2005 No.34
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概要

インターネットはすでに市民が社会問題を話し合い、自らの意見を述べると共に、世論を監督する1つの重要な公共の場となっている。今日、ネット上の民意は民間から中央の指導部層も視野に入れ始めており、一部地方政府はネット上の民意を専門に収集する部署を立ち上げた。政府はネット上の民意に対処する考え方を変えつつある。つまり、これまでの防止の姿勢から情報を円滑に流通させ、さらに良性の相互連動につなげたい、というものだ。もちろん、こうした転換の過程で、インターネットの発展と管理の間に矛盾が生じることは避けられない。例を挙げれば、深?市公安局がネットQQ群(即時通信手段)の開設者や管理者を対象に実名登録制を実施したことなどだ。これに関し、一部の専門家は「ネット上の民意がもたらすいわゆる『負』の作用を真に排除するには、カギとなるのはやはり、政府が行政能力を向上させ、現実生活での各種の問題を直ちに理解し解決することであり、社会の調和が取れてこそ、ネット上の民意は健全に向上する方向へと発展していく」と指摘している。

ネット上の民意がもつ力

――インターネットはすでに民意を表す重要な手段の1つとなっており、中央政府もネット上の民意の収集の制度化を進めると共に、こうした仮想空間から発信された民意に依拠して現実に行政政策を決定するよう努めている。

馮建華

中国インターネット情報センター(CNNIC)が7月21日に発表した統計によると、6月30日現在、インターネット利用者数は1億人を突破して1億300万人に達し、米国に次いで世界第2位となった。5年前はわずか2000万人足らず。今年上半期には昨年同期比18.4%増の900万人も増加した。

インターネットの急速な発展に伴い、ネットはすでに市民が社会問題を話し合い、自らの意見を述べると共に、世論を監督する1つの重要な公共の場となっている。ある調査によると、ネット利用者は社会で最も活躍する層の18〜45歳にほぼ集中しており、自らの見解を述べる意志を持っている。ある専門家は「その影響力や社会的地位、重大事件の報道能力は、ネットメディアがすでに主流メディアの1つになったことを明確に証明している」と指摘する。

様々な事実が示すように、ネット上の民意は無視できない社会の力となっている。例えば、重大事件が発生すれば、多くの利用者が申し合わせたかのようにネットフォーラムに集中し、次々に自らの考えや意見を発表する。厳密に隠ぺいされていた政治腐敗も、ネット上で露呈される。民衆の批判が高まる中、一部の関係する役人は逃げ場所を失い、戦々恐々として生きた心地もしない。ネット上の民意の影響力は日増しに顕著になっており、インターネットは多くの庶民にとって権利を維持する手段となっている。

だが、4、5年前に登場したばかりのネットフォーラムと異なるのは、多くのサイト、とくに大規模ゲートウェイのホームページ(HP)内での発言内容が、単に気持ちを吐露するという状態から、徐々に成熟し理性的な方向へと向かいつつあることだ。もちろん、世界の多くの国々と同様、こうした変化への前進は緩慢であり、しかも陣痛に満ちている。

民間から国務院を視野に

温家宝総理は3月14日、年に1度開催される「両会」(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の記者会見上で開口一番、「昨日、新華ネット(国内3大政府系HPの1つ)を閲覧したが、ネット利用者は私が今日、記者会見を開くことを知っていて、数百にのぼる問題を提起してくれた。彼らが国事に関心を寄せていることに、強く感激させられた。多くの提言や意見は、私や政府が真剣に考慮するに値するものだ……」と語った。記者が株式に関する問題について質問すると、とくに説明したかったといった様子で、「これはインターネットでクリック率が比較的高い問題だ」

温総理がネット上の民意には公開で対応する、と述べたことが、すぐさまインターネット上でかなり大きな反響を呼んだ。会見終了後、多くのネット利用者が自発的に「ネットネーミング」活動を展開。「温大哥(お兄さん)」とか「家宝哥」など、こんな親しみのあるネームを寄せてきた。

一部の専門家は「総理が公開でネット利用者による政策論議を奨励したことは、政府が市民に親しみのある、開放された透明な方向へ向かうという象徴的な意義をもつ出来事だ。これは、ネット上の民意がすでに、真に政府の役人を視野に入れていることを予示するものでもある。以前、一部の地方の役人は常にネット上の民意を顧みることなどせず、ひいては軽視することもあり、甚だしい場合は様々な手段を講じて隠ぺいしようとしてきたからだ」と指摘する。

実際には2年前からすでに、ネット上の民意は民間から中央の指導部層を視野に入れ始めていた。2003年、胡錦涛主席は発生したばかりのSARS(重症急性呼吸器症候群)の調査のため訪れた広州で、防疫活動に参加している医師に「あなたの提言は非常に素晴らしい。ネットで見ましたよ」と話しかけた。同年、温総理も北京大学を視察した際、学生たちに「君たちがネットに書き込んだ意見に、私は大変感動した」と語っている。

国の指導者がネットを介して民意を理解しようとしていることを初めて知ったのは、この時が初めてだ。

ネットが民意を表す重要な手段の1つになっているため、中央政府はネット上の民意の収集の制度化を進めた。国務院は昨年から専門の情報機構を指定し、ネット上の民意を幅広く収集すると共に、定期的に『インターネット情報の概要』を編集し、総理など国務院指導部層に報告している。こうした最新の情報に基づき、国務院は迅速かつ適宜に国家計画や民生に関係する重大問題を把握し、処理できるようになった。

例えば、昨年の『概要』の中で、温総理は「10月以来、農民労働者の賃金支払要求による深刻な事件が各地で頻発している」ことを知り、直ちに関係機関に対し賃金滞納問題を解決するよう求めた。後に、温総理自らがある農村女性に代わって賃金支払を要求してもいる。温総理の人間的な行為によって、長年にわたり重視されてこなかった問題がようやく、本格的に解決されることになった。

ネット時代の“民主の実験”

陝西省の天台県政府は2004年5月8日、ネット世論の監督に関する規定を公布し、政府関係機関の職責と任務を明確にした。

規定によると、政府のゲートウェイHP―「天台効能網」が各政府機関にそれぞれ登録番号を付け、当機関に関する書き込みを発見した場合、当該部門の管理者が書き込みをプリントして機関指導部にチェックさせると共に、機関指導部が自ら指示し、実労働日7日以内にネット上で回答するというものだ。県政府は民意を重視するため、各機関に対しHP閲覧後に電子署名をするよう求めている。

こうした民意の処理に関しては、同県環境保護局が講じた措置がとくに注目に値する。同局の謝優芹副局長は「民意を迅速に処理するため、朝出勤後にコンピューターを開いてその日に保護局への苦情がないかどうかをチェックし、夕方退勤する前にもう一度閲覧するため、事務室に2人の若者を配置した。苦情があった場合は、直ちに指導部に報告し、指導部が自ら指示して回答する。局長は関係機関に専門的な処理をするよう指示し、回答の内容は再度、ネット上に流すことにしている」と説明する。

国務院情報化弁公室の統計によると、2004年末現在で機関または政府ゲートウェイHPを開設しているのは、国務院の76ある部・委員会と直属事業体では71、31ある省・自治区・直轄市は28、地方政府は93%、県クラス政府では69%に上っており、政府関連のHPは全国で1000を超える。政府HPの多くが「市長の私書箱」などの専門コラムを設けているほか、一部の地方政府はネット上の民意を収集する専門機構を開設している。

陝西師範大学新聞伝播学院でネットメディアを研究する青年学者、裴小軍氏は「ネット上の民意は最も自由であり、最も真実な民意でもある。政府がインターネットの利用を重視していることは、ネット上の民意を重視し、同時に、これまでの防止の姿勢から情報を円滑に流通させ、さらに良性の相互連動につなげたい、という政府の考え方の転換を示すものでもある」と指摘する。

ネット情報時代に出現したこうした現象について、ある専門家は「これは実際、『インターネット利用者が政治を論議し、政府が回答し、機関が修正する』という“民主の実験”でもある」と強調。

だが、こうした民主の実験の公平さに一部専門家は懸念を示している。「恐らくは、ネット利用者と密接に接触すればするほど、監督されることになり、『問題が生じる』可能性はますます高まり、業績評価にも差が出てくるだろう。仮に接触が密接でなければ、監督されることもそれだけ少なくなり、そう容易に『問題が生じる』こともなく、業績を見れば、ほとんどその分だけ良くなってくる。これが有効な業績評価でないことは明らかだ」。中国人民大学行政管理学部主任の毛寿竜教授はこう指摘する。

こうした民主の実験が合理的かどうかは別にしても、肯定できるのは、一部の政府官僚が、仮想空間から発信された民意を現実に行政政策を決定する際の依拠にしようと努め始めたことだ。中国が民主法制社会に向かう過程で、これは確かに目覚ましいかつ意義の深い進歩である。

ネットメカニズム上の難題

中国も大多数の国と同様、ネットの管理と規制というセンシティブな難題に直面している。複雑な現実を前に、一部でネット上の世論を管理する方法の模索が始まった。

国内最大の即時通信企業である騰訊公司は7月20日、深?市公安局の要請に基づき、QQ群の開設者と管理者を対象に近日中に実名制登録作業を開始すると発表した。新華社は、深?市警察当局が7月から9月にかけて、ネット公共情報サービスサイトの整備を行うと報道。フォーラムやQQ群、チャットルームの開設者などに実名登録させるというものだ。以前はいずれも匿名で開設できた。

今回の整備の背景には、今年に入って以来、情報サービスサイトで違法な結社や交流、ポルノや猥褻などの違反行為が見られたことがある。そこで「健全に向上するネット公共情報サービスサイトの秩序」を確立するため、深?市警察当局は整備に乗り出すことを決めた。

深?市が示した今回の行動の“用心さ”には、多くの人が理解を示している。だが、こうしたやり方はやはり議論を呼んだ。

「博客中国網」の開設者、方興東氏は「現在は過度的段階に過ぎない。まだ十分にネットを認識していない時代は、人々に匿名の形で人々にインターネットを感受させることはできる。だがネットが発展し、ネットがますます人々の生活の中に浸透するに伴い、ネットが最も人を引きつけるところは“匿名”ではなく、さらにもっと、率直かつ迅速に相互に理解できる方法を求めるようになることだ。従って、実名制はインターネットの発展に向けた最終的な目標だ」と強調する。

だが、国内で最も人気のある大型総合HP、「新浪網」の陳?副総裁は「ネットの魅力は“匿名”にあり、こうしてこそ、人びとは自由に意見を発表できる。匿名による中傷や、違法な発言は技術手段を通して解決できるものだ」と指摘。

著名なインターネット・アナリストの呂偉鋼氏の考えも陳氏と同様だ。「実名制の実施は、“インターネットの最も基本的、最も活力のある要素を取り出すに等しい”」と強調している。

これに対し、中国科学院管理学院の呂本富副院長は、この3者の意見を折衷した案を示している。分類管理だ。大規模かつ正規のHPについては、実名制を求めて信用度を高める。一方、小規模なフォーラムは現状のままにし、随意に書き込みできる空間を残すというものだ。

いかにインターネットの内容を有効管理し、しかもネットの本質に“損害”を与えないようにするか。難しい模索の過程が必要なのは確かである。この問題では、社会環境や政治体制、科学技術の発展の違いから、各国が講じている措置にも違いがあるはずだ。中国インターネット協会の黄澄明秘書長は「政府の監督や管理だけでなく、とくに公衆の参与も強調する必要がある」と指摘する。

黄秘書長は「インターネットが第4のメディアとして、前3つのメディアとの最大の相違点は、“編集長”がいない、人々がいずれも“編集長”である、人々がいずれも情報の発信者である、人々がいずれも情報の取得者であることだ。前3つのメディアに対しては、政府が“編集長”をうまく管理しさえすれば、メディアをしっかり管理したことになる。だが、インターネットでは、その開放性や相互連動性といった特徴によって、こうした考え方ではすでにその管理に対応することができなくなっているかが決定される」と説明。

その上で黄秘書長は「逆説的に言えば、人々がいずれも情報の発信者であるからこそ、インターネットの管理も公衆の参加から着手し、公衆の主体的な参与と積極性を刺激し、企業経営者の社会的責任感を刺激して、彼らに、インターネットのこうした特徴から、企業が利益と発展を求めるには、より多くの社会的責任を担わなければならない、仮に自由な発展に任せて節制しなければ、政府の干渉を受けることになり、企業は発展していかない、ということを認識させる必要がある。一方、政府はその役割において、主に基準の制定や有害情報の範囲の画定などを具体的に示すことで、公衆が監督し情報を寄せる際の依拠となるものを提供していくすべきだ」と強調している。