2005 No.31
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>> 国際評論

中国は世界のエネルギー供給に
脅威をもたらすか

童莉霞副研究員
(商務部国際貿易経済協力研究所)

近年、中国のエネルギー消費の急増とエネルギーの輸入増が国際的に大きな影響を引き起こしているが、世界貿易機関(WHO)加盟後の中国の工業化の急速な進展と、これに伴うエネルギーと資源の膨大な消費は、中国人すら予想しなかっただけでなく、世界を驚嘆させることになった。

現在、国際社会には、中国のエネルギー需要の増加、とくに石油輸入の激増は、世界各国に脅威をもたらす、といった一面的な世論がある。中国は世界共同の再生不可能な資源を過度に消費し、しかも中国のエネルギー需要増が世界エネルギー市場の価格、とくに石油価格を高騰させているというのだ。われわれは、こうした言い方は客観的でないと考える。

増加には原因がある

過去10年来、中国経済は確かに持続的な高度成長を遂げ、GDP伸び率は平均して9.7%、一次エネルギーの消費増は年平均4.6%に達し、石油の輸入も急増する傾向にある。しかし、中国がエネルギーの消費大国であると同時に、エネルギーの生産大国であることにも注目すべきだ。中国は豊富な石炭資源を擁しており、石油は40%が輸入によるものだが、大部分は依然として国内に依存し、水力発電や核エネルギー発展に向けた潜在力は大きい。中国のエネルギー構成は、3分の2が石炭、3分の1が水力発電であり、主に石油に依存する外国の消費構造とは根本的に異なる。従って、総体的に言えば、中国は依然としてエネルギー自立国であり、世界にとって脅威となるには至っていない。単に石油消費を見ても、2004年は世界第2位だが、輸入量は世界の石油取引の7%を占めるに過ぎず、一方、米国は27%、日本は11%であり、中国の世界石油市場への影響はこの2カ国に比べはるかに小さい。

また、1つの重要な要素が見落とされている。近年の中国のエネルギー急増に関しては、かなりの部分が国際分業体制の調整によるものだということだ。WTOへの加盟に伴い、先進国はエレクトロニクス、交通運輸設備製造、電気・機械、石油化工などの製造業の中国へのシフトを絶えず進めており、うち多くが高エネルギー消費・高汚染型の業種である。2003〜2004年にかけて、大規模な電力・石炭・石油不足が生じたのはかなりの程度、こうした業種が急速に発展してきたからだ。中国は「世界の工場」になりつつあり、中国は世界に製品を提供すると同時に、巨大な代価も払い、資源とエネルギーを大量に消費してきた。中国のエネルギー消費の急増のみに目を向け、中国が産業の国際分業で果たした役割と貢献に目を向けないのは何故なのか。あるデータによると、中国が先進国に毎年提供している廉価な商品によって、200億ドル近くが節約できるという。

国際石油価格は2003年から上昇し続けており、1バレル30ドルから56ドルへと、上昇幅、上昇速度ともに過去最高を更新している。価格高騰は様々な要因によるが、根本的な原因は世界の石油需給構造の不均衡である。80年代中期以降、石油の低価格が長く続いたことから、開発事業者も長年にわたり投資を控えてきたため、石油産出・開発は著しく停滞してしまった。石油の探査や採掘、精製施設が需要の増大速度に追いつかない状態にあり、石油輸出国機構(OPEC)とその他の石油輸出国の産出量はすでに上限に近づきつつある。一方、石油の需要量は絶えず増加する傾向にある。とくに近年、中国やインドなど発展途上国の経済が目覚しい発展を遂げてきたことから、石油需要増は急激に加速している。こうした需給体制の不均衡は、各国間の石油資源の争奪を激化させるばかりか、産油国地帯に戦争や衝突、局地的な紛争を引き起こして市場心理を動揺させ、投機的取引に乗じる機会を与えることにもなる。過去2年間、様々な投機資金が石油先物市場へと流れ込み、米・イラク戦争やナイジェリア石油労働者のスト、ベネズエラの政局不安などに乗じて大規模な投機が起こり、これが絶えず石油価格を高騰させている。

中国の対策:資源開発と省エネ

石油価格の高騰は世界経済の発展に影響を及ぼしているが、なかでも中国は最大の被害者である。国の関連機関の統計によると、2004年の国際石油価格の上昇でわが国のGDPは0.8ポイント下落し、直接的な経済損失は700億元に達した。中国政府はすでに、低水準・高エネルギー消費型産業の過熱した発展は、今後は受け入れることはできず、経済建設を数量の拡大から品質・収益重視の方向へと転換し、エネルギー・資源の消費から節約の方向へと発展させるなど、経済成長方式を早急に転換することが必要だと認識している。温家宝総理は「いくらかゆとりのある社会の全面的な建設と現代化の目標を実現するには、過度に資源やエネルギーを消費する過去の道を歩むことは決して許されない。科学的発展観に即して、新たな工業化の道を着実に歩み出し、節約型の社会を建設しなければならない」と幾度も強調してきた。

中国はすでに省エネをエネルギー事業の優先課題に位置づけており、全国人民代表大会(全人代)は『エネルギー節約法』を改正し、各業界のエネルギー消費基準を明確に規定した。第10期全人代第14回全体会議は2月、『再生可能なエネルギー法』を採択し、エネルギー再生の発展が法的に保障された。それに続き、中国は一連の政策を打ち出してきた。高エネルギー消費プロジェクトの建設を規制し、または停止に乗り出したほか、国家税務総局は鋼材や石炭、非鉄金属など、一部の高エネルギー消費製品に対して、輸出還付税を取り消し、または引き下げるとともに、一部の輸出加工貿易を暫定的に停止した。中国は今後15年間に500億元を投入し、核・太陽・風力、潮汐エネルギーなどを開発していく計画だ。これらは中国共産党トップがエネルギー問題解決を積極的に模索する決意を反映したものである。

実際、中国は省エネと代替エネルギーの開発に向け大きな潜在力を擁している。現在、この種のエネルギー利用率はわずか3.3%と、先進国より10ポイント低く、GDPを生み出すための石油消費量も先進国や世界平均に比べると高い。2002年の対GDP石油消費は米国の2.32倍、ドイツの3.11倍、日本の3.27倍であり、発展途上国に比べても多く、世界平均の1.8倍である。専門家の予測によると、利用率が世界の先進レベルに達した場合、標準炭にして年間3億トンの消費を削減できる。工業製品生産用のエネルギー、原材料コストが生産コストに占める比率が1ポイント低下すれば、約100億元の収益が得られるという。代替エネルギー分野では、石炭から油を製造する技術がすでに一定の成果を上げており、数カ所に生産拠点も建設されたことから今後、利用はさらに進んでいくだろう。アルコール燃料技術も全国の多くの都市で普及しており、アルコールガソリンの生産量は年内に1000万トンに達すると予想される。西部地区は太陽・風力エネルギーが豊かであり、こうした資源を利用して発電し、この種の電力を使用して水中から水素エネルギーを抽出することができれば、水素エネルギーを中核とした産業革命を推進することも可能だ。

今後の発展傾向を見ると、「開発」と「省エネ」「再生」「協力」が中国のエネルギー政策の柱となるだろう。先ごろ開かれた「中国エネルギー高級シンポジウム」で中国石油天然ガス集団(ペトロチャイナ)の幹部は、「今後15年内に西部の新たな地区と東部の海上で石油・天然ガス資源の探査と開発を強化し、引き続き従来の油田の潜在力を掘り起こすことで、2020年に1億8000万〜2億トンの産油量を確保する」との考えを強調した。国家発展・改革委員会の関係機関は、経済発展と生活の質的向上、経済力や国際石油需給の関係など、様々な要素を総合的に考慮した上で、2020年に石油の消費量を4億5000万トン以内に抑制する方針を打ち出している。こうした目標に即して予測すると、わが国の輸入石油への依存度は2010年に50%、2020年には60%に達する。

総じて言えば、今後15年、中国のエネルギー構造は依然として石炭を主体にし、多種なエネルギーを併用する消費システムを維持し、天然ガスや水力発電、核エネルギーの比重はやや上昇するが、石油の比重はほぼ不変か、やや低下していくだろう。われわれは、中国はそう簡単に先進国のエネルギー消費モデルを踏襲し、西側が歩んできた工業化の道を繰り返すことはできない、と考える。われわれは、中国政府は必ず経済発展戦略の機会をしっかりと捉え、自国に適した持続可能な発展の道を歩む、と確信する。

もちろん、エネルギーという難題は一朝一夕に解決できるものではなく、この2年近くの石油消費の増加速度に照らせば、2020年に4億5000万トンの目標を達成するのはやはり非常に難しい。省エネとエネルギー消費増の抑制に関しては、すでに関係法律が公布されてはいるが、それに応じた一連のメカニズムや管理機構はまだ確立されておらず、国の政策に違反し独自に発展させていく傾向が一部地方に見られる。しかし、中国政府が近年講じてきた一連の積極的な行動からは、こうした問題を徐々に解決し、好ましい方向へと転換させていくとの姿勢が見て取れる。