人民代表大会の制度

 

一、人民代表大会の制度の性格と地位

人民代表大会の制度は中国の人民民主独裁の政権組織形態であり、中国の根本的な政治制度である。

中華人民共和国のすべての権力は人民に属する。人民が国家権力を行使する機関は全国人民代表大会と地方各クラス人民代表大会である。

全国人民代表大会と地方各クラス人民代表大会はすべて民主によって選出されたもので、人民に責任を負い、人民の監督を受ける。

国の行政機関、裁判機関、検察機関は、すべて人民代表大会で選ばれ、人民代表大会に責任を負い、人民代表大会の監督を受ける。

全国人民代表大会は国の最高権力機関であり、地方各クラス人民代表大会は地方における国の権力機関である。

二、全国人民代表大会

(一)全国人民代表大会の構成と任期

全国人民代表大会は省、自治区、直轄市と軍隊によって選出された代表からなっている。

全国人民代表大会代表は選出単位によって代表団を構成する。各代表団はそれぞれ代表団団長と副団長を選出する。

団長は一般はそれぞれの省クラスの地方と軍隊の最高レベルの党委員会書記あるいは地方人民代表大会常務委員会主任が担当し、副団長は一般は各省クラスの地方と軍隊の最高レベルの地方人民代表大会常務委員会主任あるいは副主任が担当する。

各少数民族には適当な定員の代表があるべきである。

全国人民代表大会の任期は5年である。

全国人民代表大会の任期満了の2カ月前に、全国人民代表大会常務委員会は次期全国人民代表大会の代表の選出を完了しなければならない。

選出できない特別な情況があるなら、全国人民代表大会常務委員会はすべてのメンバーの三分の二以上の得票数によって採択してから、選出の延期を認めることができ、同期の全国人民代表大会の任期は延長される。

特別な情況が終わった一年以内に、次期の全国人民代表大会の代表の選出を完了しなければならない。

全国人民代表大会会議は毎年一回開催され、全国人民代表大会常務委員会が召集する。

全国人民代表大会常務委員会が必要と認め、あるいは五分の一以上の全国人民代表大会代表の提議がある場合、臨時に全国人民代表大会会議を召集することができる。

(二)全国人民代表大会の職権

全国人民代表大会は以下の職権を行使する。

1、憲法の改正
憲法の改正には全国人民代表大会常務委員会あるいは五分の一以上の全国人民代表大会代表が提議し、そして全国人民代表大会がすべての代表の三分の二以上の得票数によって採択しなければならない。

2、憲法の実施を監督する。

3、刑事、民事、国家機構およびその他の基本的な法律を制定、改正する。

4、中華人民共和国主席、副主席を選出する。

5、中華人民共和国主席の指名に基づいて、国務院総理の人選を決定する。国務院総理の指名に基づいて、国務院副総理、国務委員、各部の部長、各委員会の主任、会計検査長、秘書長の人選を決定する。

6、中央軍事委員会主席を選出する。中央軍事委員会主席の指名に基づいて中央軍事委員会のその他のメンバーの人選を決定する。

7、最高人民裁判所裁判長を選出する。

8、最高人民検察院検察長を選出する。

9、国民経済および社会発展計画と計画の執行情況の報告を審査し、認可する。

10、国の予算と予算の執行情況の報告を審査、認可する。

11、全国人民代表大会常務委員会の不適切な決定を変更するか、あるいは撤回する。

12、省、自治区、直轄市の設置を認可する。

13、特別行政区の設置および制度を決定する。

14、戦争と平和について決定を行う。

15、最高国家権力機関の行使するその他の職権

16、全国人民代表大会は以下のものを罷免する権限がある。

(1) 中華人民共和国主席、副主席。
(2) 国務院総理、副総理、国務委員、各部の部長、各委員会の主任、会計検査長、秘書長。
(3) 中央軍事委員会主席と中央軍事委員会のその他のメンバー。
(4) 最高人民裁判所裁判長。
(5) 最高人民検察院検察長。


三、全国人民代表大会常務委員会

全国人民代表大会常務委員会は全国人民代表大会の常設機関であり、全人代の閉幕期間に、国の最高権力を行使し、全国人民代表大会に責任を負い、そしてその仕事を報告する。

(一)全国人民代表大会常務委員会の構成と任期

全国人民代表大会常務委員会は委員長、若干名の副委員長、若干名の秘書長、委員からなる。

全国人民代表大会常務委員会のメンバーのうちには、適当な少数民族代表の定員があるべきである。

全国人民代表大会は全国人民代表大会常務委員会のメンバーを選出し、罷免する権限がある。

全国人民代表大会常務委員会のメンバーは国の行政機関、裁判機関、検察機関の職務を担当してはならない。

全国人民代表大会常務委員会の任期は全国人民代表大会の任期と同じで、次期の全国人民代表大会が新しい常務委員会を選出するまでその職権を行使する。

委員長、副委員長の任期は2期を超えてはならない。

(二)全国人民代表大会常務委員会の職権

全国人民代表大会常務委員会は以下の職権を行使する。

1、憲法について説明を行い、憲法の実施を監督する。

2、全国人民代表大会の制定すべき3法律以外のその他の法律を制定、改正する。

3、全国人民代表大会の閉会期間に、全国人民代表大会の制定した法律に対し、一部の追加と改正を行うことができるが、同法律の基本的原則に触れてはならない。

4、法律の説明。

5、全国人民代表大会の閉会期間に、国民経済および社会発展計画、国家予算の執行の中で行わなければならない一部の調整案を審査し、認可する。

6、国務院、中央軍事委員会、最高人民裁判所と最高人民検察院の仕事を監督する。

7、憲法、法律に触れる国務院の制定した行政法規、決定、命令を撤回する。

8、省、自治区、直轄市の国家権力機関が制定した憲法、法律、行政法規に触れる地方的な法規と決議を撤回する。

9、全国人民代表大会の閉会期間に、国務院総理の指名によって、部長、委員会主任、会計検査長、秘書長の人選を決める。

10、全国人民代表大会の閉会期間に、中央軍事委員会主席の指名によって、中央軍事委員会のその他のメンバーの人選を決める。

11、最高人民裁判所裁判長の提議に基づいて、最高人民裁判所副裁判長、裁判員、裁判委員会委員と軍事裁判所裁判長を任免する。

12、最高人民検察院検察長の提議に基づいて、最高人民検察院副検察長、検察員、検察委員会委員と軍事検察院検察長を任免し、また省、自治区、直轄市の人民検察院検察長の任免を認可する。

13、外国駐在全権代表の任免を決定する。

14、外国との間で締結した条約と重要協定の批准と廃棄を決定する。

15、軍人及び外交官の階級制度及びその他の専門階級制度を規定する。

16、国家の勲章と栄誉称号の授与を規定し、決定する。

17、特赦を決定する。

18、全国人民代表大会の閉会期間に、国が武力侵犯を受けるか、又は必ず共同で侵略を防止する国際間の条約を履行しなければならない状況に際会した場合、戦争状態の宣言を決定する。

19、全国総動員又は局部動員を決定する。

20、全国又は個別の省、自治区、直轄市の戒厳を決定する。

21、全国人民代表大会が授与したその他の職権。

(三)全国人民代表大会常務委員会の機構

全国人民代表大会常務委員会委員長は全国人民代表大会常務委員会の活動を主宰し、全国人民代表大会常務委員会会議を召集する。

副委員長、秘書長は委員長に協力して仕事をする。

委員長、副委員長、秘書長によって委員長会議が構成され、全国人民代表大会常務委員会の重要な日常事務を処理する。

全国人民代表大会常務委員会には代表資格審査委員会が置かれ、補欠選出された今期全人代代表と新しく選出された次期全人代代表の資格を専門に審査する。

代表資格審査委員会は主任委員、若干名の副主任委員、若干名の委員からなり、全人代常務委委員長会議が常務委の構成員の中から指名し、常務委全体会議で採択される。

全国人民代表大会には専門委員会が置かれる。
各専門委員会は全国人民代表大会と全国人民代表大会常務委員会の指導の下で、関係議案を検討、審議、制定する。
全国人民代表大会の閉会期間においては、各専門委員会は全国人民代表大会常務委員会の指導を受ける。
第九期全人代には民族、法律、財政?経済、教育?科学?文化?医療衛生、外事、華僑、内務司法、環境及び資源の保全、農業及び農村など九つの専門委員会が置かれている。
各専門委員会の主任委員は一般には副委員長又は全人代常務委委員が担当する。

全国人民代表大会と全国人民代表大会常務委員会が必要とみなす場合、特別問題に関する調査委員会をつくり、調査委員会の報告に基づいて相応の決議を行うことができる。
 
四、地方各クラス人民代表大会及び常務委員会

省、直轄市、県、市、市の所轄区、郷、民族郷、鎮には人民代表大会、県クラス以上の地方各クラス人民代表大会には常務委員会が置かれる。

(一)地方各クラス人民代表大会の構成と任期

省、直轄市、区が設置された市の人民代表大会の任期は毎期5年とする。
県、区を設置していない市、市の所轄区、郷、民族郷、鎮の人民代表大会の任期は毎期3年とする。

(二)地方各クラス人民代表大会の職権

地方各クラス人民代表大会はその行政区域内で憲法、法律、行政法規の遵守と執行を保証する。法律に規定された権限に照らして、決議を採択、公布し、地方の経済建設、文化建設、公共事業建設の計画を審査、決定する。

県クラス以上の地方各クラス人民代表大会はその行政区域内の国民経済及び社会発展計画、予算及びそれらの執行状況についての報告を審査、批准し、そのクラスの人民代表大会常務委員会の不適切な決定を変えるか、それを廃棄する権限を持つ。

省、自治区、直轄市及び省と自治区所在地の市、国務院が認可したわりに大きな市の人民代表大会は、その行政区域の政治、経済、文化などの特徴に基づいて、地方法規を制定する権限を持つ。

地方各クラス人民代表大会はそのクラスの人民政府の省長と副省長、市長と副市長、県長と副県長、区長と副区長、郷長と副郷長、鎮長と副鎮長をそれぞれ選出し、しかもそれらを罷免する権限を持つ。

県クラス以上の地方各クラス人民代表大会はそのクラスの人民法院院長とそのクラスの人民検察院検察長を選出し、それらを罷免する権限を持つ。

人民検察院検察長を選出するか、又はそれを罷免することは、必ず上級人民検察院検察長に報告し、当該クラスの

人民代表大会常務委員会の批准を申し出なければならない。

(三)地方各クラス人民代表大会常務委員会の構成と職権

県クラス以上の各クラス人民代表大会常務委員会は主任、若干名の副主任、若干名の委員からなり、そのクラスの人民代表大会に対し責任を負い、活動を報告する。

県クラス以上の地方各クラス人民代表大会はそのクラスの人民代表大会常務委員会の構成員を選出し、それを罷免する権限を持つ。

県クラス以上の地方各クラス人民代表大会常務委員会の構成員は国家行政機関、裁判機関、検察機関の職務につくことができない。

県クラス以上の地方各クラス人民代表大会常務委員会はそのクラスの行政区域内の各方面の重要事項を討議、決定し、そのクラスの人民政府、人民法院、人民検察院の活動を監督し、そのクラスの人民政府の不適切な決定と命令を廃棄し、一級下の人民代表大会の不適切な決議を廃棄し、法律に規定された権限に照らして国家機関職員の任免を決定し、そのクラスの人民代表大会の閉会期間においては、一級上の人民代表大会の個別の代表を罷免し、補欠の選出を行う。

省、自治区、直轄市、省と自治区所在地の市、国務院が認可したわりに大きな市の人民代表大会常務委員会は、そのクラスの人民代表大会の閉会期間にその行政区域の政治、経済、文化などの特徴に基づいて、地方法規を制定する権限を持つ。

五、郷、民族郷、鎮の人民代表大会

郷、民族郷、鎮の人民代表大会の任期は毎期三年とし、主席団、主席、副主席を置き、主席団が代表大会会議の召集に責任を負う。

郷、民族郷、鎮の人民代表大会の職権は主に次のようなものが含まれる。

(一)重要事項の審議、決定権

郷、民族郷、鎮の人民代表大会は国の計画に基づいてその行政区の経済、文化事業、公共事業の建設計画を決定し、その行政区域の財政予算とその執行状況の報告を審査、認可し、その行政区域の民政活動の実施計画などを決定する。

(二)選挙、任免、罷免の権限

郷、民族郷、鎮の人民代表大会は郷長、副郷長、鎮長、副鎮長を選出、罷免する権限を持つ。

郷長、副郷長、鎮長、副鎮長の立候補者は郷?鎮人民代表大会主席団か、又は十人以上の代表が連名で指名する。

郷、民族郷、鎮の人民代表大会の開会の際、主席団か、又は五分の一以上の郷、鎮の人民代表大会の代表が連名で、上述の人たちに対する罷免案を提出することができる。罷免案は主席団が大会に提出して審議を申し出る。

選挙は一律に無記名投票の方法を採用する。

(三)監督権

郷、民族郷、鎮の人民代表大会は郷、民族郷、鎮の政府活動報告を審議し、その不適切な決定、命令を廃棄し、郷、民族郷、鎮の政府構成員の職務を免ずる権限を持つ。

六、人民代表大会の代表

(一)代表の選出

全国人民代表大会の代表は省、自治区、直轄市の人民代表大会と軍隊によって選出される。
省、直轄市、区が設置された市の人民代表大会の代表は一級下の人民代表大会によって選出される。
県、区を設置していない市、市の所轄区、郷、民族郷、鎮の人民代表大会の代表は有権者によって直接選出される。

(二)代表の職権

1、代表大会内部における職権

(1) 議案の提出権

(2) 提案、批判、意見の提出権。

(3) 選挙と任命の決定の投票権。

(4) 審議権。

(5) 人事罷免案の提出権。

(6) 質問案の提出権と発問権。

(7) 調査の提案権。

(8) 表決権。

(9) 免責権。

2、人民代表大会の外部における権利

(1) 元の選出部門との連絡を保つ権利。

(2) 視察権。

(3) 臨時会議召集の提案権。

(4) その他の会議の列席権。

(5) 特別問題調査委員会の参加権。

(6) 元の選出部門の人民代表大会及び常務委員会会議の列席権。

(7) 人身の特別保護権。

(8) 代表としての特権。