中国にも導入されるアメリカの起業家教育

譚 偉

さる10月27日、光華公益創業育成第7回プログラムが開講した。学習科目は需要供給の法則、マーケット・リサーチ、マーケティング、ターンの計算などのビジネスのベースによって構成されている。CETI講師の資格を有する呉剛氏は「経済面での独立、人格の尊重公認を切望する人が大勢いるが、起業家教育はこの人たちが新しい生活を切り開くための知識とチャンスを手にする一助となるものである。これは私が参加した最も有意義なボランティア活動だ」と語った。

光華公益創業育成プログラムは中国最初の公益的な起業家育成教育コースであり、アメリカの全米起業教育財団(NFTEと略称)と北京光華管理研修センター(BCMIと略称)によって創設されたものである。プログラム運営資金は主にBCMIの提供でまかなっているが、講師はNFTEの研修とテストを受けてCETI資格を取得したボランティアたちである。

開校して一年も経たない同プログラムは、すでに中国国内では受講生200余人が修了し、7人が起業家教育講師の資格を取得した。中国系アメリカ人の講師杜紹基氏はこう語っている。

「中国では生活に困っている人がかなりおり、社会的責任感を持つ有識者の熱心な援助を非常に必要としている。われわれの事業は教育を受ける機会がなく、収入も少ない人々に起業家教育を施し、これらの人たちが貧困から抜け出す一助となる目的で繰り広げられている」。

中国初の公益的な起業家教育プログラム

北京光華管理研修センターは創立の当初、自らの使命を、中国の管理者と起業家に世界で最もすばらしい管理の知識と技能を身につけさせる、と定義づけした。このために、BCMIは世界各地から優秀な教育資源の導入に取り掛かり、2002年には、半年にわたる考察の結果、NFTEと協力して起業家教育を中国に導入することに決めた。

NFTEは1987年に創立され、その資金は主にゴールドマン・サックス基金などの機構からの寄贈によるもので、創立以来すでに8000人以上の受講生、2700余人の講師と若いボランティアがこれを利用した。これらの受講生と講師はベルギー、エルサルバドル、ドイツ、ガーナ、オランダ、タンザニア、イギリスなどの国からきた人たちである。NFTEは講座やディスカッション、ビジネスプランのレポート作成などを通じて、受講生が自らの創造力を生かして夢を現実に変えさせようとしている。

損する商売、見事な将来

中国では失業率の高止りが経済発展の中で無視できない問題となっている。今年8月の公式の統計によれば、今後、かなり長い時期において、中国の雇用情勢は比較的厳しい状況にある、とされている。7%という現在の経済成長率で推算すれば、年間新規雇用ポストは1400万の不足となっている。ここ数年、中国の都市部における登録失業率は1998年の3.1%、571万人から現在の4.2%、795万人に上昇している。今後数年間においては、一時帰休者も失業者として統計されることになり、それに経済構造調整の強化に伴い、都市部における登録失業率はさらに上昇する可能性が大きいと予測されている。雇用と再就職は人々を悩ます問題となっている。

杜紹基氏の見方では、「起業による雇用の創出」という構想は当今の中国にとって適切で、実行可能なものである。起業に成功した人々が増えることは、起業者自身の就職問題を解決できるだけではなく、ほかの人により多くの就職の機会を提供することにもなる。マクロ的に見れば、起業は中国における私営経済の発展を促し、国有経済に対する補完の役割を果たすことにもなる。

21年間も国際ビジネス畑で仕事をし、経営者として豊富な経験を持っている杜紹基氏は、2002年2月に毅然としてビジネスの仕事を辞めて起業家教育事業に身を投じ、世界中でNFTEの資格を取得した2000余人の講師の中で最初の中国人となった。氏は、現在従事している仕事についてこう語っている。

これも起業だが、損をする商売だと言えよう。他の人たちからは、われわれの元手は回収できないように見えようが、われわれの見方では、これは中国全体への投資であり、人間の将来への投資であり、援助を受けて一人前の起業家になった人たちはわれわれのように、何とか社会に恩返しができれば幸いで、このような元手とリターンはお金では測りえないものである。

光華のプログラムは普通の学術講座と違って、交流の形で社会学や心理学、美学などの内容が組み入れられた授業であり、受講生は20のテーマの学習を終えた後、将来の事業構想を論理的に系統立てて実行可能な形に具体化するビジネスプランを作成することになる訳である。第1期生の馮超さんは、無味乾燥なビジネスプランの作成作業がこんなに面白いとは知らなかった、また、杜先生の奥深くて、ごく分かりやすい授業はわれわれにとっていい勉強になった、と感激の気持ちをあらわにしている。同じく第1期生の河南省出身の汪徳春さんも、受講終了後にアパレル関係商売をやっているが、自分にも商売ができるなんて、夢にも思わなかった、と興奮していた。

中国の起業家教育を発展させるため、さる10月北京を訪れたNFTEの創始者であるスティーブ氏は次のように語っている。

NFTEにとって最も価値のある試みはアメリカの起業家教育を中国に持ち込んだことである。また、NFTEの使命を受けてビジネスの知識や技能を身につけさせる学習指導を通じて、低収入の人々に一家を支える能力を身につけさせ、チャンスを逃さずにチャレンジして社会のためになる企業家に育て上げることである。目的とするものは物質的な富ではなく、一種の思考様式である。NFTEの教育目標はほかでもなく、受講生に一生のためになるこうした富を持たせることである。