2005 No.36
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節減型社会の構築を提唱

林双川

――今年に入り、政府は節減型社会の構築に関する一連の政策、措置を次々と打ち出した。胡錦涛国家主席や温家宝総理らも談話を発表し、戦略的高度から節減型社会構築の意義を説明している。節減型社会の構築は、科学的発展観を樹立し着実に実施する重要な戦略的措置であり、全中国人民が共同で努力する目標でもある。

節減への警鐘鳴らす資源の「ネック」

経済の急速な発展、特に1人平均国内総生産(GDP)が1000ドルを超えた後、構造的変化が非常に顕著になってきた。このような変化には経済構造変化のほか、消費構造変化も含まれている。経済構造変化から見れば、ここ数年、重化学工業が急成長しているのが特徴だ。昨年の工業増加値に占める重化学工業の割合は67.6%に達しており、重化学工業は多くの場合、エネルギー高消耗、資源高消耗の産業であるため、その急速な発展がここ数年の資源・エネルギー不足の主因となっている。消費構造変化から見れば、特に一部の都市部住民の消費構造はこれまでの「衣食・消費品」重視から「住宅・観光」へと高度化しており、消費構造の変化と高度化が資源消費量の増加、使途の変化をもたらしていると言える。

もう1つの新たな状況は、都市化が加速していることだ。都市化水準は年平均約1ポイントのスピードで進んでおり、農村部から年間1400万〜1500万人が都市部に移転しているのに相当する。現在の都市化水準は41%だが、2020年までには60%前後に達する見通し。一般的に都市部住民1人平均エネルギー消費量は農村部の3.5倍とされるが、大量の農村人口の移転が必然であることから、エネルギー・資源の消費量がそれに応じて増えていくのは必至だ。

1人平均資源占有量が少ないのが、基本的な国情である。資源の総埋蔵量は世界第三位を占めるが、一人平均占有量は53位であり、世界の1人平均占有量の50%に過ぎない。水資源の1人平均占有量は世界平均のわずか4分の1。経済発展に伴い、鉱物資源の供給能力や保障能力が低下しつつある。45種類の重要戦略資源を見ると、2020年までに9種類が深刻な不足に陥り、10種類が不足する(不足とは、資源の対外貿易依存度が40%〜70%の間、深刻な不足とは、同70%以上を指す)と予想される。

中国ではすでに資源に「赤信号」が灯り始めており、電力や石油、土地、水資源など最も重要な資源もほとんど不足状態にある。

◆電力は日増しに逼迫している。国家電力監督管理委員会によると、2004年に起きた「電力危機」は21の省・直轄市に波及し、電力需要ピーク時の供給不足は2000万〜3000万キロワットに達した。2005年はさらに深刻化すると予測される。

◆水資源がかなり欠乏している。水不足による経済損失には目を見張るものがある。統計によると、約660都市のうち3分の2が水不足状態にあり、うち110都市が深刻な水不足に陥っている。水資源不足による年間工業総生産高の損失は約2000億元。ここ数年は、農業でも水不足による年間損失額が1500億元前後(毎年約2億2000万ヘクタールで収穫量に影響が出ている)に達している。人口増に伴い、1人平均淡水資源保有量も減少を続けており、2030年には水資源が深刻な国に仲間入りすると見られている。

◆石炭の生産、消費段階での浪費が深刻である。中国ではエネルギー構造の主体は石炭であり、エネルギー資源総量の75.2%を占めている。予測によると、石炭の利用可能確認埋蔵量は約2000億トンに達しており、年産原炭量を25億トンとして推算すれば、80年間は利用が可能だ。かなりの石炭資源を保有してはいるが、良質のものは少なく、生産、消費の段階での浪費も深刻である。国家安全生産監督管理総局の統計データによると、炭鉱の再採掘率は平均してわずか35%、一部では15%に過ぎず、10%という低率の炭鉱もある。標準炭1トン対GDP比では世界平均水準の30%である。

◆石油が益々不足している。エネルギー専門家によると、石油可採確認埋蔵量は約23億トンに達しているが、約14年間しか採掘できない。石油の対外依存度はすでに3分の1を超え、今後新増する石油需要量はそのほとんどを輸入に依存することになる。原油輸入量は2004年に累計1億2000万トンに達した。石油の戦略的備蓄がまだ完全には確立されておらず、国際石油価格に対して適度に対処することができないため、年間数10億ドルも余分に支払わなければならない。今後15年間、原油供給不足は年を追うごとに拡大していくと予測される。

◆耕地が減少している。建設用地と耕地保護との間の矛盾が非常に顕著であり、土地資源の浪費や農村部の違法な土地収用も深刻化するなど、1人平均資源保有量の相対的不足と、野放図な開発・利用といった問題が併存している。国土資源部の李元副部長によると、この10年近くの間に耕地は670万ヘクタール以上も純減しており、2004年の1人平均耕地保有面積はわずか0.094ヘクタールと、世界平均水準(0.25ヘクタール)の40%以下である。

温家宝総理は「エネルギー不足は中国の経済社会発展の「軟弱なあばら骨」であり、淡水と耕地の不足は中華民族の「胸中の憂い」でもある。この基本的国情が、節減型社会を構築しなければならないことを決定づけた」と述べている。

憂慮すべき「粗放型」経済成長

改革開放政策の実施以来、中国経済は大きな成果を上げたが、経済成長が主に「資源の高投入」により実現されたことから、資源と環境という大きな代価を払ってきた。1980年代から2000年までにエネルギー消費量は倍増し、GDPは4倍増となった。今世紀最初の20年間は工業化と都市化が急速に発展する重要な時期となる。経済成長率の加速に伴い、エネルギーや水、土地、鉱産物などの資源の消費量は増大し続け、資源不足の問題がますます突出していくと予測される。だが現実社会では、鉱産資源の乱開発や破壊、耕地の占用、用水の無節制、建筑の超高エネルギー消耗など、「粗放型」の経済成長モデルが依然として際立っている。

驚くべき数字だが、現在、総合エネルギーの利用効率は約33%と、先進国を10ポイント下回っており、GDP対エネルギー消費量比は世界平均の2倍を超え、主要製品対エネルギー消費量比の平均は外国の先進レベルより40%高く、電力や鉄鋼、非鉄金属、石油化学、建材、化学工業、軽工業、紡績の8業種の主要製品対エネルギー消費量比の平均は世界先進レベルを40%上回っている。ガソリン消費量は欧州に比べ25%、日本より20%高い。工業用水の再利用率は外国先進レベルより15〜25ポイント低く、鉱産資源のリサイクル回収率は同20ポイント下回っている。先ごろ、スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムは最新の「環境の持続可能な指数」を公表し、世界144カ国・地域のランキングで中国は133位だった。報告書は「低生産、高汚染の生産モデルでは国は豊かにならず資源、環境がまず衰退していく」と指摘。これらの数字は1つの側面から、中国の資源がすでに「粗放型」経済社会の発展をサポートし切れない状態に陥ったことを物語っている。

政府はすでに国民経済の成長モデルの転換を提起しているが、現在に至るまで、その顕著な効果は出ていない。中国経済は基本的にはまだ粗放型であり、集約型ではない。表面的に見れば、工業化や現代化は中後期の段階に入ってはいるものの、仔細に見れば、実際はまだ粗放的工業化、粗放的現代化なのだ。多くの製品が粗悪で精緻ではなく、数量は多いが質的に劣る。例えば、鉄鋼生産量は3億余トンに達して世界第三位を占めているが、鉄鉱石のほとんどはオーストラリアなど遠方の国から輸入しているため、価格が高く、資源や電力消費量も多く、しかも高品質の鋼材の多くは輸入に依存しなければならない。

現在、環境汚染は非常に深刻である。中国は先ず発展し、その後に対策を講じるという古い道を歩んでおり、二酸化硫黄や二酸化炭素の排出量はすでに許容上限を超えている。二酸化硫黄の排出を例にすれば、環境容量の排出許容限度はわずか1520万トンだが、すでにこの限度を上回っており、2020年には3000万トンに達する見通し。このまま推移すれば、いくらかゆとりのある社会での各項目の経済指標が実現されたとしても、環境破壊は深刻化するに違いない。このようないくらかゆとりのある社会が、中国人の求める目標であるはずはない。

節減型社会の構築に向けて

かつて提唱された「勤倹建国」(勤勉節減立国)に比べれば、節減型社会の構築が内包するものはより幅広く、発展の次元もより高いものだ。これは全く新しい社会発展モデルである。つまり、節減の理念を生産や流通、消費、社会生活の各分野まで徹底させることにより、従来の経済成長モデルを根本的に改変し、資源を最大限度節減するとともに、資源利用の效率を向上させ、最小限の資源消費と環境コストで最大限の経済的効益、社会的效益を獲得するというものである。

これが科学的発展観を着実に実行する上で必然的に求められるものだ。中央の指導部層は、科学的発展観を着実に実行し貫徹する上で重要となる面、つまり、経済建設や人口増、資源利用、環境保護の関係を円滑に処理してこそ、人と自然との調和と、経済と社会の持続可能な発展を実現できることを深く認識している。そのため、節減型社会を発展させる道を歩み、資源の「ネック」という制約から抜け出すことが、中国の将来の発展にとって必然の選択肢となるはずだ。

これは、いくらかゆとりのある社会を全面的に建設する上で重要な保障となる。政府は2020年までにいくらかゆとりのある社会を全面的に建設する努力目標を打出しており、今後15年間は都市化や工業化、現代化プロセスを加速する重要な時期となり、土地や重要な鉱物資源の需要も急速に増大することから、資源の需給はますます逼迫化していくだろう。現在、生産や消費方式の不合理な問題もかなり突出しており、現実からかけ離れたり、外国製品を貪ったり、贅沢を求めたり、むやみに浪費したり、といった行為が頻繁に見られる。社会全体で資源節減の意識をさらに強化しなければ、経済発展がますます資源によって制約されるのは必至であり、生産や生活環境もますます悪化していき、いくらかゆとりのある社会の全面的な建設という壮大な目標実現に直接影響を及ぼすことになるだろう。

同時に、これは経済面と国防面の安全を考慮に入れてのものだ。エネルギー資源が豊かであるとは言え、1人平均資源保有量では不足状態にある。近年、石油と鉄鉱石の対外依存度がますます高くなるなど、エネルギーの輸入問題が一段と突出してきた。資源を過度に輸入すれば、膨大な資金がかかるだけでなく、国際市場の需給も逼迫化させ、経済や政治、外交面で一連の問題をもたらすことにもなる。そのため、節減型社会の構築は、実は、中華民族の将来の命運にかかわる重大な戦略的政策決定であり、また長期的戦略方針でもある。