2006 No.02
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展望が開けたSAARC諸国との協力

張利軍(中国国際問題研究所)

中国は2005年末に開催された南アジア地域協力連合(SAARC)第13回サミットにおいてオブザーバーとして承認された。

南アジア地域は中国周辺において重要な地域であり、外交においてもその地位と役割は重要である。同地域の面積は400万余平方キロ、人口は約15億。ここ数年来、同地域の政治的雰囲気は総体的に緩和の方向にあり、情勢は全般的に安定している。南アジア諸国はいずれも経済建設を重視しており、発展の水準は程度の差こそあれ向上しつつある。南アジア地域は世界経済における新たな成長市場でもある。アジア開発銀行(ADB)の2004年評価報告書によると、同年の南アジア諸国の国内総生産(GDP)の伸び率は6.1%。中国にとっては潜在的な大市場であり、ビジネスチャンスは極めて大きい。南アジア諸国との経済貿易面の往来と地域経済協力の強化が今後、中国の南アジア政策の重点となるだろう。

現在、中国と南アジア諸国との政治関係は良好であり、ハイレベルの相互訪問が頻繁に行われ、中国はすでに南アジア諸国とそれぞれ異なる戦略的協力あるいはパートナーシップを確立している。良好な政治的雰囲気の中、各国政府が政治面から経済を促進することが大きな推進力となって、中国と南アジア諸国との経済貿易関係は新たな段階へと絶えずまい進している。

インドは中国にとって南アジア地域最大の貿易パートナーである。ここ10年来、中印関係が着実に改善されるに伴って二国間貿易は急速に発展し、貿易額は2004年に136億ドルに達した。投資も着実に伸びている。2005年9月現在、インドの中国への投資件数は176件に上り、投資額は契約ベースで3億3900万ドル、実質ベースで1億1300万ドル。一方、中国のインドへの投資件数は19件を数え、投資額は契約ベースで2633万ドル。インドで調印した経済技術関連契約額は35億6300万ドルに上り、売上高は8億7600万ドルに達した。温家宝総理は2005年4月にインドを訪問。両国は「包括的経済貿易協力5カ年計画」に調印し、地域貿易に向けた事業化調査に着手した。両国政府は2008年に貿易額は200億ドルの大台を突破すると期待を示している。

中国とパキスタンとの経済貿易協力も長足の進展を遂げた。両国は1982年10月、経済貿易・科学技術協力連合委員会を発足させ、これまでに10数回も会議を開催してきた。また2003年11月には「特恵貿易協定」(PTA)を締結。2004年の貿易額は30億ドルに達し、前年に比べ26%伸びている。2005年4月には「自由貿易協定(FTA)の早期達成計画に関する協定」に調印。FTAを巡る事業化調査を終了して本格的な交渉を開始することを決めると共に、FTA早期達成計画についても合意し、2006年1月1日からこの計画を実施に移す。

同時に、中国はバングラデシュやネパール、スリランカ、ブータン、モルジブなどとの経済貿易協力も絶えず発展させてきた。

また南アジア地域関連の亜地域経済協力にも積極的に参与している。例えば、90年代末期から、中国南西部の幾つかの省、特に雲南省は中国・インド・ミャンマー・バングラデシュ亜地域経済協力を積極的に推進し、協力に参与してきた。上述した4カ国は1999年に雲南省昆明で第1回地域経済協力会議を開催。各国の努力を通じて平等互恵、持続的な発展などの原則の下で連携を強化し、最大限の経済協力を促進することを趣旨とする「昆明提言」を締結した。年次総会は輪番で行われており、4カ国の協力はすでにメカニズム化されている。

中国とSAARC諸国との経済貿易協力は多少、困難と試練に直面している。総体的に見れば、南アジアは経済がまだ立ち遅れている地域であり、世界貿易額に占める比率は1%にも満たない。そのため、南アジア諸国との経済貿易面での発展は有限なものであり、良好な政治関係と雰囲気に比べ明らかに遅れている。

困難はあるものの、中国と南アジア諸国との協力の将来性は明るい。中国は経済貿易協力を促進するため一連の措置を講じることにしている。

現在、中国と南アジア地域は高山や河川に隔たれているため、交通は極めて不便であり、鉄道で直接結ばれていないことが客観的に見て、経済貿易関係の発展を妨げている。新疆ウイグル自治区からパキスタン・ペシャワールに至る鉄道を敷設し、さらにイランまで延伸して、ユーラシア大陸を貫く新しいシルクロードを建設することも考えられる。ネパールは青海・チベット鉄道に関心を寄せており、鉄道がネパールまで延伸されることを望んでいる。ネパールのギャネンドラ国王は中国とインドの指導者に対し「中国と南アジアを結ぶ交通運輸の紐帯、中継地点になる」ことの期待を何度も表明している。

中国は発展途上の経済貿易大国として、周辺諸国との地域的経済協力を展開する中で、大きな利益を上げている。例えば、アセアンと自由貿易地区を確立し、APEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加することなどで多くの経験を蓄積してきた。現在は、南アジア諸国との地域経済協力の拡大の方途を積極的に模索しているところである。地域経済協力において中国はかねてから、大国が主導することなく、中小国が先導的役割を果たすべきだと主張してきた。現在のアセアン10+1と10+3などの対話メカニズムはアセアン諸国によって提唱、運営されている。

中国は南アジア諸国と共に優遇政策を実施し、金融市場を整備し、良好な投資環境を構築すべきである。例えば、パキスタンのカラチ、インドのカルカッタとボンベイなどの金融センターとしての役割をさらに発揮させ、名実ともに備わった資金の集散市場にすることで、経済発展に向けた資金需要を満たす必要がある。中国と南アジア諸国は協調機構を設立し、相互協力を進め、貿易紛争を直ちに解決すると共に、不正な競争を防止し、入国手続きを簡素化すべきである。