2005 No.52
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相互連動とその欠如

中米日の3カ国関係において米日、中米、中日それぞれの3辺の関係は著しくバランスを欠けている。相互の関係を積極的に連動させるため、3カ国はこうした現状を改善する必要がある。

周永生(外交学院国際関係研究所教授、共著に『大きな枠組み--中日米関係の50年』)

米日の対中戦略をめぐる強い不信感

米日関係は第二次世界大戦以降、最も安定した二国間関係である。これは戦後、米国がグローバルな戦略的利益を考慮し日本と長期にわたって提携してきたからであり、また日本が自らの国益のために米国に追随し、忠誠を尽くしてきたことに由来する。21世紀に入って、米国が主導し日本が従属するという同盟関係は深まりつつある。

2005年2月19日にワシントンで開催された米日安全保障協議委員会(SCC)で、両国は会合後に発表した共同声明でアジア太平洋地域における共通戦略目標として12項目を示し、この中で初めて台湾問題に触れ、台湾問題の平和的解決を米日共通戦略目標の1つに挙げた。これは台湾問題をめぐる米日間の戦略的協力が従来の舞台裏から出て公開されたことを物語っている。こうした状況は中国は望まず、しかも断固反対するものだが、中国にとっては必ずしも絶対的な悪事とは限らない。中国は制約を受けると同時に、台湾問題に対する米日同盟の戦略的意図をある程度見極めることができたからだ。

2005年10月29日にワシントンで開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、日米双方は在日米軍再編をめぐる中間報告で合意したと発表した。この合意によると、米国はグアム島を中心とする西太平洋における軍事基地の機能を強化する。同時に両国は今後、軍事基地の共同使用や情報の共有化、共同指揮などを通じて軍事一体化を強化することや、2008年に神奈川県の米海軍横須賀基地にニミッツ級原子力空母「ジョージ・ワシントン」を配備することで合意した。冷戦終結後、米日間の軍事協力は削減されるどころか、逆に強化されてきており、協力範囲はますます拡大し、協力の度合も深まっている。

しかも、米日軍事同盟はある程度、対中防衛とその方向性が強まった。こうした関係において、米国は日本を利用して自らの力の不足を補い、中国への牽制を強化しようとしている。また、日本に対し憲法改正を促し、日本の国連常任理事国入りを支持することなどを通じて日本と連携し、中国とのバランスを図ろうとしている。日本は中国の台頭に妬みや不安を抱いているため、いわゆる「中国脅威論」を極力振りまき、米国の東アジアでの存在を強化しようとするばかりか、東アジア問題で主導権を握ると同時に、米国を後ろ盾に中国と対抗しようとしている。また、日本は意識的に米国を中日間の釣魚島問題における紛争に介入させ、米国の力を借りて中国を脅かそうとしている。こうしたことから、全体的に見て、米日両国はいずれも急成長中の中国に個別に対処するには力不足であることを感じ取ったため、1980年代末から90年代初にかけて両国の矛盾は一時的に激化し、同盟に危機が生じたものの、次第に中国に対応する確固不抜の同盟関係となってきた、と言っていいだろう。これは米日の間に対中戦略をめぐって強い不信感のあったことを物語っている。

中米の日本無視

中米関係は現在、世界で最も重要な二国間関係である。一方は世界の超大国であり、一方は巨大な潜在力を秘める発展途上国だ。中国側の統計によると、両国間の貿易額は年平均18.57%の伸び率を維持し、国交樹立した1979年の24億ドルから2004年には69.7倍増の1696億3000万ドルに達した。米国は中国にとって最大の貿易パートナーであり、また中国は米国にとって第3の貿易パートナーである。2005年1月から8月までの米国の対中輸出は初めて英国を上回り、中国は米国第4の輸出先となった。2005年1月から9月までの両国間の貿易額は前年同期より25%増え、中国の貿易総額の15%を占めた。2005年には2000億ドル前後になると見込まれている。これほど巨額の貿易額、またこれほど緊密な経済連携は、両国関係が互恵・相互依存の関係にあることを十分立証している。

しかし、冷戦終結後の中米間の政治関係は経済関係ほど順調ではなかった。1999年5月の米軍機による中国駐ユーゴスラビアの大使館爆破事件や、2001年4月の中米軍用機衝突事件などが起きて両国関係は一時悪化した。こうした突発的事件による陰影を払拭しようと、両国政府首脳はいずれも相手を重視し、緊張を緩和して、関係を発展させる姿勢を貫いた。また国際政治やテロ撲滅、核拡散防止、国連改革などをめぐってかつてないほど緊密な協力を展開してきた。2005年夏、両国は国連改革問題で協力し、「G4決議案」(日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国が提出した安保理拡大を求める「枠組み決議案」)を否決させた。つまり、中米両国は安保理改革の目標では意見の食い違いはあったものの、「G4」案に反対することに共通の利益があったことから足並みをそろえたのである。これは小異を捨てて大同につくという協力モデルの試みが成功した例であり、近年の中米間の国際政治分野での協力の模範だとも言えるだろう。

両国の政府要人の往来は極めて頻繁に行われている。特に2005年下半期以降、グティエレス商務長官、ボドマン通商代表、ライス国務長官、スノー財政長官が相次いで代表団を率いて訪中したほか、ラムズフェルド国防長官とブッシュ大統領も中国を訪れた。これらは米国が中国との関係発展を高度に重視していることを示すものだ。中国も同様に対米関係を重視しており、胡錦涛氏をはじめとする新しい指導グループも対米関係を重視する従来の基本路線を受け継いでいる。

中米両国はいずれもグローバルな視野から両国関係をとらえている。ゼーリック国務副長官が2005年9月に「中国と共に国際秩序を構築し、リスクと責任を共に負うことを望む」と発言したのはまさしく、中米の戦略的協力がグローバルな問題をよりいっそう重視していることの表れだ。しかし、両国は関係の処理に当たっては、米国にとって重要な戦略パートナーシップであっても、中国にとっては重要ではあるが厄介な隣国である日本を往々にして無視していた。

中米両国が二国間関係において日本の問題に関心を寄せ始めたことは、中米関係が安定成熟期へと向かっていることを示すものだ。小泉首相が2005年10月17日に5回目となる靖国神社参拝を行った後、米国のメディアから日本は歴史問題に正しく対応できず、中国や韓国などアジア近隣諸国との関係をうまく処理できなかった、と批判する報道が相次いだ。胡錦涛国家主席は11月20日にブッシュ大統領と会見した際、小泉首相の靖国神社参拝は中日関係の発展を妨げていると指摘した。ブッシュ大統領はこれに応じて、父親が米海軍のパイロットとして第2次世界大戦に従軍し、日本軍の攻撃で負傷したため、自分は一般の米国人よりも靖国神社に対して負の思いが強いと語るとともに、中日関係の正常化はアジアの平和と安定に役立ち、米国の対アジア外交政策にも合致することから、中日の間で対話を進めてほしいと要請した。

小泉首相や政府要人が靖国神社を参拝していることや、今年に入って政府要人が相次いで第2次世界大戦後の極東国際軍事法廷での日本人戦犯に対する審判の正当性を公然と否定していることに、日本政府の侵略の歴史を否定する傾向がよく表われている。これらの言動は、戦争被害国である中国を含むアジア諸国の人々の感情を傷つけるだけでなく、実質的に、米国が第2次世界大戦に参戦し、また戦犯に対する審判を踏まえた上で、戦後日本の民主化を進めたことの正当性をも否定するものとなる。従って、道徳や価値観をことに重視している米国政府としては、この問題についてその正当な立場を表明せざるを得ないだろう。

中米両国は共に道義的角度から日本に関心を寄せ、中米関係における日本の戦略的地位を高め、これまでの日本無視の姿勢を変える必要がある。

中日関係の脆弱性

冷戦終結後、中日間の経済貿易は急速な発展をとげた。2003年まで日本は11年連続して中国最大の貿易パートナー、中国は日本にとって第2位の貿易パートナーだったが、2004年に貿易額は1678億9000万ドルに達し、中国は初めて米国を抜いて日本最大の貿易パートナーとなった。貿易額は6年連続で過去最高を更新し、貿易総額に占める対日貿易額は14.5%となっている。従って、経済貿易面での協力は両国にとっても非常に重要だと言えるだろう。中国が依然として日本の大量の資金、先進的な技術やノウハウを必要としている一方、日本は輸出で経済成長を促進するために中国市場を必要としている。近年、対中輸出が大幅に増えてきたことから、日本経済は長期にわたる景気低迷から脱し、回復の兆しが見え始めてきた。2004年に日本の経済成長率は2.3%に達したが、その主因の一つが対中輸出の拡大だ。2000年から2003年までの3年間、日本の貿易額の増加率は7%だが、これに対し中日間では50%も増えている。

ここから見ても分かるように、中日間では経済関係は依然として緊密であり、両国関係を安定させる上で重要な役割を果たしているが、政治関係に障害が横たわっているため、「政冷経熱」から徐々に「政冷経冷」へと向かいつつある。2005年1月から第3四半期の貿易額は前年同期より10.5%増えたとはいえ、米国とヨーロッパとの同期の貿易額は日本をはるかに越えて25.6%、23.2%ずつ増えている。

中日間の政治的対立はより明白だ。小泉首相が中国指導者の度重なる警告を顧みず、2005年10月17日に衆院の選挙で圧勝した勢いに乗じて、A級戦犯を祭る靖国神社へ就任以来5回目となる参拝を行ったことで、中国側は11月に韓国釜山で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談での胡錦涛国家主席と小泉首相の首脳会談を拒否した。中国外交部アジア司の崔天凱局長は11月30日、クアランプールで開かれた第9回中国・東南アジア諸国連合(ASEANプラス1)、第9回東南アジア諸国連合・中日韓(ASEANプラス3)、第1回東アジアサミットでも中日両国の首脳会談開催は不可能だと言明した。12月4日、中国側はさらに、現在の雰囲気と条件から見て、第7回中日韓首脳会談の開催は適切な時期まで延期されるだろうとの考えを示した。

日本の基本的戦略は、侵略の歴史を形を変えてひるがえし、政治指導者たちによる靖国神社参拝を続行するといった行動を通じて中国、韓国など被害国に歴史観問題で譲歩を迫ろうとするものである。これは中国政府と人民が絶対に受け入れられないものだ。こうしたことから、歴史観問題をめぐる真正面からの衝突や、さまざまな現実的な利益をめぐる紛糾によって、中日両国の政治関係はきわめて脆弱なものとなってしまった。

そもそも、この脆弱性の醸成は米国と直接関わりがある。第2次世界大戦終結後、米国はアジアにおける共産主義勢力に対抗するため、日本の右翼勢力をもり立ててきた。これこそが、軍国主義思想が日本社会から払拭されず、アジア諸国との間で歴史問題が政治化した根源だ。しかも、現実の政治においては、米国は第2次世界大戦後にはその管理下にあったが、日本に帰属されべきでない釣魚島の施政権を日本に移譲するなどして、中日間に領土紛争を引き起こした。同時に、米国は日本の強硬な対アジア政策を支持し、日本の後ろ盾となっているのである。

日本について言えば、外交は戦後一貫して日米関係を基軸としており、米国もできるだけ日本を後押してきた。そうしたことから、日本国内では「アジアを脱して米国に入る」か、それとも「アジアに入る」かといった論争が続いているが、その根源は米国への偏重にある。小泉政権が発足して以来、中日関係は明らかに苦境に陥っており、中米日3カ国の連動はきわめて不均衡な状態、つまり中日の間に関係の欠如が見えてきた。短期的な影響から見れば、こうした状態は米国にとってプラスとなり、米国の対東アジア外交の主動性と柔軟性は強化され、日米関係と中米関係の強化にも役立つだろう。長期的に見れば、中日間の関係の欠如は、米国の対東アジア、ひいては対アジア政策を大きく限定することになり、米国は戦略的行動の余地を拡大できないどころか、むしろその制約を受けて東アジア、ひいてはアジア地域でより大きな役割を果たすことができなくなるだろう。日本と中国は米国の対東アジア政策を支援する要素になるどころか、逆に制約する要素となるだろう。

中米日3カ国間の関係の欠如

全体的に見て、中米日3カ国はいまなお関係欠如の状態にある。中米日は朝鮮半島の核問題をめぐる6カ国協議で重要な役割を果たしているが、全体的に緊密な相互連動の関係は形成されておらず、冷戦時代の陣営外交の延長に過ぎないことは明らかだ。つまり、米日はより緊密となり、中ロは接近し、韓国は伝統的に日米寄りだが、韓国の置かれた現実や問題の解決に臨む真摯な姿勢から言えば、中国寄りになっている。仮に米日が北朝鮮の核問題でより早く中国側の立場に近づけば、核問題はより容易に解決されるだろう。こうした意義から言えば、全体的に中日米3カ国が関係欠如の状態にあることは、東アジアの安全と平和の発展にとってマイナスであり、3カ国のいずれの側にもマイナスである。

こうしたことから、われわれは、3カ国がそれぞれの二国間関係において良性の相互連動を形成し、弊害を正し、不足を補うだけでなく、3カ国全体の良性の相互連動を構築し、マイナスの影響を取り除くため努力するよう呼びかけたい。こうしてこそ、東アジアひいてはアジア太平洋地域全体の安全と平和の発展に向けた確固とした保障メカニズムが構築されるのである。

参考指標

中国の対日貿易比率

1985年 23.6%

1995年 20.5%

2000年 17.5%

2003年 15.7%

2004年 14.5%

2005年1-9月 13.1%