2005 No.49
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不動産市場は国際投資分野になり得るか

――不動産業界に再び照準を定める国際資本

蘭辛珍

「現在、中国の商業用建物市場への進出を狙う資金は数千億ドルに上るとも言われるが、この数字はいささかもオーバーではない」。香港軟庫金匯融資有限公司執行役員の温天納氏はこう指摘する。

中国人民大学の客員教授でもある温氏は金融専門家、投資銀行家としても有名で、中国の不動産融資に強い関心を寄せている。温氏の目から見れば、中国の不動産業界は外資にとって「磁石」のような存在であり続けた。

不動産業界は早くから外資に開放されており、現在、一部大都市では外資が設計した建築物が随所に見られる。2004年の不動産開発関連の外資導入額は228億2000万元に達しているが、中国人民銀行の報告によると、投資総額に占める比率はわずか1.3%に過ぎない。数千億ドルという外国資本の期待に応えて、不動産市場は国際資本の投資分野になり得るのか。

単独出資の規制が障害に

開放された市場でありながら、投資比率がわずか1.3%というのは、明らかに釣り合いが取れていない。清華大学建設管理学部の盧友傑教授は「このような落差がもたらされた原因は、政策による障害や外国企業の懸念と切り離せない」と指摘する。建設部は不動産市場を管理する部門だが、外資の不動産市場への合法的な投資に対しては規制を設けていない。しかし1995年、対外経済活動を主管していた当時の対外貿易経済合作部は、その第2条で、外国企業の単独出資による建築企業の設立は暫定的に許可しない、と規定する文書を公布。合作部の廃止後に新設された商務部もこの規定を改正しなかったため、現在に至るまで、外国企業が単独出資で建築企業を設立することは許されていない。

「ほかでもなく、この規定が外資の不動産業界への大規模投資を妨げている」と、盧教授は指摘する。

外国企業による不動産市場への投資は一般に、3つの方式で行われている。第1は、国内不動産企業との合弁あるいは提携方式だ。しかし中国の法律に基づき、外資の出資比率は25%を超えることはできない。

第2は、不動産購入方式だ。この方式は外国の不動産ファンドに歓迎されている。2005年1月、オーストラリアのマッコーレーグループ傘下のファンドMGPAは8億元を投資して上海新茂大廈の評価資産総額の95%を取得。4月にはゴールドマン・サックス傘下のファンド、ホワイトホールが1億760万ドルで上海百騰大廈を買収した。

第3は、信託会社あるいはファンドが国内不動産企業への融資、投資を通じて市場に進出する方法だ。

しかし、中国では企業信用システムに欠けているため、外国企業は不動産企業の信用度を明確には把握できないことから、資金を投入した場合に合理的な回収ができるかどうかを懸念している。このため、国内企業との合弁や提携、融資を実施する外国企業は非常に少ない。不動産購入方式にしても、外国企業が選択するにふさわしい不動産プロジェクトは極めて少数だ。

盧教授は「大半の外国企業はやはり単独出資方式での進出を望んでいる」と指摘する。

一方、建設部は単独出資規制が障害になっていることに不満を表している。仇保興副部長は数度にわたる会議で「中国の不動産業界は外資に完全に開放されている。以前も、これからもそうだ。外資にはいかなる規制も設けていない」と強調してきた。

実はその通りである。外資の不動産業参入に関する政策を見ると、単独出資企業の設立が許可されていないのを除けば、中国は現在、外国企業や個人による投資・開発、販売の各段階に対して重大な規制を設けていない世界で数少ない国の1つだ。

朗報は人民元の切り上げ

中国銀行業監督管理委員会は2005年9月、信托投資会社の一部業務のリスクを強化する通達を公布。同通達は不動産信託を新規発行する場合(1)土地使用権証明書と、建設用地計画許可証、建設工事計画許可証、施工許可証を添付する(2)自己資金は35%以上とする(3)開発業者は2級以上の資格を備えている――の3条件を満たさなければならないと規定している。

この通達によって、これまで融資ルートが限定されていた不動産開発業者は資金調達がより困難となり、海外からの投資の必要により迫られることになった。

だが外資にとって、これは最良のニュースではない。外資が最も期待するのは、中国経済の安定した発展であり、2005年7月21日に実施された人民元対ドル相場の2%切り上げはその最たるものだと言える。人民元がさらに切り上げられれば、一部投資家はさらに投資を増額し、不動産プロジェクトへの投資チャンスは増大するというのが海外の企業、金融機関などの予測だ。

中国人民銀行が発表した「2004年の中国不動産金融報告」が示すように、不動産業は通信設備やコンピューターといった情報技術(IT)産業に次ぎ、外国企業が投資に強い関心を示す第2の業界である。

商務部によると、外国企業による単独出資の建築企業設立の規制は緩和される可能性がある。商務部が2004年11月に公布した「外国投資産業目録」では、一般住宅の開発と建設が外国企業の投資を奨励する業種に指定されており、例えばシンガポールのキャピタルランドのように、一部不動産プロジェクトは実際には外国の不動産企業が単独出資で実施している。WTO加盟時の公約により、単独出資による建築企業設立の規制は2年後には廃止される予定だ。

突破口を求める国際金融大手

「第7回不動産フェスティバル」が12月16日から18日まで上海で開催される。「中国不動産業界の風向計」とも呼ばれる同業界最大のイベントであり、外国の不動産会社や銀行、ファンド、信託投資機関などが参加者の35%を占めると見られている。

中国の不動産業界への大規模投資が始まった2003年、国際金融大手は不動産金融ファンドを設立したが、当時はまだ同業界の状況を静観する姿勢を取っていた。だがすでに、新たな突破口を模索し始めたようだ。

融資ルートが限定されていた不動産企業にとって唯一の資金調達役は、融資全体の70%を占めるなど、一貫して商業銀行が担ってきた。だが現在、こうした状況に変化が起きている。政府のマクロ調整により、不動産企業関連の融資に問題が生じてきたからだ。

盛陽不動産ファンド(SUN-REF)戦略研究センターの李沖総経理は「中国は不動産融資の改革の時代を迎えた」と指摘する。

国際金融大手は現在、中国の不動産市場で大きな原動力となっている。2004年の投資額は、モルガン・スタンレーが50億元、オランダINGグループが35億元、シンガポールGICが15億元を上回る見込み。投資先は主に上海と北京に集中している。不動産業界に参入している外資は米国や欧州、シンガポール、香港の企業が主体だが、日本や韓国の不動産ファンドも進出を模索しているところだ。

外資の参入方式は、委託投資管理モデルへと転換しつつある。国際金融大手は中国の不動産企業に対する「不安感」を払拭し始めており、資金を大胆に不動産業者に委託することで利益を共有するようになった。このような管理モデルによって資源と能力、この両面での協力が一段と緊密になるのは明らかだ。共に利益を得る協力モデルだと言える。