2006 No.01
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調和のとれた世界--中国外交の新たな理念

于 軍(国家行政学院教授)

2005年9月15日、胡錦涛国家主席は国連創立60周年首脳会議で「恒久的に平和で共に繁栄した、調和のとれた世界を構築するために努力しよう」と題して演説し、調和のとれた世界の構築を提唱した。この国際関係の新たな理念の提起は、国際関係の本質的要請と国際社会の普遍的な願望を映したものであり、世界の平和と発展に重大かつ深遠な影響をもたらすだろう。

調和のとれた世界の構築という提起は、以下の若干の背景、考慮から出たものだ。まず、世界的範囲から観察すれば分かるように、当今の世界は矛盾の多様化傾向を呈している。冷戦時代に包み隠された伝統的な対立が再び表面化している一方、経済のグローバル化の急速な発展に伴って、それぞれの国や世界的範囲で貧富の格差が拡大し、経済のグローバル化がテロリズムに脅かされるといった新たな問題が生じたり、過去の問題が形を変えて出てきたりしていることだ。これを背景に、西側諸国がその政治や経済、軍事的優位性を後ろ盾にして「民主化」を強引に推し進めようとしているため、テロリズムと覇権主義が当今の世界の平和的発展にとって深刻な脅威となっている。中国が提起した調和のとれた世界の構築は、国際的な緊張緩和に寄与する新たな試みとして国際社会から評価されていると言っても過言ではない。

次に、中国について言えば、現在の世界の枠組みの下において調和のとれた世界の構築という説を提起したのは、国内に調和の取れた社会を構築するために望ましい外的環境を整備するためでもある。現在、中国の発展は他国の脅威となっているとか、中国の発展はアジアで覇権を唱えるためだとかといった、中国の発展を非難する論調に「中国威脅論」と「中国覇権論」がある。調和のとれた世界を構築するとの主張はこの二つの論調に反駁する有力な道具であり、中国外交が中国の平和的発展について世界に対し疑いを解き、国際社会の信用を得るための努力でもある。発展途上国である中国がいかにして世界とうまく付き合うかという問題を解決することが提起した趣旨であり、中国の新たな外交理念となっている。

第3は、この主張は、中国が意識してより高い次元から国益を追求し、擁護し始めたことを示すものだ。中国はすでに、世界の強国の仲間入りを果たすには、物質的な力のみでは明らかに十分ではないことを意識している。国際社会に認められるかどうかは、国益の最高の表れとなる。一つの国家として国際ルールを策定する能力を備えているかどうか、また国際社会の共同参画者になれるかどうかが、その国の国際問題に参与する能力を評価する主要な規準となる。こうした意義から言えば、調和のとれた世界の構築という理念の提起は、国際社会から認められるためであり、国際問題における中国の発言権を増大し、国際社会において自信を持ち、建設的で責任を負う大国としての中国の新しいイメージを確立するためでもある。

調和のとれた世界の構築という新たな理念は中国の悠久の歴史と幅広く奥深い文化に根差したものだ。調和という言葉そのものが有する意味は豊かであり、五千年の文明を擁する中国の道徳の精髄とも言える。調和とは中国の伝統的文化においては「和して同せず」と解釈されている。この伝統は一種の戦略的文化として、中国の対外関係の処理に一貫して重大な影響を与えてきた。

調和のとれた世界の構築という理念そのものには五つの意味がある。第1に、従来の中国外交の貴重な経験の継承であり、中国やインドが1950年代に提唱した平和共存五原則を新時代において発揚することだ。第2は、1990年代後半に中国が提起した「相互信頼、互恵、平等、協力」を核心とする「新安全観」といった重要な理念の継続であり、対話で安全を求め、協力で発展を図るなど、共に利益となる考え方をさらに深めることだ。第3は、当面の国際情勢や重大な対立に対応するに当たって、文化や地域、民族、国の違いを越えて対話を行って、理解を深めることの緊急性を強調し、特に世界の社会、政治、文明の多様性を維持する必要性を強調することだ。第4は、南北の格差の拡大によってもたらされた深刻な結果に十分に留意し、より公平で合理的な国際経済秩序の構築を求めることだ。最後に、少数の国の覇権主義に反対し、国際関係の民主化プロセスを推進することである。

調和のとれた世界の構築は長期にわたるプロセスであり、現在の環境と緊急性から見て、以下のいくつかの面から着手すべきだろう。

第1に、平和で安定した、公正かつ合理的な新たな国際政治経済秩序の構築を推し進める。新秩序を構築するには、主権の平等と相互内政不干渉を核心とする国際関係の準則を厳守し、安全で安定した国際的な平和な環境を創造する必要がある。また、平等互恵の原則にのっとって共同発展という新しいタイプの国際関係を樹立し、自主的に選択し、共通点を求めて相違点は残し、協調的な協力を行い、すべての国はその大小を問わず平等であるという国際的な局面を創出する。また、国際構造の多極化と国際関係の民主化を積極的に推し進めなければならない。

第2に、広範な発展途上国の急成長を支持、促進し、貧困の減少と撲滅に努める。発展のアンバランスと遅れが、国際社会が調和のとれていない根本的原因となっている。多くの発展途上国は経済を発展させる上で多くの困難があり、一部の国はさらに縁に追いやられる危険性に直面している。発展モデルの多様性を尊重し、発展に関する経験の交流を強化し、各国の自己発展能力を高める必要がある。また、先進国が世界の幅広くかつ調和と均衡のとれた発展を実現するためにより多くの責任を負い、貧困撲滅や資金援助、債務減免など重点となる問題で適切な措置を講じて、発展途上国、特にアフリカ諸国と後発発展途上国の急成長を支援することを積極的に推し進める。国連の国際開発協力を推進する役割を強化し、各国、特に発展途上国の発展のために望ましい国際環境を創出し、実効性のある援助と支持を提供しなければならない。

第3に、新たな安全観を確立し、集団安全メカニズムを構築する。歴史が証明しているように、軍事同盟を基礎とし、軍備の強化を手段とした従来の安全観は国際社会の安全の保障には役立たないだけでなく、世界の恒久平和を確立することもできない。新安全観は相互信頼を踏まえて、軍事同盟や軍備増強に依存して自らの安全を保障することに反対する。また、互恵の原則を主張し、世界各国の共通の安全と普遍的な安全を求めるとともに、平等をもって安全を求め、各国が安全問題における相互協力を強化し、共通の安全と世界平和を保障するよう主張する。国連は集団安全メカニズムの核心として、世界的な安全を保障する国際協力において代替できない役割を果たしている。合理的で必要な改革を通じて国連の権威を強化し、国連の効率を向上させ、世界平和を擁護し、共同の発展を促進する上での国連と安保理の積極的な役割をさらに発揮させて、国連の新たな脅威と新たな挑戦に対応する能力を増強しなければならない。

第4に、文明の多様性を擁護し、異なる文明の平和共存を推進する。文明の多様性は人類社会の基本的特徴であり、人類文明を進歩させる原動力でもある。対話と交流を通じてはじめて、異なる文明はいっそう発展し、豊かなものとなり、完備される。各国が社会制度と発展の道を自主選択する権利は尊重されるべきである。異なる文明の間において対話と交流を強化し、競う中で長所を取って短所を補い、共通点を求めて相違点を残しながら共に発展するとともに、相互の隔たりや疑念を解消して、人類をより和睦的なものにし、世界をより豊かで多彩なものにする。平等と開放の精神をもって、文明の多様性を擁護し、それぞれの文明が互いに受容して蓄積していく調和のある世界を共に構築しなければならない。

調和のとれた世界の構築が任重くして道遠いことは疑いない。とはいえ、この考え方は時代と歴史の発展による客観的要請であることを体現するものであり、世界各国の根本的な利益に合致し、国際関係を発展させる上で必ず通らなければならない道だ。世界各国が一致団結して強権政治と単独主義に反対し、国連の権威と国連憲章の宗旨と原則を擁護、尊重するとともに、相互尊重や平等に対処、平和共存、互恵協力を展開していきさえすれば、調和のとれた世界の構築という目標は絶えず前進し、最終的に達成されるだろう。