2005 No.21
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台湾海峡の曙光

――中国共産党と中国国民党指導者の歴史的会談により、両岸の平和的交流に向け新プロセスが起動した。

陳文

「もし我々がやらなければ、誰がやるのか。もし今やらなければ、いつやるのか」。中国国民党の連戦主席はレーガン米元大統領の名言を巧みに引用することで、北京大学での講演について精彩を放つ総括を行うと共に、今回の大陸訪問に関心を寄せる全ての人士に対し連戦主席の初志を意味深く説明した。「まさにそうであるからこそ、私はここに来たのだ」と。

北京大学での講演は今回の大陸訪問で重要な活動の一つだった。中国共産党中央と胡錦涛総書記の招請を受け、中国国民党の連戦主席は大陸訪問団を率いて4月26日から5月3日まで南京、北京、西安、上海の4都市を訪問した。今回は1945年8月に重慶で交渉を行って以来、60年ぶりの両党の最高指導者による歴史的会談となった。新華社の解説員は論評を発表し、「中国共産党と中国国民党が21世紀初めに歩み出したこの歴史的一歩は、過去に別れを告げ、未来を切り開く一歩であり、両党が現実を正視し、協力を再開する端緒であり、さらに両岸の平和と共同の発展の促進を後押しするものであり、双方の利益に向けて邁進するものであり、重要な歴史的意義と現実的意義を有するものである」と指摘している。

連戦主席本人も今回の大陸訪問に厚い期待を寄せていた。飛行機が南京の禄口空港に到着し、機内から降りて大陸の土地を踏んだ際、連戦主席は「台北と南京の距離はそんなに遠くはない。飛行機が着陸して、ちょうど60年余りになる。皆さんを見ると、もっと早く知り合っていればよかったと思う。ついに歴史的一歩を踏んだ」と興奮気味に語った。さらに連戦主席は「両岸には共通の未来があり、いかに互恵を築き、双方の利益を実現するかが、皆さんが共に関心寄せる問題だ」と指摘すると共に、「中国国民党は平和で安定した両岸関係のために微力を尽くす」との考えを表明した。

連戦主席は大陸訪問に向かう前に台北の桃園空港で挨拶し、「今回の大陸訪問は両岸にとってプラスであり、両岸の同胞が互恵互助、共存共栄という双方の利益実現のチャンスを掌握できることを期待する」と強調した。

民意を体現

北京大学での講演で連戦主席は、必ず「平和を堅持」しなければならない、必ず「双方の利益を志向」しなければならない、と出席者に呼び掛けた。堅持していく勇気の基礎は、主席が見るところ、「歴史の一つの潮流にあり、民意の駆動にある。歴史の潮流、民意の駆動は私、多くの人々にこうした勇気を持たせるから、こう言えるのである」

歴史の潮流に言及した際、連戦主席は「中国国民党、中国共産党はいずれも中国が富んで強くなり、楽しく平穏になることを目標としている。過去のある期間、両岸が歩んだ道、歩んだ方向は、すでに我々両岸においては、差異の面でも格差の面でも、これは縮小しつつあり、これが歴史の潮流であり、非常に重要な方向である」と語った。

さらに民意の駆動に関して、連戦主席は「我々は何故、善意を出発点とし、信任を基礎とし、両岸人民の福祉を依拠として、民族の長期的利益のために考慮することができないのか。人民を主体とし、幸福を優先する、これは我々すべての台湾の2300万、大陸の13億の人、我々すべての人民を含む、皆さんが共に支持する方向だと考えている」と語った。この言葉は熱烈な拍手を引き起こした。

連戦主席の今回の大陸訪問は、両岸関係を緩和し、発展させるという島内の主流である庶民の支持を得た。中央電視台記者の台湾の民意にいかに対処するか、との質問に対し国民党の江丙坤副主席は「現在、島内の大部分の人は両岸の平和を望み、戦争の発生は望んでおらず、国民党が大陸訪問を通じて両岸の協力と交流を促進することを望んでいる」と答えている。

香港の「文匯報」は社説で、「連戦主席の大陸訪問は、『中華民族を認識し、一つの中国を主張する』理念を必然的に発展させたものであり、島内の民心と民意が促進したものでもある」と指摘。「大公報」も社説で「連戦主席の大陸訪問に対する台湾民衆の支持率は一貫して7割を超えている。これは台湾民衆の強い支持を物語るものであり、潮流に即した反映でもある」と指摘している。

中国社会科学院台湾研究所総合研究室の彭維学副主任は「連戦主席の今回の大陸訪問が島内で多数の民衆の支持を得たのは、今年3月の江丙坤副主席の大陸訪問が一連の国際社会と島内各界から高く評価された成果と関係がある。島内では各界が、台湾経済の大陸経済への依存度は高まりつつあり、両岸の経済貿易は台湾の将来の生存と発展のカギとなっていると考えている。これが連戦主席の大陸訪問に対する強い民意の基礎となった」と分析する。

実際、台湾民衆の支持のほか、大陸の民衆も連戦主席の大陸訪問に対し極めて心のこもった姿勢で歓迎の意を示した。「中山陵に拝謁した際、南京の数多くの民衆が自発的に参加してくれた心のこもった場面は、来る前には想像しなかったことである。私は非常に感動した」。連戦主席はこう感慨深げに語っている。

「連戦主席に拍手を送ろうと、朝早く中山陵に来ました。今回の訪問に強い自信を持っています。よいスタートになれば」と、ある南京市民は話していた。64歳の退職労働者も連戦主席を熱烈に歓迎した一人だ。「国民党の大陸訪問はすべての中華民族の願いを代表するものだと信じています」

平和のために訪問

連戦主席は国民党訪問団の今回の大陸訪問を「平和の旅」と位置づけ、訪問期間中、「平和」という言葉は何度も連戦主席本人や多数のメディアによって言及された。

北京大学で講演した際、連戦主席は我々の平和を堅持し、我々の安定した現状を堅持しなければならないと強調した。いかに平和を構築するかについて、連戦主席は「平和は一滴一滴累積されていくものだ」との西洋の名言を引用し、「知恵のある、能力のある中華の子女たちは、刀剣を犂鋤(すき)に変え、干戈(盾や矛)を玉帛(玉や絹)に変えれば、わずかな心血をも累積して長く久しい平和的な関係になる、ということを理解できると信じている」と語った。

連戦主席の「平和の旅」はメディアの幅広い関心を呼んだ。シンガポールの「聯合早報」は社説で「連戦主席の『平和の旅』について言えば、その重要な意義は、大陸の人心を得たばかりでなく、台湾の安否に関心を寄せる世界各国に高く評価され、台湾海峡の平和にプラスであるところにある」と指摘。台湾の「中国時報」は「現在を生きる台湾民衆の大多数は戦乱の再現を望んではいない、戦乱に勝者はなく、悲鳴しかない。戦争よりは両岸関係を良くするほうが実際的である。戦乱を経験した前世代が相次いで老いていく今日、歴史を伝承する後世代が、もし涙を再現させようとすれば、歴史の教訓に対し極めてすまないことをしたことになる」と指摘している。

中国政府のサイトである「チャイナネット」は「連戦主席の今回の大陸訪問は遅い『平和の旅』であり、両岸人民が久しく期待していた日でもある。2004年の台湾の『総選挙』において、連戦氏は『平和のカード』を打ち出し、率先して『経済を良くし、平和を求めて台湾を救う』との選挙スローガンを提起した。その後、連戦氏は絶えず両岸の平和を改善する内容を完備させてきた。連戦氏は「平和と安定、発展が今日の台湾人民の主流となる価値である」との考えを表明。2004年1月1日、台北市の総選挙本部設立大会の席で『両岸の平和新路線』を打ち出し、当選後は『平和、対等、尊厳』を前提に大陸を訪問する考えを示した。連戦氏は同時に『主張の棚上げ、平和協定の調印、両岸共同市場の設立』を主張。大陸が「反国家分裂法」を公布後、連戦主席は「両岸は即、対話と協議を進め、平和協定に調印すべきだ」と主張した。

両岸関係の発展

各界の関心を集めた「胡連会」が4月29日、北京の人民大会堂で正式に挙行された。これは両党が1945年に重慶で交渉を行って以来の最高指導者の会談である。胡錦涛総書記は会談の席で「これは歴史的な会談であり、重要な歴史的意義と現実的意義とを有している。連戦主席と国民党中央が毅然とした態度で訪問を決定したことは高く評価されるべきであり、これは単に訪問の決定ではなく、両岸関係の発展のために行った重要な選択でもある」と強調した。

連戦主席も「胡錦涛総書記との会談は、国共両党が両岸関係と平和の発展を促進する契機となるものである。我々は『九二の共通認識』の枠組みの下、意義のある意思疎通を行い、両岸関係と平和の発展という大きな環境を構築して、両岸の平和協定の調印を推し進めていくと主張している。私は、両岸関係が現在の対立する悪性の循環から協力という良性の循環に転換するよう望んでいる」と語った。さらに連戦主席は「両岸が党間の意思疎通を図る場を構築し、定期的に両岸関係の重大な問題について意見交換して、双方の理解を増進し、両岸関係の改善と発展を促進することを望んでいる」と強調した。

会談後、双方は「胡錦涛中国共産党総書記と連戦中国国民党主席の会談に関するコミュニケ」を発表。同コミュニケは「両岸関係の平和と安定、発展の促進に対する両党の確約と人民の利益に対する強い関心に基づき、胡錦涛総書記と連戦主席は『両岸の平和と発展に関する共同の願望』を共同で公表することを決定した」としている。

コミュニケによると、国共双方は「九二の共通認識」を堅持し、「台湾の独立」に反対し、台湾の平和と安定を求め、両岸関係の発展を促進し、両岸同胞の利益を擁護することが両党共通の主張であることを共に認識した。さらに、両岸同胞の交流と往来を促進し、中華文化を共に発揚することは、隔たりを解消し、相互信頼を増進し、共通の認識を累積するのにプラスであり、また、平和と発展は21世紀の潮流であり、両岸関係の平和と発展は両岸同胞共通の利益に合致し、アジア太平洋地域と世界の利益にも合致する、としている。

双方はさらに(1)両岸の交渉をできるだけ早く再開するよう促し、両岸人民の福祉を共に図ることなどを含む仕事を共同で促進する(2)敵対的状態を終わらせることを促し、平和協定を調印して、両岸関係の平和と安定、発展の枠組みを構築する(3)両岸経済の全面的交流を促進し、両岸経済の協力メカニズムを構築すると共に、両岸の全面的な経済協力の展開を促進して、緊密な経済貿易協力関係を確立する(4)台湾民衆が関心を寄せる国際活動への参与問題に関する話し合いを促進し、両岸の話し合いの再開を促進した後に、台湾民衆に関心のある国際活動参与問題を議論する(5)両党間の意思疎通を図る場を構築し、党関係者のクラスごとの互訪問を展開し、両岸関係の改善に関する問題について検討すると共に、両岸同胞にとって切実な利益に関する問題について話し合いを行い、各界の人士の参加を要請して、両岸の交流を緊密化する措置を組織的に話し合う――の点でも共通の認識を得た。

「胡連会」終了後の記者会見で連戦主席は、国共の歴史について「歴史はすでに過去の事であり、我々はそれを改変することはできない。未来はむしろ我々の努力で掌握することのできるものだ。今日、我々は一つの政権党ではないが、結合し関連する党、関連する人士であり、我々は、両岸関係を前へと促し、前面へと推し進めることに自信がある、と信じている」と語った。

専門家の論評

今回の国民党訪問団の大陸訪問、とくに歴史的な「胡連会」は台湾問題の研究に従事する専門家や学者から幅広い関心を集めた。

台湾問題に詳しい専門家で、上海東アジア研究所の章念馳所長は中国新聞社のインタビューの中で「『胡連会』の意義は国共両党の直接対話にあり、両岸が将来にわたり平和と共通の利益を模索していく上で良好な契機となった。今回の会談で最も重要な特徴は、『直接的』な意思疎通ということだ。台湾民衆にとって、連戦主席の『大陸上陸』は『思想の解放』という意義があり、『胡連会』の成果は台湾島内で『ドミノ』効果を生むだろう。台湾民衆は、両岸関係はもう単なる『台湾を愛する』または『台湾を売る』といったことで評価できないと見なし、より多くの民衆は連戦主席の今回の訪問の目的を共に感じる、と推測していいだろう。何故なら、大陸訪問は決して『台湾を売る』ことではなく、台湾民衆のためにより多くの福祉を求めるためのもので、彼らのために切実なメリットをもたらすためのものだからだ。それは『平和』という2文字である」と分析する。

新華社の取材を受けた北京聯合大学台湾研究院々長の除博東教授は「連戦主席が団を率いて訪問したことは両党の関係史上、大きな出来事であり、1945年以来の両岸関係の発展にとっても重大な出来事だ。国共両党が共に両岸の平和のために努力したことで、両党の関係に新たな一ページが切り開かれ、両岸関係にも新たな一ページが切り開かれた。これは両岸人民に必ずプラスとなるだろう」と強調。

中国人民大学の黄嘉樹教授は「連戦主席が国民党代表団を率いて訪問したことで、両岸の対話の意思疎通に新たなルート、政府と党のトップとの間に直接対話が切り開かれた。これは島内の『台湾の独立』に反対し、両岸関係の発展を主張する陣営に対する大陸側の理解を深めるのにプラスであり、両党間の交流と対話もまた、両岸人民のそれぞれの立場と主張に対する理解を深めるのにプラスである」と指摘している。