2005 No.46
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自然災害への対応で直面する試練

――王振耀・民政部救災救済司司長に聞く

馮建華

「国際防災の日」の10月12日、全国範囲で防災活動が行われた。一連のキャンペーン活動と防災訓練を通じて、全社会の防災意識と災害対応能力を高めるのが狙いだ。

世界で自然災害が最も深刻な国である中国は絶えず、自己防止システムを完備すると同時に、防災分野での国際協力を模索しながら推進してきた。中国政府の提唱で9月27〜29日にかけて、北京で初のアジア防災担当閣僚会議が開かれ、会議は今後10年のアジア地域の防災協力の重点分野について議論するとともに、具体的行動計画を定めた北京宣言を発表した。

テロ攻撃やエネルギー危機に次いで、深刻な自然災害をいかに防止するかが、世界各国が現在直面している重大な試練だ。昨年の12月のインド洋大津波、今年8月のハリケーン「カトリーナ」の米国南部上陸の後、10月8日にはパキスタン北部で大地震が発生し、死者は4万人近くに上り、約400万人が家を失った。

自然災害が頻発している今、中国には十分な備えができているのか。現在、主にどんな試練に直面しているのか。

本紙は先ごろ民政部救災救済司の王振耀司長にインタビューした。王司長は現在、全国の災害救援活動を展開する最高行政機関――国家防災委員会弁公室の常務副主任も務めている。米国ハーバード大学ケネディー学院で1年間研修し、流暢な英語で同分野の外国人と交流を重ねている。

記者 この2、3年来、世界的に深刻な自然災害がますます頻繁に起きており、「大自然の人類の破壊行為に対する集中的な懲罰だ」とよく言われている。これについてどう考えるか。

王司長 ただ一定の道理はあっても、すべてを大自然に対する破壊に帰結させることはできない。一部の科学者は大自然の周期現象であると考えているからだ。この2つの言い方は併存させるべきだろう。

だが、はっきりしている点はある。ハリケーンや大面積の土石流など、世界で極端な気象現象が増え続けていることだ。しばらく前、北京の中心部で狭い範囲ながらひょうが降った。これは局部的に深刻な自然災害を受ける典型的な例であり、非常に重視する必要がある。

その背景から分析して、2つの主因があると考えられる。深刻さを増しつつある全地球的な温暖化と砂漠化である。この数年来、相次いで台風に見舞われたり、深刻な干ばつや洪水が頻発したりしているのもこれが原因だ。例えば、東北地方の遼寧省西北部では6年続けて深刻な干ばつが起きており、こうした現象はこれまで見られなかった。多くの地方で、現代化は進展しているが、生態システムの脆弱性がそれに伴って深刻化しており、そこに非常に大きな社会的リスクが潜んでいると言っていいだろう。

記者 世界的に災害が頻発している中、中国が直面している防災をめぐる状況は一段と厳しくなっているのではないか。

王司長 確かに非常に厳しい。中国は世界でも自然災害が最も深刻な数少ない国の1つであり、90年代以降、自然災害の発生率とそれによる損失は明らかに上昇傾向にある。自然災害では、洪水と干ばつ、地震による損失が最も深刻で、全体の80%以上を占める。国土面積の3分の2が程度の差こそあれ洪水の脅威にさらされており、半数近くの都市が地震発生帯上に位置し、災害のリスクは非常に大きい。

概括すれば、自然災害には「2高2低」の特徴がある。「2低」とは、死亡者数の減少と倒壊家屋数の減少だ。過去、一般に、自然災害による死亡者数は年間3000人を超えていたが、最近の5年間は3000人以下まで減少している。倒壊家屋数は過去平均300万棟以上だったが、現在では200万棟以下だ。これはもちろん、家屋の質的向上と大きな関係がある。

「2高」とは、1つは緊急移転者数の増加だ。ここからある程度、住民の避難意識が向上しつつあることが見て取れるだろう。いま1つは、経済損失の増大だ。過去、年間損失額が1000億元を超えることはなかったが、現在では一般に1500億元以上であり、最高で3000億元に達したこともある。災害の深刻さが絶えず増大しているほか、無視できない客観的要素もある。交通基盤施設が大幅に改善されてきたことから、一旦災害が起きれば、大面積にわたって基盤施設が破壊され、現地の損失が増大することだ。

記者 災害救援という専門職に従事するトップとして、これまで数多くの特殊な体験をしたのでは。

王司長 仕事は確かにきついし、プレッシャーも非常に大きい。我々は常に1つの災害を処理すると、全く休む間もなく、次の災害現場へと急ぐ。過去と異なるのは、政府の高官はいち早く災害現場に赴き、電話が遮断されていれば無線で指揮を執るよう要求したことだ。災害救援専門機関の責任者として、中央指導部の直接的な指示を頻繁に受けるようになり、仕事をいささかでも疎かにすることはできないが、内心のプレッシャーは非常に大きい。

記者 厳しい状況を前にして、災害を最低程度まで抑えるために、いかに最大の努力を払うべきか。

王司長 まさに現在直面している厳しい状況に対して醒めた認識があったからこそ、1998年に政府は防災活動を国の発展計画と社会政策に盛り込むとともに、『中華人民共和国防災計画(1998〜2010)』を制定した。私の印象では当時、中国を除いて、防災活動をこれほどまで高めた国はほとんどなかったように思う。

2004年に国務院が指導する協調機構である国家防災委員会が設立された。メンバーは災害と関係する部・委員会だ。これ以前も、防災活動に当たっては各部・委員会の間での協調性が非常に重視されていたが、強力な協調機構がなかったために、いわゆる協調性は多くがプロセスに偏り、常に電話で簡単に連絡を取るだけで、実質的な動きは見られなかった。深刻な災害が生じた場合、例えば、水害では水利機関が、地震では地震局といった具合に、往々にして1つか2つの主要な機関しか防災活動に参加しなかった。その他の機関は、できるところがやればいいと、主観的な能動性に欠けていたために、防災活動が遅れを取ることがよくあった。

こうした問題に対処するために、国家防災委員会が設立された際、各部・委員会の協調体制に関して明確な規定が設けられた。各方面の権利と責任が区分されたことで、過ちが生じた場合には、その部・委員会とその責任者が必ず罰せられることになった。こうした制度上の規制があれば、災害救援活動は大幅に改善されると言っていいだろう。

現在の災害緊急救助システムには、幾つか非常に重要な原則的な規定がある。毎年、年初に重大な自然災害に関する予測会議を開催し、24時間監視体制を全国で実現し、重大な災害については24時間体制で被害状況の報告制度を実施する。救援資金と物資の緊急支給体制を確立し、中央政府の緊急救援資金については災害発生後3日以内に被災地に支給し、救援物資の第一陣は24時間以内に被災地に届けるなどだ。

政府はこの数年来、ハイテク手段の運用を非常に重視して防災活動を促進し、すでに比較的完備された気象、海洋と地震などの災害衛星監視観測ネットワークが確立された。現在整備中、また間もなく供用される防災小衛星星座システムによって、自然災害に関する予報、警報、評価、情報サービス監視観測システムは一段と改善されるだろう。総じて言えば、災害緊急救援システムは比較的効率が高く、ある程度の効果は上げることができる。

記者 いま言われたように、災害防止システムにはいかなる問題もないのか。

王司長 そんなことはない。客観的に言えば、システムはかなり大きな試練に直面している。主に次の3点だ。

先ず、全市民の防災に対する意識が低いことだ。これは早急に改善していかなければならない。意識の低さはある面で、中国人の伝統的な文化による心理や、価値観と大きな関係があるかも知れない。例えば、災害がじきに来るという時に、古里は離れがたいという伝統的な概念から、死んでも一生暮らした地を離れない、という老人もいる。また、財産のほうが命より大事だと考え、避難して命を守るのではなく、財産を守ろうとする人もいる。そのために多くの人が、いたずらに命を落としているのだ。

現在、市民が受けている防災意識に関する教育は、多くが実際的なものではない。例を挙げれば、掲示板などに意識向上のためのポスターを貼るだけで満足しており、西側諸国が行っているような避難訓練などはほとんどない。

また農村部に情報伝達システムが完備されていないことも、救援活動をする上で大きな障害となっている。辺ぴな地区ではより深刻だ。山村が洪水あるいは土石流に見舞われても、その情報を速やかに下流地区に伝えることができるなら、多くの人が人的被害や財産の損失を免れることができる。だが、こうした有効な災害情報システムが欠乏しているために、多くの地区が洪水に見舞われてしまうことになる。

このほか、救援物資の備蓄が不足していることも、現在直面している課題だ。すでに10の中心都市に中央政府の救援物資備蓄倉庫があり、一部の災害多発地区、災害の発生しやすい地区にも備蓄倉庫がつくられている。救援は主に政府が主導し、救援資金も主に政府の財政が主体となっているが、一部で社会の寄付もある。救援資金の財源が単一化しているのも、救援物資が不足している重要な要因の1つだ。

だが、こうした状況は徐々に変わりつつある。救援慈善事業の発展を促進するために現在、税の減免など優遇政策の制定に取り掛かっているからだ。制定されれば、より多くの社会機構、民間組織や個人が救援活動に参加できると信じている。

記者 いま述べたように、中国の救援活動は一貫して政府が主導してきた。一方、その他の国、とくに西側諸国では、最も早く救援活動を始めて重要な役割を果たしてきたのが、活発な非政府組織(NGO)だが、こうした状況をどう見るか。

王司長 確かにそうだ。だが、一旦重大な災害が起きた場合には、どんな国でも、政府が主導的役割を果たすべきだろう。従って、中国はこうした「優位性」を保ちながら、同時に、国際社会に積極的に学んで、できるだけNGOの積極性を引き出していくことが必要だ。