2006 No.02
(0102 -0108)
 

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高級ブランド品の消費

安子

世界的に高級ブランド品市場が低迷しているなか、中国では逆風が吹き、ブランド企業の間で進出や営業拠点の拡大が活発だ。

2005年11月28日、モエ ヘネシー・ルイヴィトングループ(LVMH)のベマート・アムルト会長はルイヴィトンの北京旗艦店のオープニングセレモニーに出席。ルイヴィトンの中国12店舗の展開と中国市場に強い自信を示すとともに、「LVMHは13年前に中国に進出したが、単に商品を販売するだけでなく、より重要なのはフランスの文化を伝えることだ」と強調した。

北京・国際貿易センター地下のショッピングモールにオープンした旗艦店はパリ・シャンゼリゼ通りにある旗艦点と同様、ルイヴィトン特有のファッショナブルな店舗だ。床面積は約800平方メートル。150年余の歴史を持つバッグのほか、中国で初めてスーツや服飾品を揃えた。

中国市場に照準

ルイヴィトンに歩調を合わせるかのように、多くの世界のトップブランドが中国での営業拡大を計画、または乗り出している。

世界最高峰のピアノメーカー、スタインウェイ・アンド・サンズは上海に全額出資の子会社を設立した。

ケンゾーは4店舗目の設立を準備中だ。

イタリア最大のファッショングループ、グッチは成都と杭州に店舗を設立中。

イタリアのアマーニは、2008年北京五輪までに30店舗を展開すると発表。

世界トップの乗用車メーカーは中国人の消費能力に驚嘆を隠さない。2003年の上海モーターショーで、ベントレーのミュリナー728は1188万元(1元約13.5円)、翌年の北京モーターショーでは988万元で販売された。

スイス最大の時計メーカー、リッチモンドの2004年財務データによると、世界の総売上高に占める中国の割合は20%、中国人観光客が世界各地で購入した金額を加えると4割を占めるという。中国での同メーカーの高級品顧客は300万〜500万人前後にのぼると見られる。

このように、フランスの香水やイタリアの高級ファッション、ドイツの乗用車、スイスの時計など、こうした欧州でも高級消費品に属する商品がすでに中国に進出。「反高級ブランド品」の風潮がある欧州のブランド企業は業績が低下しつつあるが、中国という新興市場に再び希望を見出したと言える。

統計によると、全国各地の高級商品の売上高は約20億ドルと、世界の同総売上高650億ドルの3%余りを占める。

市場の潜在力に期待

中国とEUの繊維製品をめぐる貿易交渉が終了したばかりの2005年6月、仏ローヌ州アパレル業協会の視察団が上海を訪問、秋季国際ランジェリー展を開催した。同展を主催したユーロヴェトのCEO(最高経営責任者)、ベロン・ホンプス女史は「初めて上海で展示会を開催したが、これを機に中国の潜在的な高級ブランド品消費市場を開拓できれば」と期待を示した。

巨大な中国市場にフランスのアパレル企業が注目しているのは、確かだ。高級男性ファッションブランド、ジリーの広報担当マネージャー・ヴァリコート氏は「当社は現在、北京と上海に専門店の開設を考慮しているところであり、香港にも開設する計画だ」と話す。

仏アパレル工業連合会のクラウド・テタード会長は「繊維製品の割当額撤廃でもたらされたビジネスチャンスを逃すことなく、より多くの高級ファッションを中国に輸出すべきだ。この分野では、フランスの競争力は極めて強い。担当大臣と中国の薄熙商務部長との会談が成功したことで、業界には調整に向けて多くの時間がある。過去、米国や欧州内が主要な輸出先だったが、協会に加盟する約8000社の企業による2004年の中国へのアパレル製品の輸出は総額の30%に達した。今後、調整がさらに進展すれば、より多くの高級品、高級ブランド品を中国市場に参入できると確信している」と話す。

消費するのは誰か

ある公認会計事務所の分析によると、中国の高級ブランド品の消費層は2つに大別できる。高所得者に、若いホワイトカラー、なかでも外資系企業の社員が最も代表的だ。

中国ブランド戦略協会はより具体的な推定を行っている。高級ブランド品の消費者数は総人口の13%、約1億6000万人。大半が25〜50歳のホワイトカラー、起業家、著名人であり、なかでも時計やバッグ、化粧品、ファッション、宝飾品などを頻繁に購入するのは1000万〜1300万人と推計。ある学者は、こうした消費層のうち、資産が1000万元を超える富裕層は少なくとも30万人いると予測している。

新華社の報道によると、中国の高級ブランド品消費者に関しては年齢、消費内容で西側先進諸国と顕著な違いがあるという。中国の場合、消費の主力は30〜50歳の中青年層だが、西側では40〜70歳の中老年層が主体。消費は中国ではファッションや香水、時計など個人用品に集中しているが、西側では住宅や車、家族旅行が奢侈する対象だ。

ブランド品販売店の店員は「小物や財布のほか、数千元もするジャケットやスカートを買う人もいるが、若年層では数万元もする物を買う人は少なく、一般に消費額は5000元以内。大半が外資系企業の社員だ」と説明する。

ある外資系企業の女性社員は「私の会社では、シャネルの香水やダンヒルのバッグは一般的で、地位の高い人の間では、数千元の洋服を着るのは一般的。着ている洋服がありふれたものだと、変な目で見られてしまう」と強調する。

イタリアのトップブランド、エトロのギモ・エトロCEOは「高級ブランド品を消費する経済力のある層では、月給は少なくとも2万〜3万元のはずだ。この層は数万元もする服を購入できるはずであり、小物の高級ブランド品にお金を全額費やすタイプではない。当然、それは彼らがより質の良い生活を追求したいと希望しているからかも知れないが、わたし個人について言えば、若い人が虚栄心のために消費するのは望んでいない。購入する際には自分の経済的条件を考慮すべきであり、計画性が必要だ」と指摘する。

海外旅行者も消費層の一部。海外旅行は時間的に、また金銭的にも余裕のある人たちだ。2004年だけでも、海外旅行者の消費額は250億ドルにのぼった。

これについて、JPモルガンの高級ブランド品業務部主管のエロウクエット女史は「高級ブランド品の消費では海外旅行者が重要な一部を占めている。私たちの調査によると、世界でトップブランドの消費者の38%は日本人であり、うち15%が海外で購入している。中国人の占める比率は5%だが、その3%はやはり海外での購入だ。現在、日本市場での伸び幅は低下し続けており、中国やインド、ロシアなど新興市場で増加の傾向にある」と分析する。

中国自身のブランドは

中国での高級ブランド品の将来に楽観的な姿勢を示す人がいるのも確かだ。国際高級ブランド品管理コンサルタント会社のデニス・モリセットCEOは「20年後には、高級ブランド品の王国であるパリでも中国ブランドを目にできるだろう」と予言する。

緩慢であっても、市場が成熟するにつれ、次第に自己ブランドが登場しつつあり、すでに本土ブランドを選択する消費者もいるほどだ。

1994年、香港のダヴィット・タン・ウィン・チュン氏は中国服のブランド、シャンハイ・タン「Shanghai Tang・上海灘」を立ち上げた。2000年にスイスのリッチモンドグループに買収された後、世界の中国服トップブランドに成長。ブランドイメージは安定しており、チャールズ皇太子や故ダイアナ王妃、サッチャー婦人、ヒラリー米前大統領婦人など東西の著名人に好評だ。Shanghai TangのCEOでフランス人のラファエル・レ・マスネ氏は「私たちのデザインチームは自らを中国人と見ており、伝えたいのは中国の文化だ。インスピレーションは中国文化に由来する。それが私たちの特色であり、強みでもある」と話す。現在、同社は世界に17の専門店を展開。今後はミラノや東京などにも開設する予定で、2年以内に30店舗まで拡大する計画だ。

29歳でファッションブランドを確立した女性もいる。ミラノ留学経験のある中国人デザイナー、吉承女史だ。ブランド名はラヴィエ「LaVie」。上海の外灘に進出し、世界の多くのトップブランドと腕を競うことになった。

彼女のデザイン理念は「東洋の概念に西洋の裁断」。彼女は東洋文化に心酔している。そのためか、東洋の題材の運用は非常に大胆だ。「中国式の装飾ボタンや刺しゅう、房状の装飾、その1つをとっても、東洋の趣を十分に表現できる」。顧客の60%は、東洋の神秘に興味を寄せる外国人。彼女は「私の洋服はやはり中国人が一番似合うので、国際ブランドという目標の達成には長い時間が必要」と話すが、自信はあるという。「私が作るのは中国でデザインし、中国で作ったもの」

虚栄心は脱ぎ捨てるべき

◆会社社長の張東勝氏は、ひけらかすべきではないと主張する。

今の中国市場は2つの問題を抱えている。1つはお金、もう1つは文化だ。中国人について言えば、資産を持つようになったばかりであり、それをいかに使うかについても、学び始めたばかりだ。消費文化は最も重要だ。欧州では、高級ブランド品の消費は習慣化されているが、それには自由に使える資産があることが前提となる。だから自然と、高価なスーツや礼服、服飾品などを購入しても、その消費を、ひけらかすための“投資”だとは考えていない。一方、中国人は、高額で物を購入するのを、一種の投資だと考えるのが一般的だ。本当に経済力のある人が投資するのは、生活の質の向上のためだが、経済力のない人が投資するのは、追い求めるのは、夢に描く生活スタイルといった感覚からなのではないか。

◆留学生の母親、張玉華さんは、消費する前には先ず自らの経済力を問うべきだ、と主張する。

若い人が虚栄心から物を買うというのは、一種の非常に成熟していない心理状態だ。私の息子が言っているが、外国では、若い人が物を買う場合、大半の人は先ず自分の経済力を考えており、一般に身の程知らない買い物はしないという。息子は家にいた時はお金の遣い方が荒かったが、外国に出てからは節約するようになった。高級ブランド品、こうした物は、1つ買うとまた欲しくなるもの。だから、先ず経済力があるかないかをしっかり見極めなければいけない。

◆中学の教師、王京さんは、経済力のない消費は非常に危険だと主張する。

中国では、若い人の奢侈傾向はずいぶん前からあるが、数千元から数万元の買い物はこの数年の新たな傾向だ。若い人が相当の経済力がない時に、高級ブランド品を使うのに慣れてしまうのは、非常に危険。古人の言によれば、節約から奢侈へは容易だが、奢侈から節約へは難しい。高級ブランド品に対する欲望を制御できず、しかも手元のお金も十分なければ、生じる問題は単に個人の問題にとどまらず、社会問題にもなるだろう。