2005 No.40
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【要約】

先進国に仲間入りし、現代化という発展の道を歩むことが、1949年の新中国建国後になされた選択である。

中国は農業大国であり、中国が先進国になる過程で、農業は決定的な役割を果たしている。

1978年、まず農村から開始した改革開放により農業は急速に発展し、十数億の中国人は飢えから抜け出し、物質的欠乏から抜け出し、一部農産物の生産量で中国は世界第1位となった。

だが、中国の農業はいまだ現代化されていない。農業従事者が多く、多くの地区で農業基盤が脆弱であり、依然その日暮らしの状態に置かれている。食糧問題はいまでも解決すべき重点であり、郷鎮企業は今後の発展に向け難題を抱えている。農村の都市化プロセスは緩慢である。農村の教育にも問題がある。こうした諸原因が農業の現代化プロセスに影響を及ぼしており、中国が先進国の仲間入りができるかどうかの鍵を握っている。

今週号では総合的、客観的角度から中国農業の発展について考える。

農業は中国が先進国となる鍵

――農業の現代化の実現は必須の選択だ。

蘭辛珍

1980年代初期、ケ小平氏は21世紀中葉までに先進国レベルに追いつくことを提起した。

それから20年を経た今、発展の程度を詳細に見れば、農業がすでに中国が先進国になる上で影響を及ぼす鍵となっていることが分かる。

中国の農業は世界の奇跡とも言える。13億の人口を養い、世界の5分の1に相当する人口の食問題を解決するなど、農業は経済の急成長を確実に保障する役割を果たしてきた。とくに1978年の改革開放は当初、農村から始まり、これにより農業は一段と発展していった。穀物や綿花、植物油原料、糖類、肉類などの生産量はいずれも世界第1位となり、極度の不足状態から脱して供給はほぼ安定化し、一部は余剰状態にある。だが、今日の農村はむしろ改革開放の最大の受益者とは言えず、農業は依然として伝統的農業から現代化農業へと転換する発展段階に置かれている。

約70%の人口がいまだこうした伝統的な農業に依存しており、50%近くの労働人口が農業にしか就業の機会を見出せないでいる。農業生産高が国民総生産(GDP)に占める比率は約15%である。

このため、農業の現代化は国全体の現代化プロセスにとって非常に重要だ。「農業の現代化の実現」、これが中国政府の一貫して堅持している発展方向だ。

現代化の状況

農業の現代化については、すでに1954年9月に周恩来総理が「政府活動報告」中で提起しているが、1997年になってようやく農業部農村経済研究センターが、全国が基本的に実現する農業現代化に関する参考指数と基準を示した。(以下の表を参照・全国平均は1997年時)

(1〜3は、農業の外的条件指標。4〜6は、農業生産の条件指標。7〜10は、農業生産の効果指数。各指標はいずれも統計年鑑データに基づき算出した。)

この基準に基づき、中国国家統計局は2004年に『中国農業現代化プロセスの研究と実証・分析』と題する報告書をまとめた。報告書は「農業現代化の目標値は3分1で達成されておらず、指数最低の省では5分の1でしかなく、東部と中部、西部の間で発展の格差が顕著であり、農業現代化の任務はかなり困難だ」としている。

中国農業科学院の研究報告書も「農業の発展は速度と規模、収益面で、先進国に比べ非常に遅れている」と指摘し、以下の4点を強調している。

◆構造が不合理である。栽培業が中心であり、加工や林業、牧畜業、貿易などの比重が低い。栽培業を見ても、穀物や綿花、野菜などに力点が置かれ、その他の高付加価値の工芸作物の栽培・経営が少ないなど、内部構造は非常に非合理的である。

◆生産と経営が分散し、小規模化している。農家は約2億世帯に上るが、数少ない国有農場や極めて一部の農村で規模経営が実施されている以外は、ほぼ個人による小規模経営であり、規模経済を推進するのは難しい。農家1世帯あたりの耕地面積が少ないため、大効率の機械設備の導入には適しておらず、先進国のような現代化生産体制を確立するのは困難だ。

◆技術への資金投入が不十分であり、労働生産率が低い。科学技術の導入に遅れをとり、精密加工などの農産品は少なく、付加価値も低く、競争力が不足している。

◆インフラ整備が遅滞している。灌漑や排水、防風、植林保護など施設は長年修理されず、また関連施設が拡充されていないため、自然災害に対する抵抗力が脆弱だ。

◆農業従事者が多く、しかも労働力の質が低い。短大卒以上は全体の1%足らず、読み書きができるかまたは半分しかできないが20%、中学卒以下が80%を占めている。

◆経営規模は世界平均の4分の1、労働力あたりの養育人口では3〜4人に過ぎない。オランダは112人、デンマーク160人、米国75人、ドイツ67人、イスラエルは90人である。

主要な原因

中国国家統計局がまとめた『中国農業現代化プロセスの研究と実証・分析』は、現代化指数が低い主因について、農業生産手段と農業生産能力の低下を挙げている。

中国科学院農業経済研究所の報告書も「世界の各先進国の経験が証明しているように、労働力の非農業への転換によって農業に従事する労働力が不足した時に初めて、農業の機械化は推進される」と指摘している。

同研究所の許世衛研究員は「中国の農業を分析すると、体制から見て2つの大きな問題が存在している。1つは、農家数の多い分散型の小規模生産体制であり、1戸あたりの耕地面積が1ヘクタールにも満たないことだ。これがその他の国、とくに先進国と区別される非常に大きな特徴である。いま1つは、生産や加工、販売が、異なる機関によって管理されていることだ。これが農業の発展を阻む最も致命的な内傷である」と説明する。

中国の農業は2つの発展段階を経てきた。1949年の新中国建国後、土地は私有制が廃止されて国の所有となり、公有制が実施されるとともに村を単位にした耕作が行われるようになった。集団農業である。

1979年以降になると土地請負責任制、実質的には均田制が実施され、土地は農村人口に応じて各人に配分され、家庭を単位にした耕作が行われた。この改革によって集団農業時に食糧の供給が不足していた状態は打開され、衣食の問題も解決されたほか、食糧備蓄も絶えず増大していった。だが、家庭請負責任制という土地制度によりある程度、農業の現代化プロセスは制約を受けた。

この負の結果は、政府の過ちではない。食糧安全の問題は政府が農業の発展を推進する際にまず考慮すべき問題であり、家庭請負責任制という土地モデルもこの20年余りの間に発展してきたことで、それが正確であったことが証明されているからだ。

許研究員は現代化の発展に影響を与えたいま1つの重要な原因として、「10年の動乱」(1966〜1976年に発生した“文化大革命”)を挙げた。

周恩来総理は1954年に農業の現代化計画を打ち出したが、政府は1964年、1954年以来の10年間の経験を踏まえた上で現代化措置を実施。大規模な水利工事やトラクターなど農業機械の普及などだ。だが2年後、10年に及ぶ“文化大革命”が起きたことから、農業発展はその他の業種と同様停滞に陥ってしまった。“革命”が終わると、土地は農民に配分された。

現代化の道をいかに歩むか

政府の計画は、21世紀前期までに現代化を達成するとしている。だが、現代化の道をいかに歩むかは、関心を寄せるに値する。

中国は小規模経営を基盤にした、農業人口の多い発展途上国である。こうした背景の下で進められる現代化は、先進国と比較すれば違いがあるはずだ。

中国科学院の彭珂珊研究員は、現代化の道として(1)小規模経営の下で農業の現代化を進める(2)計画経済から市場経済に転換する時期に現代化を進め、市場の発達は不健全であり、農民の組織化は低く、伝統的な体制が今でも残る、とくに流通分野での独占がいまだにその役割を果たしている(3)現代化は実際には農村の一大産業革命であり、この産業革命が農業の現代化と農業新技術の改革、農業産業化経営のプロセスを一体に融合させ、総体的に農業と農村経済構造を変革する(4)現代化モデルの多様性をより備える――の4つの特徴を挙げた上で、「中国は国土が広く、自然条件は各地区によって複雑かつ多様であるため、生産タイプにも大きな差がある。これが各地区の現代化の具体的なモデルの多種多様性を決定するとともに、それぞれ区域が専業化・分業に向けた長い道のりを歩むのは間違いない」と強調。

許研究員は報告書の中で「農業の現代化の過程では、現代的なバイオテクノロジーによる整備が重点となる。米国や日本など先進国が採用したのは、石油や化学肥料、農薬を大量に消費するモデルだった。だが、このモデルではすでに自然の生態バランを破壊する欠点が証明されているため、採用するのは憂慮される。従って、バイテクを発展させることが現代化にとって主要な方向となる。今後10年から20年の間に、バイテクは農業分野で重要な役割を果たしていくだろう」と指摘する。

この数年来、政府は優れた高効率の農業モデル地区を確立するよう奨励しているが、これは中国が先進国のような現代化の道を歩まないことを示すものだ。

4つの難題

農業現代化の過程で、中国は4つの難題に直面している。

(1)農業人口を非農業に転換させる問題。中国農業情報研究所のデータによると、現在の農村の余剰労働力は少なく見積もっても1億2000万〜1億5000万人に上り、実際労働力は年間約500万人ずつ増加している。現代化は、農民が多数を占める状態を根本的に改め、徐々に農業人口を少数にすることを意味する。50年代以前のように、農業労働力が就業者総数に占める比率を20%以下に低下させるには、毎年0.5〜0.8ずつ減らしていく必要があるが、これは容易なことではない。

(2)農業後継者の問題。中国はこれまで農業を最も重要な産業として見てきた。だが、文化的資質の高い大学生が農村から出て農村に貢献することはなく、多くの若者も農業を離れて出稼ぎや商売に従事し、農業副産物を主とする青壮年も程度の差はあれ農業をやめている。その一方で、県や郷クラスの農業技術者の大多数も農業生産に従事しようとはせず、毎年数十万に上る農業大学や短大卒業者の間でも農業生産に携わる若者は少ない。農村の労働力構造は弱体化、婦人化、老齢化の傾向にあるのが顕著だ。

(3)農業資金投入の問題。政府は2004年前まで一貫して農業収入で工業の発展を支えてきたため、農業に割り当てられる資金は非常に少なかった。2004年から増大し始めたものの、それでも国内総生産の5%にも満たない。農家の蓄え能力は低い。農村のインフラ整備や公益性サービスは政府が資金を投入するが、農家自身の現代化は農民の蓄えに依存せざるを得ない。農家の収入は毎年、その年の再生産に用いられているが、消費もとくに消費品などで目立って増加している。耕作による収入は極めて少なく、収入の大多数は副業または出稼ぎで得たものだ。農民が生産手段を改善するために十分な資金を得るのは難しい。たとえ生産手段が改良されたとしても農民の収入が著しく増加することはないため、農民のこの方面での投資意欲は薄い。農民が多額の金を出して農業を現代化することに期待するのは実際的ではなく、こうしたことが農業の現代化プロセスに影響を及ぼすのは必至だ。

(4)耕地の問題。農家の耕地規模がかなり小さいことが、労働生産力と農産品商品率の向上に大きなネックとなっている。最近、一部の地方政府が「土地の株式協力」という考え方を打ち出した。多数の農民が土地を他人に渡して耕作させ、土地の広さに応じた配当得るとものだ。だが、こうした考え方はまだ多くの農民からは理解を得ていない。その主因の1つにはやはり、株式化された後に生じる余剰労働力の就業問題がある。