外国業者のかけ橋役となっている胡蔡安氏

樊 寧

「投資顧問業に携わるならば、鋭い洞察力をもち、投資のタイミングを上手につまみとらなければならず、こうしてこそはじめて、最高の投資リターンを得ることができる」、と台湾から中国蘇州に定住している安信国際投資顧問有限会社(以下「安信」と略称)総経理の胡蔡安氏は語っている。

胡氏は中国大陸部で投資し、工場設立を考えている外国投資家の投資顧問を務めている。氏の会社は1997年から今日に至るまですでに台湾、日本、韓国、アメリカの企業100余社を蘇州及びその周辺地域に導入することに力を尽くし、これらの企業の総投資額は6億ドルを上回るものとなっている。

胡氏は小柄でちょっと太り気味であり、頭がはげていて風采こそ上がらないが、目はきらきらと光り、敏腕なビジネスマンの気質は、人々にこの人とならなにかできるのではという期待感をもたせるものがある。

台湾の淡江大学会計学科を卒業し、1989年に台湾のある会社の財務処経理であった時、社命で投資環境調査のために大陸部へ来た。そして、福建、広東、北京、貴州、雲南など省・直轄市に足跡を残した。1995年に蘇州に派遣され、台湾業者の工場設立に協力した。こうしたキャリアの持ち主なので、大陸のいろいろのことを知るようになり、会社のために投資プロジェクトを探すと同時に、自分のためにもビジネスチャンスに気を配っていた。

1990年代には、大陸部へ来て工場設立のために投資しようとする台湾業者が大勢いたが、大陸部の政策や法規、インフラ施設と産業の状況、人的資質、自然条件などをよく知る人はほとんどいなかった。台湾業者と大陸の間をつなぐことが大きなビジネスチャンスとなることに気づいた氏は、長江デルタに位置する蘇州が外国投資家に注目される投資スポットとなり、自分が事業を成就する理想的な場所でもあると考えるようになった。

安信は1997年に蘇州のハイテク区で旗揚げし、胡蔡安総経理と朱信董事長の名前の一字をそれぞれとって名づけられた。朱氏はアメリカMIT航空宇宙工学博士であり、アメリカのNASAで仕事をしたこともあり、台湾の中央大学工学院院長、台湾裕隆自動車製造株式会社総経理を歴任し、学界と企業界で非常に影響力のある方である。胡氏は大陸の経済、政治、人文に精通し、二人は手を携えて、それぞれ台湾、大陸部に身を置き、海峡両岸の間に投資の橋をかけることになった。

1999年に、台湾鈞宝電子有限会社董事長楊正利氏が安信の最初のユーザーとなり、蘇州呉江市に工場を設立した後、安信に新しいユーザーを紹介してくれた。このように、最初に蘇州および周辺地域に来て投資した企業は利益を上げた後、その他の投資者を蘇州に紹介してくれたため、蘇州に来る投資者がますます増え、世界3位のコンピュータのメーンフレーム生産メーカーである技嘉科技、台湾最大の工業コンピュータ生産メーカーの研華科技、日本三洋半導体、韓国高仁電子などの著名企業もぞくぞくとやってきた。現在、外資企業の生産はコンピュータ、半導体、オートメ設備、生物科学、食品などの分野に及ぶものとなっている。

胡氏は特にホテルへの投資の面で目先が利いている。今年1月には、蘇州ハイテク区管理委員会は台湾業者サロンを開催し、蘇州にある著名な台湾系企業のリーダたちはこれに揃って出席した。サロンが始まる前に、胡氏は会場の中央に立って、手の中の投資案内パンフレットを来客に配りながら、次のように語った――「現在、蘇州は観光シーズンではないが、投資プロジェクト視察のために蘇州に押し寄せたビジネスマンはホテルにいっぱい泊まりこみ、客室の予約はできなくなった。私は蘇州にすでに8年間も暮らしているが、このようなことを目にしたことはない。お客様は食べ物や住むところ、レジャー娯楽施設を必要としており、それに蘇州にある1万社余りの外資企業を加えると、さまざまな消費のニーズがここから生まれてくる。だから、蘇州のホテル事業の展望は非常に明るいといえる。皆様は製造業に従事されている方々であるが、第3次産業も蘇州で大きな発展を遂げるに違いないと思っている」。胡氏の言葉を聞いて、その場にいた人々はしきりにうなずきながら、投資案内パンフレットを目を通していた。

サロン開催の一カ月後に、投資額3800万ドルの安泰ビジネスホテル・プロジェクトが蘇州工業パークで実施されることになった。このプロジェクトには9人の株主がおり、その中の5人は蘇州に、4人は台湾にいる。数人の株主によって1つのプロジェクトに投資するのは蘇州ではめったにないことであった。その後、太湖に位置する天籟温泉リゾートプロジェクトもまとまり、株主の中の4人はサロンに出席した業者であった。

胡氏は投資チャンスを秘めた情報に非常に敏感である。中国のWTO加盟後、投資分野がさらに開放され、安信は積極的に多くの方面に根回しして、大陸の東部地区に向けての商業、教育、医療・衛生など分野の台湾業者からなるいくつかの投資視察団を組織し、新しい投資プロジェクトを探し求めている。「蘇州の一部病院は次々に民営病院に切り替えられており、これは個人が医療分野に進出する良いチャンスとなる」と、胡氏は今後の考えをほのめかした。

今年4月19日、大陸に潜在力のある10大投資業種に関するシリーズ講座が蘇州雅都ホテルで開講され、胡氏は講師を務めた。席上、全国および上海と蘇州の今年第1・四半期のGDP増加ぶりを示すグラフ、蘇州の同住民所得や一部の消費財の伸びぶりを示すグラフ、全国の都市部住民の同可処分所得及び消費財の伸びを示すグラフなどを、各業種から来た200余人に提示し、そればかりでなく、自動車、教育、店舗不動産、ホテル、ビジネスセンター、マンション、リゾート地、専門クリニック、チェン・ストア、精進料理レストランなど10大投資業種を潜在力順によってランクづけ、参会者の大きな興味をそそった。台湾で幼稚園のチェンを擁する吉的堡教育機構は蘇州で幼稚園を開設した。今日までに、安信の仲介による第3次産業への投資額は9000余万ドルに達している。

安信は、中国の東部地区が中国の経済貿易、金融、製造の中心地であると見、最新の産業の動向を知り、ユーザーのためにタイムリーに関係産業の投資物件と情報を提供することを勝ちを制するための秘訣としている。安信は国家統計局の「渉外社会調査許可証」をもらい、大陸で市場調査を合法的に行える最初の台湾系顧問会社である。はやくも創業の初期に、社会科学院、情報センター、大学、メディアなどを通じて、1年間をかけて、大陸部の政策・法規、財政・経済と産業の状況などの収集に乗り出した。

現在、スタッフは最初の数人から50余人に増え、金融、証券、産業分析、医薬、農業、不動産など分野の投資者に行き届いたサービスを提供する専門人材を擁している。安信は投資者の意向、産業の特徴、セールスの方向によって、ユーザーと同行実地調査を行い、市場調査や投資のアセスメントを行うだけでなく、プロジェクトの導入後、ユーザーのために登録や輸出の手続きを代行し、財務企画を作成し、適切な職場設計部門と施工業者などを紹介している。外部から進出した企業は安信を実家と見なし、生産経営で何か難問にぶつかると、常に安信にアドバイスを求め、いつも満足のいく対応を得ている。安信はまた「大陸財経情報」というパンフレットを発行し、毎週70余社の企業に大陸部の政策、ビジネス情報を紹介し、企業の間で好評である。

安信が今年導入したプロジェクト投資は3億ドルを超える見込みであり、「これは大陸部のよい投資環境のおかげである。現在、台湾経済の不振により、投資者たちはぞくぞくと別の投資先に目を向けており、中国の東部こそ世界の投資家を引き付ける投資の強力な磁場である」と胡氏は語る。

胡氏は特に蘇州に気があるようで、「蘇州は外資の伸びが最も速い地区であり、欧米の権威のある刊行物に最も潜在力のある科学・技術都市と評されている」と。氏はまるですべてを知り尽くしているように次の多くの数字を挙げた。今年6月までに、蘇州に工場を設立した台湾系企業は3300社に達し、投資総額は257億2800万ドル、大陸部における台湾系企業の投資総額の5分の1を占め、蘇州は台湾系企業が最も集中している地区である。台湾系企業が蘇州に集中しているのはなぜかについて、氏は、この地の人文の歴史と密接な関係があると見ている。蘇州には2500余年の歴史があり、社会の治安状況もよい。それに産業チェーンが完備しており、付属企業も揃っているなどが理由だと答えた。また、蘇州は世界の電子情報産業の重要な製造基地であり、安信のユーザーの主体は電子情報産業関係の企業であり、これも蘇州で事業を開拓している胡氏の信念を固めさせるものとなっている。