2005 No.34
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「杖るは信に如くは莫し」[注]で
中日関係を改善

--徐敦信元外交部副部長にインタビュー

抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利60周年という歴史的節目の年を迎えながら、「政治関係が冷え込んでいる」と言われる中日関係に改善の兆しは全く見えないようだ。中日関係には一体どんな問題が起きているのか。中日関係をいかに苦境から脱け出させるのか。7月8日、新華社の雑誌『半月談』の記者が中日関係について元駐日中国大使の徐敦信元外交部副部長にインタビューした。

再び岐路に立たされた中日関係

記者:戦後60年来の中日関係の発展をどう評価するか。

徐敦信:中日関係は歴史から見れば、二千年に及ぶ友好的な往来もあれば、近代50年余りの間は日本の中国侵略によって深刻な対立もあった。戦後、日本は米軍の占領下に置かれたが、後に米国と同盟を結び、対外政策もひたすら米国に同調してきた。新中国建国後、中日関係は不正常な状態が23年間も続いたが、その原因は、当時の日本政府が米国に追随して中国敵視政策を取ったことにある。そして両国の有識者が共に努力したことで、国交正常化が1972年に実現した。

この30数年来、中日関係は各分野で大きな発展を遂げ、両国に実質的な利益をもたらしたばかりでなく、地域と世界の平和と安定のためにも貢献をしてきた。冷戦終結後の新たな情勢の下で、中日関係には困難な局面が生じた。ここ数年来、日本国内では民族主義的感情や大国意識が膨れ上がり、対中政策でマイナスの一面が徐々に際立つようになってきた。日本で続けざまに起きた問題に対して、人々が警戒心を持ち始め、不満や懸念を示すのは当然のことだと思っている。

記者:これらの問題の発生と経済貿易関係との対比は鮮明で、こうした状況は「政冷経熱」(政治関係は冷え込んでいるが、経済的な関係は熱い)と形容されているが、この問題をどう見ているのか。

徐敦信:この言い方は一理ある。経済面から見れば、30数年の発展を経て、中日両国は互いに主要な貿易パートナーとなり、貿易額は160倍も増え、人的往来も毎年延べ400万人にのぼっている。これほど緊密な関係は中日両国の関係史だけでなく、現代の国際関係の中でも非常に珍しいことだ。

その一方、中日間の政治関係は冷え込んできている。「政冷」とは何か。私から見れば、まず両国のハイレベルの相互訪問が、小泉首相が靖国参拝を続けてきたために三年間も中断していること。次に、中国にとって核心的利益に関わる台湾問題で、日本政府は立場を後退させ、米日が共同で中国の平和統一という大事業の実現を阻むようになったこと。第三に、親近感とも呼ばれる両国の民衆の友好的な感情が冷えてきた一方で、嫌悪感が増していることである。

こうした「政治関係が冷え込んでいる」状況は不正常なもので、少なくともわれわれが期待したものではない。今、中日関係は再び岐路に立たされており、どの方向へと向かうのかという問題に直面している。この問題については、中国側の態度は非常にはっきりしている。つまり、歴史の経験と教訓から言えば、中日両民族は和すれば双方に利あって、争えば双方傷つくということだ。それぞれの現実的国益から言えば、中日両国は三つの政治的文書を踏まえて善隣友好協力を強化し、中日両国のためだけではなく、東アジア地域の振興のためにも共に努力しなければならない。

「温故知新」で歴史を回顧

記者:今年は中国人民抗日戦争勝利60周年だが、さまざまな記念活動をどう評価するか。

徐敦信:今年は全世界でも反ファシズム戦争勝利60周年ための記念活動が盛んに行われているが、中国も例外ではない。私個人としては、抗日戦争は中華民族にとって歴史の転換点であり、中華民族が近代の反列強侵略で初めて収めた完全な勝利でもあり、国恥をすすいだだけでなく、中国人民の解放のための基礎が築かれた。われわれが記念するのは当然なことだ。

記念の目的、その核心は「温故知新(故きを温ねて新しきを知る)」にある。つまり、歴史を回顧して貴重な経験と教訓を汲み取るということである。中国は、必ず発展し、富強の国に築き上げなければならない。弱国には外交はなく、立ち遅れれば叩かれる、これが血の教訓だ。

記者:中日間の問題はどう解決すべきか。

徐敦信:中日関係には、台湾問題と歴史問題という二つの重要な問題がある。台湾問題は中国の核心的な利益に、歴史問題は中国人民の民族感情に係わるものだ。

台湾問題では、中国は日本政府が中日間の三つの政治文書を踏まえて事を処理し、中国の統一事業のためになることをしてくれれば最もよいが、そうでなくても構わないが、少なくともこの統一事業を妨げることのないよう願っている。これが中日関係の政治的基礎だからである。基礎が揺らげば、両国関係も揺らぐことになりかねない。

歴史問題の最終解決には二つのことが必要だと思っている。まず、日本国民の自覚である。日本人は大多数が戦争はしたくない、平和を求めたいという気持ちを持っているが、あの戦争の是非をあいまいにしている人がかなり多い。戦後初期、「混乱を是正する」機会を失ったため、今になって誤った認識をただすには多くの時間をかけざるを得ないだろう。次に外部の力による推進が必要だ。ここ数年、アジアの隣国が歴史問題をめぐって原則を堅持するようになり、必要な闘争を行ったことで効果をあげた。

中日間のエネルギー問題については、双方は意見の対立を捨てて、協力を強化すべきだ。両国はともにエネルギーの消費大国であり、いずれもエネルギーに欠乏しているが、それぞれに長所を持っている。中国は石油と天然ガス資源が不足してはいるが、石炭が豊富であるのに対し、日本は省エネ技術で世界最先端をいく。中日両国が今後、日本の進んだ技術を中国のエネルギー消費削減に活かす同時に、中国の石炭を日本に供給することなどで協力できれば、いいことではないか。

釣魚島問題については、領土の主権が絡むだけに譲歩してはならないが、まさにケ小平氏が言ったように、「こういう問題は一時棚上げしても構わない。次の世代はわれわれよりずっと知恵があるだろうから、みんなが受け入れられるいい解決方法を見出せるだろう」。実際、ケ小平氏は資源の共同開発を提案していた。資源の共同開発と共同享有はいいことではないか。これは今までのところ最もよい提案だと思っているが、日本側からはずっとなんの反応もない。

「杖るは信に如くは莫し」で中日関係を改善

記者:長い目で中日関係を見れば、いま直面している困難は一時的なものなのか、それとも長期的なものなのか。中日関係を再び正常な発展の軌道に戻せる可能性はあるのか。

徐敦信:重要な問題、大局に係わる問題をうまく処理できれば、中日関係を再び正常な発展の軌道に戻すのは完全に可能だと思っている。これは中国側の見方だけでなく、日本の多くの賢明な政治家も賛成してくれるだろう。

中日関係をいかに改善するかについては、その原則と方法は中国の指導者がすでにはっきりと意思表明しているので、わたしはこれ以上言及しない。胡錦涛主席は今年ジャカルタで行われたアジア・アフリカ首脳会議で5項目の提案をし、温家宝総理は昨年の「両会」(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)の記者会見で中日関係発展に関する三原則と三提案を明らかにし、日本側はいずれも賛成の意思を表明している。いま必要なのは、実施することだ。口先だけで行動を伴わないことも、言うことと行うことが違ってもいけない。信用と誠実は中華民族の昔からの美徳であり、これは早くに日本にも伝わっていった。日本の政治家は自律や相互激励をしようと、「論語」の中の「無信不立(信なくば立たず)」をよく引用する。1972年の中日国交正常化の際、周恩来総理は田中角栄首相に「言必信、行必果」(言必ず信あり、行必ず果あり)の六文字を贈った。小泉首相がジャカルタ会議で、村山富市元首相の10年前の談話を重ねて表明したが、私は、小泉首相はその談話の主要な部分を引用しているが、一句見落としたことに気づいた。村山談話は最後に、「杖るは信に如くは莫し」という中国の成語を引用した。つまり、人間として立身し、事を処理するには、信用と誠実を旨としなければならないということだ。小泉首相はまさにこの誓いの言葉を引用しなかった。忘れたのかもしれない。

長い目で見れば、中日関係の困難な局面は一時的なものではあるが、中日関係が再び岐路に立たされているという現状は問題の深刻さを物語っている。正しい方向に向かえば、再び正常な軌道に戻ることはできるが、そうでなければ、中日関係は悪化し、ひいては深刻な結果を招くことになるだろう。

隣人間のトラブルであれば、別の所へ引っ越せばそれですむ。だが、隣国の関係であれば、引っ越すわけにもいかない。中日両国は一衣帯水の隣国として、互いに補完や参考にできるところが多い。友好的に付き合っていけば、双方にとってプラスになるだろう。私は日本の有識者、政治家、知識人たちがこの点を見定め、これに逆らう愚となることをしないと確信している。

[注]「杖(よ)るは信(しん)に如(し)くは莫(な)し」----頼りとするものとしては、信義に勝るものない、との意味。