2005 No.31
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于強氏の新作『東京留学の使命』あらすじ

春爛漫のある日、日本語を一緒に学んだ上海出身の田桜桜と林小燕は偶然、浦東国際空港で再会する。二人は日本へ留学するが、その目的は違っていた。

桜桜の父、田海ぱんは中国人と日本人の間に生まれ、その父のために真実を明らかにさせるのが、彼女の日本留学の目的だった。40年代、棚橋道夫は上海の女性、田恵敏と恋に落ち、田海ぱんが生まれた。日本は敗戦し、棚橋は日本に引き揚げるが、将来、上海で妻と息子とともに素晴らしい人生を送りたいと誓った。しかし、その後、音信は途絶える。田恵敏は文革の苦しさに耐え切れずに自殺。田海ぱんが実父に期待を寄せ、探し求めて半世紀余りが過ぎたころ、上村正義という日中友好関係者の支援で棚橋の行方がようやく判明した。棚橋は帰国後、責任を逃れるため棚田信夫を名乗り、富裕家の娘と結婚していた。桜桜が日本に留学したのは、棚橋の行方を探し出し、父のために釈明を求めるためだった。

林小燕は、生まれると間もなく父の曾援朝の不倫が発覚し、母の林麗娜はためらうことなく夫と離婚し、苦労をしながら育て上げられた。母は外国人に嫁がせることで心の安らぎを得ようと、職業高校の同級生だった丁磊磊との間を引き裂き、日本の語学学校で学び、日本人の夫を探すよう迫った。

桜桜は東京の東瀛大学大学院で国際経済を専攻し、法学科院生の中山一郎と偶然知り合う。中山は次第に彼女に引かれていく。彼には幼なじみの雅子というガールフレンドがいたが、桜桜を慕うようになってからは、雅子と距離を置くようになる。彼女が転んで怪我をし、懸命に介抱するなかで留学の目的を知った彼は、真実を明らかにしたいという彼女を助けることを約束し、母方の祖父が米国留学のために用意してくれた預金で訴訟を起こそうと告げる。彼女は感動し、中山に好意を抱くようになった。実は、中山は棚田信夫の娘の息子で、棚田信夫は桜桜が糾弾しようとする祖父だったが、二人はそれを知るよしもなく、桜の木の下で愛を育んでいく……。

上村正義は棚田に手紙をしたため、“熱気球”を放してみようと試みた。手紙の中で、あなたの名前は棚橋道夫ではないのか、かつて中国女性の田恵敏との間に田海ぱんという男の子をもうけたことはないか……と尋ねた。山豊市の市長選に追われていた棚田は、上村からの手紙に「そうした経緯はない」と書きつけ、そのまま送り返した。田海ぱんはそれを知ると非常に憤慨した。華東経済報の曾潔記者は「情のない実父、道義的に許されない」との記事を書き、それが発表されると山豊市の山豊新聞も、「この情のない実父は山豊市にいるかも知れず、しかも経済力のある知名人でもある」との編集者の意見を付して転載した。選挙の競争相手はこの人物が棚田ではないかと疑い、関係資料を調査し、意外にも本人であることが判明したためメディアを通じて公表、大きな波紋を呼んだ。棚田は競争相手の捏造だとするコメントを出し、確かな証拠がなかったことから、波紋は収まった。上村は田海ぱんに何とか証拠を得るよう求めた。

田海ぱんは上海の古い家から引っ越しする際、床下のかめの中から棚橋が田恵敏に愛を告白した手紙と、蘇州の河畔で撮った二人の写真を発見する。田海ぱんはコピーして上村に郵送し、上村が棚田にそのコピーを送ると、棚田は慌てふためき、すぐに上村と会い、田海ぱんが息子であることを認め、家族が日本に定住するための手続きを支援すると承諾した。だが、東京の残留孤児事務局が関係書類の署名を求めると、市長選後にしたいと言って断った。だが市長当選後に署名を求めても、妻が同意しないことを理由に拒絶するなど、優柔不断を通した。

桜桜が中山の愛を受け入れたちょうどその時、大学の同級生でボーイフレンドだった陸雲鵬がカナダから東京に追いかけて来る。東京に父の会社の事務所開設のため父を説得して一年休学したのだが、実は真実を明らかにしたいという彼女を助けたいという思いがあった。桜桜は愛の葛藤に陥っていく……。

彼女は中山家で棚田の古びた写真を目にし、棚田が中山の母方の祖父であることを偶然知る。まさに青天の霹靂で、中山との恋は実らず、中山と祖父が手を合わせて自分に危害を与えるのではないかとすら恐れた。だが、事情を知っても中山は毅然としていた。法律相談に乗ってもらおうと、彼は彼女を連れて指導教官で弁護士の倉田法治を訪ねる。話を聞いて倉田は非常に感動し、無料で弁護を担当することを願い、棚田を訴えた。

法廷での弁論が山場を迎えた時、田海ぱんは団体旅行で東京を訪れて法廷で証言し、DNA鑑定を求めた。棚田は心を鬼にして認めることはしなかったが、裁判所は桜桜勝訴の判決を言い渡す。棚田は田海ぱんに謝罪し、精神的苦痛として4000万円の損害賠償金を支払う。桜桜は父のために真実を明らかにすることができた。棚田は厳しい批判にさらされる中、辞職願を書き終えたところで心筋梗塞を起こし、亡くなった。

小燕は母がせかせるため結局、中山の紹介で知り合った小原一夫と電撃的な結婚をする。だが結婚後、夫婦の仲に不協和音が生じ、日本留学の使命を果たすよう迫り、その果てに、結婚の失敗という苦い経験をさせた母を憎むようになり、深い教訓を味わった。

小燕は昔のボーイフレンド、同級生の丁磊磊と東京で再会する。小燕の母の林麗娜から屈辱を受けた彼は、調理師の勉強に励み、台湾人の経営者に認められて東京の上海料理レストランの支配人となり、東京に留学した姪と結婚していた。再会した小燕と磊磊は心さいなまされた。小燕はレストランでアルバイトをする。二人の思慕の念はますます強まり、離婚後、二人は結ばれた。

中山と雅子は桜桜の訴訟を支援しながら、仲を取り戻していく。桜桜と陸雲鵬は歩いた道は違ってもようやく同じ場所にたどり着き、結婚する。二人は小燕と磊磊とともに東京を離れて上海に戻り、それぞれの事業を発展させ、新生活の帆を高く掲げていく。

桜桜は留学の使命を果たし、父と母とともに亡くなった叔母、曽祖父、曾祖母に報告し、霊を慰めた……。

作品は人々に、戦争が残した陰影と数々の問題は、正しく対処し、適切に処理する必要があり、中日両国人民は世々代々友好的でなければならず、国際結婚は、慎重なうえにも慎重でなければならないと告げている。

本書は23章からなり、字数は約40万字。

于強氏は、北京大学国際政治学部卒、中国作家協会会員。長編小説『風媒花』『翰墨情縁』(日本語版『李海天の書法』)、『異国情未了』(日本語版『夫よ日本の何処に』はいずれも中国と日本で出版されている。