2年以内に電力需給が逼迫

譚 偉

 今年8月4日、米国東海岸とカナダの大部分の地区で過去最大規模の停電が起き、両国で合わせて5000万人が被害に遭った。一方、地球の別の端に位置する中国でも今年、厳しい電力供給不足に直面している。

 中国人民銀行貨幣政策分析グループが先ごろ発表した2003年第2四半期『中国貨幣政策の執行報告』によると、2002年下半期以降、高度成長によって電力需要が増大すると共に、一部の地区では構造的な需給逼迫に陥っており、一部の電力網で電力不足やピーク時に安全器をオフにして電気使用を制限するなどの問題が生じている。2003年上半期には電力不足の範囲は前年より拡大し、使用制限を実施している省は前年の11から19まで増えた。

電力不足の原因はどこに

 中国では1997年に20数年続いた電力不足の問題が解決され、全国の主要な電力網の電力需給はほぼバランスの取れたものとなったが、この数年の間にその状態は大きく様変わりした。2001年に広東や浙江、河北などで局部的に電力が不足となり、2002年には需給はかなり逼迫し、電力不足は範囲、数量共に増大。すでに貴州や雲南、上海、江蘇、河南、山東、山西、寧夏、甘粛、重慶、四川など15の省・直轄市・自治区に広がっており、電力不足は1000万キロワットに達した。

 国家電力網公司の李彦夢副社長は需給逼迫について分析、3つの原因を挙げている。第1は、「十五」(第10次5カ年計画・2001‐2005年)に盛り込んだ電力計画の作成基点が低かったこと。5カ年計画の作成時に東南アジア金融危機に見舞われ、国内経済が直接影響を受けたために電力需要の増大は緩慢となり、電気使用量は増大しなかった。基点が低めだったことから客観的に見て、発電の増大スピードに対する正確な推計に狂いが生じた。第2は電力発展と国民経済成長速度、この相互関係の規律性に対する認識が不足していたこと。電力業界について言えば、経済発展の過程において、電力はどれほどのスピードで国民経済の発展をサポートすべきかが未だ正確に把握できていない。第3は、国が講じている積極的な財政政策が電力需要を増大させていること。政府は5年連続して6600億元の国債を増発し、3兆元近い銀行融資を発動してインフラ整備を推進し、関連産業とくに高エネルギー消費産業の発展を促進してきた。積極的な財政政策によって電力需要は急増している。また全国の農村部で電力網が整備されて以降、農村家庭の電気使用量も急速に増大した。

 国家開発銀行の専門家である呉需則氏は「電力不足をもたらした原因は様々あるが、主因は設備容量が需要の増大に追いつかないことだ。電力網の不安定や管理の不備、設備の未整備などは主因ではない。2002年に発電量は11.7%、1700億キロワットアワー増大しており、少なくとも3500万キロワットの新規設備が必要だが、容量は約1600万キロワットしか増えておらず、2000万キロワットも少ない。2‐3年内に稼動できる設備の建設プロジェクトに急いで着手する必要があり、さもなければ2005年に電力不足は更に深刻になるだろう」と指摘する。

2年以内に電力供給は持続的な不足状態に・専門家の観点

 国家発展改革委員会は今年7月17日に開いた電力予測会議で、夏の電気使用のピークが訪れるのに伴い電力供給問題は更に深刻化し、下半期にはSARSによる損失を取り戻すため、各地が工業生産のスピードをアップさせる計画を打ち出していることから、電力需給は一段と逼迫の度を深めだろうとの考えを示した。

 呉需則氏は「去年の予測に基づけば、2003年のGDPは8%前後の成長が見込まれ、重工業が依然として急増傾向を維持しているのを見れば、電気使用量は7-8%増大する可能性があり、設備容量を約2600‐2900万キロワット増やす必要がある。2003年には2100万キロワットが稼動する予定だが、2002年の容量が極めて少なかったため、能力を発揮できるのは2003年上半期になってからであるため、電力供給は特に華東地区や南方、西北地区、四川省や重慶直轄市で2002年より一段と厳しいものになる。2003年と2004年は供給が逼迫する年となるが全国的なものではなく、局部的や時間的に電力不足状態が持続するだろう」と指摘。

 一部の地区の深刻な電力不足にいかに対処するかについて、国家電力網戦略企画部の欧陽昌裕副主任は2つの方策を講じる必要があると強調する。第1は、電気料金を公正化すること。価格を調整することで、価格をテコに有効供給を増大させる共に一部の非合理的な使用を抑制する。第2は、需要に対する管理を強化し、有効供給を増大させると同時に需要の集中を回避することだ。欧陽昌裕副主任は「現在の電力不足状況を改めるには、行政手段だけに依存していてはだめで、最も根本となるのは、有効な経済手段を講じることだ」と指摘している。

 電力投資体制に存在する問題が不足状態を招いた、と主張する専門家もいる。負荷管理を強化することでも解決できるが、これは焦眉の急しか解決できない。現在進められている電力体制改革は取引市場に限定されており、投資市場は基本的には変わっておらず、依然として計画的にコントロールされ、政府が審査・認可している。電力投資は周期が長期にわたるため、市場の需給に問題が生じてから措置を講じるのでは間に合わない。従って、電力投資体制の改革を早急に進めなければ根本的な解決とはならない。