GDP計算とデータ公表プロセスを改正

蘭辛珍

「中国のGDP計算とデータ公表プロセスは国際とリンクすることになっている」と国家統計局副局長・高級統計師の林賢郁氏は11月25日に北京週報の記者のインタビューに応じた際に述べ、さらに次のように語った。「われわれは改正後のプロセスに従って今年のGDP計算を行っており、過去のGDPデータに対しても改めて計算直して公表することにしている」。

新たなGDP計算とデータ公表プロセスは5月6日に国家統計局によって打ち出され、11月12日の国務院第28回会合で採択され、国家統計局がそれを組織、実施する権限を授与されたものである。

変更内容

国家統計局の李徳水局長は11月20日にGDP計算とデータ公表プロセス変更の内容を公表した。

@ 年度GDP計算とデータ公表プロセスの変更。年度GDP計算は、初歩的な計算、初歩的な照合・確認、最終的照合・確認という三つの段取りに分けて行われる。年末にはその年のGDP成長率の予測値を公表しないことになる。初歩的に計算された年度GDPと成長率の公表は、翌年の2月28日から1月20日に前倒しする。また、経済分野の調査を行う際、GDPデータに大きく影響を及ぼす新しい資料または計算法や分類基準に変化が起こっていることに気付くなら、過去のGDPデータ(GDPの総量と成長率を含む)を修正、公表する。

A 四半期GDP計算とデータ公表プロセスの変更。今後、四半期GDP計算も年度GDP計算のように、初歩的な計算と初歩的な照合・確認、最終的照合・確認に分かれる。つまり、初歩的な照合・確認と最終的照合・確認という二つの段取りを増やすことになる。

B 公表内容の変更。GDPデータを公表する際、関連重要データも合わせて公表し、必要があれば計算法も公表する。

C 今後は、月間GDPデータを公表しないことになる。

GDP計算の基礎的資料の正確さを確保するため、国家統計局は2004年1月1日から、各省が報告した資料に対しランダム・サンプリングを行い、毎年10省の資料を調べる。

現行のGDP計算制度は1985年につくられたものである。それ以前は旧ソ連の物的生産システム(MPS)を採用していた。統計部門は1985年から国と省の2クラス国民経済計算制度をつくり、また1993年に国民所得計算を撤廃し、国内総生産(GDP)を中国の国民経済計算の核心指標とすることになった。

林賢郁副局長の話によれば、GDP計算とデータ公表プロセスの改革は中国が実施することになった統計体制改革の一つにすぎず、今後、GDP統計の細分化を行い、中国の「姿が見えない経済」(政府と商工管理部門の監督・管理下に置かれていないアングラの経済活動)を研究し、それをGDPに算入することになる。

改革は国外からの疑問と関係はない

これまで中国はGDPの計算結果のみを公表し、計算法を公表しなかったため、中国のGDPデータはここ数年外国から水増しデータではないかとしばしば疑問視され、しかもそれによって「中国崩壊論」へと発展したり、中国のGDPが人為的に抑えられていると見る人もおり、「中国脅威論」がこれによって巻き起こったすることさえあった。

上述のような疑問はあるものの、中国のGDP計算とデータ公表プロセスの改革はそれとは関係はなく、制度そのものに存在している問題を解決するためである、と李徳水局長が指摘している。例えば、年度GDP計算とデータ公表の面では、定期的修正と調整のメカニズムが構築されていなかったため、次の二つの問題を引き起こしやすかった。一つは予測値が12月末に公表されるため、最終の統計データと誤認されることもあり、これによって中国のGDPデータの厳粛性と確実性も疑われることになった。また一つは、かなり全面的な基礎的資料を入手してから、調整後のGDPの絶対量のみを公表するが、修正後の成長率を公表しないことである。「こうしたやり方は中国経済の発展状況を客観的に反映できず、国際慣行にも合わない」と李局長は語っている。

四半期GDP計算の面では、統計資料の時効性と統計範囲の制限によって、予測分が多く含まれている。比較的全面的な資料を入手してはいるが、四半期GDPの初歩的計算データを修正しないやり方は国際慣行に合わない。また、四半期GDPの初歩的計算値が年度GDPの最終的照合・確認データと整合性に欠け、実際状況とのブレが現れることもある。

上述の問題が存在しているため、中国はGDP計算とデータ公表制度を改革し、統計制度がより完璧なものになり、真に透明、公開、科学、正確なものになるようにした。

改革に対する反響

国家統計局のGDP計算とデータ公表プロセス改革案が発表されるや、国内外のメディアの広く報道するところとなった。特に国内の著名なウェブなサイトは専門テーマで報道を行った。

また、関係学者も自らの見解を表している。

中南財経政法大学の喬新生教授 中国が国民経済計算システムを断固として改革することになった直接の意義は、世界に通用する表現で中国を語ることにある。中国のGDP計算システムを改正し、より透明かつオープンなプロセスによって中国経済の発展状況を正しく反映することは、成熟した、自信のある大国としてあるべき姿である。

北京大学経済学院の曹和平副院長 改革後のGDP計算とデータ公表制度は現行の制度より透明度が高いものである。しかし、今回はプロセスだけは改革したが、徹底的に国際慣行とリンクしてはおらず、先進諸国と比べて、改革後のGDP計算とデータ公表制度にはなおいたらない点が存在している。主として資料の出所の問題である。例えば、サービス業、とりわけ新興サービス業の弁護士業種、会計業種、広告コンサルティング業種、証券取引業種などの資料が不十分であるなどがそれである。

中南財経政法大学の喬新生教授 今回の改革には喜ぶべきところもあれば、憂慮すべきところもある。喜ぶべきところは、国連基準で規定されているアングラ経営活動によって創出された価値が今後GDPの中に算入されるようになったことである。こうすれば、中国のGDPは今後まだ一定の成長を見せることになろう。憂慮すべきところは、生産価格で計算した過去のGDPは、増加額計算の中で重複となる歪の現象をなくすことは難しい。

李徳水局長もこれを認めている。「私は中国の統計制度と方法が完全無欠なものだと思ってはない。とりわけ中国が計画経済体制から社会主義市場経済体制へ転換する過程で、統計作業、統計方法、統計制度の不備が多く存在している。統計制度の改革は長期的な、困難にみちた過程を経なければならないものである」と語っている。