2005 No.48
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重要かつ差し迫った政府の改革

――専門家は「改革が推進するか、転換が図れるかはかなりの程度、政府の職能の転換にかかっている。今後5年の間に、政府の整備と改革が経済体制改革の中心、重点の一つとなる」と分析する。

張志萍

10月中旬、北京で閉幕した中国共産党第16期中央委員会第5回全体会議は「科学的発展観をもって経済社会の発展の全局を統率し、社会主義の調和の取れた社会の発展戦略を構築する」などを内容とする今後5年間の発展に関する青写真を描き上げた。会議で審議・採択された「国民経済と社会発展の第11次5カ年計画(2006〜2010年)の制定に関する中国共産党中央の提言」(以下「提言」と略称)は、「政府の職能の転換が改革を深刻化させる上で重点となる」と明確に打ち出している。

中国(海南)改革発展研究院の遅福林執行院長は「5カ年計画の期間中、改革によって三つの面で大きな変化が起きるだろう。第1は、ミクロ体制の改革からマクロ管理体制の改革への推進と転換だ。第2は、競争分野における改革から独占分野における改革への推進と転換だ。第3は、経済体制の改革から社会体制の改革への推進と転換だ。改革が推進するか、転換が図れるかはかなりの程度、政府の職能の転換にかかっている。政府の整備と改革が客観的に見て経済体制改革の中心、重点の1つとなる。5カ年計画は政府の職能の転換を重点にしており、各種の改革も新たな進展を遂げるだろう」と強調する。

新華社は政府改革の意義について「『提言』は、科学的発展観を全面的に履行し、職能転換を含む政府の改革を引き続き推進して、社会主義市場経済に適した政府の行政管理体制と運営メカニズムを構築するよう強調しているが、これは科学的発展観を全面的に履行する基本的要求と目標の一つであり、経済社会の発展を全面的かつ協調の取れた持続可能な発展に向けた軌道に着実に乗せて、5カ年計画を全面的に実現する基本的原動力、基本的な保証となるものだ」と論評している。

政府の職能の再位置づけ

世界経済フォーラムが9月28日に発表した「2005・2006年世界の競争力に関する報告」では、中国は世界第49位となり、3年連続して順位を落とした。フォーラムのカルロス・チーフエコノミストは「中国の問題は主に公共機構に存在している。増え続ける失業者や高齢者に対応するため社会基本保障システム体系を改善する、人的資本の持続可能な発展を確保し、法治を改善するため保健・教育システムを質的に向上させるなどだ。制度上の欠陥が、中国が世界で最も競争力をもつ経済体の上位を占めるテンポを遅らせる可能性がある」との考えを強調した。

中国経済体制改革研究会の高尚全会長は、その原因は政府の「位置づけの欠落」にあるとした上で、「政府が外資導入に専心し、“個人的な製品”分野に投資すれば、速効性があり、GDPは明らかに増加し、政治的な実績は素晴らしいものとなる。だが、“公共的な製品”に投資しようとすれば、多大な資金が必要となり、効果は遅く、やる人はいないだろう」と指摘。

その上で高会長は「政府は政府自身と市場、企業との関係を明白にしていない」と強調し、政府の職能の混乱を指摘する。その例として(1)政府は依然、企業のミクロ政策決定に関与し、希少な資源を再配分するなどで過多な権限を有する一方で、企業や公民が切実に必要としている政府が提供すべき公共サービスはむしろ相対的に充実していない(2)良好な法的環境の提供や法律の公正な執行、基本的社会保障の提供や生態環境の保全などでは、政府の行動は客観的な要望を満たすまでにはほど遠い――を挙げる。

これに関し、国内の学者や専門家の間では「政府の職能の転換は、その重要性と、多分野の改革にかかわることから、経済改革である同時に、政治改革でもあり、また社会改革でもあり、社会全体をけん引するものだと言える。現在、改革は膠着し、停滞状態にあり、取り組みや深さ、協調の度合も十分ではないため、政府の体制改革はすう勢から見て実行しなければならないものだ。でなければ、このままの状態が続くことになれば、改革の総体的な進展に影響を及ぼすのは必至だ」というのが共通認識だ。

国家行政学院の汪玉凱教授は「政府の改革が実効性のあるものかどうか、また管理能力の程度、それが社会安定の鍵を握る」と指摘する。

政府は何をどうすべきか

新指導部は政府改革の重要性と切迫性を十分認識している。9月24日、温家宝総理は国務院常務会議で「政府が管理すべきでない事はあくまで企業や仲介機構、市場に権限を譲渡し、政府が管理すべき事は必ず円滑に管理しなくてはならない」と強調した。

「提言」は政府に対し、「何をすべきか」「どうすべきか」について具体的に提起している。例えば、行政と企業の分離、政府と資産の分離、政府と企業・事業体の分離、市場と仲介組織の分離を引き続き推進する、行政の審査・認可を縮減して適正化する、企業の経営活動に直接関与してはならないことなどだ。政府改革の重点としては、組織構造を合理化して、行政手続きを縮減する、行政効率を向上させて、コストを低減することなどを更に明確化した。政府の投資政策決定に関する責任制度を健全化させる、科学的かつ民主的な政策決定と行政監督のメカニズムを健全化させるなどは、政府の職能転換の加速を制度面から保障することに着眼したものだ。

国家発展計画改革委員会体制改革司の范恒山司長は「5カ年計画期間中は少なくとも、ミクロ経済活動と社会事務に直接従事・関与する機構を廃止する、中国共産党委員会や政府と同等、相似する職能を持つ機構を廃止し、各種の指導グループと協力機構を適正化すると共に、原則として企業体としての事務機構を設立しない、一部の分野で中央の地方に対する垂直型管理体制を調整し、省と省以下の地方政府により多くの権限と責任を付与する、国情を考慮して行政手続きを適度に縮減する、などの項目を先ず実行する必要がある」と指摘する。

専門家が政府改革へ献策

汪玉凱教授は「改革の歴史的な経験に照らせば、5カ年計画期間中に政府改革を進めるには、政治体制改革、非営利事業団体の改革(公共サービスシステムの再構築)、政府の改革、この3者を結び付けて同時に、かつ協調的に推進していかねばならない。仮に政治体制の改革、例えば政権執行の形態が改められなければ、完備された司法と市民の監督がなければ、かつ非営利事業団体の改革と結び付けて進めていかなければ、政府の改革はやはり再び苦境に陥ることになる」と指摘する。

遅院長は「中国はすでに経済社会の転換期に入っており、社会的な矛盾や問題が日増しに深刻になってきている。こうした特殊な背景の中、各地方政府が公共サービスの職能を強化し、“公共的な製品”の供給を拡大してくれることに、広範な庶民は強い期待を抱いている」と強調。

国家発展計画改革委員会マクロ経済研究院の丁元竹氏は「社会を発展させる分野において公共財政の支出比率を高める、これを先ず前提とすることが肝要だ。政府が真に公共サービスを備えた政府に転換しているかどうか、それを判断するカギは財政構造上の比率にある」と指摘。さらに「公共財政を社会発展の分野に傾斜させた上で、非営利事業団体や社会団体の改革、地域社会の管理体制の改革を核心とする改革を全面的に推進する必要がある」と提案すると共に、丁氏は「より重要なのは、社会の発展を管理する政府の各部門の協調性の問題である。現在の社会管理体制改革の根本にかかわるからだ」と強調する。