科学技術と教育による国家振興の戦略

といくらかゆとりのある社会の全面的建設

                国務委員 陳至立

「経済がいっそう発展し、民主がいっそう健全で、科学技術と教育がいっそう進歩し、文化がいっそう繁栄し、社会がいっそう調和し、人民の生活がいっそう豊かになる」いくらかゆとりのある社会を建設することは、わが偉大な祖国が新世紀の最初の20年にその実現に努める雄大な目標である。

科学技術と人材はいくらかゆとりのある社会を全面的に建設する二大重要支柱

科学技術は第一生産力であり、人的資源は第一資源である。この二者はいくらかゆとりのある社会の全面的建設を支える重要でかつカギとなる二大支柱である。

科学技術は第一生産力であるという科学的論断は、すでに歴史によって立証されている。1760年代の蒸気機関の発明と応用は、人類を機械時代に入らせた。1820年代初めの発電機とモーターの発明と応用により、社会生産力は電力時代に入った。20世紀中期の原子力、コンピューター、宇宙技術の発展で、科学技術が経済と社会に与える影響は空前に広くなり、深くなった。今日、科学技術の更新は日ましに速くなり、科学技術革新は経済・社会発展の主導的な力となりつつある。発展途上国にとって、科学技術革命のチャンスをつかめるかどうかは、発展のカギとなっている。

国は「人的資源は第一資源」の角度から、人材による国家強盛の戦略を打ち出した。われわれのような13億の人口を擁する大国が重い人口負担を人的資源の強みに転化させることは、新世紀における中国の発展に対し決定的な意義をもっている。われわれは2020年にいくらかゆとりのある社会の全面的建設の目標を実現するには、人民の教育を受けるレベルを中等先進国並みに高めなければならない。

2002年の中国の国内総生産(GDP)は10兆元を突破し、1人当たりのGDPは1000ドルに達した。このような段階で、われわれがどのような方式で経済の発展と社会の進歩を推進するかは、民族の未来にかかわる重大な戦略問題である。投資の増加、規模の拡大、資源の大量消耗を基礎とするわが国の以前の経済成長パターンは、一連の重大なボトルネック要素の制約に直面している。

一は資源と環境による制約である。例えば、わが国の1人当たり水資源は世界の1人当たり水量の4分の1しかなく、1人当たりのエネルギー資源占有量は世界平均レベルの半分にもならず、石油はわずか10分の1である。

二は技術と装備による制約である。わが国の工業装備の総体的レベルは先進国より20年遅れ、製造業の1人当たり労働生産性は低い。情報、生物、医薬などの産業分野の核心的技術の面では、わが国は依然として受身の立場に立たされている。

三は人口と就職の圧力である。第10次5カ年計画期間、都市部では毎年就職させる必要のある人数は2300万人前後で、ほかに農村には農村以外の分野に移転させる必要のある余剰労働力が1億5000万人いる。労働力の教育を受ける程度は依然として低いものである。

四は差し迫って必要とする人材が不足している。ソフトウェア技術、生物、医薬、新素材、軍需産業などでは、科学技術人材が不足し、高級経営管理人材もかなり不足している。

要するに、中国は工業化、現代化の過程で、世界の圧倒的多数の国よりもっと大きく複雑な困難と難題に直面しており、在来の工業化のパターンを繰り返すことはできず、どうしても科学技術進歩にしっかり依拠して、勤労者の資質を高め、新しい工業化の道を歩まなければならない。

科学技術と人材強国に向かって邁進するテンポを速める

いくらかゆとりのある社会を全面的に建設する偉大な過程は、必然的にわが国が科学技術と人材強国に向かっての邁進を加速する過程であり、わが国を科学技術と教育強国につくり上げるカギとなる歴史的段階でもある。

改革・開放以来、わが国の教育発展は歴史的な飛躍を実現した。2000年に、われわれは9年制義務教育の基本的普及という目標を実現し、2002年末の9年制義務教育普及の人口カバー率は91%に達し、全国の普通大学の学生募集数は320余万人、高等教育のおおざっぱな入学率は15%以上、各種高等教育の在学人数は1600万人にそれぞれ達し、高等教育の規模は世界第1位を占めた。教育開放に斬新な局面が現れた。2002年の海外留学人数は累計58万余人、学業を終えて帰国した人は15万余人に達した。当面、長期帰国の留学者数は毎年約13%の比率で増えている。

科学技術の革新能力がちくじ強くなり、経済と社会に対する科学技術の貢献は絶えず大きくなっている。国の863計画、973計画、重要な科学技術難関突破計画などの実施を通じて、科学技術の革新能力の新たな飛躍を実現した。科学引用文索引(SCI)、工事文献索引(EI)、国際科学技術会議論文索引(ISTP)に占めるわが国の科学論文の総数は、2002年は第6位に躍り上がった。2001年の国内の特許出願受理件数と特許授与件数はそれぞれ16万余件と10万件近くに達し、1991年よりそれぞれ263%、364%増加した。水稲ゲノム精細図の製作成功、13兆1000億回のパラレルマシンの開発成功、TD-SCDMAの第3世代移動通信の国際基準への確立、10兆ワット高温空気冷却原子炉の発電成功など重要な意義と影響をもつ創始的な革新成果は、わが国が当今の若干の科学先端分野で重要な進展をとげ、一部のカギとなる重点分野が国際先進レベルに近づいているか到達したことを表明している。ハイテク成果の産業化が速くなり、国民経済を成長させる重要な力となっている。1991年から2001年にかけて、わが国のハイテク産業の工業生産額は3000億元前後から1兆8000億元前後へと年平均20%以上増加し、同期の工業全体の年平均増加速度より10数ポイント高いものである。国民経済構成の中で、ハイテク産業の占める比率は10年前の1%前後からいまは15%前後に上昇した。

しかし、わが国の科学技術と教育のレベルが低いことは、依然としてわが国の現代化建設のプロセスに影響する重要なボトルネック要素である。

当今の世界の多くの国と比べて、わが国の人的資源の開発が明らかに遅れている。一は教育普及の程度が低く、労働力の知識構造の重心がやや低い。二は大衆の科学面の資質向上が差し迫って待たれている。三は東部と西部の間、都市と農村の間の教育レベルの格差が大きい。農村労働力の教育を受ける年数は平均7.33年で、都市の労働力より3年少ない。

科学技術の発展レベルと競争力は先進国と比べて大きな格差がある。一は中国の科学研究の成果をあげる数量が世界の科学知識生産数量の中で依然として小さな比率しか占めておらず、とりわけ創始的な成果が極めて少ない。二は産業発展の対外技術依存度が高すぎる。戦略的意義をもつ航空設備、精密計器、医療設備、工事機械など技術を使う量が大きく、付加価値の高い製品面の問題はいっそう際立っている。三はR&Dの人的資源が薄弱で、1人当たりの経費は先進国よりはるかに少ない。

われわれと先進国との格差を前にして、われわれは寸刻も惜しむ精神で、発奮して強大化をはかり、わが国が科学技術と人材強国に向かって邁進するテンポを速めなければならない。

第一は人材強国の戦略を実施する

人的資源の中等先進国に向かって邁進するように努める。2010年に9年制義務教育を全面的に普及させる。高等教育の各種在学人数は2500万人前後、高等教育のおおざっぱな入学率は23%前後に達する。2020年に高校段階の教育を基本的に普及させ、人口カバー率は85%前後に達する。高等教育のおおざっぱな入学率は35%以上、人口の教育を受ける年数は平均11年、人口100万当たりの科学者と技師は1500人、10万人当たりの専門学校以上の学歴を持つ人は1万3500人前後にそれぞれ達する。

教育事業発展の戦略的重点 一は農村教育を教育活動の重点の中の重点とし、農村教育を大いに強化する。二は引き続き高等教育の大衆化を推進し、世界一流と高水準の大学の建設を加速し、世界レベルの抜きん出た人材を多く養成する。三は職業教育の改革と発展を加速する。四はあくまで民族精神を発揚し、学校の徳育工作を強化し、資質教育を全面的に推進する。五は教育情報化を先頭に教育現代化を推進する。

人材を根本とする発展の新しい観念を大いに提唱する。人材使用制度を革新し、大学と科学研究機構で率先して公開招聘、平等競争、人材獲得の人員使用制度を模索し、人々がその才能を尽くせる環境を形成する。人材激励政策を整備し、重要な貢献をした優秀な科学技術人材は重賞与え、科学技術革新成果を要素として分配に参与する制度を整備する。積極的な措置をとって、広範な教員と研究要員の待遇を改善し、専門人材の俸給を増やし、国の核心人材、特殊な貢献をした専門家に国家奨励、政府手当てを与える。当面の現代化建設と国際競争の必要に基づき、強力な措置と特別な手段をとって、国際先進水準に達する優秀な学術リーダーを多く引き付け、養成する。

第二は「科学と技術大国」および「科学と技術強国」の目標の実現に努める。

2010年前後に社会主義市場経済体制と科学技術発展の要求に適応する国家革新システムを確立、整備し、世界一流の大学、科学研究機構と企業の研究開発機構をはぐくみ育て、一部の重要な科学技術分野で世界先進国に仲間入りし、重要な国際影響を与える科学技術リーダーを育て上げ、科学と技術の持続的快速発展のために堅実な基礎を築く。

2020年は「科学と技術大国」に仲間入りし、科学技術の全般的レベルは中等先進国のレベルに達する。強大な自主革新能力を形成し、科学とハイテク分野でしかるべき地位を占め、一部の重要な知的所有権を手に入れ、わが国の核心競争力の知識革新と技術革新の基礎を形成する。

2050年は「科学と技術強国」に仲間入りし、科学技術の若干の重要な分野で世界をリードするレベルに達し、わが国に科学技術の面で世界に重要な貢献をさせるようにする。

科学技術事業発展の重点 一は現代化建設に重要な戦略的影響を与える若干のカギとなる科学技術分野で重要な突破を実現するように努める。力を集中してわが国の経済と社会の発展に影響する戦略ハイテク問題をちゃんと解決し、科学技術成果の転化と産業化を加速する。二は科学技術の基礎条件のプラットホーム建設を強化し、公共科学技術資源の社会共同享有を促進し、進んだ科学研究施設を効果的に利用し、高水準の科学研究活動を促進する。三は社会公益類の研究陣を強化し、公益類の研究機構を主体とする国家公共科学技術の供給とサービスシステムを確立する。

科学技術と教育戦線で資質の高い人材陣を建設することは、科学技術と教育による国家振興の基礎である。科学技術、教育事業の発展はいかなる分野よりも人材の数量、品質および彼らの創造性の発揮に頼らなければならない。