2005 No.29
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外国ブランドの信頼危機

多国籍企業にとって、中国市場を軽視する姿勢を改め、危機が起こった後に、消費者に積極的に対応し、誠意をもって問題の処理に当たることが信用を保つ上で肝要だ。

蘭辛珍

ネスレが製造した粉ミルクに含まれるヨードの量が国家基準を超えていたことが工商部門の検査で明らかになったため、息子にネスレ製乳幼児用粉ミルクを1カ月近く飲ませてきた北京市豊台区に住む呉玉良さんは気がきではない。

昨年の悪質粉ミルク事件(ある国産粉ミルクに品質上の問題があり、飲んだ乳幼児が栄養不良に陥り、頭の肥大化などを引き起こした)が起こるまで、呉さんはずっと息子に「三鹿」印の粉ミルクを飲ませてきた。この事件ですべての国産粉ミルクが信用できなくなったため、ネスレ製に変えた。結局、「三鹿」には品質上の問題は起きず、信頼していた外国ブランドに問題が生じたことになった。

「今から見れば、外国のブランドも信じてはいけなかった」と呉さんは言う。

ネスレ製粉ミルクだけでなく、ここ2年間に品質問題が続出して、外国ブランドはイメージダウンし、信用は危機的状態に落ちている。

最も衝撃的な事件と言えば、まず2004年に起こったデュポン社の「テフロン調理器具」事件だ。それに継ぐのが米P&G社のSK-U化粧品に腐蝕性物質が含まれている疑いが持たれ、今年3月に消費者が提訴した。

米国のハインツやケンタッキー・フライドチキンなどの商品からも「スーダンレッド1」という発ガン性物質が検出されたため、販売に影響が出ている。その後、米ジョンソン・エンド・ジョンソンや英ユニリバーのリプトン、米コルゲード、独ハーゲン・ダッツなどに関しても不良商品の報道が新聞に掲載されてきた。

中国の消費者は外国ブランドは厳格な生産基準や優れた品質を備えているものとして信頼してきたが、欠陥商品の続出によって、外国ブランドに対する信頼は損なわれようとしている。

不良商品の発覚後、外国ブランドの販売量はいずれも大幅に低下し、P&G社の商品販売量はSK-Uの影響を受けて、1カ月間に30%も減少。ネスレ社の粉ミルク問題もコーヒー、チョコレートなど他商品にも影響が及んでいる。

中国人民大学社会学部の毛寿竜教授は「ある商品の悪影響がほかの商品に飛び火するというのは、消費者が外国ブランドを信用していないことを示唆しており、外国ブランドは信用の維持を重視しなければ、消費者に見放されることになるだろう」と指摘。

さらに「外国ブランドにとって、最も重要なのは、消費者の気持ちを引き付けることで信用を保つことだ」と強調する。

5年前は外国ブランドに対するイメージは今よりずっと良好だった。中国社会科学院が2000年に行った企業の人気度調査では、外資系企業の人気は国内企業をはるかに上回っていた。だが、2004年に行われた2回目の調査では、有名外資系企業の人気指数は13.09、それに対し国内企業は12.47と、非常に接近し、ある業種では外資企業より高い国内企業すらあった。外国ブランドに対する消費者の信用を低下させた原因は何か、商品の品質によるだけなのか。

「品質上の問題は単に不信感を引き起こした誘因にすぎず、ブランドメーカーが危機に対応する際の消費者を軽視した姿勢が重要な原因だ」と毛教授は見ている。

呉さんも軽視された経験がある。報道でネスレ製粉ミルクの問題を知った後、購入した店に返品を求めたが、断られた。それだけではない。発覚後、2週間たってもネスレ社は問題商品について消費者への謝罪を断り、商品を売り続けていた。後に、世論の厳しい批判を受けて販売を止め、返品に同意せざるを得なかった。

着色剤で影響を受けたケンタッキーも当初は「スーダンレッド1」が含まれていることを認めず、やはり世論に屈して事実は認めたものの、あたかも自社も被害者のように責任を原料メーカーに転嫁させた。

これらの企業は自国またはその他の先進国では、このように対応していない。即時に問題商品について詳細な情報を発表し、誠意を込めて謝罪し、欠陥商品を撤去するとともに、すでに販売した商品を回収したり、返品を受け入れて消費者に賠償したりするのが普通だ。

「問題発覚後、消費者を愚弄する行為は消費者を最も嫌悪させることであり、当該ブランドに対する消費者の反感をあおるだけだ。信用維持に最も重要なのは、危機に対応するサービスとアフターサービスを提供することであり、処理に当たっては、消費者に問題を積極的に解決するという誠意を見せることであり、強圧的な態度に出てはいけない」と毛教授は指摘している。

中国は今国際ブランドが競い合う舞台となっている。あるブランドにいったん問題が生じれば、その他の同類商品が直ちに取って代わることになり、シェアを奪い返すのは非常に困難だ。より重要なのは、中国の一部ブランドがすでに外国ブランドと優劣を競う能力を持つまでになっていることである。

毛教授は「中国市場は徐々に健全化に向けて発展しつつあり、消費者のサービスに対する要請も強まっている。今日の中国で消費者を軽視するようなことをすれば、自社のブランドを葬ることになる」と強調する。

外資系企業は中国での業界基準やサービス水準の向上に努めるべきだ。この点で、ヨーロッパ諸国はアメリカや日本などより向上しているため、当然中国での人気は高い。

事件の解決後、一部の外資系企業は救済措置を講じた。ケンタッキーは「2005エンターテイメント活動」を展開し、人気の高いスポーツ選手や娯楽業界のスターを活用して若い消費者の呼び戻しに懸命だ。P&Gは消費者に謝罪して以降、問題の商品の回収や消費者の補償に乗り出している。

資料:2005年の外国ブランドの不良商品

米P&GのSK-U化粧品問題

江西省のある女性消費者は「28日間継続使用すれば、しわは47%ほど明らかに減少する」という広告宣伝を信じて商品を買ったが、使用後に皮膚が焼けるような痛みを感じた。また、同商品には成分表示の不明や、腐蝕性物質の苛性ソーダ、テフロンが含まれている疑いがある」などの問題を理由に3月7日、P&Gを提訴した。地元の工商管理部門は即刻調査に乗り出し、一部商品を押収。これによって、SK-U化粧品事件は全国的に広がった。

P&Gは事件を当事者の「悪意によるもの」と決め付けるとともに、「全化粧品は国の検査に合格し、日本や米国など国際的に幅広く認められている」と書面で強く主張した。だが、3月25日までに、PRに不適当な表現あったことを認め、罰則を受けると態度を軟化させた。4月11日に20万元の罰金を納めたうえ、広範な消費者に謝罪した。訴訟の判決はまだ出ていないが、SK-Uの販売量は一部地区で3割近くも低下している。

クラフトのビスケットにGM成分含有事件

米最大手食品メーカー、クラフト・フーズ(KRAFT FOODS)は国際環境保護団体グリーンピースから、中国で販売したビスケットのリッツサンドに遺伝子組換成分(GM)が含まれていると指摘された。

クラフトは欧州市場に対し非GM原料の採用を公約しているが、中国市場ではそうしていなかったため、消費者の権利を侵害するとされた。問題発生後、クラフトは中国で生産、販売した全商品は食品安全・衛生法に合致すると主張したが、一部のスーパーは主体的にリッツサンドを撤去した。

米ジョンソン・エンド・ジョンソンの問題商品

インド・マハラシュトラ州の食品・薬物管理部門は、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの乳幼児用オイル、クリーム、シャンプに皮膚を傷つける液体パラフィン油が含まれている、との情報を公開した。中国衛生部は3月23日、商品の安全性について調査を始め、成都市消費者協会はこの商品を使用しないよう勧告を出した。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは3月22日、こうした指摘を否定する声明を発表し、同商品は中国の業界基準に合致し、相応の検査に合格した。中国では200回以上にわたり安全試験を行っており、乳幼児にやさしく安全であることが確認された」と釈明。衛生部は26日、「液体パラフィン油は使用が禁止、使用が制限された物質ではなく、同社は違法行為をしていない。科学的研究でも液体パラフィンそのものの発ガン性は報告されていない」、との通達を出した。それにもかかわらず、乳幼児用商品の販売量は低下し続けている。

リプトン茶・フッ素の基準超過疑惑

3月22日、米「ザ・グローバル・タイムズ」が、リプトン社製のインスタントティーにフッ素化合物(過量飲用すれば、骨のフッ素中毒を引き起こす)が基準以上に含まれていたと報道したことで、同商品の販売量は低下した。

これに対し、ユニリバー(中国)は、「リプトンのインスタントティーは米食品医薬品局(FDA)の関係基準を厳格に実行しており、基準を上回ることなどは不可能だ」との声明を出すと同時に、フッ素中毒研究の科学性に疑問を投げかけた。同社は3月25日商品のサンプルを中国農業部の茶の葉品質監督検査センターに送付し、農業部は同29日、リプトンのシリーズ製品のフッ素含有量は国の基準に合致している、との検査結果を公表した。

フェンビド・心臓に有害の恐れ

米FDAは4月7日、非ステロイド系抗炎症剤はいずれも心臓に血管を害する恐れがあるとの警告を出した。中国市場では、非処方薬剤のフェンビド(Fenbid、中米天津史克製薬株式会社――SK&F製)がこれに該当する。国家食品薬品監督管理局は非ステロイド系抗炎症剤の検査を開始することを明らかにした。当日、SK&Fは緊急声明を発表し、「同製品は中国で15年間にわたって臨床で使用されてきており、中国国家食品薬品監督管理局の管理規定に合致する。消費者は使用説明書に従って服用すれば、過度に心配する必要はない」と強調。国家食品薬品監督管理局も4月13日、フェンビドは今のところ安心して服用できるとの考えを示している。