繊維製品の調和ある国際貿易環境を
安子
今年1月1日から世界範囲で繊維製品の割当額が廃止された。これは中国の繊維製品の輸出企業にとってチャンスであり、またチャレンジでもある。繊維製品の貿易は急速に発展したが、同時に貿易摩擦も増加する傾向を見せている。
商務部対外貿易司の孫継文副司長は9月中旬、繊維製品の貿易動向に言及した際、「一体化は繊維製品の貿易にとってチャンスであり、またチャレンジでもある。今年1〜7月の輸出額は昨年に比べて21.4%増の615億ドルに達した。一方、割当額が廃止された個別製品については、欧米への輸出が急速に伸びた。これは貿易の歪みが解消された後の市場の正常な需給関係を反映したものだが、少数の国・地域が頻繁に保護貿易主義的制限措置を講じたことから、貿易環境は著しく不安定なものとなり、輸出入企業の正常な貿易に深刻なマイナスの影響がもたらされた」と指摘した。
中国の2004年の繊維製品輸出額は前年比20%増の951億ドルに上り、世界全体の4分の1を占めた。中国は世界でも繊維製品・衣料品の最大の生産国であり、繊維業はすでに高度に国際化された産業となっている。
しかし、中国が直面している国際貿易環境、とくに繊維製品・衣料品貿易の環境は理想的なものとは言えない。競争が激しさを増しているだけではなく、貿易摩擦も頻繁に生じている。
激化する貿易摩擦
全世界の繊維製品の割当額は期限通りに廃止されたものの、議定書「三大不利条項」への加入による制限から、中国が繊維製品貿易をめぐる自由化という成果を享受するのは難しい。第1は「非市場経済条項」により、中国製品については、敵対的な反ダンピング調査を実施しなければ「合法」的なものにはならないことだ。第2は特定製品の経過保障条項により、中国の輸出貿易の発展に越え難い溝が築かれたことだ。第3は繊維製品の特殊保障措置が、中国の繊維製品・衣料品の急成長を阻止する別の障壁となったことだ。
世界貿易機関(WTO)から欧米諸国までいずれも自由貿易を提唱しているが、真の自由貿易は中国からかなり遠ざかっており、自由貿易の発展には一貫して保護貿易主義という影が付きまとっている。
2001年、中国が繊維製品の一体化という段階的な成果を享受する前年の繊維製品の輸出額は534億4000万ドルで、前年比で2.4%増加。2004年は前年比20.6%増の950億3000万ドルに達した。繊維製品の貿易は急成長すると同時に、貿易摩擦も増加する傾向を見せている。1992〜2001年の間に中国に対する反ダンピング提訴は6件あった。うち最も影響を及ぼしたのが、日本のタオルをめぐる経過保障措置の調査であり、3年にわたる調査を経て最終的に撤廃された。この段階での案件の特徴は、数量が少なく、金額が低く、影響が小さいことだった。
2002年以降、貿易摩擦は目立って増えていった。2002〜2004年の間に新たに11件の提訴があり、再審は3件。2004年の1年間だけでも案件金額は6億6200万ドルに上る。米国は3品目の個別商品に対して特別保障措置、ペルーは臨時保障措置、ベネズエラとナイジェリアは制限措置を講じた。以上の案件に関する金額は幾度も過去最高を更新するとともに、関係する企業の数も多い。EUだけでも35品目の化学繊維製品に対して制限を設け、影響を受けた中国企業は926社に達した。
2005年に繊維製品の割当額が廃止されると、中国関連の貿易摩擦は更に激化した。1〜7月の間に反ダンピング提訴は4件に上った。米国は19品目36の個別繊維製品に対して制限を設け、また設ける計画だ。EUは10品目の繊維製品について数量管理、トルコは42品目に対して割当制限を実施。コロンビアは特別保障措置の調査を開始し、靴下について関税を設けた。このほかペルーやメキシコ、ブラジル、南アフリカなども相次いで貿易保護措置を講じる準備をしているところだ。
繊維製品の貿易が発展するに伴い、さまざまな形の貿易摩擦は長期的、複雑化、深刻化する特徴を見せており、貿易摩擦に対応するためのコストも増え続けている。中国政府とEU、米国との繊維製品紛争をめぐる交渉は絶えることなく続いている。
6月11日、中国とEUは上海で「繊維製品覚書き」に調印。これにより繊維製品企業にとって安定し、かつ絶えず改善される貿易環境が整った。
また9月5日には北京で、EU向け繊維製品の港湾差し止め問題を解決することで合意した議事録に署名。この問題が妥当に解決されたことで、EUの輸入業者や小売業者、中国企業はいずれも胸をなで下ろした。9月14日、EUの20余の港湾に2カ月近く差し止められていた繊維製品は通関した。
また議事録では、中国とEUの間で摩擦が生じた場合に紛争を解決する良好な協議メカニズムを確立することでも合意。こうしたことから、繊維製品の貿易に従事する内外企業の間に、摩擦が生じた場合には協議を通じて即刻解決できるとの自信が強まった。さらに港湾差し止めで巨大な損失を被った中国企業は、議事録の署名でその損失を取り戻すことができた。
商務部長が語る摩擦解決
中国とEU、米国との間で何度も行われた繊維製品の貿易摩擦に関する協議には、中国政府がWTO加盟後に出現した複雑な局面に対応するために見せた高度な責任感とますます高まる対応能力が濃厚に表れている。
中国側の代表を務めた商務部の薄煕来部長は、EU向け繊維製品の港湾差し止め問題を解決する交渉の後に行った記者会見で「実際、港湾に差し止められた繊維製品の大半はEUの輸入業者、小売業者がすでに代金を支払っている。差し止めによる損失は主に彼らが負担するものだが、責任ある貿易大国として、中国はこの問題の処理で理にかなった措置を取り、傍観することはなかった。EUとの経済貿易協力関係は長期的、かつ全面的なものであり、1度だけの取引ではないからだ」と強調した。
互いに理解し譲り合い、誠意をもって協力する精神にのっとってこそ、中国とEUという2大貿易パートナーはより発展して、大きな利益をともに享受することができる。中国は現在、WTO加盟後の過渡期にあり、中国と貿易パートナーの関係は相互に適応する段階にあるが、2度にわたる交渉が成功したのは幸いだった。
また薄煕来部長は「2回にわたる交渉で、3つの問題を解決した。第1は数量、第2は環境、第3はメカニズムだ。6月11日の上海での協議と9月5日の北京での補充協議によって、EUに輸出する製品の数量は大幅に増加した。次に良好な環境が形成されたことだ。繊維製品の貿易には安定した、かつ予見できる環境が必要だからであり、これは繊維製品メーカーと輸出業者にとって極めて重要なものだ。さらにメカニズムが形成されたことで、貿易摩擦が生じた際には二国間交渉を通じて問題が解決できるようになった」と述べ、協議の成果を評価した。
共同発展で共通利益を実現
9月16日、年に1度の「WTOと中国・北京国際フォーラム」が北京新聞大廈で開かれた。テーマは「中国の繊維製品貿易の発展に関する戦略的選択」だ。
国連貿易開発会議(UNCTAD)とWTO、国際繊維・衣料品ビューロー(ITCB)、EU中国駐在代表団、米国繊維製品・衣料品輸入業者協会の代表が出席して講演するとともに、中国の貿易担当高官や紡績企業の代表らと一体化後の中国の繊維製品貿易の選択と共同発展のチャンスについて意見を交わした。
商務部対外貿易司の孫継文副司長は講演の中で「中国の紡績業は競争力のある伝統的産業として、比較的完ぺきな産業チェーンと加工能力を備えるとともに、大量の熟練工を擁しており、中国はすでに世界最大の繊維製品の生産・輸出・消費大国となった。今年の統計が示すように、多くの発展途上国の繊維製品の対中輸出も大幅に伸びている。今年1〜7月までにブラジルが輸出した繊維製品は180%も増加した」と述べると同時に、中国の繊維製品が付加価値と利益率が低く、自主ブランドも少ないなどの問題を抱えていることや、経営権の自由化後の経営秩序の混乱がますます際立っていることなどを認めた。
さらに孫副司長は「ここ数年来、経済の安定成長に伴って、生活レベルは著しく向上し、消費・工業用繊維製品のニーズは増大傾向にあり、また中国は世界の繊維製品にとっても巨大な市場となっている。WTO加盟後、2004年には繊維製品の輸入関税を11.3%から10.4%に引き下げるなど、加盟時の公約を繰り上げて実施した。現在、綿花と羊毛については輸入関税と割当額を実施しているが、それ以外はいかなる輸入制限措置も講じていない。外資導入に関しては、WTOのルールとWTO加盟時の公約に合致する政策を制定し、外資の繊維製品市場への参入を奨励している。中国の繊維製品市場は開放されており、その他の国との間で高度な相互補完性を有しており、各国の繊維業界が中国に投資して協力を拡大することを歓迎する。中国と世界の繊維業界は積極的な交流を通じてともに発展し、共通の利益を実現することができる」と強調した。
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