新たな成長期に入る中国経済

 黄 真

歴史の視点からここ10年の経済成長の軌跡をよく見ると、中国の経済成長のすう勢に若干の変化が生じているのを容易に発見することができる。経済発展の総量レベルから観察しても、または経済成長の速度から観察しても、それから経済成長の方式と原動力から分析しても、または経済成長の支えるものから分析しても、中国経済はいま新たな成長期に入りつつある。

まず経済成長の速度から見ると、1992年に14.2%という90年代のピーク値に達したあと、中国経済の成長曲線はずっとかなり高いプラットフォームのうえで長い下降の道を歩み、1999年に谷底に落ち込んだということができる。つづいて、3年近くの谷底での調整を経て、今年初めに強い上昇の勢いが現れた。今年第1・四半期のGDPは前年同期より9.9%上昇した。SARSが発生して、今年第2・四半期の経済成長の速さがスローダウンしたにもかかわらず、上半期全体のGDPは依然として8.2%というかなり高いレベルを保った。(図1を参照)

中国経済の成長曲線(比較可能な価格)

(1993〜2003.6)

成長率      年      6月

つぎに、経済発展の総量から見ると、当年の価格で計算したGDP総量は1986年に1兆元を越えたあと、15年の歳月を経て、2002年には10兆元の新たなレベルに上がった。経済総量が1桁から2桁に上がるという量的な突破も、中国経済が新たな段階に発展したことを示す標識と見るべきである。

今年上半期はSARSの重大な影響を受けたとしても、現価で計算したGDPは依然として5兆53億元に達した。下半期の状況が上半期よりよいものと見られる。こうして、1人当たりGDPが1000ドルに達する可能性が完全にある。その時は中国経済が新たなテイクオフ期に入る今1つの重要な標識である。(図2を参照)

1986年以来のGDP総量の増加状況(現価)

億元     年

当面中国経済がすでにSARSの影響から抜け出し、引き続き旺盛な上昇の勢いを保っている。それを示す兆しがたくさんある。7月の統計結果から見ると、経済成長を推進する主な力――工業の増産の勢いは依然として強く、工業増加値は前年同期より16.5%上昇し、そのうち、主だった工業製品である鋼材は25.1%、セメントは16%、自動車は42.1%それぞれ上昇した。経済成長と密接な関係を持つエネルギーの生産総量も前年同期より16.6%上昇したが、これは近年の最高レベルである。内需の面では、7月の社会消費財小売総額は今年の月間最高レベルに達し、前年同期より9.9%上昇した。固定資産投資額のそれより以前の7カ月の完成額は前年同期より32.7%増加した。外需は引き続き高いレベルを保ち、輸出額は前年同期より32.8%増加した。今年の中国の経済成長が近年の最高レベルを創出する望みがあり、人々はこれをすでに10年近くも待っていた。

第三に、経済成長方式に新たな変化が現れた。以前では、中国の経済成長は主に速度の上に体現され、経済運行の質と効果がわりに低く、経済成長方式が粗雑で、主に政策に頼って推進された。近年では、中国の経済成長を推進する力は政策による推進と市場による促進がともに作用を発揮する方向に変わり、経済全体は持続可能な、高効率、低消耗、人民がより多く実益を得られる方向に発展し、中国経済の内在的、自主的な成長要素が際立って顕在化している。

経済成長方式の新しい変化はGDP成長構造の重さが増えていることにも体現されている。一は工業、建築業を代表とする第二次産業が経済成長を促進する主な力となったことで、これは中国の工業化がたえず加速していることを表明している。最近の5年間に中国経済は平均7.7%成長したが、そのうちの約4.5ポイントは工業が貢献したものである。(図3を参照)二はハイテク産業の経済促進作用が日ましに顕著になり、2002年の中国ハイテク産業の実現した増加値は3768億6000万元で、前年より21.8%増え、伸び幅は製造業の平均レベルより3.9ポイント高いものである。製造業の成長に対するハイテク産業の貢献は16.8%に達し、前年より3.9ポイント増加した。三は貿易経営主体の枠組みもますます明らかになり、市場経済の作用はいちだんと増強された。

GDPと第一、二、三次産業の成長状況(比較可能な価格)

1993〜2002

成長率  年  成長率 第一次産業  第二次産業  第三次産業

第四、経済成長を支える要素の供給に新たな向上が見られた。物質基礎の面では、長年の努力を経て、とくにここ5年の発展を経て、長期にわたって中国の経済成長を制約していた交通、通信、水利、エネルギーのような基礎産業とインフラの供給能力が明らかに増強された。例えば、高速道路は1997年の4771キロから2002年の2万5200キロに発展し、世界におけるランキングは第35位から第2位に上がった。2002年末現在の全国の電話保有台数は5年前のたった8600万台から4億台に増えた。原油と淡水に引き続き関心を寄せなければならないほか、今後十数年の中国の経済成長の物質による制約が著しいものではないと言える。資本要素の面では、中国が依然として資本が相対的に貧しい国であるにもかかわらず、50数年の建設を経て、とくに改革・開放実施以来の20余年間の発展を経て、中国の資本蓄積能力は空前に強くなり、貯蓄率は終始40%前後を保っている。当面の中国の外貨準備は3000億ドルを超え、外国業者の直接投資も500億ドルを越えた。これらはいずれも中国の経済成長を支える強大な資本の力である。労働要素の面では、なおのことあまり多くの問題が存在していない。中国には7億あまりの労働力があり、しかも資質が相対的に言ってわりに高いものである。国際化人材や一部の経営管理および一部の新興産業に人材が不足しているが、全体から見て、労働力供給はわりに豊富である。情報、技術などその他の要素もかなり潜在力がある。そのため、要素について言えば、将来中国経済のいちだんの成長を支持する条件が完全に備わっている。

今日の中国では、新しい指導グループが誕生した。彼らは国家管理の面で豊富な経験があり、全局と複雑な情勢をコントロールする能力があり、今年のイラク戦争の影響への応対およびSARS退治の実践の中で良好なマクロコントロール能力を顕示した。これは中国経済が新たな成長期に入るための重要な前提と保障である。ここ一時期以来、新しい指導部はいくらかゆとりのある社会の全面的建設という戦略目標をめぐって、国民経済と社会発展に対し一連の戦略配置と調整を行い、新しい全面的発展観を形成した。これは中国の経済成長が新しい時期に入るためのいま一つの重要な標識である。

新しい全面的発展観は統一的に按配し、各方面の利益を考慮し、協調して発展するという原則を強調し、経済と社会の間、都市と農村の間、地区と地区の間、人と自然の間の協調的発展をいっそう重視し、政府の社会管理と公共サービスの機能をいっそう重視し、マクロコントロールの諸目標の全面的把握をいっそう重視し、人民の物質生活、文化生活、健康レベルの全面的向上をいっそう重視している。これは将来中国の経済成長がより大きな発展潜在力をもつための条件を整えることになろう。