2005 No.28
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中国の砂漠化対策

殷普民

中国は世界でも砂漠化の進行が最も深刻な国の一つであり、砂漠化した面積は国土総面積の27.9%を占める約267万4000平方キロに達している。これはフランスの面積の4.8倍に相当する。  

国連は砂漠化に対する人々の認識と警戒心を高めようと、1994年に毎年6月17日を「世界砂漠化・干ばつ対処の日」と定め、1995年から実施してきた。それにもかかわらず、人類が直面する砂漠化問題は依然深刻化しつつある。

2月23日に開かれた国務院第81回常務会議は「全国砂漠化防止計画(2005〜2010年)」(以下「計画」)を審議、可決した。この計画によると、2010年までに、砂漠化した1300万ヘクタールの土地を整備し、372万ヘクタールの土地に対し封鎖・植林による保護措置を講じるとともに、大量の砂漠した土地を立ち入り禁止の保護区域に指定して、土地の砂漠化傾向を効果的に食い止め、生態環境の改善に取り組むとしている。国家林業局の祝列克副局長は「『計画』は社会主義の調和の取れた社会を構築するための重要な措置の一つであり、砂漠化問題を解決しようとする中国の決意を示すものである」と強調した。

現在、中国では乾燥、半乾燥、低湿潤地域の79.1%(世界の平均値は69%)が砂に侵食されている。砂漠化した土地は主に北部の18の省・自治区・直轄市に及んでいる。推計によると、全国の3分の1の人々は砂漠化の脅威を受けており、直接的な経済損失は65億ドルに達している。砂漠化はまた電信施設や水源地保護プロジェクト、鉱業基地、国防設備などに深刻な破壊をもたらしているほか、工業の発展を脅かし、都市部の環境にも大きな被害を与えている。土地の荒廃化は農村地区の貧困を増幅させ、後進県の6分の1と貧困農民の4分の1がその影響を受けており、これらの地区にとって緊急に解決すべき問題はほかでもなく、貧困問題だ。

土地荒廃化問題の専門家で、中国科学院寒冷地区・干ばつ地区環境・工程研究所の王涛所長は「研究で明らかなように、中国の砂漠化は徐々に加速度的に拡大する傾向にある。2000年までに、北部地区では砂漠化は毎年3600平方キロのスピードで拡大し、すでに38万平方キロに達しており、毎年、中規模の県が一つ失われているのに等しく、国の生態安全が脅かされている」と指摘する。

国家林業局によると、今後10年間に砂漠化は年間2460平方キロのスピードで進行するという。

内蒙古自治区は深刻な砂漠化の脅威にさらされている。同自治区のレイ・オルドニ副主席は「土地の砂漠化は自治区が直面している最も深刻な生態環境問題だ。すでに砂漠化し、また潜在的に砂漠化する土地は自治区総面積の35.57%を占める4200万ヘクタールに達している」と説明する。

砂漠化がことのほか深刻なアラシャン盟では、砂漠化した面積は全体の82.9%を占める22万3900平方キロと、年間1000平方キロのスピードで砂漠化が進んでおり、全域で植生の地表保護機能がほとんど失われてしまった。

アラシャン盟はまた中国最大の砂嵐の発生地でもある。資料によると、新中国成立までの2154年間は、砂嵐の発生は30年間に1回だったが、1950年から1990年には平均して2年間に1回となり、1991年から1999年には毎年5、6回も発生するようになった。うち1993〜1995年と1998年には特大の砂嵐が発生し、2000年は20回、2001年は27回も発生している。

以下の図表から中国の直面している砂漠化問題の深刻さがわかるだろう

国家気象局の予測によると、2000年から2009年までの間に砂嵐は100回発生するという。

努力と成果

中国政府は1950年代から国民を動員して木や草を植えることで砂漠化に対処してきた。また1978年以降、一連の生態環境保全措置と砂漠化防止措置を講じ、100件を超す低コストのモデルと技術を普及させてきた。これによって、一部地区では生態環境が改善され、木や草、水資源が豊富になり、穀物と家畜が増加するなど、かなりの成果を上げた。

中国は環境保全に関する行政法律と法規を約20件制定・公布し、環境保全法など国が制定した法律と、中央と地方政府が共同で制定した法律・法規からなるシステムが形成された。2001年8月31日に可決され、2002年1月1日に施行された『中華人民共和国砂漠化防止整備法』は、中国はむろん世界で最初の砂漠化防止に関する法律である。現在、中国政府はこれをさらに充実させるため、関連する条文と条例を策定中だ。

法律の規定に基づき、国家林業局が国務院の指導の下で全国の砂漠化防止事業に責任を担っている。同時に、国務院所属の林業、農業、水利、国土・環境保全部門が、それぞれの職責に基づいて協力し、砂漠化問題に対処している。

砂漠化対処は国の経済社会発展計画に盛り込まれている。中国政府は「第21号アジェンダ」や「環境保全第21号アジェンダ」「第21号アジェンダの森林行動計画」「国連砂漠化対処条約の実施に関する国家行動計画」「生態環境改善計画」など一連の重要な文書を公布した。経済復興と環境保全は共同歩で計画し、共同歩で実施し、共同歩で発展させるという「3共同歩」という形で重点的に進められている。

中国は1995年6月17日、最初の「世界砂漠化・干ばつ対処の日」から北京を始めとする全国の主要都市で、国民の砂漠化対処への認識を高めるためのPRを大々的に展開し、著しい成果を上げた。環境監視総合ステーションのデータで明かなように、今年1月から4月18日までに発生した砂嵐は6回と、ここ6年間の平均値より明らかに低く、昨年同期より1回減り、しかも強さと範囲も昨年を下回った。

北京市林業局の統計によると、ここ5年間に、全市で砂漠化した土地は頤和園の面積5つ分に相当する1613ヘクタールも減少した。関係責任者は「砂嵐発生源整備プロジェクトへの北京市の総投資額は今年、2億3413万元に達するだろう。今後8〜10年かけて市の砂漠化問題を徹底的に解決していくつもりだ」と話している。

内蒙古自治区でも、植生カバー率が大幅に上昇し、重点整備区域の生態状況は目に見えて改善してきている。現在までに、荒廃化した土地の整備面積は13万平方キロに達し、森林カバー率は6年前の14.82%から17.5%に増え、6万6700平方キロに及ぶ農地と草原、牧場が植林網の保護を受け、風砂に見舞われ、または土砂が流出した15万平方キロの土地がほぼ整備された。

衛星観測による荒廃化類型調査によると、寧夏回族自治区では、20余万ヘクタールの荒廃化した土地で植生カバー率は2004年までに50%に達するなど、土地改良の進捗率は30%を超えており、二つの指標はともに国の基準に達している。

中国は現在、世界最大の風砂科学観測基地を寧夏に建設中だ。敷地面積は2平方キロメートル、三つの観測区と二つの実験区が設置される。観測区は主に風砂や砂嵐の動態を監視するとともに、風砂地域の地形などの動力科学を研究し、実験区は主に砂漠化防止プロジェクトと風砂による環境破壊などの実験に当たる。

中国科学院砂漠・荒廃化重点実験室の董志宝副主任は「現在、基地では科学実験設備の据え付けが行われており、年末までには使用に入ると見られる」と説明している。

科学の応用

中国科学院アカデミー会員の魏江春氏は「これまで関係機関と国民は造林と草栽培を砂漠改造の重点方法とし、一定の成果を上げてきた。だが、この方法はすべての条件に適するものではない」と指摘する。

魏氏は、これは砂漠化に対処する上での誤った認識だとの考えを示した上で、「干ばつという条件の下ではほとんどの植物は生存できず、これも造林プロジェクトの失敗を招いた原因だ」と指摘している。

一部の科学者は最近、微生物で形成された生物結皮(土壌微生物や藻類、地衣、コケ植物などの胞子植物と土壌で形成された、地表に覆うもの)が砂を粘着することを発見し、これを「生物のじゅうたん」と名づけた。

「この種の『生物のじゅうたん』は荒廃化した地区にコストは低いが効果が顕著な砂漠化防止のための新しい方法が切り開かれた」と、中国科学院新疆生態・地理研究所の張元明博士は強調する。

張博士の研究によると、「生物のじゅうたん」の形成によって、土壌の表面は砂地とは明らかな違いを見せるようになった。地下の菌糸体と仮根が砂を粘着するため、風や水による干ばつ地域の地表への侵食を効果的に減少できる。種類によっては、大気中の窒素を固定させる働きがあり、土壌の物理・化学的性質を改善し、土壌の有機物質の含有量を増加させるなど、植物の定着に利するものもあるという。また「生物のじゅうたん」は極度の干ばつ、高温(最高で70度)、高pH値の環境でも生存できるため、砂漠化対処のコストを大幅に低下させるとともに、生態環境を効果的に改善し、流砂を固定させる新しい方法になる。

『生物のじゅうたん』は人工培養することもできる。これを普及させれば、中国の砂漠化問題はいつの日か解決されるだろう」と魏氏は期待を寄せる。

現在、中国科学院生物局は「生物のじゅうたん」による砂漠化対処プロジェクトの実施を計画中であり、関係者もこの方法は主要かつ最も効果のある方法となるだろう」と評価している。

国際協力

国連の「砂漠化対処条約」を批准して以来、中国政府は砂漠化対処プロセスを加速するため、国際間の交流と協力を強化し、外資や先進的な技術・モデルを導入してきた。

ドイツや日本、オランダ、韓国などの先進国とそれぞれ二国間協力計画に調印し、これらの国々は中国の砂漠化対処事業で重要な役割を果たしている。ドイツは山西省北部で実施する20件余りの生態森林プロジェクトや寧夏回族自治区の賀蘭山生態森林プロジェクト、河北省の造林プロジェクト、陝西省延安県の造林プロジェクト、内蒙古自治区・赤峰の造林プロジェクト、遼寧省・朝陽の造林プロジェクトなどに資金を提供している。

またここ数年、モンゴルと砂漠化対処協力を強化してきた。ウランバヤル・バルスボルド自然環境相は、「両国は砂漠化対処の面で協力を強化すべきである。両国には4600キロにおよぶ境界線があり、境界の両側には砂地が多く、両国ともに砂嵐の被害を受けて、連合して砂嵐を防止する必要がある」と強調する。

近隣である日本と韓国も砂漠化対処の面で中国との協力を非常に重視している。北京「フォーチュン世界フォーラム」は5月18日午前、「経済発展と環境保全」をテーマにシンポジウムを開催した。この中で日本の小池百合子環境大臣は、「日本政府は中国の砂漠化問題の解決の支援に努めているところである。中国の砂漠化問題の解決は世界の環境改善にもプラスとなる。2003年の日本政府の開発援助資金は90億ドルに達し、環境保全には3分の1を占める33億ドルが充てられた。日本政府は中国に大量の資金を供与し、対中財政援助の69%を占めているが、これは日中両国がともに環境問題を重視していることを示すものだ」と強調した。

地方政府も関係諸国と協力プロジェクトに調印している。科学技術分野では、イスラエルと砂漠化総合対処技術研究・開発プロジェクト、ドイツと青海・チベット高原風食研究プロジェクト、欧州連合(EU)と気候変動による農作物の生態システムと干ばつ地区の水資源への影響に関する研究プロジェクト、日本とはコルチン砂漠陸地での砂漠化対処措置と評価に関する研究プロジェクトや、長江水源地の砂漠化アセスメントプロジェクトなどを実施している。

現在、中国科学院は「砂嵐国際研究計画」の策定を呼びかけており、多くの科学者が共同研究に参画し、砂嵐の予知や防止に科学的な根拠を提供する、というのがその趣旨だ。中国人が地学分野で国際的な科学研究計画の発起人になるのはこれが初めてだが、砂漠化問題はいつの日か必ず解決されると専門家たちは確信している。