2005 No.30
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東北振興策、ほぼ成果上がる

――東北地方の旧工業基地を振興する政策が実施されて1年。国有企業の比重が下降する一方で、非国有経済である民間企業の比重は絶えず上昇し続けており、東北経済圏のモデルが徐々に形成されつつある。

蘭辛珍

黒竜江省の樺林ゴム工場。販売担当者の喜びはひとしおだ。今年上半期の財務諸表で、売上高が前年に比べ4倍以上も増加し、利益が5億元に達したからだ。

同工場は大型国有企業で、昨年初めまで赤字が続いていた。

「黒字に転換できたのは、政府の振興策のおかげ」。ある従業員はこう話す。

旧工業基地を活性化させる振興政策は、2004年から始まった東北地方の経済を発展させるための基本国策だ。

中国の地図はオンドリを想像させる。その嘴の部分にあたる東北部に位置するのが、黒竜江と吉林、遼寧の3省だ。1950年代以降、3省は重工業を発展させる重要拠点となり、国内の主要な工業基地の1つ、経済を発展させる主要な地区の1つとなった。東北人の間には、この時代の発展を振り返り、プライドを感じる人が多い。

東北地方は90年代に入ると、資源が枯渇し始め、改革開放政策が浸透するに伴い困難な状況に陥っていった。一方、東部や東南部沿海部の経済は飛躍的に発展していく。黒竜江省では大多数の国有企業が生産停止や経営不振に陥り、破産に追い込まれた企業もあったが、国有企業であるため、政府は大量の資金を投入して救済せざるを得なかった。だが1994年以降、政府が国有企業改革に乗り出したことで、多数の従業員がレイオフされた。なかには夫婦ともに解雇され、生活のメドが立たなくなったケースも多い。東部や東南部の新興工業力に比較して「古く」なり、東北地方は「旧工業基地」と呼ばれるようになった。

こうした状況に直面した中央政府は2002年、旧工業基地を振興させる計画を打ち出し、翌年から振興に関する調査・研究、政策決定などの作業を全面的に開始。2004年は東北振興元年となった。

国務院東北振興弁公室の宋暁梧副主任は「振興戦略に着手した後、中央政府は東北地方に対し一連の優遇政策を実施した。第1は、黒竜江と吉林の2省で農業税徴収免除政策を全面的に実施すると共に、穀物生産補助金を交付する範囲と規模を拡大したことだ。2004年の東北3省農村部の税・費用改革に伴う交付金、穀物への直接補助金、優良品種栽培への補助金などは合計53億1000万元に上った。第2は、遼寧省に次いで黒竜江省、吉林省の都市部で社会保障システムの整備を試験的に始めたことだ。医療保険の個人負担への補助金は計約18億元、レイオフ解除のための補助金は55億元近くに達した。第3は、国有企業改革を支援するため、3省の約60社の破産企業に補助金を交付したことだ。その金額は全国のこの種の総額の23.3%を占める164億元に上る。第4は、2004年7月1日から、3省の8業種を対象に増値税の調整を試験的に始めたことだ。条件の整った一部鉱山や油田では資源税の課税基準を引き下げたほか、法人税でも優遇政策を実施した。第5は、国債による資金を旧工業基地に重点に振り向けたことだ。2003年に先ず100件の工業構造調整・改造プロジェクトを、2004年には更に197件認可した」と説明する。

更に宋副主任は「現在の発展状況を見ると、振興策は良好なスタートを切ったと言える。2004年の3省の国内総生産(GDP)は前年比で12.3%増え、伸び幅は全国平均を2.8ポイント上回った。一定規模以上の工業企業の生産高は4869億6000万元と、同19.7%増加するなど、2004年は過去に比べ成長スピードが最速の年となった」と強調。

旧工業基地で振興政策が実施されて1年来、国有企業、非国有企業ともに急速に発展しており、同時に東北アジア経済圏のモデルが徐々に3省を中核に形成されつつある。

改革に成功した国有企業

黒竜江省の張左己省長は「旧工業基地の振興では、国有企業の体制改革が最も重要だ」と強調する。

東北3省では国有経済が占める比重が大きい。2002年末現在、遼寧省の工業企業の総生産高では一定規模以上の企業が62%を占め、全国平均を20ポイント上回る。だが、黒竜江省と吉林省では約80%も占めている。

3省の国有経済の主体をなすのは、大多数が計画経済時代に国が投資した重工業だ。「小社会」というのが、国有企業の大きな特徴だった。多くが病院や小学校を併設し、大企業の場合には中学や高等学校、銀行、野菜市場なども設けられていた。こうした付属機能に要する費用は企業が支払い、これが大きな負担になっていたことは間違いない。

張省長は「黒竜江省は振興政策の実施に当たり、財産権制度を主体にした国有企業体制の改革を戦略目標に定めた」と強調。同省の国有企業数は数万社に上るが、2004年に省傘下の企業75社を対象に体制改革に乗り出した。樺林ゴム工場もその1つだ。

同工場は1938年の創立。1999年に上場企業となった。50年代から80年代にかけて、同社が製造したタイヤは業界トップの座を占めていた。

長期にわたり生産ラインを更新しなかったため、生産コストは上昇し、従業員1万3000人のうち、余剰人員は5000人にも上った。加えて監獄や学校、病院、派出所など付属施設を抱えていたことから、社会的な負担が重くなって経営は足踏みし始め、2003年上半期に深刻な赤字で生産停止に追い込まれ危機に陥った。同社の株式は連続赤字が原因で、取引所の整理ポストに割り当てられた。

2003年下半期、シンガポールの現地法人である佳通タイヤ(中国)投資有限公司が同社を完全買収した。

佳通は買収後、樺林佳道タイヤ有限公司に改名して改革に着手。従業員の公務員としての身分を廃止し、全ての部署で契約制を実施したほか、学校など付属施設を分離した。張省長によると、黒竜江省では国有企業が分離した学校は327校、教職員は3万6000人に上る。

同公司の2004年売上高は前年比で2倍伸び、納税額は同500万元から5800万元に増加した。王見智総経理は「樺林を起死回生させたのは、体制改革だ」と強調する。黒竜江省が改革を実施した傘下企業の2004年の売上高は16%、利益は89%増加した。

改革で解雇された従業員数は68万に上るが、その80%は既に再就職している。未就職の20%は毎月支給される約200元の失業保険金で生活しており、政府は再就職を支援するため、家政婦やコンピューター、溶接、自動車教習など無料技能訓練班を開設した。

75社の成功をモデルに、黒竜江省は2005年1月から5月にかけて、さらに約1300社の国有企業を対象に体制改革に乗り出している。

非国有経済の急速な発展

2003年、世界最大のビールメーカーである米アンハイザー・ブッシュ(AB)社がハルビンビール公司を買収。黒竜江省の国有企業体制改革は、ハルビン市民に民間資本の実力を見せつける結果となった。改革を実施した75社では、国有持株会社はわずか8社。国が一部株式を所有する企業は25社で、うち14社は世界ベスト500社の企業が資本参加、または持株会社としており、国所有の株式を全て売却した企業は46社を数える。

張省長は「東北3省は民間企業を大々的に発展させる重要性を意識するようになった。そのため旧工業基地の振興に当たり、政府は非国有経済の発展を最優先した」と説明する。

宋副主任によると、3省では2004年に民間企業の投資額が前年に比べ35〜56%も増加した。東北振興策は推進に当たり、多国籍企業や国内の民間資本が6つの形で参与できる仕組みになっている。先ず第1は、買収など財産権の多元化を実現する体制改革への参与。第2は、メーカーの生産拠点シフトの誘致など、産業構造調整への参与。第3は、技術・情報化への参与。第4は、資源消費型都市の発展を継続させる産業と代替産業への参与、第5は、現代的農業や副産品の精密加工発展への参与、第6は、金融や保険、観光、物流など第3次産業発展への参与だ。

東北アジア経済圏の形成

6月19日に閉幕した第16回ハルビン経済貿易商談会は、繁栄する東北アジア経済圏の今後の姿を人々に印象づけた。同商談会にはロシアやベラルーシ、日本、韓国などの代表団が参加。各国との成約高は63億8000万元に上った。

ハルビン大学の黄建中教授は「契約金額は多くはないが、地域協力の効果は契約の効果をはるかに上回る。東北振興によって、3省は東北アジア経済圏の中心となり、韓国や日本、ロシアなども3省に経済発展区を設立できる」と指摘する。

現在、東北アジア地域の域内総生産高は世界の21.6%を占め、東北地方の上記3カ国への輸出額は全国の約25%を占める。黄教授は「東北の振興は既に単に中国自身が求めるものではなく、東北アジア地域全体の経済協力の発展のために求められようになってきた。仮に東北アジアに自由貿易圏が形成されれば、経済規模は大幅に増加し、全ての国にメリットがある」と指摘。

さらに黄教授は「互いの強みで補い合う、というのが東北アジアで経済協力を展開する前提条件だ。各国の経済発展の水準は異なり、経済構造の違いは明白であり、自然条件もそれぞれに特色がある。日韓は巨額の資本蓄積や先進的技術、管理ノウハウはあるが、資源に欠乏している。一方の中国は巨大な市場、廉価で十分な労働力、経済成長の力強さがある。ロシアとモンゴルは、資源は豊富だが、発展に必要な資金に迫られており、しかも労働力が不足している。こうした極めて強い域内の補完性に、経済成長に向けた巨大な潜在力がある」と強調する。

期待される新たな突破口

宋副主任は「東北振興政策に着手してこの1年来、事業は順調に進んではいるものの、解決すべきだが、まだ解決されていない突出した問題が2つある。第1は、東北地方の銀行の不良債権比率が全国平均より15ポイント高く、黒竜江省と吉林省では20ポイント上回っており、問題の解決が難しいことだ。多くの国有企業は人員、構造、不良債権という3つの負担を抱えている。人員問題については、企業が付属施設を分離させることで徐々に解決されてはいるが、不良債権問題は最も難しい。第2は、資源消費型都市の転換だ。これは1都市の各方面に関係しており、総合的な問題でもある」と説明。

その上で宋副主任は「東北の振興は長期的な課題であり、問題は1年や2年で出てきたものではなく、そのため短期間に解決できるものではない。東北を振興するには科学的な発展観をもって指導し、社会や経済の問題、単にGDPの問題ばかりでなく、また数件の大規模プロジェクトに投資するといった問題だけでなく、各方面の事業を円滑に進めると共に、協調性を図ることが肝要だ」と強調した。