2005 No.24
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老人のレジャーライフ

董予力

人口の高齢化は21世紀の人類が直面している最も突出した社会現象の1つである。中国は現在、総人口の10%以上を占める老人がより安心して楽しく暮らすことができる調和のとれた社会を構築しようとしており、各地方政府も真剣にこの問題に対処しているところだ。

企業を退職して2年目になる呉自強さんは毎日、規則正しいレジャーライフを送っている。朝6時、散歩に出る。店で「油条」(一種の揚げパン)を2つ食べ、豆乳を一杯飲んで朝食をすます。午前10時に2度目の散歩。昼食をとると昼寝をする。午後3時、3度目の散歩に。家に入る前に郵便受けから夕刊を持ち帰る。夜は外出せず、テレビを観る。「毎日、散歩している以外はテレビを観ています。一人でいるのがいいから、他人と一緒にいるのは好きではないですね。将棋をしたり、トランプをしたり、マージャンをしたりと、何となくやり過ごすよりは、テレビを観ているほうがましですよ。今はチャンネルが多いから、チャンネルを換えたりしているうちに1日が過ぎていきます。昼間は自分の観たいものを観て、夜は付き合いで観ているだけ。でも、若い人はやはり観るものが違うので、なんとか合わせて観ていますよ」と呉さん。

経済が安定して発展するに伴い、ゆとりのある生活がすでに問題にならなくなった今日、呉さんように暇な時間がたくさんある退職した老人のレジャーライフが今、社会発展の中で緊急に解決しなければならない問題となっている。

レジャーライフの現状

◆テレビを観るのが主体

中国人民大学の王淇延教授は「中国人の生活時間の配分」について調査を実施し、その統計をまとめた。週単位で見ると、学習に充てる時間は7-10分、読書が34-41分、ラジオを聴くが23-27分、テレビを観るが242-251分、散歩をするなどが31-46分、子どもの教育をするが4-6分、友人に会うが24-25分、その他の娯楽が42-48分、座りっぱなしが23-41分、公益活動に参与するが3-7分。

暇な時間の利用では、テレビを観る時間が最も多い。レジャーライフはメディアに過度に依存して受動的で、文化・娯楽や公益活動への参与は比較的少ないことが分かる。専門家は「こうした状況をもたらしたのは、レジャーに対する心の準備や過ごし方の備えに欠けているのが主因で、これでは暇を享受することはできない」と分析する。

多くの老人は、「時間をつぶす」といった気持ちで退職生活を迎えているのだ。一旦仕事から離れると、生活に目標がなくなり、退職後は時間を過ごすのが難しいとの気持ちがある。張玉梅(女性)さんは「教師を退職した後、1日が1年のような気持ちで、何をしたらいいか分からず、またやる気もありません。後に見かねた息子が犬を買ってくれました。相手ができたので幾分良くはなりましたが、時がたつうちに、犬が仲間ではなく、私が犬のお供をしているのに気づいたのです。物を食べなければ、私がそれを食べるように装うと、ようやく食べてくれる。まるで犬の顔色を窺っているようで、夫に犬を他人にあげさせたのです。が、犬がいなくなると、また無聊の境地に陥ってしまいました」と話す。

◆家事労働に追われる

退職前には幾らかでも暇のある生活を、と望んでいた老人も、実際に暇になると、何をしていいか分からないのが現状だ。仕事はしっかりと計画を立てて行い、職場ではゆとりを持つよう指導していた人でさえ、いざ家事をやるようになると忙しさに追われてしまう。数十人の課長を管理してきた人でさえ、孫については管理できない人もいる。退職後、4人の孫の面倒を見てきたある老人は、10年前から計画していた観光旅行する今もって実現していない。

家事労働が老人にとって重い負担であるのは疑いない。浙江省が行った調査によると、自ら家事をやる老人は89.5%、お手伝いさんを頼んでいるのは1.6%、ボランティアの援助を受けているのは0.5%だった。このほか、毎日家事をやっていると答えたのは54.7%、家で好きなことをしているは16%、報酬のある仕事に従事しているは10.4%、家でぼんやりしているは8.4%、公益活動に参加しているは2.4%、常に老人活動センターに通っているは2.2%、老人大学で学んでいるは0.5%だ。退職した老人にとって自分のレジャーに充てる時間は少なく、多くの時間が家事や雑事に縛られている。「退職後の家事は勤めていた時よりも疲れる」、と多くの老人は語る。

◆意思疎通が不足

核家族化が進むに伴い、後輩者との意思の疎通を図る場が少なくなってきた。70年末に生まれた一人っ子の第1世代はすでに競争の激しい社会に参加しており、就職し結婚すると徐々に父母と離れるか、同じ地区に住めないことなどで、独居老人が増え続けている。老人と子女、親戚が会う機会や交流も減り、老人がレジャーライフを楽しむことも制限されるようになってきた。

北京市の調査統計によると、老人が子女や隣人と会話する状況は総体的にまだ良好だが、交流の機会や真の話し相手の少ない老人は半数近くを数える。

意思の疎通や交流が少ないため、老人の間に心理的障害や精神疾患がかなり幅広く見られる。同時に、必要な健康科学知識にも欠けているため、適時に治療や保養ができないことが、個人と社会との疎遠をより深め、家庭・社会的な問題がもたらされている。老人の寿命は延びているものの、かなりの人の生活は質的にまだ低く、孤独な気持ちが一部の老人に精神的不安を覚えさせ、判断力を失わせ、いらいらさせ、怒りっぽくさせている。

都市では今、認知症患者が増加する傾向にある。

◆心の育成を軽視

都市で最も早く姿を見せ、活動するのが老人だ。

ある調査によると、55.6%の老人が朝の健康づくりに参加している。うちジョギングが16.1%、丘のぼりが13%、気功が19.2%など。

一方、文化娯楽活動は非常に少ない。芸術展を鑑賞するは3.3%、コンサートを鑑賞するは2.65%、絵画などを創作するは3.5%、工芸品を作るは1.3%、インターネットを楽しむは1.86%、書道をするは7.6%。

実際、文学や映画・テレビ、演劇などには老人の生活を反映し、老人が楽しむのに適した作品が少ない。たとえ老人の好みにあったものがあったとしても、チケットは高く、回数は少なく、地域も限られており、結局は老人から疎遠となる。精神的な飢餓が老人のレジャーライフの質的低下を招いている。

サービス機能の改善が急務

老人の生活範囲は基本的にはコミュニティー内に限られており、老人のレジャーライフの向上はコミュニティーが力を入れるべき問題だろう。

現在のコミュニティーでは老人のレジャーライフ、とくに文化的生活のニーズに十分適合することはできない。全体的に見て、管理者の管理レベルはまだ低く、とりわけ老人のレジャーライフを組織する面では専門の人材が少ない。数十年前、政府はコミュニティー整備を強化する観点から、それまで年配者が勤めてきた居民委員会の主任を若くて力量のある中青年に代えたが、彼らもコミュニティー管理に関する専門知識や技能に欠けているのが現状だ。

また、コミュニティーを主体とした文化施設は数量的に限られている。とくに様々な催しを行う文化広場や科普及画廊、雑誌・新聞販売スタンド、図書館、ボランティア活動など、老人にとって意義があり、気楽に出かけたり参加したりできる施設や活動はまだ少ない。

さらに、公共の娯楽施設は維持管理が不十分であるため、一定の期間使用すると再開するまでに時間がかかる。その一方、商業施設は使用料が高いため老人が利用するのは不可能だ。結局、大多数の老人は暇な時間を、とくに経済が相対的に遅れた地区に住む老人は家で過ごすしかなくなる。

北京や上海などの大都市ではこの数年来、スポーツくじの発行などで調達した資金を利用してレジャー施設の改善や建設に取り組んでいるほか、様々な文化活動を組織的に開催している。

だが、小都市の現況は楽観視できない。山西省の省都・太原市の謝涛・人民代表大会代表は「退職後、体が元気なら近くの公園に散歩に出かけることはできるが、年老いて、歩くのが不便になった老人は、コミュニティーに健康づくりの施設などがないため毎日、家で寂しく新聞を読むしかない」と訴えている。

高齢化社会を迎えて直面する現実

全国人民代表大会常務委員会の蒋正華副委員長は先ごろ発表した論文の中で「高齢化が到来するに当たり今後、正確な予測が難しい状況が生じるだろう。国情にかなった政策を制定するため、政府は真摯に検討する必要がある」と指摘した。

国連統計によると、1950年代から90年代末にかけて、世界の高齢者数は176%増え、中国では217%増加した。2025年までに世界の高齢者数は90%、中国では111%増加するとしている。ある人口研究機関の統計では、65歳以上の老人が7%から14%まで増加するのに要する時間は、仏が115年、スウェーデンが85年、米国が66年、英国が45年となっているが、中国はわずか25年である。

65歳以上が人口の14%を占めれば、高齢化社会に入ったことを意味する。中国が第5次人口統計調査を行った2000年、65歳以上の老人は8811万人を数え、総人口に占める割合は7%近くだった。上述した速度に基づけば、中国が高齢化社会に突入するのは20年後となる。

蒋正華副委員長はさらに論文の中で「健全な高齢化、という概念がこの数年来、国際社会で関心を集めつつある。国連は健全な高齢化を、世界が高齢化問題の解決と取り組む際の目標にしている。健全な高齢化とは、個人が老人の時期を迎えた時に身体、心、知力、社会、経済という5つの面で、その機能が良好な状態を保持していることを意味している。1つの国または地域の老人において、健康な老人に属する割合が比較的高く、彼らの働きを十分発揮することができれば、人口の高齢化というマイナスの影響は制約されるか、または緩和され、全地区の高齢化の過程または現象は『健全な高齢化』、または『成功した高齢化』と言えることができるだろう。健全な高齢化を実現するには、社会各方面の協調のとれた一致した努力が必要であり、また老人の積極的な参与が必要である。中国政府はこの方面で積極的に模索し、真摯に行動し、世界に中国の特色あるモデルと経験を提供するため努力しているところだ」と強調している。