2005 No.43
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世界のブランド確立にはどれほどの
時間が必要か

中国ブランドを世界に進出させ、世界に通用するブランドにするには、まだ長い時間が必要だ。

蘭辛珍

コカ・コーラと言えばアメリカが思い出される。またベンツと言えばドイツ、ソニーと言えば日本を思い出す。だが、どんなブランドを言えば中国が思い出されるのだろうか。

2005年9月3日、中国ブランド戦略推進委員会は「2005年中国ブランド商品」の選定結果を発表し、461社の501品目の製品が指定された。

しかし、中国ブランドはいまだ世界のトップブランドからはほど遠い。世界ブランド実験室(World Brand Lab)が今年4月18日に発表した2005年度の「世界ブランド500」に仲間入りした中国ブランドは海爾(ハイアール)、聯想(lenovo)、中央テレビ局(CCTV)、長虹(ChangHong)の4種しかない。

現在、中国には170万種のブランドがあり、アメリカと大差はないが、世界的に知名度の高い有名ブランドはいくつもない。「世界の工場」でありながら、ブランドの数に比べて世界的なブランドが極めて少ないことから、中国は他のいかなる国よりも自らの世界のブランドの確立に迫られている。

こうした現状を変えるため、政府は2002年にブランド育成戦略を政府活動報告に盛り込んだ。ブランド育成戦略を推進する学術機関も政府の支持を受けて発足し、産業界や知的財産権などに関する行政機関もブランド保護の強化に取り組んでいる。

2004年に「世界ブランド500」に指定された中国ブランドはハイアールしかなかったが、2005年には4種となった。

今後、中国企業が海外市場に進出し、また合併・買収や広告、製品の影響などを通じて国際社会に熟知される中国ブランドはますます増えていると予測する専門家もいる。

ブランドと経済の不釣合

中国企業連合会の陳錦華会長は、「中国のブランドは世界経済の中で急成長を続ける経済と明らかに釣合が取れていない」と指摘する。

昨年の中国のGDPは世界第7位、輸出額は5934億ドルと世界第3位となった。しかし、外国ブランドを使用した加工貿易による輸出が約45%、外国ブランドによる輸出が45%ずつ占め、自主ブランドによる輸出は10%足らずだった。中国は主に加工生産という手段で国際分業に参与しており、商品の開発や販売などはいまだに外国側に左右されている。

こうした現状から、国際市場では中国製品のほとんどは「質が悪く値段が安い」というイメージがある。外国の消費者が中国製品を購入するのは、中国ブランドを見てのことではなく、廉価だからだ。

中国製品は廉価だからと言って必ずしも品質が悪いわけではない。今年5月、第8回中国国際科学技術産業博覧会の中国経済サミットに出席するため北京を訪れたノーベル経済学賞受賞者のナッシュ氏は「私が今日履いている靴は10年前に買ったものだ。とても丈夫で質も良い。『made in China』だが、どのメーカーが生産したものかわからない」と語っている。

品質は良いが、ただ自らのブランドがないがゆえに、外国に輸出されると低級商品にしか見なされない。例えば、かつて中国の花形商品だった絹織物や陶磁器はいまは低級品だ。また「ネクタイの故郷」と呼ばれる?州市は高級シルク製ネクタイを年間1億5000万本輸出しており、年間販売量は世界の約3分の1を占めているが、海外市場では1本20元(1元は約13.5円)で売られている。それに対し、ヨーロッパ製のシルクのネクタイは数百ユーロ前後。中国は陶磁器の大国ではあっても、日常使用する食器から入浴設備に至るまで知名度があるのは日本やドイツのブランドだ。同じ陶磁器の灰皿でも、中国製は5元、ドイツ製は250元と、価格に大きな開きがある。

中国ブランド戦略推進委員会の王秦平副主任は、「20数年前から安価な労働力に依存して加工貿易を志向し、ブランドの開発や育成をあまり重要視してこなかったのが根本的な原因だ」と分析する。

中国は自主ブランドが少ないため、安価な資源や労働力によってわずかな利益を得ることしかできない。1本あたりのコストが32元の綿100%のスラックスはアメリカでは40〜50ドルで売られているが、中国企業が得るのは約10元の加工費だけだ。

ブランド育成への障害

ここ20数年来の経済発展の過程で、ハイアールや長虹、康佳、小天鵝など数多くの優れたブランドが創出された。これらの有名ブランド品は品質、性能ともにアメリカや日本などの同類のブランド品に劣らないが、ごく少数を除き、ほとんどが世界のブランドにはなっていない。その原因はどこにあるのか。

マッキンゼー(McKinsey)社が発表したレポートで明らかにされたように、中国メーカーにはいまだアメリカやヨーロッパ、日本など重要な市場に受け入れられるブランドの確立とマーケティングに関するポリシーに欠けている。

王副主任によれば、中国ブランドを育成するには主に2つの方法がある。1つは、国家商工業行政管理総局商標局が「有名商標の認定と管理に関する暫定規定」に基づいて認定を行う。いま1つは、国家質量技術監督検査検疫総局から権限を授けられた中国ブランド戦略推進委員会が発表した「ブランド商品」に基づいて認定するというものだ。

「ブランド商品」あるいは「有名商標」に認定された製品の有効期間は3年であり、有効期間内であれば、その製品については包装や使用説明など関係資料の中で「ブランド商品」あるいは「有名商標」のラベルを使用することができる。また各地区や各機関が様々な形で実施する品質に対する監督や検査は免除され、「ニセモノ取締り・ブランド品保護」キャンペーンでは重点的な保護の対象とされる。

しかし、「ブランド商品」にせよ、「有名商標」にせよ、いずれも二つの大きな欠点がある。第1は、中国語によるブランド名は海外市場で認知度が低いこと。第2は、中国語と欧米の言語では体系が全く異なるため、たとえローマ字表記にしても、正確に発音するのは難しいことだ。これをブランド名にするのは避けるべきである。

近年、国際市場に進出するため、製品に中国語のほかに、英語によるブランド名をつける企業も出てきた。

国内においては、中国ブランドの育成には大きな障害が横たわっている。外国崇拝の消費心理やブランドの知的財産権の侵害などだ。

ローランド・ベルガー社中国地区の呉h副総裁は「中国ブランドは世界進出にあたり3つの難題に直面している」と指摘した上で、発達した市場におけるブランドの差別化に対する要求を満たすことができないこと、国内で形成されたブランドバリューを海外で発揮させることができないこと、効果的かつ戦略的なブランド戦略が欠如していることを挙げている。さらに呉副総裁は「中国ブランドのグローバル化は欧米市場をターゲットとしており、急成長中の中国市場と違って、欧米市場はほとんどが成熟期に入っている。一方、中国企業は業界基準の策定には参与しておらず、技術追随の段階にとどまっているため、市場や業界の発展に対する影響力はかなり限られている。こうした状況の下で、中国企業が相手を追い越すのは非常に難しい」と指摘する。

国内の一流ブランドは国内市場では強みがあり、技術や開発などの面でも国内の消費者に認められてブランド自身に価値はあるものの、海外市場に進出しても、国内と同様の価値がないため、ブランドバリューを海外で発揮させることはできない。

どれほどの時間が必要か

世界的な製品はあっても世界的なブランドに欠けているため、外国ブランドのために汗水流す企業と化した企業がかなり多いのが実態だ。

ローランド・ベルガー社の顧問を務める張蕾?氏は「中国ブランドのグローバル化を実現するには、何よりもまず戦略的なブランド管理の方法を導入しなければならない。その第1歩は、企業の位置づけを明確にするとともに、ブランドイメージを構築するほか、新製品の開発なども必要となる」と指摘。

期待がもてるのは、こうした点を意識して大量の資金を投入し、顧客のニーズに合った新製品の開発などに取り組む企業が増えてきたことだ。

その先頭に立つのが、華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ)である。研究開発に大量の資金を投入することで、技術の先進性と国際市場での認知度は絶えず向上している。今年4月28日、華為は唯一の中国メーカーとして、多国籍企業7社とともにブリティッシュテレコムの21世紀インターネットポータルサイトに指定された。華為公司にとっては国際市場開拓に向けた重要な一里塚であり、華為ブランドは本格的な国際化に向けて歩み出した。

ブランドのグローバル化は中国企業の海外市場開拓にとって必要不可欠であり、企業の競争力を高める重要な契機ともなる。ただし、中国企業が世界に通用するブランドを確立するには、まだ長い時間が必要だ。

張蕾?氏は「ブランドのグローバル化は漸進的なものであり、根気よく努力を積み重ねていく必要のあることを認識しておかねばならない。数多くの日韓企業は20、30年にわたって努力を続けた末に、国際市場に進出できた。中国も性急になってはならず、一夜にしてブランドを育成することに期待せず、根気よく努力していかねばならない」と強調する。