共産党機関紙改革の“実験者”、朱徳付氏に聞く

 

朱徳付氏はこれまで中国共産党の各党新聞に携わってきたが、現在は国内で最大の権威を誇る「人民日報」が発行する「京華時報」(BEIJING TIMES)の編集長兼副社長を務める。“改革者”そして“実験者”として新聞業界に“奇跡”をもたらした朱徳付氏に、本誌記者の王勇、唐元トがインタビューした。

本誌記者:「京華時報」は新聞業界では“ブラックホース”と言われています。創刊わずか2年で、北京で最もよく読まれ影響力のある総合日刊紙となりましたが、このような成果を上げたのは何が要因なのでしょうか。

朱編集長:主にメカニズムの刷新だと考えています。例えば、全く新しい資本運営モデルの導入したのです。北京大学の文化グループと合弁でメディア企業を設立したのは、「高投入、高成果」という考え方を掲げながら、文化グループの豊富な資本運営ノウハウを借りて、広告と発行を共同で開発し、多角的経営モデルを持って総合的に発展して力をつけ、内外の競争に参与していくためです。

我々は当初から市場の調査や研究を重視してきました。データ資料に話をさせましょうか。出資に当たっては、専業の新聞調査会社が国内や北京の新聞市場を全面的に調査し、特に各地、都市の新聞の発展動向について研究を重ねて、第1級の資料を手にし、市場を理解し、自社の読者を深く知ると共に、独創性や実効性のある取材や編集スタイルを試みて、読者に強い吸引力を与えることにしたのです。

また、我々が署名した契約は、新聞社に行政上のクラス別はない、市場のルールに厳格に基づいて運営する、雇用メカニズムでは全員招聘制を採用する、と規定しています。伝統的な党機関紙から市場化に向かう過程で最も根本的な問題は、いかに雇用メカニズムを解決するかでした。我々は一番徹底して行いました。自社のすべての中堅幹部はいずれも競争を経てきた者です。先ず自己推薦させた後に全員が投票し、票の高い者が選ばれたのです。

私は2001年5月28日に創刊された「京華時報」に満足しています。その後の10カ月の間に時間をかけて32版から48版へと拡充して、今では72版までになりました。僅か1年で北京の新聞市場の総合日刊紙で発行量第1位、販売部数で第1位、自費購読数で第1位となりました。広告収入は3億元で、全国の新聞・雑誌広告収入料でベスト16に入っています。今年は5億元を突破すると見込んでいます。

本誌記者:「京華時報」は社外資本を導入しています。一方で、同様に商業資本やプロのマネージャーを導入した多くのメディアは成功しませんでした。貴社が成功したカギは何なのでしょうか。

朱編集長:新聞で成功したいと思うなら、主に3つの点に依存する必要がありますね。第1は資本、第2はメカニズム、第3は人材です。資本がなければ新聞は作れないし、では資本があれば新聞をうまく作れるかというと、一概には言えません。資本ができたら、優れたメカニズムを確立する必要があります。メカニズムを通じて人材を吸収し、うまく出来ない人間は淘汰していく。資本と一定のメカニズムを確立した後は、人間が決定的な要素となります。新聞の競争は畢竟、人材の競争でもありますが、1人ひとりの人材が単独で戦っているわけではない。新聞が必要とするのは、チームワークの精神なのです。運営に携わっているスタッフは非常にプロ化しています。我々は共通の理想、共通の認識の上で、心を1つにして新聞をより力のあるものにしようとしており、我々の成功はチームワーク、協力の成功だ、と言っても過言ではありません。

本誌記者:商業資本の利益回収に対する要求は非常に高く、常にこうした状況があるために、商業資本との協力ではメディアの長期化戦略に影響を及ぼす点が多々あり、メディアにとっては大きな圧力となっています。貴社はこうした関係をいかに処理してきたのでしょうか。

朱編集長:「京華時報」は「人民日報」の全額出資の新聞であり、北京大学の資本の用途は広告や発行といった経営活動に限定されています。北京大学との協力は長期的な発展を視野に入れて考慮したもので、現実的な成功を急いで早急に利益を上げるというものではありません。現在に至るまで、我々の協力は非常にうまくいっています。

本誌記者:同業者の多くは「京華時報」の経営には一貫したものがあり、経営上の成功は発行にも表れている、と見ていますが。

朱編集長:創刊時、新聞業界は既に営業販売の時代に入っており、市場化が益々進んでいました。メディアの市場化進展の程度を見る重要な指標となるのは、読者群です。過去の伝統的な党機関紙は主として公金による購読に依存し、時には政府および行政の命令や権限に頼っていました。我々が発行するすべては、読者が自ら望んで購読するものです。

新聞が生まれたときには、北京の隅々まで行きわたらせました。我々が基本とするのは、大規模に投入して大規模な成果を上げることです。創刊後の半年間に投入した資金は約2000万元、回収金額も2000万元余りでした。

本誌記者:現在、新聞間の競争は非常に熾烈になっており、同一のニュースを翌日、数紙の新聞の第1面で目にすることもあります。朱編集長は、「京華時報」やその他の都市の新聞は、どうしたらこの様な同質化の雰囲気の中でも円滑に運営していけると思いますか。

朱編集長:1つの新聞が独占、というのは良いとは言えません。独占のゴミもやはりゴミです。成熟した新聞市場では、格差は益々小さくなり、同質化が益々進んでいくでしょう。例えば冷蔵庫やカラーテレビといった同様の製品をみんなが競争しても、やはり優劣はあます。新聞業が発展するに伴って、一般の読者は同質の新聞の中でも最も優れたものを1部しか選択しないのでは、と確信しています。我々には同質化という状況にあって、自らをより優れたものにするための努力をしていくしかないのです。