2006 No.02
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税減免で慈善事業を支援

――中国では、寄付金への免税待遇の欠如と免税額の不合理性が、慈善家の少ない要因だと考えられている。現在、関係機関は新たな政策の制定を進めているところで、この“ボトルネック”が解除されることが期待される。

唐元カイ

先ごろある慈善組織が行ったアンケート調査によると、国内で登記された企業は1000万社を超えたが、寄付をした企業は10万社以下だった。99%の企業が慈善活動に参加していないことになる。この調査結果が公表されると、中国企業は市民から「富のために仁を尽くさない」とか「慈善心や社会的責任感に欠ける」などのレッテルを張られてしまった。これに対して多くの企業家は不満を抱いている。

国内で知名度の高い大連万達グループは十数年来、サッカーチームに寄付したり、5億元を投資して敷地面積106万平方メートルの大連大学を創設したり、遼寧や四川、貴州省などに小学校を数校開設したりするなど、慈善事業への累計額は8億元余り(約1億ドル)にのぼる。王健林取締役は「私達は真面目な気持ちで創業すると同時に、寛容な気持ちになって寄付することも忘れたことはなかった。資産を築くと同時に、社会に報いる重要性も十分に理解している」と強調する。

だが同時に「企業は良い事をしたくないというわけではないが、良い事をしても良い結果にならない時もある」と指摘。その理由として、『企業所得税暫定施行条例』の規定を挙げた。法人税の納税者が公益性や救済性のある寄付を行った場合、その年度の納税所得額の3%以内であれば、税は免除される。『個人所得税法』では、個人が慈善組織に寄付した場合、納税額の30%以下であれば、免税すると規定されている。「寄付金が多ければ多いほど、納税額は多くなる。これは利益獲得を目的とする企業にとって重荷になる」と王取締役は強調する。

また、中華慈善総会の徐永光副会長は「重複納税や寄付金に対する免税率が低すぎることが、寄付する意欲をそいでいる」と指摘。

天津天獅グループの白萍副総裁は「1996年から現在まで、われわれグループが寄付した金額は累計4億3000万元に達した。李金元総裁は個人としても慈善事業に熱心で、6640万元を寄付して『2004年中国大陸慈善家ランキング』で3位となった。しかし、企業として重複納税を避けるためグループは今後、税金の減免可能な慈善組織などに寄付することを考えている」と話す。

国家発展・改革委員会経済研究所流通研究室の陳新年主任は「慈善活動とは、企業や公民個人が政府を支援して社会福祉の責任を担うことであり、理屈から言えば、政府による免税待遇を得られるべきだ。だが現在、慈善事業に対する減免の範囲は非常に狭い」と指摘。

清華大学非政府組織研究所の王名所長は「現在、慈善組織は免税を申請することができるが、これについては明確な枠組みがない。国務院の認可を得れば、誰でも免税待遇を享受できるものの、こうした待遇は“その出身”と関連がある。初めて免税優遇を受けたのは中国赤十字会であり、2000年に財政部と税務総局が公布した関連文書は『納税者が非営利の社会団体や国家機関を通じて行った赤十字事業への寄付に対しては、税金は全額免除する』と規定している。2003年1月までに寄付金への税金免税待遇を享受した組織は5団体しかなかったが、同年9月には12団体まで増えた。だが、この他のより多く組織が免税待遇をまだ享受できないままでいる」と説明する。

関係法律の規定によると、すべての慈善組織は上級の主管する機関が必要であり、そのほとんどが政府機関だ。政府という強いバックがある大規模な慈善組織は「独占権」を擁している。実際、これらの慈善組織は政府の束縛を受けてはいないが、真に独立した法人団体でもない。ところが民間の慈善組織は発展の過程で、市民の信用に欠けている、資金支援を得るのが難しい、といった民間企業と同じような問題に直面している。民間慈善組織は税制面で不平等な位置に置かれているため、「政府機構」に頼るしかない。

中国新聞社の論説員である秋風氏は「政府が慈善組織を厳格に監視、管理するのは当然だが、極めて少数の組織しか慈善事業を行えなくなってしまうのでは駄目だ。企業家と金持ちは全てが“冷血動物”であるというわけではない。問題は、現在の制度が人為的に慈善事業の分野で独占状態を作り出したために、慈善事業のコストが高くなったことだ。特に独占の枠組みを維持したり、監視や管理を過度に厳しくしたりすれば、慈善組織が政府に依存するのは必至であり、真に自治性のある社会活動を行い、企業家精神や公益精神のある人たちを引き付けて公益事業に参与させるのは難しくなる」と強調する。

アジア開発銀行(ADB)駐中国事務所の湯敏チーフエコノミストは「中国の現有の慈善公益組織が擁する資金総額は国内総生産(GDP)の0.1%しか占めていない。また米国では、社会公益事業の従事者は就業者総数の10%を占めている。相対的に言えば、米国の方が慈善事業で資金を集めるのは容易であり、1986年に公布した税収関連の法律は公益性組織に対しては所得税を免除すると規定している」と説明する。

「慈善事業の税収制度は改革しなければならない。その核心となるのは、競争を奨励し独占を打破することである」、というのが専門家の一致した考え方だ。清華大学非政府組織研究所の王名所長によると、現在、この方向で政策の制定が進んでいるという。民政部が起草した『中華人民共和国慈善事業促進法」(仮称)は、8つの団体に対する寄付については、同類の慈善公益組織の所得税を徴収しないとしている。民政部救災救済司の王振耀司長は第1回中華慈善大会で、財政部や税務総局などと寄付金の免税額の引き上げや、慈善事業の奨励などの問題について何度も意見を交換したことを明らかにした。

また民政部は同大会で『中国慈善事業発展指導綱要(2006−2010)」を発表。同綱要は「慈善事業に関する税の減免政策の実施を民政部の今後5年間の具体的な活動の1つに据え、個人と企業やその他の組織が無償で公益事業に寄付した場合、規定に基づいて個人所得税や法人税面で優遇を与え、また税優遇申請手続きを簡素化することで、寄付者の利益を保護し、法律に基づいて慈善事業と社会福祉の社会化のプロセスを推進する」方針を明確に打ち出した。