2005 No.31
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米ウォルマート・ストアーズは中米間の経済貿易面での連係で軽視できない紐帯であり、ウォルマートのように緊密な連携が行える企業は他にない。1996年に1号店を開いて以降、国内での小売販売と買い付けは年平均20〜30%のスピードで伸びており、米国の多くの商品がウォルマートを通じて国内で販売され、中国の多くの商品も同社を通じて米国で販売されようになった。

より重要なのは、9年もの間、同社は中国本土の小売業の発展モデルに変革をもたらし、同社の1つひとつの行動、1つひとつの革新が、いずれも多くの小売業者が学ぶモデルとなったことだ。

しかし、ウォルマートは決して神話ではない。同社を冷静に傍観すれば、中国に融け込もうとはしているが、多少の距離を置いていることが分かる。

米ウォルマートを観察する

――売上高が絶えず増加している背後で、ウォルマートが直面しているのはより熾烈な競争とリスクだ。

蘭辛珍

北京ウォルマート・サムズクラブ(会員制の店舗)の駐車場担当者は駐車難で常に頭を悩ませる。とくに週末は深刻だ。同店はマイカーで訪れる人が非常に多い。数百台収容可能な駐車場はあるが、とても間に合わず、満車になれば、近くに臨時の駐車場を容易しなければならない。

商業理論から言えば、同店は地理的に良い場所にあるわけではなく、市街地から遠く離れている。しかし、買い物客は後を絶たない。大多数はマイカーを所有している。

ウォルマートは非繁華街に繁華街を築いた。これは発展途上国にある中国にとって、想像をはるかに超えるものだった。多くの小売業者が同社を“教師”と見なすゆえんだ。

モデル

多くの小売業者は、国内の一部の製造業や百貨小売業の効率は向上したが、その大半はウォルマートの貢献によるものだと考えている。

首都経済貿易大学の王祥富教授は「これは少しも過言ではない」と強調する。数年前、小売業者の間にこんな疑問が生じた。「地理的に不便なのに、買い物に行くのになぜウォルマートを選ぶのか」。調査の結果、商品の品数と数量が多く、必要な生活用品を対象外にした“毎日セール”という販売戦略を展開しているため、北京市で最も安い商品を購入できるのが、消費者を引き付ける主因であることが分かった。

王教授は「毎日セール戦略は低コストを原則にしたものだ。ウォルマートの低コストという概念は2つある。1つは自社の節約。いま1つは製造業者からの直接仕入れと価格の抑え込みだ」と説明する。

会議で使用する資料は、使用済みの紙に印刷したものだ。社外用に限って白紙を使う。マネージャーの事務室は店舗の片隅にあり、しかも施設は極めて普通。紙コップもなく、飲料水は自分で用意する。実際、無形の形で職員にコスト重視の意識を植え付けているのだ。

製造業者に対する価格の抑え込みは、ウォルマートにとって強みのあるところ。販売する商品はいずれもメーカーから直接仕入れており、第2の販売ルートは介さない。メーカーとの契約時には常に、平均出荷価格を下回る低価格を提示している。しかし、メーカー側は自社の商品をウォルマートという世界流通最大手に納入できるため、同意するのが一般的だ。

商品の品質に対する要求も高く、厳格な検査システムがある。工場の検査がその第1歩だ。一般にその他のいかなる認証システムも信用せず、自社の目と大脳のみを信用する。

商品検査はメーカーにとって1つの難関だ。買付担当マネージャーは商品が生産されると、工場でサンプル検査を行い、不合格品がウォルマートの規定する比率を超えると全て返品する。また合格しても、配送過程で問題が生じるのを防止するため、50センチの高さから地面に商品箱を落とすなどの物流試験が実施される。

一部のメーカーはこのように厳しい条件の下で成長してきた。ウォルマートの方針が中国企業に効率を高めさせたと言える。

国内にはウォルマートと同様、毎日セール戦略を常に実施し、コスト節約の方法を考え続け、支店を絶えず開設し、メーカーに要求が出せるようになった大型小売業が出現している。米マッケンジー社の調査報告によると、国内の大型小売業の効率は5年前に比べ30〜50%向上したという。

ウォルマートが誇りに感じるのは――。中米間の経済貿易面での連係で軽視できない紐帯であることだ。1996年から中国商品の買い付けを絶えず強化すると共に、全世界の支店に輸出してきた。数多くの商品がこのようにして国際市場に参入し、米国人の生活に近づいていった。2004年の買付総額は約150億元。米国やその他の国の商品もウォルマートを通じて中国の家庭に参入してきた。

ウォルマートが中国で創出した就業機会は2万5000人余り。間接就業はさらに多い。多くの企業がウォルマート専門に商品を供給しているからだ。

競 争

1996年、多くの新聞はウォルマートの中国進出について「狼がやって来る」と報じた。同社は国内の小売業者を驚愕させたことがある。

1996年8月、ウォルマートは深センにスーパーセンター1号店を開設。半年後には同市場で一定のシェアを占め、周辺のデパートは売上高が軒並み5〜10%低下した。翌年の売上高は10億元に達し、3年後にはさらに10%伸びている。ウォルマートはこれで中国での店舗拡大に自信を強め、華南地区は深セン、西南地区は昆明、華北地区は北京、東北地方は大連を中心に店舗を展開させる戦略を確定した。

9年後の今日、ウォルマートは東南の沿海部と西南地区で最大の影響力を持っているが、中部や西部、北部では仏カルフールが知名度を高め、すでにウォルマートを抜いた。

中国チェーンストア経営協会が発表した2004年の国内チェーンストア・ベスト100社

で、カルフールは売上高162億4000万元で5位、ウォルマートは76億3000万元で20位にランクされている。

「フォーチュン」の世界売上高ベスト500社でトップのウォルマートに、新たな動きがあるのは明らかだった。

2005年5月18日、北京に第2号店、知春路店が開業した。同店は地下鉄13号線・知春路駅から南西に100メートル足らず。改札口を出ればそのまま店内に入れる。11月には北京・宣武門にスーパーセンターを開設。知春路に比べ、繁華街に位置している。

王教授は「比較的不便な場所に立地するという従来の特徴を改め、市街地に開業したことは、ウォルマートの戦略変更、北方地区で攻勢を強める姿勢を示したものだ」と分析する。

ウォルマート幹部によると、同社の目標は、今後5年間に50店舗まで増やし、年間売上高を少なくとも180億元まで高めるという。

売上高に相対するように、ウォルマートは中国での買い付けにさらに重きを置いている。2004年の買付総額は150億ドル。中国商品の低コストを強みに、同社は中国で商品を買い付け、全世界で販売して利益を得ており、買付総額は年20%のスピードで伸びている。

問 題

米ウォルマート本部の計画によると、20年以内に同社の3業態、スーパーセンターとサムズクラブ、ネイバーフード・マーケットを中国で全面展開すると共に、中国各地に点在する配送センターを通じた全店舗間の物流システムを再整備していく。この計画が全面的に実現すれば、ウォルマートは中国でもその規模の強みを発揮し、米国での成功を再現することができる。

しかし、9年がすでに過ぎており、米国式成功の再現にはやや問題がありそうだ。

先ず、ウォルマートの毎日セール販売戦略という強みが試練を受けていることだ。国内の他の企業も同様のセールを行っているため、ウォルマートに従来の吸引力はない。さらに重要なのは、同社の“天下の宝刀”、即ち、配送センターを中心に出店を集中させる方法が中国では実施しにくいことだ。2003年に華北地区の天津に1期工事1万平方メートルの倉庫が完成しているが、同地区で少なくとも10店舗展開しなければ、その役割は発揮されない。現在はわずか4店舗だ。

ウォルマートは米国では、地方都市から立ち上がり、配送センターが販売ネットワークをカバーすることで、低価格で迅速な販売体制を構築してきた。しかし、中国は面積が広く、長距離輸送コストが高いため、近距離の配送しかできず、自社の配送センターに依存して全国を完全にカバーするのは不可能だ。中国の脆弱な配送システムでは、ウォルマートが規模を利用した低コストという強みを実現するのは難しい。

ウォルマートは中国で46店舗を展開しているが、配送センターを利用した規模効果によるコスト削減の強みは発揮することはできず、物流コストはむしろ上昇している。

メーカー側のウォルマートに対する不平も強く、脅威さえ感じている企業もある。同社は週ごとに市場調査を3回実施し、同業他社に打ち勝つため突如、一部の商品で価格を引き下げるなど、価格変動が激しく、それに伴う損失はメーカーに負担させてきた。「ウォルマートの単なる価格引き下げは、市場の価格システムを混乱させ、企業の信頼にも影響を及ぼしている」とあるメーカーは話す。商品納入から撤退することを考えている企業もあるほどだ。

過去9年の間、ウォルマートは中国に解け込み難かったようだ。中国で推し進めようとしてきた戦略は米国の烙印を深々と押されてしまった。サムズクラブを代表とする小売業態はかつてウォルマートが欧米を風靡したものだが、この種の会員制、ストレージ式の販売モデルではより多くの中国人に買い物させるのは難しい。北京サムズクラブは成功したが、昆明サムズクラブはウォルマートに数百万ドルの賠償をさせた後、最終的に中国人に受け入れられるスーパーセンターに改装した。

こうした全てのマイナスの要素が、ウォルマートの中国での急成長にとって足かせとなる可能性がある。