資金回収の圧力に直面する工業企業

   黄 真

今年以来、中国の工業は引き続き強力な増勢を保ち、企業の生産、販売、利潤はいずれも持続的に二桁の高い成長を維持している。しかし、在庫品と売掛金が激増し、しかも増幅が同期の企業の流動資産の増加を上回ったため、企業の経営的な現金流量にわりに大きな影響を与え、多くの企業は資金回収の面で巨大な圧力に直面している。

国家統計局の提供した統計データが示しているように、今年1月から5月までに中国の工業企業が完成した工業生産額は1兆4730億元で、昨年同期より15.9%伸び、製品の売上高は5兆160億元で27.3%伸び、利潤は2918億元で、62.8%も大幅に伸びた。

今年以来の工業生産額、売上高、利潤の増加曲線図(%)

  
工業生産額
売上高
利潤獲得
1〜2月累計
17.5
31.1
115.2
1〜3月累計
17.2
30.2
94.3
1〜4月累計
16.4
28.2
75.7
1〜5月累計
15.9
27.3
62.8

しかし、アナリストは、在庫品と売掛金の大幅増という高生産額、高売上高、高利潤と同時に共存する現象に留意している。5月末現在、工業企業が在庫品の面で占用している資金は7818億元で、昨年同期と比べて10.3%増加し、増幅は昨年同期より6.2ポイント上昇した。これと同時に、企業の売掛金の正味金額も1兆6654億元に達し、同期より10.97%伸び、増幅は7.8ポイント上昇した。この2項目の占用した資金は合わせて2兆4472億元に達した。

4月末現在の工業企業の完成品の資金、売掛金、新規増加した流動資産、利潤などのデータに対する分析が示しているように、4月末の完成品の資金の伸び幅は昨年同期より6.5ポイント上昇し、1998年以来の最高水準であり、売掛金の正味金額の伸び幅は昨年同期より8.1ポイント上昇したが、これもここ5年来の最高水準である。

業種を具体的に分析してみよう。通信設備、コンピューターおよびその他の電子設備製造業、交通運輸設備製造業、鉄金属加工業と圧延加工業の三大業種の4月末現在の売掛金は合計4096億元で、工業全体の売掛金の25.1%を占めた。三大業種の完成品資金の占用は1624億元で、工業企業の完成品資金総額の21.3%を占め、その完成品資金の同期比の伸び率はそれぞれ24.2%、20.4%、18.3%であり、1〜4月の増幅は3月末よりそれぞれ6.3、2.7、9.6ポイント上昇し、昨年同期よりそれぞれ30.7、16、7.4ポイント上昇した。この三大業種の在庫品の資金占用はいずれも大幅な上昇の趨勢を呈し、増幅は工業全体の平均レベルより明らかに高いものである。

このほか、国の統計した112種の主な工業製品のうち、第1・四半期に在庫が年初より増えたものは70種あり、減ったものは36種ある。6種の製品の在庫は同じレベルを維持した。石炭、原油、精製油などエネルギー類の製品の在庫が下がったほか、その他の業種の多くの製品の在庫に程度の差こそあれ上昇が見られた。例えば、ビデオレコーダーの在庫は2.1倍、プログラム制御交換機は年初と比べて81%、マイコンは64%、カラー・ブラウン管は58%、自動車は25%、民用船舶は43%、粗鋼は47%、鋼材は11%それぞれ増えた。発展の趨勢から見れば、第2・四半期の工業製品の在庫レベルは依然として引き続き上昇している。

1月から5月までに工業企業が実現した利潤は62.8%増の2918億元に達し、増幅は昨年同期を上回ったが、在庫品と売掛金が昨年同期より2379億元増え、同期の工業企業の新規増加した流動資産の30%を占め、昨年同期より14.2ポイント上昇し、それによって企業の経営的な現金流量に大きな影響を及ぼした。

1月から5月までの工業企業の流動資産の平均残高は6兆5221億7000万元で、昨年同期と比べて13.7%伸びたが、この増幅は昨年同期より5.7ポイント上昇した。しかし、完成品の資金と売掛金の増幅がさらに大きく、それぞれ6.2と7.8ポイントに達した。

昨年同期と比べての増幅の曲線図(%)

  
流動資産の増加率
売掛金正味金額の増加率
完成品資金の増加率
1〜5月累計
5.7
7.8
6.2
1〜4月累計
5.5
8.2
6.5
1〜3月累計
4.7
7.2
4.8
1〜2月累計
3.2
6.5
3.9

特に注意する必要があるのは、5月末現在の工業企業の売掛金が昨年同期より1646億3000万元増加し、同期の工業企業利潤総額の56.4%を占め、新規増加した利潤の1.46倍であった。これは工業企業の利潤の大幅な増加が、企業の完成品の在庫が明らかに増加し、掛け売り製品が大量に増加する状況の下で実現されたもので、帳面面利潤のかなり多くがまだ振り込まれていないことを示している。もし商品代金の回収が難しいため不良債権を形成したかあるいは製品の値下げで在庫品に損失をもたらすならば、現在の帳面面利潤のかなり一部分が水泡に帰する可能性のあることを意味する。

資金使用の角度から見れば、在庫品と売掛金の増加が速すぎ、停滞資金が多すぎるのも、資金使用効率の発揮に不利である。そのため、今後の一時期に多くの企業は資金回転の加速を考えざるを得なくなるだろう。