2005 No.44
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いかに大都市の人口問題を解決するか

――都市化のテンポが一部地方で過度に進み、国の総体的経済水準と均衡が取れなくなってきたことから、都市問題が様々な脆弱な部分で噴き出し、「都市の危機」になりつつある、とある学者は警鐘を鳴らしている。

馮建華

今年8月1日、急増する人口を抑制するため、深?市政府は地方出身者の戸籍開設申請を凍結することを明らかにした。ここ1、2年来、深?市政府は次々と人口抑制を旨とする一連の措置を打ち出してきたが、今回は一段と強硬な措置となっている。

1990年代中ごろから、経済の急速な発展に伴って、都市化の波が国内で巻き起こった。各地方政府が推進する中、多くの都市が地方出身者に対しそれまで長い間閉じてきた“大門”を開き始めためことで、都市部と農村部、都市と都市との間で人的流動が絶えず加速されていった。

中小都市を大々的に発展させることが、政府が都市化に向けて選択した主要な方向だったが、大量の移転者は予想していたように中小都市に向かうどころか、経済が発達した大都市に殺到してしまった。このため一部大都市では、生態環境危機や経済・社会的問題が日増しに厳しさを増していった。なかでも北京や上海、天津、重慶、深?など発展の最も急速な超大都市では潜伏的な危機が増大しつつある。例えば、90年代以降、上海では高層ビルが増えるにつれて、地表は負荷に耐えられなくなり、地盤沈下が日増しに深刻となっている。年に平均1センチの沈下は、地下鉄や高層ビルの構造に影響を与えている。

このため、一部の大都市は戸籍申請を制限するか、あるいは開いたばかりの“大門”を閉じる政策を講じるようになった。これは中国政府の提唱した都市化戦略に逆行するものだ。このような時代の流れに逆らうやり方には当然、疑問が呈されている。

難題

香港と隣接し、改革・開放の最前線だった深?は、無数の若者が夢を追い求める“パラダイス”的な存在だった。その開放性と包容性から、深?は中国の経済発展史で数々の奇跡を遂げたが、ここに至って、思いもかけず「都市の門」を閉じるという保守的なやり方を選択した。

今年4月初め現在、登録された流動人口は1025万人に達しており、戸籍を有する165万人を加えると総人口は1200万に近い。そのうち、居住期間が1年未満の流動人口は少なくとも600万人。大量の流動人口は、政府の管理能力からみれば大きな問題であるのは確かだ。

西側社会を見ると、都市人口が300万から1000万に膨張するまでに通常、百年以上かかっている。しかし、30年足らずの歴史しかない深?は、わずか10年という短期間にこの一線を越えてしまった。

80年代、深?は人口80万を基準に都市計画を作成。「第10次5カ年計画」(2001〜2005年)での2005年の計画人口目標はわずか480万人だ。考えても分かるように、1200万の人口を抱える深?は、多くの面ですでにその重荷に耐えられなくっている。水資源を例にすれば、全国でも水不足の深刻な7都市の1つに数えられており、1人当たりの淡水保有量は全国の4分の1に過ぎない。

深?では今後、土地や空間資源、エネルギー、水資源、人口がもたらす諸問題、環境負荷などが一段と厳しさを増していくだろう。

深?経済特区は経済改革の「試験地区」であるため、深?の問題は深?の問題だけにとどまらない。その他の都市の政策決定者にとって、深?の今日の悩みは明日の悩みとなるかもしれない。深?がどのようにして深刻な問題を解決するかが、多くの都市にとって参考になるのは間違いない。

北京市統計局の最新人口統計報告によると、北京の常住人口は1949年の420万1000人から2004年に1492万7000人まで増加。また流動人口は毎年約20万人近くに上る。人口増に由来する重大な問題が水資源や土地資源を一段と逼迫化させ、交通渋滞問題をさらに深刻化させているほか、環境問題も日増しに厳しくなりつつある。

人口の過大な増加と資源の深刻な不足に直面する都市はそう多くはないが、北京や深?の2都市だけに限らない。現在の状況から見れば、このような大都市が近い将来ますます増えるかもしれない。このため、どのようにして問題を解決するかが、中国政府に課せられた緊急の難題となっている。

解決策

1978年に改革・開放政策を実施して以降、経済の急成長に押される形で、重要な市場の要素である労働力の自由な流動が日増しに頻繁になっていった。特にここ数年、移動は一段と自由化され、より広い範囲で進んでいる。これは中国社会ではかつて見られなかったことだ。この面から言えば、人口の移動が都市にもたらした一連の社会問題は正常なものだと言えるだろう。

中国社会科学院世界歴史研究所の黄柯可研究員は「人口の流動はまだ最高地点には達していない。産業構造について言えば、第3次産業が最も多く、次に第2次産業、第1次産業が最も少ないのが最適な割合だ。国際的には、農業人口の割合はほぼ5%以下、第3次産業の人口が70%以上を占めている。中国統計年鑑によると、2002年の労働力は農村部が依然として50%、第2次産業が21.4%を占めており、第3次産業はわずか28.6%だ。このため、社会の発展傾向から見れば今後、より大きな人口移動のピークに直面するのは間違いない」と予測している。

ここ数年来、農村労働力の小都市への移動は減少しつつあり、これとは反対に大都市への移動が増加しつつある。

このように極めて対照的な事態になったのは主に、政府の財政・投資政策の偏りと大きな関係がある。高度経済成長期の公共投資は著しく大都市に傾斜していた。例えば北京だ。人口は全国の1%に過ぎないが、財政支出は全国の2.7%も占めている。

こうしたことから、日本の神戸大学法学院の季衛東教授は「都市人口の増加と資源の不足という問題を効果的に解決するには、財政支出を調整しなければならない。公共投資の重点を北京や、上海などの大都市から各地方へとシフトさせることだ。その地方で福利面での給付が増えさえすれば、社会に全面的に発展する態勢が整うことになり、多くの人が恐らくこれ以上は大都市に移動しなくなるだろう」と指摘している。

再考

中国経済の持続的な高度成長は、都市化の常規を超えた進展がもたらしたものである。都市化率がまだ40%足らずの中国は2050年までに、先進国が遂げた都市化率75%を達成するという大胆な目標を掲げた。先進国が3、400年費やして実現した目標を4、50年で実現しようというものだ。

国連開発計画(UNDP)と国内いくつかの研究所が共同で発表した研究報告「中国の都市汚染の抑制」は、「一部大都市の空気汚染は全世界で最も深刻である」とし、政府は有力な経済措置を講じて都市汚染を抑制してはいるが、「都市は依然として全世界で煙霧が最も深刻であり」、また「環境悪化の問題が依然として重大である」と指摘。なかでも、超大都市の空気汚染は中小都市に比べ著しく深刻だとしている。

こうしたことから専門家は、これまで歩んできた「都市化」路線は科学的に合理的なものなのか、75%という都市化率は将来の発展に最適な選択なのか、といった疑問を呈している。

建設部の仇保興副部長は10月初めに開かれた会議で「都市化を進める過程で現在、一部地方に浮き足立ったところが見られる。市民に労苦を強いて資金を無駄にするだけの見掛け倒しのプロジェクトを実施したり、少ない資源を過度に開発したり、しっかりとした計画もなしにインフラ整備を進めたりしている。さらに非現実的なのは、全国661都市のうち国際化された大都市、あるいは国際都市の建設を打ち出した都市がなんと100以上もあることだ」と指摘している。

四川省成都市社会科学院の陳伯君副院長は、こうも指摘している。「現在の『都市化』は、本末転倒した『都市化』だと言っていいだろう。西側諸国が都市化を進めた初期と同じ過去の道を再び歩み、同じように高い経済的コスト、社会的コストを払っているからだ。農村の総面積と人口が3分の2を超える国が、短期間のうちに都市化によって農村の発展問題を解決するのは全く不可能である。それは人口が多く、1人当たり土地保有面積が世界平均水準を下回っているという基本的な国情に合わないからだ。社会の持続可能で協調の取れた発展を実現するには、都市経済と農村経済が相互に依存し、相互に促進し合うようにすることが肝要である。中国は今、都市化を止めるのではなく、そのテンボを緩めるべきだ」と。

参考資料

◆最新の世界人口最多20都市

2005年2月16日、国連の人口発展委員会は人口に関する報告書をまとめ、世界で人口が最も多い20都市を公表した。上海と北京はそれぞれ10位、18位。

上位10都市は以下の通り。東京3530万人、メキシコシティー1920万人、ニューヨーク・ニューバック地区1850万人、インドのムンバイ1830万人、ブラジルのサンパウロ1830万人、インドのニューデリー1530万人、インドのカルカッタ1430万人、アルゼンチンのブエノスアイレス1330万人、インドネシアのジャカルタ1320万人、上海1270万人の順。以下20位までダッカ、ロサンゼルス、カラチ、リオデジャネイロ、大阪・神戸、カイロ、ラゴス、北京、マニラ、モスクワと続く。

世界各国で都市化が加速するにつれ、人口1000万を超える「超大都市」の数が急増している。1950年には、人口が1000万を超える都市はニューヨークと東京しかなかったが、1975年に上海とメキシコが1000万以上に達し、現在、1000万以上の人口を抱える大都市は20を数える。

同報告書によると現在、世界の人口は65億に達しており、そのうち都市部に居住するのは32億。その数は2030年には50億に達する見込みで、世界の総人口の61%を占めるという。

地域によって都市化水準の格差は非常に大きい。中南米・カリブ海地域では、75%が都市部に居住しているが、アフリカとアジアでは都市人口の比率はわずか40%。