2005 No.46
(1107 -1113)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

2006〜2010年:老齢化にどう対処するか

――全国老齢工作委員会弁公室の袁新立副主任に聞く

中国政府は今、急激に訪れる老齢化にどう対処するかを重点に、老齢事業の発展に関する「第11次5カ年計画」(2006〜2010年)の制定に取り組んでいるところだ。

このほど、本誌記者は同計画の草案を担当する全国老齢工作委員会弁公室の袁新立副主任にインタビューした。以下はその一問一答。

記者 中国の老齢化にはどんな特徴があるのか。

袁副主任 主に三つの特徴がある。第1は基数が大きいことだ。2004年末現在、60歳以上の老人は1億4000万人で、総人口の約11%、65歳以上は9680万人で、7.6%を占めている。老齢者の数は一部の国の総人口よりさらに多い。

第2は、地区によって発展が不均衡なことだ。現在、経済が発達した東部地区では老齢者の比率は14%に達しているが、西部の貧困地区では9%未満である。これは主に経済発展の不均衡がもたらした結果だ。

第3は、高齢化のスピードが速いことだ。国際基準によると、65歳以上の老齢者がその国の総人口の7%、あるいは60歳以上が10%を占めた場合、その国は老齢化社会を迎えたことになる。この基準に照らせば、中国は1999年から老齢化社会になっている。歴史の発展規則から見れば、1つの国が成年型から老齢型に変わるまでには一般的に50〜100年かかるものだが、中国はわずか20年で転換してしまった。また、異なる点もある。先進国は豊かになってから老齢化社会を迎えたが、中国は豊かにならないうちに老齢化社会になったことだ。

記者 急速に訪れている老齢化に対処する準備は充分にできているのか。

袁副主任 客観的に言えば、物質的準備や政策や制度からも、思想や考え方から見ても、充分な準備はまだできていない。人口の発展動向から見れば、中国では老齢化のピークはまだ訪れておらず、老齢人口は2030〜2040年の間に総人口の25〜28%を占めると思われる。これは国の政策に大きな圧力をもたらすことになるだろう。

記者 老齢年金は大きく不足しており、そのうえ今後20年間に不足分を全額補てんするのは難しいと言われているが、そうなのか。

袁副主任 確かにそうだ。現在、老齢年金の不足額は約2兆に達している。これは「歴史的な欠損」だと言うべきだろう。すでに定年退職した老齢者の大半は、1949年の新中国建国前後に仕事に参加した人たちだ。その時代は経済的に貧しく、政府が蓄積を重視したことから、若者たちが賃金報酬を大幅に上回る労働をするといった「非常規性」が深刻化した。そのうえ養老保険体制はまだ構築されておらず、一部の人の養老問題は基本的にはそれぞれの職場が解決していた。そのため、統一した養老保険制度(年金の原資は社会と個人がともに負担する)が構築された現在でも、政府はあくまでもこれらの定年退職した老齢者の面倒を見なければならない。

このような状況の中、経済力が増強するに伴って、ここ数年来、政府が老齢年金の補助に毎年570余億元を拠出すようになったことから、大多数の地区で期限通りに年金の定額給付が可能となった。

記者 昔から中国の老人は家族と一緒に老後を送ってきたが、老齢事業の発展に関する「第11次5カ年計画」の中に、これについての特別な規定はないのか。

袁副主任 計画では、今後5年間は、家族と一緒に老後を送ることを根底に、社会のサービスを受け、企業や機構が支援する扶養方式を採用することを特に強調している。中国の老人は伝統的な考え方が強く、子供と一緒に暮らす大家族の生活に慣れているからだ。

計画では、このような扶養方式に合わせるため、介護サービス業の発展を地域社会の整備計画に盛り込んだ。今後、地域社会は老人サービスセンターやバリアフリーの施設、老人のための地域サービス要員の設置など、関連する整備を進めていくことになる。現在、こうした政策は全国10都市で試験的に実施されている。

記者 現実には、さらに際だった問題がある。多くの老人福祉施設の間で需給の不均衡が生じていることだ。設備が良ければ、費用が高いために大半の老人は支払えない。支払えるかと思えば、設備が気に入らなかったりする。そのため、多くの施設が入居者は少なく、あるいは経営不振に陥っている。長い目で見れば、これは施設の発展にマイナスとなるだろう。政府はどのようにしてこうした局面を打開するつもりか。

袁副主任 現在、老人福祉施設は全国で4万カ所あるが、ベッド数は老齢者総数の0.8%を占めるにすぎない。国際基準に照らすと、比率が5〜8%に達成して初めて実際的な需要を満たすことができる。例えば、北京で最大の施設でもベッド数は約500床しかない。そのため、より多くの、より良い施設を建設するにはまだまだ長い時間がかかるだろう。

こうした状況に直面して、各地方政府は様々な社会資本が老人扶養サービス業に参入するよう奨励しており、関連する免税政策を打ち出したほか、財政面からも補助している。例えば、上海市政府はここ2年来、社会資本が施設を建設する場合、1ベッドあたり年間5000元の補助金を支給している。北京では1ベッドにつき毎月100元だ。私は、これは実際には、政府が金を出してサービス施設を購入するものだと考えている。しかし、強調しなければならないのは、老齢事業が過度に早く市場化されることはない、ということだ。一般的に老齢産業と言わずに、老齢サービス業と呼ぶゆえんだ。

制度面では、全国老齢工作委員会は建設部と共同で老人福祉施設の等級・分類評価制度をスタートさせた。これは世界とリンクさせるというものだ。現在の施設の玉石混合の状態は、業界に等級基準がないことと大きな関係がある。基準が制定されれば、例えば、危篤にある老人が心静かに死に臨み得るホスピスや、疾病を患って行動の不便な老人向けの看護施設など、各施設は様々な層のニーズにより応えることができるだろう。

記者 国外と比べ、中国の老齢事業にはどんな格差があるのか。また、どんな長所があるのか。

袁副主任 格差は比較的はっきりしている。先ず、看護要員の専門レベルと総合的資質の差が比較的大きいことだ。これは老人福祉施設が職員の養成を重視しないことと大きな関係がある。職員は仕事に就く前に簡単な訓練を受けるだけであり、もっとひどいのは、看護を1つの職業として見なさずに、アルバイトを何人か雇えば十分だと考えている施設が多いことだ。給料や待遇が比較的低く、看護要員の入れ替わりも速いため、専門レベルの向上に影響を及ぼしている。

ここ数年来、多くの都市あるいは老人福祉施設で、合唱や踊り、モデルなどの老齢者を対象にした活動がますます増えてきており、多くの老人が自分の好みに合った娯楽・教育活動に参加し、幸せな老後を送っている。

記者 幸せな老人と言っても、それは都市部に暮らす一部の老人のことでしょう。老人の大半は農村部に暮らしており、現在、もっと重要なのは、これらの老人の物質的生活をどのように保障するかということだ。政府はどのようにこの問題に対処し、解決するのか。

袁副主任 農村の老齢化問題の解決は、老齢事業の発展に関する「第11次5カ年計画」で重点項目に据えた。都市化プロセスが加速するにつれて、農村部から大量の余剰労働力が都市部に移動するようになったため、多くの老人が家族から取り残され、長年にわたって子供に依存して老後を過ごすという伝統的な方法が大きく崩れ始めており、老人扶養のリスクが潜在している。そのため、農村に暮らす老人については、二つの問題の解決に力を入れる必要がある。1つは、扶養の問題、もう1つは医療の問題だ。この二つの目標を達成するために今、農民の最低生活保障制度や貧困支援制度、新しい農村医療制度を模索、構築しているところだ。