全面的な協力パートナー・シップのモデルケース


              陳志瑞

       (中国社会科学院欧州研究所副研究員)

トニー・ブレアイギリス首相は7月20日、3カ月間も延び延びになっていた中国訪問を始めた。もともと4月の予定だったこの訪問は、イラク戦争によって取り消された。当時中国に駐在していたイギリスの外交筋の話で言えば、「ブレア首相は中国に身を置きながら、頭の中はイラク戦争のことでいっぱいというわけにはいかない」ということである。現在、戦争の硝煙は消え、ブレア首相の訪中も実現した。

訪中スケジュールの調整には深い意味があると思う。イラク戦争の期間においては、イギリスや中国を含む世界の重要な国の外交実務が影響を受け、戦争は全世界の注目を浴び、各国のマスメディアに大々的に報道された。それは一時期人間にとっての最も重要な出来事となったといってもよく、国際政治の中の一番重要な出来事となったようであった。しかし事実は、イラク戦争は今年の春に世界で起こった重要な出来事の1つにすぎず、その影響は大きく、深遠ではあるが、生活の常態ではなく、生活の本質を反映するものでもない。

それだけに、ブレア首相の訪中は、世界の緩和と平穏がまたも現れ、国際社会が常態に向かって回復しつつあることを象徴する意義を持つというわけである。イラク攻撃の理由としていた大量破壊兵器がいまだに発見されていないことで、数年来における最も深刻な政治危機に直面しているブレア首相は依然として中国に訪れ、そしてスケジュールを短縮しなかった。

中英両国の指導者は北京で地域情勢と国際情勢などともに関心を寄せる問題について意見を交換し、多くの面で共通認識に達し、相互理解を深めた。温家宝総理とブレア首相はともにイギリスの実業家と会見し、青島前湾コンテナバースの合弁建設についての取り決めの調印式に出席した。ブレア首相は2008年五輪組織委員会主席の劉淇氏と会見し、北京五輪の招致と準備の状況に耳を傾けた。また、清華大学を訪れて教師と学生たちが催した「円卓会議」に出席し、この大学のクリーンエネルギー研究・教育センターのオープン式に出席した。このほか、中国で最も商工業と文化の活力をもつ大都市の上海と香港を訪れた。ブレア首相は中国の経済状況や人々の生活に非常な関心を示した。

「アジアの土地」と題する彫刻展を参観したブレア首相夫妻が数多くの泥人形の間にしゃがんでそれを見詰めているという北京のある新聞に掲載された大きな写真が私の興味をそそった。この彫刻展はイギリス政府が中国で発起した「イギリスをPR」というイベントの1つであった。今年4月からイギリスは中国人民(とりわけ若い者たち)に今日のイギリスの生活、科学・技術、ビジネスなどを知ってもらうため、北京、上海、広州、重慶の4都市で大規模のPRを繰り広げることにした。ブレア首相の訪中はこのイベントを大いに推進する力になり、中英両国の民間彫刻家がやったように「新しいアイディアを現実に」変えた。

中英両国は31年前に正式に大使クラスの外交関係を樹立し、それ以来、両国はさまざまな困難と挑戦を乗り越え、両国関係を大きく発展させた。6年前の香港問題の平和的解決で中英両国関係には新しい1ページが開かれた。5年前には、朱鎔基前首相とブレア首相の相互訪問が実現し、双方は両国の全面的な協力パートナー・シップの構築を宣言し、両国関係の発展方向を指し示した。4年前には、江沢民前国家主席がイギリスを公式訪問した。これは中国の国家元首の史上初めての訪英であり、両国関係が全面的発展の新しい段階に入ることを促した。ここ2年来、両国はさまざまなレベルにおいて国際実務についての政治的対話を絶えず強化し、両国間の理解と信頼を増進した。政治面での相互信頼感が絶えず強化されたため、互恵協力も絶えず強化されており、とりわけ経済と文化の分野において、両国政府と民間の協力はさまざまなルートや次元で喜ばしい成果が見られた。これまでの5年間に、中英両国の貿易額とイギリスの対中投資額は倍増し、100億ドルの大台を突破した。現在、イギリスは中国にとってEUにおける2番目の貿易パートナーとなっており、対中投資はEUのトップに立っている。また、司法、環境保全、教育などの分野における協力も大きな進展をとげ、人的往来も頻繁になり、2001年には延べ30万を数えるイギリス人が訪中したが、イギリスに留学している中国留学生は2万人以上に達し、イギリスでは留学生の人数が最も多いといわれている。このほか、両国は相手国に文化センターを設けることになった。これらすべては中英関係の未来のために確固とした基礎を打ち固めた。江沢民前国家主席の言うように、「今日の中英関係はその深さにおいても範囲においてもこれまでのいかなる時期を上回っており、かつてない活力と展望が見られる」ものだ。

温家宝総理はブレア首相と会談を行った際、中英両国がいちだんと協力を強化することについて次の4つの提案を行い、ブレア首相もそれに賛同の意を表した。@首脳間の相互訪問を続け、戦略的対話と話し合いのメカニズムを構築し、充実させる。A経済と貿易協力を拡大し、両国の中小企業の交流をサポートし、イギリス企業の中国の中西部での発展を推し進め、今後の3〜5年内に両国の貿易額を100億ドルから150億ドルまで引き上げる。B文化と教育の分野における協力を深化させ、両国の国民間の理解と信頼を強化する。C対話を通じて、相互間の相違と食い違いを処理する。われわれは中英両国が互いに尊重しあい、平等に付き合い、政治面での共通認識を絶えず拡大し、政治的信頼を強化するという前提の下で、両国の経済と文化の交流をさらに強化することを期待する。これは中英両国国民の願いと根本的な利益のよって立つところであるからであり、戦略的な次元から中英関係に対処する必然的な選択でもあるからである。それは世界の平和、安定、発展にプラスとなる。

冷戦終結後の経済のグローバル化という状況の下で、国と国の間の依存度が高まるとともに、競争も激しくなっており、異なる文明と文化の融合と対抗でこちらが弱まるとあちらが強まり、テロリズム、生態系環境の悪化など世界が悩んでいる問題は日ましに顕在化し、大国の外交の重心は経済と文化の分野に傾いている。長い目で見れば、各国間の互恵協力を強化し、民間の文化交流を促進するという国際政治の重要なテーマは「9.11」テロ事件とイラク戦争などの出来事によって変わることはない。ブレア首相の訪中と中英間の経済と文化の協力関係のたえまなく発展していることがそれを裏付けている。

疑いもなく、この時点において、中英両国は全面的な協力関係発展のモデルケースを提示している。中英両国の指導者は経済と文化の交流、協力を非常に重視し、人々の福祉の向上やより平和的な、繁栄した、幸わせな世界を作り上げることに力を入れている。