駐車難:大都市が直面する問題

――自動車の消費時代に入り、大都市では駐車が難しいとの声が益々高まっている。長年にわたり軽視されてきたこの問題を、政府の関連機関も重視するようになった。中国では今、“駐車場産業”が全く新しいビジネスとして注目されつつある。

馮建華

 

韓振東氏はある日、北京協和医院に診察に行く友人を車で送ったが、病院に着いて、一回りしても駐車できる場所が見つからず、仕方なく、違反駐車して友人を車から降ろさせ、再び車を運転して近くをぐるぐる回った後、30分後に友人を迎えに行った。韓氏はごく普通のサラリーマン、3年前にマイカーを購入。

韓氏が住むのは80年代に建設された住宅団地。当時、駐車場が併設されていたが、使用については何ら規定はなかった。車の所有者が少なかったからだ。だが、この2年近くの間にマイカー族が増えてきた。

韓氏は「今では、団地の公共の場所は車に占拠されて、何の活動もできない。以前は生活の場、という雰囲気だったが、今はそんな感じもない。隣人間の駐車をめぐるいざこざはしょっちゅうだ。出勤時には、別の車が道をふさいでいて通れないため、車をどかしてくれ、と庭で大声で叫ばなければいけない。時間のムダはもちろん、気分も悪い。でも、どうしようもなく、慣れるしかない。北京の団地なら大方こんな状態だ」と話す。

現在、北京や上海、広州など一部の大都市では、自動車の急増と駐車施設の供給不足との間の問題が深刻化しており、駐車が難しいとの声が高まりつつある。記者は20人のマイカー所有者にインタビューしてみた。「駐車が難しい」あるいは「比較的難しい」と答えたのは13人で全体の65%。「難しいとは思わない」はただ1人で、残りの6人は半数が「場合による」で、半数が「はっきり言えない」だった。

駐車難は韓氏のように個人に不便や煩わしさをもたらしている一方、政府の関連機関にはこの問題を早急に解決することが求められている。都市の駐車問題は交通の発展と乗用車の消費にとって“ネック”になってきているからだ。

需給の問題が顕在化

中国は既にマイカー消費の時代に入った。統計によると、保有台数は1000万台を突破し、平均して約130人に1人がマイカーを持っている計算になる。しかも毎年20−30%のスピードで増加している。中国重機協会駐車設備工作委員会のデータでは、都市の自動車保有台数と駐車場の割合は5:1で、駐車場の供給率は約20%に過ぎない。自動車の保有台数は全国で年10−15%の勢いで増えており、伸び率は駐車場の増加率を上回っている。

この2年来、駐車場難が一部の大都市で深刻化しつつある。北京市統計局によると、今年7月25日現在、同市の自動車保有台数は197万台に達し、今後は毎年30−40%のスピードで増加すると予想される。そのうち、マイカーが全体の65%を超えた。5月中旬現在、100世帯当たり5.1台で、今年上半期だけでも購入台数は16万台を突破、通年で30万台を超すと見られている。

北京市では自動車が急増しているが、駐車場の供給不足は深刻だ。暫定統計によると、北京で駐車できるスペースは約60万台分(公共施設はごく僅か)しかない。北京市交通委員会の劉小明副主任は「仮に公共駐車場が自動車総数の15−20%の国際基準を満たしたとしても、駐車問題を完全に解決するのはかなり難しい」と指摘する。

上海市年総合交通企画研究所の研究によれば、上海では公共駐車場が自動車総数に占める割合は僅か2%と、国際基準をはるかに下回る。浙江省の省都・杭州では2003年4月末現在、3台につき1台が駐車できる。

駐車場の問題は4大直轄市の1つである重慶ではより深刻だ。統計によると、市区の自動車総数は約50万台で、駐車場は528カ所あるが、駐車スペースは3万8000台、平均13台に1台しか駐車できない。

駐車難の原因は

駐車難について、劉小明副主任は「主観的、客観的要素があるが、この数年で特に際立ってきたのは、政府機関の機能と予見能力のギャップだ」と指摘する。

90年代初期、政府の関係機関は2000年の北京市の自動車保有台数は70万―80万台と予想したが、実際には既に150万台に達した。こうした予想数字から、関係機関は駐車問題を余り重視せず、その結果、対策が後手になってしまった。

公安部と建設部は1998年、駐車場建設に関する規定を公布。だが、その後の3年間、主管機関の監督管理能力の不足から、この規定は実行の過程で次第にうやむやにされ、一部の地方では空文化してしまった。

駐車施設が車の急増に追いつかないほか、駐車難をもたらした別の重要な原因として、駐車料金が高いことが挙げられる。これがある程度、利用率を低くしている主因でもある。

北京展覧館の駐車場は2階建てで、数千台が駐車可能。だが、経営状況はかんばしくない。毎日、少なくとも3分の2が空車だ。そこから近い158台駐車できる天意卸売市場の地下駐車場は、状況は全く異なる。午前10時から午後4時まで満車となり、週末は午前9時になると空車待ちだという。

天意市場の駐車料金は1時間2元。夜9時以前は最高で10元、24時間以内の場合は最高でも20元だ。展覧館は他の大規模駐車場と同様、1時間5元(物価関係機関が規定した上限)で、昼間は一般に累進性を採用している。

天意市場物業部の呉増佑部長は「車の購入は多くがホワイトカラーで、消費能力は総体的に中等レベルより上にある(月収3000元前後)。だが、駐車場を選択する場合にはやはり料金を考慮する。駐車料金が収入の3−5%の割合であれば、比較的合理的だが、1時間5元の料金は彼らにとって、やはり高すぎる(20%近い)。そのため、適当な駐車場が探せないとなれば、一部は違反を承知で路上駐車をしてしまう」と話す。

さらに呉増佑部長は「消費能力の限界、駐車場の単一的な機能、政府の価格制限などが原因で、屋内駐車場は商業中心区を除いて経営状況は悪い。こうした状態の中で、社会資本が駐車場建設に興味を示さず、ただ政府の資金投入に依存して駐車場を運営することになれば、むしろ社会・経済的効果を上げるのは難しくなる。駐車難にはそんな背景がある」と指摘する。

“駐車難”からの脱出

中国政府は1999年、駐車問題を正式に交通6大管理システムの1つに組み入れた。これは政府が制度面からこの問題を重視し始めたことを物語る。同年、多くの省や市が管理局内に駐車場の計画、建設を担当する駐車管理処を設置、駐車問題の解決は地方政府の課題ともなった。

北京市交通委員会の劉小明副主任は「駐車難を解決するには、公共交通を発展させ、市民の交通への意識を高めるほか、カギとなるのは、産業という形で駐車場を建設すると共に、既存駐車場の使用率を高めることだ。投資の方式では、投資主体を多元化すること。優遇政策で各種の社会資本を多ルート、多形式を通じて公共の駐車場建設に参加させ、過去の政府依存の投資体制は改める必要がある」と指摘する。

さらに劉副主任は「駐車場の建設が利益の上がる産業になれば、社会資本を導入は容易だ。そうするには、市場価格を十分活用して駐車構造を調整する必要がある。具体的に北京について言えば、交通委員会は重要な措置、即ち、国際慣例に従って道路脇の駐車スペース利用の料金を引き上げることで、それを臨時的なものとし、長時間駐車する場合は正規の屋内駐車場を利用させるような措置を講じることにしている。同時に、投資運営者には市場価格を制定し、調整する権利を授ける計画だ。この2つの措置が講じられれば、北京での駐車場の建設は真に魅力的な産業になるだろう」と話している。

北京で駐車場を利用する自動車は、2008年には少なくとも200万台に達すると予想される。1台当たり毎日、最低で3元の駐車料金を支払うとして、1日で600万元、1年で200億元余りに達する。全国範囲で計算すれば、この数字はさらに増える。劉副主任は「社会資本が駐車場建設に参与する場合には何ら障害はない。外資も内国民待遇を受けられる」と強調した。

中国都市企画設計院の高級エンジニアの董蘇華氏は、駐車場産業は将来性があると強調した上で、「発展させるためには投資家により多くの優遇を提供し、多機能な開発を許可すると共に、低利子融資を実施する必要がある」と指摘する。