地下室から市場に進出した「北京青年報」

唐元ト

「北京青年報」は80年代後期、小学校の地下室で業務を行っていた。現在は本社ビルに移転し、北京地区で最も影響力のある総合新聞の1つとなっている。今年の広告収入は8億元を突破する見込みだ。孫偉・常務副編集長は「今日の成功があるのは、早くから市場に進出し、その道を堅持してきたからだ」と強調する。

「青年報」は全国の各省都で発行されており、大半が中国共産党の下部組織である各共産主義青年団が資金を拠出して発行するか、または行政への割り当て制を利用して存続してきた。新聞業の市場化に伴い、今では拠出資金や割り当て制は姿を消した。「北京青年報」は数十年前に割り当て制に頼らず発行されてきた。

「徹底して、全面的に市場ルールに基づいて発行してきた」。全国に先駆けて自己発行に踏み切ったのは、1996年。「こうしてこそ市場のルールに沿うものだ」と孫副編集長。北京の街角では小さな赤帽をかぶり、自転車でその日の「北京青年報」を搬送する若者の姿をよく目にする。この赤帽で有名なのが北京青年報社だ。

テレビのゴールデンアワーでは最近、同社の公告がよく流れる。張雅賓・編集長によると、翌年の購読予約作業と同時に、テレビで公告を流すことが、社全体の発行戦略である。張編集長は「今日に至って発行の成熟度かなり向上し、また成熟し安定した読者群を持つまでになった。テレビ公告はブランドイメージを定着させるため、更に読者に今年、そして将来に向け『北京青年報』はどんな方向へと発展していくかを告げることで、ブランドのグレードアップを図るためだ」と説明する。

「北京青年報」は最も早く公告と取材・編集を完全分離した新聞社であり、経営などの面で企業化運営を実施している。

発行部数の多い新聞や主流となる新聞の多くは自ら印刷所を所有しているが、「北京青年報」は持っていない。これは実力とは無関係だ。別の新聞社に一定資金を投入して株式を取得した後に、その印刷所に新聞を送る方法を採用している。孫副編集長は「このようにして主導権を握れば、完全に市場化された運営が行えるし、最良のサービスが得られる」と話す。

「北京青年報」は既に1つのブランドとして定着しており、その名称は大きな無形資産として、多くの読者や執筆家に強い吸引力がある。実際、読者は青年層のみに限らず、年配者も少なくない。孫副編集長は「常に市場を研究しており、市場化運営の過程で読者を終始研究している」と強調した。

また「市場は細分化されている。当社の新聞の内容から言えば、現在の読者年齢はふさわしく、また合致していると言うべきだろう。だが、その他の年齢層や階層の読者を取り込むべきだ、と絶えず自らに言い聞かせている」と張編集長。

更に張編集長は「総合紙に転換してから実際、編集の位置づけは変わった。仮に新聞の名前と何らかの相互関連が必要だとするなら、青年の視点から世界を見わたして世界を報道していきたい。青年の視点は豊富多彩であり、我々の報道も豊富多彩だ」と話す。

現在、国内では多くの新聞が広く取材・編集一体の方法を採用している。1人の記者が取材して原稿を書いた後に編集を行うなど、すべての過程を1人でこなすというものだ。

こうした方法は創刊初期の新聞にとって効率は比較的高く、人力も節減できる。だが、比較的成熟した段階に達すると、品質管理や科学的運用などの面で問題が生じてくる。「北京青年報」は昨年、編集と記者担当の完全分離を実施。孫副編集長は「市場化を重視するには、新聞社を企業として経営することが必要であり、編集部の構成、機構は新聞社の高速運営にとって非常に重要だ」と指摘する。

完全分離した更に重要な理由について、孫副編集長は「裏取引をしたり、相手側に有利な原稿を書いたりする可能性を事前に回避するためでもある」と話す。

市場化の波が渦巻く中、「北京青年報」は多くの人材を養成してきた。多くの新聞社にいる編集者、記者や幹部はかつて「北京青年報」で働いた経験があり、今では新たな好敵手。だが、共に中国の新聞業の発展を推進してきた。

「北京青年報」は現在、株式市場への上場を申請中だ。「順調にいけば、わが社は国内で初めての上場メディアになるだろう」と孫副編集長。

「北京青年報」は現在、新聞5、雑誌1、ホームページ1を運営している。張延平社長は「我々が確立したいのはメディアグループであり、新聞グループではない」と強調。事業発展の過程では先ず優れた新聞を出す姿勢に立脚することだ、と指摘した上で、「単なるメディア発展を目指したモデルの道を歩んでも、円滑には進まず、また持続させるのも難しい。情報産業はまさにコンテンツ(内容)産業だと考えている。我々は終始一貫してコンテンツを作成してきた。“対外的な出力方式と出力モデル”は多様化すべきであり、これをマルチメディアの伝達方式にすべきだ」と指摘する。

さらに 張編集長は[メディアグループにとって核心となるのは、コンテンツ・プロバイダーになることを総合的に位置づけすることだ。こうした状況の下で出来るすべてを、読者が期待し必要とするコンテンツを多様なルートを介して伝えていく。こうすれば地域やメディア、業界を越えた伝達が可能であり、これが達成できれば、我々は事業発展目標を達成したことになる」と強調。その上で張編集長は「メディアグループは新聞グループと比較すればある程度、情報産業の発展法則にかなっており、更にこれを追求していくべきだ」との考えを示した。

北京では新聞業界の競争が益々熾烈化。こうした中、多くの中央のメディアは地方の新聞業界と連携し、北京の新聞市場の分割に乗り出しているほか、海外の新聞グループ大手も北京に熱い視線を注いでいる。張編集長は「我々は競争を決して恐れていないが、コンテンツの把握や経営全体の向上、この2重の圧力を毎日感じている」と非常に率直だ。