2005 No.36
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中国と世界文化遺産

安子

南アフリカのダーバンで開催された第29回ユネスコ世界遺産委員会で7月15日、「澳門(マカオ)歴史市街地」の世界文化遺産への登録申請が認可された。これで中国の世界遺産は31カ所となる。

マカオ歴史市街地

16世紀中葉から東洋と西洋文明の交流の地として約400年にわたり発展してきたマカオには、西洋とくにポルトガルと中国式の建築物が数多く完ぺきな形で残されてきた。この面積わずか20平方キロの町は、その独特な文化的雰囲気で観光客を引きつけている。

ここには最も早く建てられたカトリック教会、現存する最も古くて完ぺきな修道院、中国初の西洋式の劇場、極東地区最初の灯台や最古の砲台が残されているほか、五嶺(広東・広西一帯)の風格をもつ寺院や廟、清代末期の庭園や広東式の古い住宅も保存されている。こうした建築物は都市の再開発でも取り壊されることなく、東洋と西洋文明の出合いと融和を体現する独特な文化的雰囲気を漂わせている。マカオは国内に現存する最も古い、規模の最も大きい、最も完ぺきに保存された中国と西洋の建築物が共存する歴史的都市だ。

マカオ歴史市街地は、媽閣廟や港務局大楼、鄭屋大屋、聖ローレンス教会、聖ヨセフ修道院聖堂、ドン・ペドロ5世劇場、ロバート・ホートン図書館、聖オーガスティン教会、民政総署大楼、三街會館(關帝廟)、仁慈堂、大堂(カテドラル)、廬屋大屋、聖ドミニコ教会、大三巴牌坊、ナーチャ廟、旧城壁、モンテの砦、聖アンソニー教会、聖ポール天主堂跡、プロテスタント墓地、ギア要塞(ギア灯台とギア教会を含む)など22カ所の歴史・宗教的建築物と、セナド広場やリラウ広場、聖オーガスティン広場、大堂(カテドラル)広場、聖ドミニコ広場、カモンエス広場、バラ広場、カンパニー・オブ・ジーザス広場など8つの広場から構成されている。

マカオ歴史市街地には豊かな文化の香りが漂い、さまざまな宗教信仰と生活習慣をもつ人びとが共に暮らす空間だ。海神の媽祖を祭る媽閣廟や順風を祈る聖ローレンス教会、中国近代の有名な思想家・鄭観応の大邸宅、修道士を養成する聖ヨセフ修道院などの建築物が互いに映して趣がある。

専門家によると、マカオは400年にわたる間、戦乱による被害に遭ったことはなく、政局は相対的に安定していた。明(1368-1644年)と清(1616-1911年)の時代には、ポルトガル人とカトリック教宣教師が清朝の住民としてここに住むようになり、中国文化に帰属していく。清政府は税関を置いてマカオを統治。アヘン戦争勃発後の1849年にマカオは植民地としてポルトガルに支配されるが、基本的には自治体制が実施された。総督や司法官など重要な職位はリスボンが任命したが、中下層の職位はポルトガル人と中国人が担当した。ポルトガルが支配していた間、マカオは大きな被害を受けることはなく、太平洋戦争にも日本人は香港を爆撃したが、マカオは攻撃していない。

マカオの学者が指摘するように、歴史市街地は東西文化の交流と融和の産物として、西洋の文化を受け入れる一方、東洋とくに中国の文化をヨーロッパに伝えるなど、大きな影響を及ぼした。

マカオ経済特別区の何厚?行政長官は「マカオ政府は歴史市街地を非常に重視している。これまで通りマカオの都市のイメージを強化するため市街地の保護と発展に力を尽くしていきたい。歴史市街地が世界文化遺産になったことは、マカオ人の生活様式などが世界に認められたことを意味するだけでなく、マカオの開放、包容、平等、調和という精神と歴史的経験が称賛されたことでもある」と語る。

故宮周辺地区保護計画案が採択

第29回世界遺産委員会では、中国代表団が提出した「故宮周辺地区保護計画案」が専門家の審議を経て採択された。

国家文物局によると、昨年の第28回世界遺産委員会で、北京の故宮周辺に歴史文化遺産を保護する地区を設ける提案が決議されたことから、故宮周辺の現状と世界遺産委員会の要求に基づいて計画案が策定された。

計画案は面積86ヘクタールの故宮保護区と1377ヘクタールの周辺保護区で構成。歴史文化保護区には皇城や什刹海、国子監、南銅鑼巷、北銅鑼巷など5カ所が含まれ、周辺地区内では大規模な工事や高さ9メートルを超す建築物の建設が禁止され、規定に合致しない建築物は段階的に撤去されることになる。

◆周辺地区は2つの部分で構成

計画案によると、周辺地区は主に皇城と北市街地の2つの部分からなる。

故宮はほぼ完ぺきな形で保存されている。北海や中南海、景山、太廟(労動人民文化宮)、社稷壇(中山公園)は皇城を構成する最も重要な一部であり、また皇城内の道もほぼ保存されている。

◆土地使用は計画案に基づく

世界遺産保護研究専門家の徐苹芳氏によると、周辺地区保護計画案は中国が策定した法規だが、すでに世界遺産保護条約に加入していることから、世界遺産委員会が審議し採択しなければ発効しない。

今後の周辺地区内の土地使用計画は、周辺地区保護計画案に基づいて確定されることになる。確定した土地使用計画が計画案に合致しない場合は、計画案に沿って調整しなくてはならない。世界遺産委員会は保護状況について定期的に調査する。

◆高層建築物は撤去

世界遺産委員会によると、故宮の三大殿(太和殿、中和殿、保和殿)から周囲を眺めた場合、景観を損なう高層建築物が視野に入ってはならない。これに基づき、周辺地区内では高さ9メートル超の建築物の新築は禁止されることになる。

北京市文物局によると、地区内にある北京市住宅管理局ビルは従来、高さ20メートルの6階建てだったが、景観との調和が取れないため、上部3階を取り除いた。今後も現有の高層ビルは段階的に撤去されることになる。

◆新規建築物に厳しい規制

今後、周辺地区内での新規建設は、計画部門と文物部門の認可を取得しなければならない。故宮周辺の歴史文化的雰囲気と最大限度一致させるため、関係部門は新建築物の高さ、様式、色彩などに厳しい規制を設けた。「北京皇城保護計画」や「北京歴史文化名城保護計画」の規定に基づき、今後は周辺地区内では大型のガラス張りビルや色鮮やかな西洋風建築物の建設は禁じられる。胡同(横丁)や四合院(北京伝統の住宅)については原則、大規模な撤去は禁止され、主要な横丁も拡張することはできない。

世界遺産の保護を重視

今回の世界遺産委員会では、景勝地「三江並流」の保護問題に関心が集まったが、中国代表団は同遺産の現状について「危機遺産リストに盛り込むことはない」と大会に説明した。

建設部都市建設司の王鳳武副司長は「ある非政府機構やメディアが、中国が「三江並流」に水力発電所を建設すると報道したことで、世界遺産センターは強い関心を示した。同センターは今回の会議で同遺産の評価調査を行うことを求め、来年に専門家を雲南省に派遣し、実地調査を行う予定だ。実際、景勝地と周辺地区では、中国政府が認可したダム建設プロジェクトや水力発電所の建設工事行われていない」と強調した。

「三江並流」は青海・チベット高原の南部に延びる横断山脈の峡谷に位置し、怒江と瀾滄江、金沙江、流域内にある山脈から構成され、世界で希少な地質や地形の多様性、動植物の多様性、景観の多様性および民族文化の多様性が一体となった区域だ。総面積は1万7000平方キロ。2003年に「世界文化遺産」に登録された。

また王司長は「水力発電プロジェクトは計画から実施可能に向けた研究・調査、立案まで十数年から数十年かかることもある。現段階では水力発電会社の構想に過ぎず、現実化する可能性はない」と強調している。

雲南省発展・改革委員会エネルギー局の王勇副局長は「雲南は水力発電資源が豊かだが、同時に生物資源の多様性を誇る、観光の発達した省でもある。雲南は資源開発と環境保護をともに重視する原則を一貫して、揺るぐことなく実施してきた。三江併流の景観は雲南の世界クラスの“ブランド”でもあり、高度に重視されるのは当然だ」と強調。

王司長と王副局長は同時に「世界遺産のある場所は無人の地ではなく、開発しないわけにもいかず、保護を絶対的に強調するために当地の経済発展を考慮しないこともできない。最も重要なのは、発展と保護のバランスをいかに模索して、双方のプラスとなるようにするかだ」と指摘した。

新世界遺産を申請

張柏国家文物局副局長は新華社記者のインタビューで「中国は安陽の商代遺跡と、四川パンダ生息地を世界文化遺産と自然遺産として世界遺産委員会に申請した。世界遺産センターはこれを正式に受理し、来年7月にリトアニア首都ビリニュスで行われる第30回世界遺産大会にて審議する」と発表した。

安陽商代遺跡は「殷墟」とも言われ、中国の奴隷制社会である商代後期の都の遺跡。河南省安陽市西北部の小屯村にあり、3300年余りの歴史をもつ。敷地面積は24平方キロ。歴史上、考察できる文献が残っているとともに、甲骨文と考古学的発掘で証明された中国最古の都の遺跡だ。

絶滅に瀕するパンダは「生きた化石」と言われる。四川パンダ生息地は大渡河と岷江の間にあり、面積は9510平方キロ。生物の多様性保護の面で普遍的な価値がある。

■中国の世界遺産

文化遺産(22カ所)

故宮博物院、蘇州の古典庭園、青城山-都江堰、頤和園、明清代の皇室の陵墓、承徳の避暑山荘と寺院、長城、竜門石窟、秦の始皇帝陵と兵馬俑、雲崗石窟、麗江の古城、曲阜の孔子廟・孔林・孔府、天壇、武当山の古建築、周口店の北京原人遺跡、莫高窟、安徽省南部の古い村落、ポタラ宮(チョカン寺、ラブリンカ)、平遥の古城、大足の石刻、高句麗王城と王陵墓及び貴族の墓、マカオ歴史市街地

自然遺産(4カ所)

九寨溝、黄竜、武陵源、三江並流

文化景観(1カ所)

廬山

文化・自然遺産(4カ所)

泰山、黄山、峨眉山-楽山大仏、武夷山