副委員長は「この計画を開始するのは、オリンピックと関連グッヅのブランドの価値と影響力を宣伝すると共に、内外の経済界に積極的に参与するよう奨励して、市場開発の事業を急速に、安定的に、適正に、整然と進めていくためだ」と説明する。

蒋副委員長によると、北京がオリンピック招致の際に報告した予算は16億2500万ドル。今年開かれたIOCの第115回総会で、組委会と協議した結果、主に安全・保安面を対象に予算をある程度上乗せすることが決定された。具体的な数字は来年、確定する。増加分については、市場開発で賄うことになる。

国際設計コンペ

7月下旬以降、北京オリンピック森林公園や中心部の街づくり設計プランを世界から募るコンペティションが始まった。第1段階は参加資格の審査には、都市や庭園の建設計画、環境保護プロジェクトなどで経験のある設計事務所、連合体が参加できる。第2段階は、北京市都市計画委員会が8団体を選び出し、設計プランを募集する。設計で要求されるメインテーマは、「科学技術重視のオリンピック・グリーンなオリンピック、ヒューマンなオリンピック」。

オリンピック公園は市中軸線の北端に建設される予定。敷地面積は約1135ヘクタールで、オリンピックの中心地区となる。そのうち森林公園は680ヘクタール。グリーンベルトを建設し、市区と郊外を緑の壁で結び、都市の環境や気候を改善すると共に、憩いの場所とする計画だ。その291ヘクタールを中心区として、スポーツや文化、会議や商業施設のほかオリンピック村を建設する。

“鳥の巣”スタジアム

2008年オリンピックではオリンピック公園内で開幕式と閉幕式が行われる計画で、国立スタジアムの総建築費は35億元。スイス人が設計した“鳥の巣”をイメージしたスタジアムの建設は今年12月に始まる。

競技施設は37、トレーニング施設は59、パラリンピック用施設は18を数え、これらの施設も順次整備される。北京市内の施設は32にのぼり、永久施設として新規建設するのは13、臨時施設は7、その他は既存の施設を改築・拡張して利用する予定。

現在、オリンピック関連施設の入札が行われている。うち7件は国際入札で決めることにしており、国立水泳競技場や北京射撃場、老山自転車競技場は年内にも工事に着工する。

国立スタジアムの計画建築面積は14万5000平方メートル、2006年に完成の予定で、オリンピック開始前の1年余にわたり試験運用される。

専門家によると、“巣”の効果を上げるため、約8万トンの鋼材が使用されるという。長さは最長で300メートル、平均鋼梁は50−180メートル。

北京市国有資産経営有限責任公司は鋼鉄製建造物の分野で世界的に著名な専門家を招聘し、35億元にのぼるスタジアム建設について検討を重ねてきた。いかに“鳥の巣”の設計理念を実現するか、施工プランをいかに煮詰めるか、とくに鋼鉄構造をいかに合理化し、鋼材の使用量をいかに少なくして安定性や耐食性を実現するか、またルーフの開閉設計などについても検証した。

北京市都市計画委員会の黄艶副主任は「構造問題ばかりでなく、様々な課題についても、専門家の意見を聴取した」と話している。

6月上旬、北京オリンピック公園で交通施設や地下パイプラインの建設など、公共インフラ整備の着工式が行われ、12月にはスタジアム建設工事の定礎式も開かれる。

国立スタジアムの建設では(1)北京市政府が51%以上を出資し、北京市国有資産経営有限責任公司に出資者の代表権限を授ける(2)その他については、国際入札を実施し、最終的に落札した法人が出資者となる――の投資方式を採用する。

この1年余りの間、スタジアム建設プロジェクトに関しては、設計プランの策定や設計の国際コンペティションも行われてきた。協力主体の入札では、中国の関連する法律や法規に基づき、また公開・公平・公正・誠実・信用の原則に沿って実施されて大きな経験を得た。こうした方法は、競技施設の建設にも非常に参考となる。

北京市国有資産経営有限責任公司の李愛慶取締役は「次の段階では、北京市政府を代表してスタジアムの国際入札を行い、資金や設計、施工、運営の面で力のあるパートナーを模索していく。対象は海外の連合体でもいいし、中国企業の連合体でもいい。落札者は中国企業と新会社を設立し、スタジアムの建設から運営、管理を担うことになる。7月末には、現在残っている4社から最終的に1社に絞る」と説明している。

税収面で優遇

 国務院の認可を得て、財政部と国家税務総局、税関総署は共同で、組委会と中国オリンピック委員会、IOC、関係者に税収の面で優遇政策を講じるとの通達を出した。

通達は(1)企業や社会組織・団体が寄贈し賛助する資金、物資の支出については、企業が納付税額を算定する際に全額控除する(2)IOCが中国国内で与えられて取得し、しかも2008年オリンピックと関連する収入であれば、税金を免除する(3)中国オリンピック委員会の関連収入は免税とする(4)参加選手が試合で獲得した賞金やその他の収入については、現行税法の関係規定に基づき個人所得税を免除する――などの規定を設けている。

李愛慶取締役は「スタジアムの投資が巨額であり、開催後の運営コストも高いなどを考慮すると共に、過去にオリンピックを主催した都市の主体施設の運営方式を参考に、北京市も投資を誘致するためかなりの優遇条件を設けた。具体的には土地の譲渡や建物の取り壊し、税収などの面で優遇する。協力パートナーには30年間の経営権を与え、投資を回収させる。投資家の利益を確保するため、主体施設のある北部には類似する施設は建設させない、などの措置を講じることにした」と説明する。

その他の準備作業

北京はオリンピック開催招致申請の際、聖火を世界の高峰・チョモランマ(海抜8848.13メートル)を越えてリレーする、と世界に公約した。国家体育総局登山運動管理センターの李致新主任によると、その前期の準備作業は既に始まっている。5月に「チョモランマ峰の人類登頂50周年を記念する」ために開かれたイベントは、その一環。今年下半期には、中国登山協会が聖火リレーのプランなどについて話し合うシンポジウムを開くほか、チョモランマ峰の南斜面を偵察することにしている。李主任は「登山協会は登山隊の組織と訓練に責任を負うことにしており、聖火のチョモランマ峰越えを成功させると共に、テレビ中継も完璧にこなしてくれるだろう」と期待を示す。

8月には、世界から応募のあった1985件の2008年オリンピック徽章デザインの選定が行われ、世界に公表される。

競技の組織・管理について、組委会の于再清副委員長は「既に行動計画は出来上がっており、具体的な調整に当たるグループも組織した。また、競技委員会を発足させる計画で、現在、競技の管理要員の選抜・訓練を行っているところだ。2008年に開かれるパラリンピックの準備も急ピッチで進んでいる」と話している。

宣伝については、メディアを通じてオリンピック運動の知識普及を積極的に展開している。現在、北京は外国語学習ブームに沸き立ち、およそ100万の市民が熱心に外国語を学んでおり、下半期には第1回オリンピック文化祭が開かれる予定。

4月15日に始まったオリンピックソングの第1回国際コンペは8月31日に締め切られ、9月には受賞作品の選定と録音が始まる予定。組委会の孫維佳スポークスマンは「国際募集は毎年1回、合わせて5回開催し、10曲選んで候補作にする。その後、各メディアを通じて社会に広め、市民の参加を得て最終的に、中国の文化的特色とオリンピック精神を謳った、世界各国・地域の人々に受け入れられる歌を確定する」と話している。