金持ちをやっつけるって?

金持ちに対する政策は、ずっと中国の改革開放の中で大きな話題となっている。中国の改革開放は元国家指導者ケ小平氏の「一部の人が先に富裕になるのを許すべきだ」という一言から始まったものだと言う人がいる。25年にわたる改革という大きな変革の中で、金持ちが多数現れ、彼らは政策の導きの下で商売をし、企業を経営し、先に富裕な階層を形成した。これは中国の一大変化である。

だが、最近、いちばんの金持ちと称される企業家、商人および演芸界の人を含む多くの金持ちに問題が発生し、彼らは脱税、贈賄、詐欺などの不法行為で訴えられ、捕らわれの身となった。また各地では、企業家が惨殺される事件が何件も発生した。そこで、これは社会の金持ちを妬む情緒のなせる業だと指摘し、「金持ちを親切に扱おう」と呼ぶかける観点が現れた。こうして、しばらくの間、「富と金持ちをいかに正しく認識するか」は、再び社会各界が関心をもつホットな問題となった。

中国が改革開放前に実行していたのは平均主義で、貧富の格差はきわめて小さなものであった。改革開放後、収入の格差は速やかに大きくなり、両極分化の勢いを呈した。『新財富』誌が今年4月号に公布した中国の「400人の大富豪」が擁している富は3000余億元で、2001年の貴州省GDPの3倍に相当するものである。また調査によると、目下、リストラされた人と失業者の毎月の一人当たり生活費は80ないし400元である。都市部の最低生活保障ラインにある人の毎月の生活費は一人当たり60ないし300元である。一部の立ち遅れた貧しい地区の農民の年間純収入は一人当たり数百元しかない。中国の貧困指標で統計すると、当面中国の社会に貧困人口が1億5000万ないし2億1000万人いるわけである。

1978年、中国住民の収入分配のジニ係数は0.180だったが、1994年になると0.4という国際公認の警戒ラインを超えて、0.434に達し、2001年はさらに0.459に達して、分配不公平の区間に入った。

貧富の大きな格差は心理面に大きな落差をもたらし、震撼、嫉妬、不満はては仇恨など一連の良くない情緒を引き起こす。清華大学国情研究センター主任胡鞍鋼博士の調査によると、現在、全国の都市部住民の中に、生活状況を不満に思う人は1億ないし2億人おり、都市部総人口の22〜45%を占めており、とても不満に思う人は3200万ないし3600万人で、7〜8%を占めている。中国人民大学社会調査センターは調査したことがあるが、「今時の社会の金持ちの中に、正当な手段で富裕になった人がどのくらいいるか」という質問に対し、「大勢いる」と答えた人は5.3%しかなかった。改革が始まったばかりの時、先に富裕になった人たちの中に、不当な手段で富裕になった人もいるだろう。そのため、多くの人はいまの人々の金持ちを妬む心理はこれによって引き起こされたと見ている。

金持ちと富をどう見るか。現在金持ちに対しどのような政策を実行すべきか。これは全社会の関心を集める話題である。

金持ちを親切に扱おう

北京大学光華管理学院の張維迎教授 企業家に対し「納税特赦」政策を実施すべきだ いま実行している際限なくさかのぼる徴税制度は、いくらかゆとりのある社会の建設および前向きの角度から言って不利である。私の知る限りでは、いま一日じゅうびくびくして安心できない企業家がかなりいる。彼らはなんとかして外国のグリーンカードを取得しようとしており、しかも資金を外国に移転している。もしある人の犯した誤りをいつまでとらえて放さないならば、そのようにする人はなおさら大きな誤りを犯す可能性がある。また例えば、税金を納めていない人に対し、いつまでも問い詰めていくなら、彼はなおさら税金を納める勇気がなくなるだろう。考えてごらん。もし彼がきょう税金を納めたのに、きのう税金を納めなかったのはなぜだと聞くと、彼はどうするだろうか。彼は引き続きウソをついて、税金を納めない可能性もあるだろう。

私の見方では、政府は納税特免政策の実行を考慮してはどうか。つまり今から過去のことを不問に付することである。というのは、過去のことの多くが歴史的条件によってつくり出されたものであり、もしすべての企業に単に税率に基づいて納税させるなら、生き残れる企業はいくつもないだろう。だから、いまからあえて脱税するなら、いっそう厳しく懲罰するようにできないだろうか。こうすれば、企業家は思想上の重荷を下ろし、いまから国に大胆に貢献し、国に納税することができるようになるだろう。

中国の企業家は納税したいのであり、われわれは双方に有利な方法を探し出すべきである。

『中国青年報』記者の陳小川氏 「金持ちを妬む」と、富裕になることに影響する 最近、「金持ちを妬む」雰囲気をせっせと煽り立て、いろいろな方法で人々に、金持ちはたいてい思いやりがないという考えを植えつけようとするメディアがある。例えば、四川の民営企業家のうち先に富裕になった劉永好さんが公安庁庁長の提供する電話番号を入手したため、某メディアはそれを公共資源を不公平に占有したように言い触らした。私から見れば、これは言い過ぎたと思う。実際には、後に富裕になった人たちも、警察通報電話110番の24時間サービスを公安庁から提供してもらっている。いまのところ、各地で110番の電話で警察が出動する状況はかなりよいものである。公安庁が先に富裕になった劉永好さんに電話番号を提供したことは、先に富裕になった人たちが「危険が身に迫っている人たち」と理解することもできる。私はこれらメディアのやり方が混乱を引き起こすのではないのかと少し心配である。これらメディアの情報は基本的には形を変えて情緒を煽り立てるものである。

ここでは論理が混乱している。警察が先に富裕になった人に奉仕するのは、後に富裕になった人や富裕にならない人たちに奉仕しないことを同時に意味するのかどうか。私はそうではないと思う。

現在、中国には貧しい人がまだ少なからずいる。これは誰も知っていることである。われわれ新聞記者は先に富裕になった人や後に富裕になった人と接触することができる。小生の観察では、先に富裕になった人がいるから、中国に貧しい人も存在するわけではない。二者の間には因果関係がないのである。改革開放以前に、中国に金持ちがおらず、もともと残った少数の金持ちは、さまざまな改造運動、政治運動を経て、みんな貧しい人になった。その時、みんな貧しい人になったが、中国に金持ちがいないから貧しい人が減ったようなこともなく、どちらかというと、中国の人はみな貧しい人なのである。私は「金持ちを妬む」道理を信じない。これらの道理を信ずると、われわれの後から富裕になる人が富裕になるのに影響すると思っている。

万向グループ董事局の魯冠球主席 「金持ちを妬み」、「貧しい人を嫌う」心理状態を警戒しよう 金持ちのほとんどが政府の人々を富裕にする政策の導きの下で、自身の合法的、誠実な労働あるいは経営に頼って富裕になった人たちであるにもかかわらず、貧富の格差が存在するという現実を短期間でなくすのが難しいため、「金持ち」はだんだんと一時生活状態を改善しがたい人たちの中で対立面となっていった。ここ数年に各地で一部の金持ちが不正常に死傷する事件が次々と発生したが、メディアがそれを報道したあと、社会の世論は往々にして同情よりも冷淡の方が多く、他人の災いを喜ぶ人さえいた。

「金持ちを妬む」心理状態は、一部分の人を先に富裕にさせ、それを手本として後から富裕になる人を導き、促す初志に逆行するものである。他方、そのような心理状態に伴って、「貧しい人を嫌う」気風が日ましにつのってきた。これは経済が高速に発展する過程で現れやすい二種類の極端な心理状態であり、社会の安定を破壊しやすい。そのため、相応の法律を制定し、健全にすべきであり、メディアは宣伝教育を展開して、この二種類の社会化したコンプレックスをなくし、導くべきである。

金持ちに対する政策は寛容すぎる

南開大学の韓強教授 納税しない企業家の「赦免」について質す 法によって納税することはすべての公民が尽くすべき義務であり、一部の企業家が法によって納税しないのは単に「誤りを犯す」のではなくて法律を犯すことである。

張維迎教授は企業家に対し「納税特赦」政策を実行することを主張しているが、中国の税法に基準がいくつあるのか、いわゆる「企業家」のために別の基準を設ける必要があるのかどうかお聞きしたい。

張教授の言う「いまから」はあいまいな概念である。法律の前では、人々は平等である。いつからかというなら、税法が正式に発効した日からということにしよう。これならすべての人に対しても公平である。

張教授はすべての企業を単に税率を基づいて納税させるなら、生き残れる企業はいくつもないだろうと語った。

ここでは張教授に、一部の企業家の貢献はどこにあるのかとお聞きしたい。貢献があるというのであれば、納税後依然として利益を獲得できるはずである。これこそ貢献と言うのである。納税すると(罰金を含まない)つぶれてしまうなら、貢献と言えるだろうか。「なんとかして外国のグリーンカードを取得し、しかも資金を外国に移転する」ことでおどかすようなこともやめてほしい。外国へ移転したら納税しなくても済むのだろうか。外国も税金をとっている。

市場経済は法律経済、秩序ある経済であり、法律の前では人々が平等であることは最も基本的な観念である。われわれは確固として揺るぎなく「合法的に富裕になる」ことを提唱し、確固として揺るぎなくすべての人の「合法的財産」を保護する。ここで私はすべてを顧みないで、一部の金持ちの特殊な利益のために弁護する人に、広範な人民大衆の声に耳を傾けるよう勧める。

時事評論家の魏雅華氏 「ある程度」の貧富の格差、つまり適度の貧富の格差はどう確定し、保つのか。この「度合い」をうまく把握できず、貧富の格差が大きすぎる(大きすぎても小さすぎても、われわれの社会にとっては災難である)と、社会の公平を破壊する結果をもたらす。こうなると、金持ちを妬む強い心理が引き起こされ、社会の富を再分配するという衝動に駆けられて、動乱と暴力が引き起こされ、社会全体の安定と健全な発展を危なくするおそれがある。

中国の「ジニ係数」は1994年にすでに警戒ラインを超えたので、われわれはこれを高度に警戒し、重視しないわけにはいかない。このほか、中国は金持ちを妬む心理にきわめて感染しやすい国であり、金持ちを妬む心理はわが民族の中できわめて厚い大衆的基盤があり、きわめて肥沃な土壌と生態環境があり、金持ちの財貨を奪って貧しい人を救済することは従来から義侠心に富む美徳と見られ、また社会の公平を実現するための正義の衝動であると決められていたという現実に直面しないわけにはいかない。

いまの中国の状況はこうである。金持ちに対する政策はすでに先進国の金持ちに対する政策の寛容度を大きく超えている。例えば、先進国では、金持ちの銀行預金に対し厳格な制限があり、一定の限度額を超えると重税を課し、金持ちにそれを消費と投資に使うように迫っている。納税面の所得累進制も、金持ちにより多くの税金を納めるように仕向けている。このほか、税率が50%にも達する遺産相続税によって、金持ちはその財産の大部分を子孫に残すことができない。だから、中国はいま金持ちに対する政策を修正する時刻に差しかかっている。

政策の調整を通じて、ある種の社会の公平を実現すべきである。われわれの言う金持ちとはサラリーマン階層ではなくて、人数が中国総人口の1%も占めておらず、その富が急激にふくれ上がった国有企業と私営企業の経営者たちであり、これには歌手、映画スター、球技の有名な選手たちも含まれている。彼らは確かに中国で改革開放を先行している人たちである。

中国は「ジニ係数」を警戒ライン以下に戻らせ、社会の安定と進歩を保証すべきである。

『中国青年報』の艾君氏 金持ちに特権を与えるのは、「金持ちを妬む」心理を煽り立てる。いま「金持ちを妬む」心理が論議されている。最近何人かの富豪が殺されたこともこの原因に帰結されている。私の考えでは、「金持ちを妬む」ことを弁証法的に分析すべきである。なぜ「金持ちを妬む」のか。一部の金持ちの行為が軌道をはずれている(例えば公共財産の不法占有、脱税、勢力を笠に着て人をいじめるなど)ほか、一部の政府機関と公務員が「貧しい人を嫌って金持ちがすきになり」、金持ちにいろいろの特権を与えることも、この種の「金持ちを妬む」心理を煽り立てている。社会の公共資源はすべて社会の一人ひとりに属している。この種の公共資源が一部の人に独り占めされれば、他の一部の人が必然的に損失を蒙ることを意味する。この部分の人は往々にして一般の大衆であり、彼らは独り占めを知らないわけではないが、これにもまして自分の意見を述べる場がないのである。このような時、政府はなおのこと公共資源をりっぱに保護し、合理的、公平に分配する責任がある。もし政府機関が逆に一部の独り占め行為に青信号を出すなら、勢い「金持ちを妬む」心理を激化させ、最後には民衆はこの種の不満の情緒を残らず金持ちにぶちまけるだろう。そうすれば、その結果は願望と相反するものとなる。

特権を廃除し、公平を保証することこそ政府機関が公共資源を分配する基本的原則と天然の職責である。この仕事をうまくやれば、いま存在している「金持ちを妬む」心理を減らすことができるのであり、またこうしてのみはじめて金持ちの安全を最終的に実現することできるのである。