「神舟5号」を商標として使うべきか

10月15日、中国初の有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げが成功し、全国が喜びに沸きかえった。「神舟5号」の名が全国を駆けめぐり、「神舟5号」に乗った楊利偉宇宙飛行士の名前も全国に知れ渡った。かれの出身地葫芦島市では市内の目立った場所に「神舟5号」の模型と楊利偉宇宙飛行士の塑像を建てることにしている。

「神舟5号」の打ち上げが成功すると、「神舟5号」の商標登録を先を争って出願するブームが現れた。

遼寧省商標登録出願受付事務所によると、神舟食品、神舟自動車、神舟パソコンなどの商標登録がすでに出願されたという。楊利偉氏の故郷・綏中県の県長によると、梨が楊利偉飛行士の大好物であることを知り、果物の「楊利偉」商標の登録を出願したとのことである。

「神舟5号」を商標にすることができるのだろうか。「神舟5号」と楊利偉宇宙飛行士の生む効果をどう見るべきか。これらを利用して商業利益を得ようとするのはどんなものか。

宇宙英雄を金儲けの機器にすべきではない

(中国政法大学の黄勤南教授)

「「神舟5号」は国の重大プロジェクトであり、この名称の所有権と使用権は国に属している。楊利偉の名前を商標として使うことについて言うと、姓名を商標として登録することについて法律に明確な規定はないが、軽々しく「楊利偉」の名前をもって商標を登録すべきではない。

(「法制日報」郭松民)

綏中県では県長や幹部が「楊利偉」の商標をどう利用すべきかについて熱心に検討しており、梨に楊利偉の名前を商標として登録することを出願したとのことだが、それなら、これに続いて利益を求めて楊利偉の故郷を開発するなどいろいろな商業行為が行われることになる。英雄の故郷は英雄を金儲けの機器にしようとしている。

だが、名利、地位、金銭を超越し、より高い精神的価値を求めることこそが楊利偉精神の最も重要な点なのだ。かれにとっては、個人のテイクオフが一番重要であるのではなく、中国の宇宙事業のテイクオフこそが最も重要なことなのである。

近年、市場経済の大波の衝撃を受けて、中国の社会は道徳が欠け、拝金主義が横行している。人びとは中国文化のなかの核心的価値観から遠ざかり、精神的支柱を失っているかのようだと嘆く人もいる。

しかし、楊利偉宇宙飛行士の出現によって、われわれは中国の本当の気骨を見ることができた。かれは一人だけではなく、その後ろにはいく千万の人がいるのだ。だから、「楊利偉」というブランド(あえてこういう言い方をすれば)の最大の価値は何かと言うなら、それは商業の利益だけであってはならず、新しい手本を示してくれたことにあると言うべきだ。

商人が法を守って利益を追うのに非を唱えるべきではないが、政府が利益ばかり追うようなことには疑問をはさまないわけにはいかない。政府は社会を正しい価値観で導かなければならないからだ。楊利偉宇宙飛行士の豊富な精神的内包を掘り起こさないで、かれをただ単にGDPの伸びを促進する要因であると見て、果物の商標にしたりするのは、楊利偉氏と綏中県だけでなく、われわれの時代と社会にとっても悲劇であると言うしかない。

商業文化の乏しさの露呈

(「解放日報」鄒雲翔)

「楊利偉」商標をめぐる論争は中国人の商品意識が強くなったことを示しているものの、関連の概念や人名を商標とすることには賛成できない。商標の価値は他のなにかに頼るのではなく、それが独立したものであることにある。「マイクロソフト」「恒源祥」など有名な商標は独立した価値を有している。コカコーラ社はバスケットのスターであるマイケル・ジョーダン選手をイメージキャラクターして招請したことがあるが、ジョーダン選手が有名であるからといって、コカコーラを「ジョーダンコーラ」に改名したことはない。

「神舟5号」打ち上げの成功は多くのチャンスをもたらすが、商標にするのはよいこととは言えない。「楊利偉」商標登録の出願争いの現象は商業文化が乏しいからである。今回の現象は商品経済を発展させると同時に理性的な商業文化を育てることの必要性をわれわれに教えている。

ビジネス・チャンスとしてとらえるべきだ

(北京集佳特許商標事務所商標代理人謝逢)

中国の「商標法」からみると、国が禁じている規定に違反せず、社会主義道徳に背かず、先願主義に違反しないなら、「神舟5号」「神五」は商標登録を出願することができる。

(遼寧省綏中県長夏雨恩)

楊利偉氏が宇宙の英雄になったことは綏中県の県民への鞭撻、激励であり、それのよって自信をもつことは地元の経済の発展にとって欠かせないものである。果物の「楊利偉」商標の登録を出願したのは梨がかれの大好物であるというメディアの報道からヒントを受けたからだ。われわれはいま「楊利偉」という商標をどのように活用するかについて検討中である。

(遼寧省綏中県党委員長書記劉向陽)

楊利偉氏の宇宙飛行の成功を故郷の人びとは誇りに思っており、故郷もかれが誇れるような事業を行い、少なくとも綏中県の経済を発展させ、故郷の人びとの生活が向上するようにしなければならない。「楊利偉」をブランドとし、その効果で人びとを引きつけ、総合的に開発をすすめるべきだ。