世界の注目集める中国物流市場
安子
世界貿易機関(WTO)加盟時の公約に基づき、今年は中国が物流業界を全面的に開放する最初の年となった。物流は最も遅く開放された業種の一つとして、最も大きなダメージを受けると見られているが、国内物流企業と、内外との合弁企業、それに全額出資の外資がほぼ等しく市場を占有しているのが現状だ。では、将来の中国市場で硝煙たなびく熾烈な競争が展開されることはないのか。
中国の物流業が年内に全面開放されるのに伴い、世界の物流企業は中国市場に熱い視線を注ぐようになり、ほとんどの企業が例外なく中国市場への進出をめざしている。
第5回中国国際運輸・物流博覧会が5月18日に上海で開かれた。テーマは「都市と企業がグローバル化競争に参与するために物流交流の場を築こう」。フランスやイタリア、ロシア、アメリカ、イギリス、シンガポール、日本など12カ国・地域の企業200社が参加した。業界関係者は「博覧会は国内企業が世界の先進的な物流管理のノウハウを学び、中国の物流市場の繁栄と発展を速めるのに役立つ」と話している。
米国供給チェーン管理専門協会(CSCMP)が6月8日に中国の深?で初の年次総会を開いたのは、中国の物流業界に熱い視線を寄せ、中国に最新の知識と情報を提供するためだった。
中国物流業と世界との格差
昨年、中国の物流総額は前年比30%増の38億4000万元に達し、急速に発展する勢いを見せた。先進国に比べると、物流コストが国内総生産(GDP)に占める比率はやや高水準を維持しており、経済運営での物流の利用度もやや低い。
商務部と中国物流・買付連合会、中国物流情報センターが共同で発表した報告書によると、昨年の物流コスト総額は2億9000万元、GDPに占める比率は21.3%で、先進国の10%前後の水準を大幅に上回った。
先進国に比べ、中国では経済運営での物流の利用度は低い。現在、アメリカでは、第1・2次産業で100元のGDPを創出するのに投じる物流費用は43元だが、中国では31元に過ぎない。
同時に、輸送コスト面での格差も中国の物流水準の低さを反映している。一般的に言えば、輸送コストの比率が高ければ、物流水準もそれだけ高くなる。現在、アメリカでは輸送コストが物流の63%を占めるが、中国はわずか50%だ。
中国では物流の組織力や管理水準も低い。現在、管理コストはコスト総額の14%を占めており、アメリカは3.8%に過ぎない。
大多数の中国企業は物流が企業にどんな強みをもたらすかをまだ認識しておらず、「自社の倉庫、自社の輸送手段に依存して在庫や輸送を行う」といった段階に止まっている。
多国籍企業が続々と進出
世界の物流大手、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は今年4月、広州とアンカレッジ間を直行するエアカーゴ便を就航させた。これとほぼ同時に、大田―連邦快遞(フェデックス)有限公司が広東省東莞に支店を開設。広州の白雲国際空港有限公司の張春林総裁によると、今年8月には同空港がフェデックス社の新たなアジア太平洋地区の中継センターになるという。
中国航空学会民航管理専業委員会の劉偉民委員は「政策決定能力に欠ける、管理水準が低い、コストが高い、販売網が整備されていない、情報がスムーズに通わない、といった様々な要素から、国内の航空会社には外国の航空会社と競争する能力がまだ備わっていない」と指摘する。
現在、フェデックス社の中国でのサービス網は220都市をカバーしており、今後4年ないし5年以内に新規に100都市増やす計画だ。一方、UPSは深?や青島、アモイ、東莞、杭州、天津、石家荘、成都など20都市に連絡事務所を設立した。ティー・エヌ・ティー(TNT)は2010年までに支店を現在の25社から100社に増設し、1000都市に物流や速達、宅急便サービスを提供するほか、従業員を3万人に増員し、倉庫を325万平方メートルまで増設する方針。
世界の速達サービス企業が中国市場で照準を定めているのが、中国に進出した多国籍企業だ。現在、これら企業の中国での主要業務は多国籍企業への国際速達サービスであり、国内業務はまだ全面的には行っていない。政策的要素のほか、ネットワークと人員が依然としてこれら企業が直面する主要な難題となっている。UPSは昨年12月2日、中国国内の速達市場で利益を共有するため、1億ドルを増資して「中国対外運輸(Sinotrans)から合弁企業の支配権を握った。
中国の速達市場は巨大だが、世界の速達サービス企業が自社の強みを持つには、個性ある競争を行うことが必要だ。DHLは中国国内での郵便物の配達が認められた外資企業として、国内の配達業務の発展に力を入れているが、市場での37%のシェアを一気に超えるのは難しい。同社は中国郵政と長期的な協力を進めているため、近い将来に中国郵政と合弁企業を設立することもあり得る。UPSはその完備された業務構造を武器に、物流や供応業務の強化を進めているところだ。
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