2005 No.29
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少人口民族の発展支援を強化

――今後5年前後の時間をかけ、人口10万以下の少人口民族(約63万人)が発展する中で直面している問題を着実に解決し、経済・社会の発展レベルをほぼ当地の中等または中等以上にまで引き上げていく。

唐仁

「現段階で、一部の人口の少ない民族は、生産・生活条件で遅れをとっている」。国家民族事務委員会経済発展司の楽長虹副司長はこう率直に語る。「多くの地区で道路が整備されていなかったり、かなりの数の集落に電気が通じていなかったり、小学校や衛生施設、安全な飲料水などがない地区もある。5分の1の住民は衣食の問題がまだ解決されておらず、一部の少人口民族は、民族全体が貧困状態に陥っている」

中国は統一された多民族国家であり、漢族以外に55の少数民族がいる。うち22民族が人口10万以下で(最少はロッバ民族でわずか2900人)、総人口は63万人と、少数民族全体の0.4%に過ぎない。こうした民族は「少人口民族」と呼ばれ、主に内蒙古や黒竜江、福建、広西チワン族、貴州、雲南、チベット、甘粛、青海、新疆ウイグルなど10省・自治区に暮らしているが、大半が西部地区や辺境の山間部、国境地帯に集中して居住している。同地区のその他の少数民族に比べると、生活水準はかなり低い。

政府は少数民族地区が速やかに現代社会に溶け込めるよう、半世紀以上にわたり、特別な政策支援や人・物・財政面からの多角的支援、人材の大規模な養成など様々な措置を講じて援助してきた。その結果、農耕と狩猟・遊牧の土地に現代的な商業・農業経済が立ち上がった。70年代末期、改革開放政策を実施して以降、少人口民族は急速な発展を遂げ、生活状況も大幅に改善された。ただ、歴史的に残された数々の問題、劣悪な自然条件、辺境の地、遅れた生産・生活条件、低い社会の成熟度、多年にわたるインフラ整備資金不足といったことが原因で現在、こうした少人口民族の経済、社会発展は全体的に非常に遅れて折り、貧困問題もかなり深刻だ。こうした状況の中、昨年上海で開催された「世界貧困支援会議」で政府は世界に向け、22の少人口民族の支援を強化し、先ず同地区での貧困削減目標を実現することを毅然たる姿勢で確約。5月18日、温家宝総理が主宰する国務院常務会議は、「人口の少ない民族の発展を支援する計画(2005〜2010年)」について討議・採択した。5月27日には中央民族工作会議が召集され、「今後数年の民族事業を指導する重大な方針と政策」と「民族区域自治法の貫徹に関する国務院の若干の規定」を制定すると同時に、新「計画」の貫徹に関し具体的事項を提起した。

この原則的な「計画」は、国家民族事務委員会が主導し、国家発展・改革委員会や財政部、国務院貧困支援弁公室、中国人民銀行が共同で制定し、実施するもので、実施項目の監督・検査は、国家民族事務委員会が責任を負うとしている。

楽長虹副司長は「少数民族、とくに少人口民族を発展させるのは難しい問題だが、この計画は、22の民族を急速に発展させる上で重要かつ推進的な役割を果たすだろ。中国の各民族は一律平等、という民族政策の一貫性を明確に示したものであり、社会の弱者に対して特別かつ具体化に示された援助でもある。この措置は社会が完備と協調に向けて歩むことを追求する行動の一環であり、大きな影響を及ぼすのは間違いない」と強調する。

少人口民族の発展支援事業はこの数年来、一定の成果を上げてきた。第1は、国家民族事務委員会が率先して各部署との協調を図り、少人口民族地区の基本状況を把握したことだ。財政部の大々的な支援を受け、少数民族発展関連資金の中から少人口民族への補助金が予算として計上され、2002〜2004年の3年間に1億1700万元が交付された。第2は、国務院が資金を重点的に配分するなど、大々的な支援に乗り出したことだ。2002年以降、中央から地方への交付金を見ると、少人口民族が居住する省・自治区向けの交付金が増額され、それに合わせて一般会計予算も増加されている。ラジオ・テレビ網の整備、老朽化した小中学校校舎の改修・新設、人・家畜用飲料水の確保、電気網整備などのプロジェクトの実施に当たり、少人口民族が暮らす県や郷、村を重点対象にすることに重点が置かれてきた。第3は、省・自治区が各民族の実情を考慮した計画を実施したことだ。実際に事業に着手するに当たっては、「一民族、一政策」や「一民族、多政策」などを策定した上で、少人口民族の発展支援を当地の経済社会発展計画や年度計画に盛り込んで実施してきた。

「道路がアスファルトになって、省都の西寧まで2時間で行けるようになった」。青海省循化に住むサラ族の韓尚文さんは満足そうに語った。観光やビジネスで訪れる人が増えたという。サラ族は人口約10万。

黒竜江省政府はこの数年来、人口4640人余りのホジェン族のために、道路や橋の建設、護岸工事、居住区の整備、電話の有線テレビの開通に4000万元を投入。ホジェン族の生産、生産条件は根本的に改善された。

新疆ウイグル自治区にはタジク、ウズベク、オロス、タタール族の4つの少人口民族が生活しており、総人口は約6万5000人。2002年に4民族の居住地で民族発展計画を実施したほか、カシュガルやホーテンなど、少人口民族が集中する7カ所でも81件のプロジェクトを実施している。資金は総額2億3000万元。自治区政府は国務院の通達に基づき現在、今後5年間の少人口民族発展支援計画を策定中だ。

新「計画」は、ここ数年来の成果を検証した上で、さらに様々な措置を講じ、少人口民族の発展を加速させている。資金投入や信用融資資金の支援を拡大する、沿海部の発達地区・大中都市・大企業を組織して協調性のある援助を行う、経済構造の調整に着手する、資源の強みを活用して特色ある産業を発展させる、住民の収入増を促進する、人材の育成にさらに力を尽くす、科学普及事業を強化する、住民の科学・文化的資質を高めるなど。

「計画」には具体的な細則も設けられている。例えば、草葺き家屋(老朽家屋)をレンガまたはレンガ・木造家屋に建て替える、自然条件が非常に劣悪で、生活に適さない場合、本人の意思で移転させる、移転できない、または移転を望まない場合は、最低生活保障制度を確立するなどだ。

楽長虹副司長は「5年前後の時間をかけ、特別政策に基づく政策を実施すると共に、中央と地方が資金を集中的に投入することで、22の少人口民族の経済、社会、文化、教育、医療・衛生など、発展していく中で存在している問題を着実に解決すると共に、民族の経済・社会発展を支援し、ほぼ当地の中等または中等以上のレベルにまで発展させていく」と強調した。

中央民族大学民族学・社会学学院々長の楊聖敏教授は「少人口民族の発展について言えば、現在も楽観視できないし、非常に難しい」と指摘する。

「?倫春」(オロチョン)、この言葉には2つの意味がある。1つは「山間部の人びと」、いま1つは「鹿を馴らす人びと」だ。2つの意味はいずれもオロチョン族の生存状態と生活習慣を概括している。1949年の新中国建国前、オロチョン族は代々にわたりシラカバの密林を遊牧するなど、原始的な社会公社制を営んでいた。その後、政府の支援の下で狩猟生活に止め、保障のなかった遊牧生活に別れを告げた。レンガ製の家や高層アパートに住みようになり、農業を始めてはみたものの、耕作を好まず、慣れない人もいた。

「国が小学生や中学生に対し実施してきた優遇政策で、退学する子どもは非常に少なくなった。でも、中学を卒業すると、家でぶらぶらするようになり、大学に受かる子は小数中の小数。それは教育の質が悪いことが原因だ。進学にかかる費用も、貧しい家庭にとって大きな負担となっている」。劉曉春女史は嘆く。彼女は黒竜江省愛揮市の新生?倫春郷の生まれ。オロチョン族で初めて博士号を取得した女性だ。「郷にはお金を稼ぐ道はない。若者の間では酒に溺れている者が多い」

ある専門家は「新生?倫春郷でインフラ整備が進むのは嬉しいことだが、文化的なものが失われるのは残念であり、心配でもある。若者は時代の流行を追うだけで、伝統工芸などは学ぼうともしない。20歳以下では、オロチョン語はほとんど話せない。聖職者も相次いで逝去しるが、後継者になろうとする若者は何人もいない」と悲嘆する。

「政府が先ず考慮するのは、インフラ整備だ。だが同時に、それに応じて文化の保持にも注意を払うことが肝要だ」と、楽長虹副司長。

北京大学社会学・人類学研究所の馬戎所長は「少人口民族は、人口が少ない、地方政府内で幹部職を務める者が少ないがゆえに、たとえ民族の利益を反映させようとしても、その声は弱くなる」と指摘する。「一部の多民族自治区では、人口の多い民族の意見が重視されやすくなっている」。雲南省の怒江リス族自治州。州の末端組織に勤めるあるリス族幹部は匿名を前提に、「われわれの州では、最も多い民族はリス族だが、『人口の少ない民族の発展を支援する計画』など『中央政府の精神』の通達を受け、州政府は、一部のクラスの行政事業体に対し、全人口が1万に満たないトールン族やヌー族などを一定の割合で雇用することを義務づけるなど、公務員の採用で優先する規定を設けている」と語っている。