2005 No.26
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急速に発展するNGO

呉総之

李森さんは広東省の非政府組織(NGO)、「広州青年ボランティア協会」の知能回復支援チームのチーフだ。同協会に加入して以来、ボランティア時間はすでに4000時間以上にのぼる。本業は広東テレコム広州支店の営業管理者。

NGOはこの数年来、急速に発展している。こうした組織はそれぞれ異なる仕事に携わっており、社会生活でのその役割はますます増大しつつある。

NGOにはまだ公認された明確な定義はない。学者の一般説によると、NGOは国から独立した、政府の力の枠外にある非営利の市民組織。慈善組織やボランティア組織、社会団体などがそうだ。それぞれのNGOは環境保護や慈善活動、教育、衛生、権利擁護、業界の自律的協調など、携わる仕事はそれぞれに異なる。

様々な異なる組織

2005年3月末現在、全国で登録された社会団体は15万3000、民間非営利事業体は13万7000に上る。これ以外にも登録されていない、半公開的な社会組織も数多くあり、専門家の推計によると、NGOは全国でおよそ300万。

「2000年にボランティアチームに参加したが、当時は内向的で、恥ずかしがりやだった。大勢の友だちと知り合いになりたくて加入した」と李森さん。広州青年ボランティア協会に入って間もなく、知能回復支援チームのチーフとなり、長年にわたってホームレスや独居老人、孤児などの世話のほか、貧しい山間部の子供たちに学用品を贈る活動などに従事してきた。その過程で李さんは、内向的ではにかみやの人から活発な「社会活動家」に変身した。

より多くの市民にボランティアに参加してもらおうと、李さんは2001年に「広州青年ネットワーク」を開設。2004年には仲間とボランティアネット雑誌「youth.name」を創刊した。サイト登録者はすでに1万人を突破、アクセス回数は延べ50万回を超えている。

李さんが参加するボランティア協会は公益のNGO組織。公益組織は中国のNGOの中でも重要な地位を占めており、公益サービスの提供や弱者への支援を特徴とし、大半が民政機関に登録して設立されたものだ。

この数年来、各地に権利を擁護する民間組織も多数設立されている。広州のある工場で保安員として働いていた寥暁曽さんは、工場の労働者から仕事のつらさをよく聞かされていた。ある日、出稼ぎ労働者が作業時に手の指を2本切断。だが、企業側は6000元の賠償金しか支払わなかったため、法律の知識がある寥さんは労働仲裁機関に訴えた。その結果、被害者はさらに6000元の補償金を得ることができた。第三者の権利擁護支援に成功して自信を深めた寥さんは1998年、借金して「労働者文書処理サービス部」を設立。2001年には費用の徴収を止め、「出稼ぎ労働者民間権利擁護組織」に改めた。無料で相談に乗っているほか、傷害を受けた労働者を訪問したり、法律講座なども開設したりしている。

民間の商業会議所を代表とする自律組織もこの数年増え続けている。こうした組織は自営業や私営企業が発達した地区に多い。基本的に地元の民政機関に登録されており、内部で制定した規約に沿って業界内部を管理し、協調性を図っている。数年前、浙江省温州のライター市場で多くの企業が競争に奔走し、品質の悪いライターが氾濫したが、タバコ器具類協会が多方面から調整に乗り出したことで、こうした状況は大幅に改善された。

時代の必然的産物

中国現代国際関係研究院戦略研究センターの陳向陽副主任は「NGOの大きな発展は、中国の改革開放と市場経済、民主法制の整備の必然的な産物だ」と指摘する。

陳副主任によると、中国のNGOの発展は以下の4段階に分かれる。1949−1966年の発展の初期。1966−1978年の停滞期。1978−1995年には、改革開放によって社会団体が大量に設立された。世界婦人会議が開催された1995年から今日までは、NGOの自主性がやや増強され、全体的な能力と社会的影響力が拡大し、数も激増した。

陳副主任は「NGOはいくらかゆとりのある、調和の取れた社会を全面的に建設する上で大きな役割を担っている。例えば、転換期が直面する一連の差し迫った重大な社会問題、就業問題の緩和などを解決するのに役立つ。また各方面の利益の協調を図ったり、社会の安定を維持したり、社会の互助活動の展開や公益事業の発展、政府の負担を分担する上でも役立つ。とくに公民の意識と政治的自信を高めたり、自主性と独立精神を養ったりすることができるため、政治の民主化と政治文明の整備にも役立つ」と強調。

陳副主任の研究によると、1人平均国民総生産(GDP)が1000−3000ドルにあると、その国のNGOは爆発的に増加する。何故なら、この段階は「黄金の発展期」であり、また「矛盾の突出期」でもあるからだと話す。この期間に多くの国で、NGOの育成と管理が幅広く重視され、その独特の働きを発揮することで、社会の矛盾は有効的に緩和され、社会の安定も保持された。中国では2003年に1人平均GDPが1000ドルを突破。2004年から、社会発展は同1000−3000ドルという重要な歴史的時期に入り始めた。

陳副主任は「中国のNGOは大発展する歴史的時期を徐々に迎えつつある。国内にNGOが大量に設立される一方で、海外のNGOも大挙して進出しており、2者は相互に交流して共に促進し合っている」と説明する。

だが同時に「外国に比べると、中国のNGOは数が少なく、質も低く、活力も十分でなく、顕著な役割も発揮しておらず、総体的に発展の初期段階にある。また国内のNGOは発展に向けて、種類が雑多で玉石混淆であり、体制が古く管理も整備されていない、といった問題も存在している」と指摘する。

NGOが急速に発展している状況と現段階の相対的に遅れた管理制度を原因とする矛盾は、この数年来、一貫してNGOや学者が関心を寄せる問題となってきた。

現行の関係規定によると、全国的な社会団体を設立するには先ず、部(省庁)クラスの機関を業務主管にしなければならず、業務主管が同意して初めて、民政部に登録することができる。この二重管理体制のために大部分のNGOがしり込みしてしまう。

法的身分求める外国NGO

グリーンピースは中国人がよく知る国際的なNGO組織だ。この数年来、中国で一連の活動を展開し、重要な影響を与えてきた。だが、この有名な組織が中国では一貫して明確な法的身分を持っていないことに目を向ける人はむしろ少ない。中国には長い間、外国NGOの中国進出に関する規定を設けた法律がなかったからだ。

実際、80年代初期、世界宣明会や楽施会、救世軍といった貧困支援関連のNGOが雲南省などで活動を始めている。90年代初めには、グリーンピースや米国環境保護基金、グリーン・ワールド・ネットワークなど、環境保護関連のNGOが中国に進出。児童救助会や米国マザー連合会など、衛生・保健や児童救助関連のNGOも同時期に中国で活動を開始した。90年代後期には、中国の民主化に関心を寄せる組織、カーター基金などが中国に進出し、一部のプロジェクトに資金援助を行っている。

だが、中国政府が外国NGOに対して長年にわたり取ってきたのは、「不登録、不干渉」という姿勢だ。

清華大学NGO研究所の王名所長が提供したデータによると、現在、海外の在中国社会団体の数は約3000−6000に上り、うち資金援助組織は2000、プロジェクト支援組織は1000、商業会議所・業界協会は25000、宗教団体は1000余り。いずれも登録はしていないが、暗黙の了解の下で仕事を展開している。

王名所長は「中国の社会団体に関連する立法では、これが最大の法制上の空白だ。海外の在中国社会団体の数は多くないものの、資金規模は膨大であり、活動能力や影響力も非常に高い」と強調する。

「基金会管理条例」が昨年6月1日に施行された。条例は基金会を(1)公衆に寄付を募ることができる公募基金会(2)公衆に寄付を募ってはならない非公募基金会(3)海外基金会の中国内地に設立された代表機構――に3分類している。第3類は国際NGOの合法的な進出に門戸を開いたものだ。

現在、多くのNGOが年内にも公布されると見られる改正「社会団体登記管理条例」に強い関心を寄せている。明確な法的地位が得られるのでは、と期待しているからだ。

内容が多少変わった新条例

しばらく前、多くのメディアが、民生部は「社会団体登記管理条例」改正案の起草作業をすでに終え、年内に公布だろうと報じた。

現行の条例は1989年に公布され、NGOに対する総体的な規範を主体にしたもの。現行条例との相違点について、王名所長は「民間組織の積極的な役割により目を向けており、育成に重点が置かれている」と話している。

新聞「南方週末」は、民政部の最終的な草案では、「二重管理体制」は全く変わっていないと報じた。北京大学法学院NGO法研究センターの陳金羅執行主任は「二重管理という制度性を備えたものは、現段階で変えようとしたとしても、恐らく難しいだろう」と指摘する。

改正後の草案にたいした変動はないとはいえ、いくらか変化のあることに学者やNGOは希望を見出している。

「南方週末」の報道によると、新条例には2つの章、第3章の「外国社会団体の代表機構」と第5章の「育成と管理」が書き加えられた。5章には「社会団体の発展を社会計画に盛り込み、社会団体の経費を政府予算に組み入れることにし、政府はNGOの寄与に経費を支払い、また労働や人事、税務、政府調達の面で政策的支援を与える」との内容が含まれている可能性があるという。

多少の変化とはいえ、民政機関には社会団体、とくに基本階層の社会団体の参入基準を緩和する用意がある、というものだ。例えば、地方の社会団体に対しては3万元の活動資金を登録条件とするとの規定を取り消し、各地方の社会団体が自ら決められるように変更する、法人条件を備えていない郷や鎮、コミュニティーの社会団体については届出制度を導入する、社会団体の適度な競争を許可し、同一地域内において、同一性格の社会団体は1つ以上認可するなど。

海外の社会団体の管理規定に関して、新条例では独立した1章が設けられた。だが、登録条件については国内社会団体の二重管理制度を踏襲。つまり、業務主管機関の認可を得なければ、登録することはできない。重要な原則には恐らく、会員を増やしてはならない、収入を得てはならない、中国との協力を行う場合、中国側が協力事項を主管機関に報告して認可を得なければならない、といった項目などが含まれていると思われる。

グリーンピースが登録に成功するには、環境保護総局の認可を得て、同局を主管業務機関にする必要がある。昨年、基金会条例が公布されて以降、グリーンピースはこうした試みを行っているが、いまだ成功していない。