差し迫って重い改革

――長い間温められてきた農村信用協同組合の改革試行案が間もなく実施される。これは長期にわたって農村経済の発展を妨げていた金融の難題が改善される望みがあることを意味している。

                         剣 伐

6月末、中国銀行業監督管理委員会の起草した農村信用協同組合の改革試行案は、国務院で原則的に可決され、一部の関連ある制度と規則もいま急ピッチで制定されている。農村信用協同組合の改革深化の推進は、中国銀行業監督管理委員会の今年の三大主要任務の1つである。

1949年の新中国成立前からすでに存在していた農村の合作金融組織としての中国の農村信用(合作)協同組合は度重なる改革を経て、農村経済の発展を支持する面で非常に重要な役割を果たした。しかし、中国の農村信用協同組合がいま直面している今回の改革は、恐らく最も差し迫ったもので、最も重いものである。というのは、この改革が全国の64万人にのぼる農村信用協同組合の正式従業員の運命に関わっているだけでなく、中国の9億農民の金融支持、ないしは未来の中国の農村経済の発展問題にも関わっているからである。

「農村」のために生まれたもの

農村信用協同組合の最初のひな形は1923年に現れたものであるが、本当に推し広められたのは1956年である。当時創立された農村信用協同組合は典型的な農村合作金融組織であり、村民が自由意思で加入してできたもので、主な機能は民間貸借の役割を果たし、それによって農村金融市場が発達していない状況をカバーすることにあった。

絶えまない発展を経て、農村信用協同組合はいまでは金融機関のすべての業務、例えば貸付、決算、中間業務などを扱うことができる。換言すれば、銀行の扱う業務なら、農村信用協同組合も扱うことができるが、一定の条件の制限を受けているにすぎない。これは農村信用協同組合が銀行に改称していない主な原因である。

現実的な状況から見て、農村信用協同組合はすでに中国金融業の重要な構成部分となっている。統計データによると、2002年末現在、中国の農村信用協同組合の各種預金は1兆9800億元、各種貸付は1兆3900億元に達し、預金と貸付の規模はともに全国の金融機関の第4位にランクされている。農村信用協同組合はもはや中国の法人機構が最も多く、従業員が最も多く、都市と農村での分布が最も広い金融機関となっている。

「農村」のために生まれた農村信用協同組合は、いまでは中国の「3農」(農村、農民、農業)資金の主な供給者となっている。統計データによると、2002年末現在、農村信用協同組合は合計「3農」貸付を5563億3000万元提供したが、その額は全国金融業の農業支援貸付総額の80.8%を占め、郷鎮企業への貸付は74%を占めている。

改革は焦眉の急

1980年代の中期以前に、農村信用協同組合は中国の農村経済発展を支持する面で確かに非常に重要な役割を果たした。しかし、四大国有商業銀行のネットワークが次第に農村に広げていくにしたがって、農村信用協同組合は日ましにその地位と役割を失い、普遍的に存在しにくくなった。

ごく少数の農村信用協同組合が金融市場の競争に参加して成功を収め、ひいてはその規模と効率が地元の商業銀行を上回ったとはいえ、全体から見て、農村信用協同組合の資金調達能力がわりに弱く、コストが高く、しかも資金運用率、利潤獲得レベルが低い。そのため、農村信用協同組合の金融機能はまだわりに低い段階にあり、専門の商業金融機関と一定の格差がある。

その原因を分析してみると、主に農村信用協同組合の所有権が明確でないため、経営権が自主的でなく、管理する権利がないことである。農村信用協同組合は最初は農民が自由意思で加入してできたものであるが、数十年にわたる発展の過程では、一貫して政府の主導下で運営している。

農村信用協同組合は損益自己負担の経営実体であるが、その主人は誰なのかおよびリスクと損失が出た場合誰が責任を負うかについて、業界内にはいくつかの異なった説があり、「所有者」不在の現象は長期にわたって存在していた。そしていったん所有権が明確でなくなると、農村信用協同組合が完全に市場化の方式で経営、管理するのが難しくなり、資金運用のレベルも自ずと高くなくなる。統計データによると、貸付、投資を主とする営利的な資産は農村信用協同組合の資産総額の74.9%しか占めておらず、都市の金融機関より約10ポイント低いものである。

ここ数年、国有銀行が商業化の過程でコストダウンするために続々と農村市場から退き、農村信用協同組合が大幅な欠損を出したため、農村金融市場の存在感が日に日に薄くなっていった。しかも農村経済発展資金の投入がはなはだ不足する状況の下で、農村の資金は毎年6000億元のスピードで都市に逆流した。このような状況は農村経済の発展を大きく制約した。

「金融供給の不足は、農村経済発展のノドを締めてしまった」、「農村金融はシステム工学であるが、その主力軍としての農村信用協同組合の改革は確かに最もカギとなる一環である」と中央財政経済大学金融学部主任の史建平教授は語った。

まさにこのような客観的現実により、農村信用協同組合の改革が明らかに焦眉の急となっており、重要な意義がある。この改革について、中央政府は一貫して非常に重視し、社会各界の人々も大きな関心を持っている。

改革案の主な内容

今回の改革試行案には2つの核心的な内容が含まれている。一つは法人を基本機構として、信用協同組合の所有権制度を改革し、所有権関係をはっきりさせ、異なる状況に基づいて、異なる所有権の形式を確定することであり、もう一つは信用協同組合の現行の管理体制を改革し、信用協同組合の管理権を中国人民銀行から地方政府に下ろすことである。

所有権関係を構築する面では、株主権構造の多様化、投資主体の多元化の原則および異なる地区の状況に基づいて、それぞれ異なる所有権形式を試行している。条件を備えている地区は株式制改造を行うことができ、暫時条件を備えていない地区は、株式制の方法にならって、株式合作制を実施してもよい。

それと同時に、効果的な措置をとって、リスクの大きい信用協同組合に対し併合・再編を急いで行う。資産が債務よりずっと多く、農業支援の必要が少ない信用協同組合に対しては、法的手続きに基づいて撤廃することができる。

今回の改革試行案に基づいて、省クラスの農村信用協同組合の管理パターンが全国に推し広められる可能性がある。具体的に言って、省政府が省クラスの農村信用協同組合あるいはその他の機構を設置して、農村信用協同組合の管理を担当させ、責任をもって農村信用協同組合の残った一部の不良債権を消化するとともに、それ相応に経営リスクを引き受けさせることである。中国銀行業監督管理委員会は農村信用協同組合の業務を監督、管理するだけで、しかも法律・規則違反行為を調査、処分する権限がある。

今回の改革の目標は、農村信用協同組合を本当に自主経営、自己制約、自己発展、リスク自己負担の市場主体にならせ、「3農」奉仕の経営方向をいっそう明確にし、サービス機能を充実させ、農村金融の主力軍および農民とつながりを保つ金融のきずなになることである。

聞くところによると、浙江省、江西省、貴州省が今回の農村信用協同組合改革の試行省となる可能性がある。

改革でぶつかった難題

現在、中国には合計3万8000社の農村信用協同組合がある。中国人民銀行の調査データによると、中国の農村信用協同組合は現在残っている不良債権が総額5000億元に達し、大多数の農村信用協同組合の不良資産率は50%以上で、一部の貧困な省では90%以上に達したところさえあり、これは四大国有商業銀行(中国銀行、工商銀行、建設銀行、農業銀行)の不良資産を切り離す前の25%の比例よりはるかに高いものである。そのため、不良資産の処理は農村信用協同組合が改革に当たって直面する最大の難題の1つである。

1999年、中国政府は四大国有商業銀行の1兆4000億元の不良資産を四大資産管理公司に移した。それでは、農村信用協同組合の不良資産処理はこのようなやり方を見習うことができるかどうか。これについて、農村信用協同組合のもとの主管機関である中国人民銀行合作金融機構監督管理司もかつて中国政府の指導部に類似した提案を行ったことがあるが、最終的には採用されなかった。その重要な原因の一つに、国有商業銀行の資産が国有のものであるが、農村信用協同組合の資産がかなり複雑で、長期にわたって残されてきたあいまいな所有権問題は政府の指導部を困らせていることにある。

「歴史的な重荷が軽くなってこそ、農民ははじめてそれに大胆に加入し、農村信用協同組合は本当に改革を行うことができる」と民主建国会北京市委員会の曾広宇副主任委員は記者にこう語った。

中国銀行業監督管理委員会合作金融監督管理部のある責任者は、歴史的な重荷は信用協同組合自身の消化に頼るだけでは、それをなくすのはとても難しいが、国が直接資金を出して補ってもらうことも期待することができない。いまから見て、実行できる方法はこの2つの方式を結びつけることである。つまり一方では株式制改革を通して資金を調達するか、あるいは改革の深化、体制の充実を通して利潤獲得能力を高め、その一部分を消化することであり、国が資金助成、支払い移転、税収減免などの措置をとって、その一部分を解決するのを援助することだと見ている。