中国の十大観光地

ある土地を理解するには、その土地の文化を理解するのが大切であり、ある土地の文化を理解する最良の方法は、その土地の人々と接触することだ。10都市を選ぶにあたっては北京や上海、広州といったよく知られた大都市は避けた。この10都市は南北東西に位置し、規模もそれぞれ異なる。古い都市もあれば、現代的な都市もあり、風光明媚な都市もあれば、文化的に深い都市もある。いずれの都市も手軽に行けるところだ。この機会に、中国人の生活を肌で感じてみたらどうだろう。

西安――王朝の古都

西安は有名な歴史文化都市で、北京や南京、洛陽、開封、杭州とともに六大古都の一つに数えられている。紀元前11世紀から10世紀初頭にかけて、周や秦、漢、唐など13の王朝がここに都を定めた。六大古都のなかで最も古く、国都であった時期も最も長い。今でも数多くの文化財や古跡が残っており、帝都としての雰囲気に包まれている。観光地をめぐると、数千年におよぶ歴史博物館に足を踏み入れたかのような感がある。豊京に鎬京、阿房宮、長安城、未央宮、大明宮など周と秦、漢、唐の四大古都の遺跡は古色蒼然としており、周囲の高層ビルとは対照的に居室や庭園に趣がある。落ち着いて静かな小路、天を衝くように立つ壮麗な古塔、松やコノデガシワのなかに建てられた荘重な名刹や古寺、仰韶文化を育んだ原始母系社会の半坡遺跡、宋代以降の石碑を集めた碑林、明代に時を告げた鍾楼と鼓楼、壮大な明代の城壁、最も現代的な国家クラスの陝西歴史博物館、興慶宮公園に革命公園、曲江池遺跡……。西安には名所旧跡が数え切れないほどある。

曲阜――聖人・孔子の古里

中国を理解するにはまず、孔子を知るべきだろう。孔子によって中華民族の人格は形成されたと言ってもいい。孔子を理解したければ、山東省の曲阜へ。

山東省西南部に位置し、東は沂蒙と隣接し、南は淮河に望み、西は?州と接し、北には泰山が聳え立つ。

孔子の古里・曲阜は、東洋と儒家の文化独特の特色を備えている。最も価値のあるのが、中国書道芸術の宝庫である孔廟、「天下第一の家」と言われる孔府、世界最大の家族墓地である孔林。いずれも世界文化遺産に登録された。黄帝の出生地である寿丘、中国版ピラミッドと呼ばれる少昊陵も有名だ。新設された孔子六芸城や論語碑園、孔子園なども新名所として人気を集めている。

曲阜への交通は至便。104、327国道、京滬(北京=上海)線、京福(北京=福州)線、日荷(日照=荷澤)高速道路が通っている。

三亜――陽光に包まれた砂浜

三亜、と言えば、「シカが振り向く」という言葉を思い浮かべる人が多い。「シカの町」として知られる秀麗な海浜都市・三亜は海南島の最南端に位置し、リー族やミャオ族、回族などの少数民族が暮らしている。

古代、ここは海の果て、天の果てと言われ、皇帝に処罰された官吏の流刑の地だった。

三亜には全島、国内で最も美しい海岸が広がっているが、なかでも亜龍湾は最高の景色で人々を魅了する。南山や古崖州城、イスラム古墳群めぐりも価値がある。

桂林――煙雨にけむる漓江

「桂林の山水は天下に甲たり」「陽朔の山水は桂林に甲たり」と言われるように、桂林の美は漓江に集約されている。青山に清流、奇山、怪石の数々、深い潭に険しい瀬、流れる泉、飛翔する滝……。晴天の漓江に倒映する青山の姿はことのほか情調がある。だが、煙雨にけむる漓江下りもまた一興。細雨と雲霧が織り成す光景はあたかも仙宮、夢の世界に入ったかのようだ。漓江の世間を脱したかのような秀麗な光景、陽朔めぐりの心地よさ、靖江王陵と霊渠の神々しさ、象山の自然奇観……。たそがれ時に榕杉湖の並木道を歩けば、桂林の艶やかさに心揺り動かされることだろう。

成都――心和らぐ街

四川省の省都・成都の名を口にすると、心が自然と和らいでくる人が多い。「頑張れば勝てる」と全国の人々が確信していても、成都の民衆は「足るを知る者は常に幸福」とばかり、心落ち着いた暮らしを送っている。詩人の杜甫が住んだことのある杜甫草堂、古代の著名な水利工事・都江堰が景勝地として有名。茶官や美食の店、そしてマージャン台が点在する全国でも数少ない心和らぐ街だ。本場の味を味わいたければ是非、府南河岸にある「成都味」へ。

杭州――愛に溢れる街

浙江省の杭州は省都として今、「愛に溢れる街」の建設に力を入れている。この地は確かにロマン溢れる街だ。「梁山伯と祝英台」と「白娘子と許仙」、この二つの有名な愛にまつわる神話は杭州にある西湖のほとりで生まれたといわれる。西湖は中国で最も詩情に満ちた湖で、各時代の詩人がしたためた西湖賛美の詩歌は枚挙に暇がない。

「晴れた湖は雨の湖に如かず、雨の湖は夜の湖に如かず、夜の湖は雪の湖に如かず」と言われるほど、雪に覆われた西湖は最高に美しい。

西湖のほとりにある茶館で一日ぼんやりと過ごすのも愉しい。胃が許せば軽食も。竜翔橋の軽食は、夜が更けるほど新鮮なものが並ぶので、杭州に長く住む外国人がよく足を運ぶ「fish market」。

南潯――人材輩出の街

浙江省湖州市に広がる杭嘉湖平原の中部にある。北は太湖、東は江蘇省と接し、蘇州市から僅か51キロ。途上、有名な水郷の街・同里を目にすることができる。

名所旧跡と自然との調和が素晴らしく、歴史・文化の香りに包まれた光景のみならず、江南の水郷地帯にある古い村の田園風景に魅了される。南潯は人材や読書人を数多く輩出してきた。明代には「9里行けば3人の閣老(宰相)に会い、10里行けば2人の尚書(大臣)会う」と言われ、宋・明・清代にかけて41人の進士(科挙の最高学位)がこの地から生まれている。

麗江――巴国の姿をとどめる街

雲南省の西北部にある古都で、麗江の面積は4平方キロにも満たないが、清流がさらさらと流れ、柳がしなやかに揺れる光景に溶け込むように、宋代末期から元代初期にかけて建てられたナーシ族の民居が古風で質朴な姿をみせている。まさに巴(春秋宣告時代の国)の時代そのままだ。ナーシ族は今も古い象形文字を使用しており、多くの老人が千年を経た古楽器を奏でることができる。あたかも時が100年ほど逆戻りしたような感じにとらわれてしまう。間近にみえる秀麗で神聖な玉竜雪山を目にすると、実に離れがたい気持ちになる。1997年末に世界文化遺産に登録。

平遥――北魏そのままの街

山西省の省都・太原から南に約90キロ。北魏の城壁や旧時の両替所など、当時の県政府所在地としての規則に沿った町並みが当時のまま残っている。地方色に彩られた3797軒の民居が今でも目にすることができる。寺院や廟も造りは精美だ。

1997年12月3日に世界文化遺産に登録。ユネスコ世界遺産委員会は「平遥は漢民族が建てた明・清代の傑出したモデルとなる街で、その特色すべてが保存されてきた」と登録理由を説明する。旧正月にはこの地ならではのイベントが開かれている。

ハルビン――雪と氷の街

中国最北端にある黒竜江省の省都・ハルビンは、東北地方で大連とともに最も風情のある都市の一つ。解放前は「極東のパリ」とも呼ばれ、石畳の中央大通りはハルビンのメインストリートで、ロシア・ヨーロッパ風の建築物が並ぶ。毎年開かれる氷祭りには大勢の観光客が訪れ、北国の風情を愉しんでいる。