政府の記者会見制度
――国務院新聞弁公室の蔡武主任に聞く
馮建華
蔡武氏は国務院新聞弁公室主任に就任して4カ月後の昨年12月29日、大々的に取り組んでいる記者会見制度や報道官制度の進展状況や今後の活動について内外記者の質問に答えた。
問:政府の記者会見制度はどんな段階にまで進展したのか。この数年の進展状況に満足しているか。
答:記者会見、という仕事に対しては、私はまだ新米だ。記者会見制度や報道官制度はここ数年、顕著な成績を収めたと言っていいだろう。例えば、外国人記者にとって今日は年末休暇にもかかわらず、これほど多くの記者が見えたことは、われわれの活動を重視していることの表れだ。つい最近、外国を訪問したついでに、少し調査を行ってみた。外国のメディアが中国を報道する際、国務院新聞弁公室や各地方政府の発表した権威ある情報の引用が多かったことが分かり、非常に喜んでいる。
昨年、国務院新聞弁公室は記者会見を報道活動の重点の1つに据えるとともに、とりわけ北京駐在の海外記者からの電話による問い合わせを受理する体制を整えた。12月19日現在、130余件の電話を受理した。一つひとつの回答が満足のいくものだったかどうかについては、まだ考査していないので、これから調べてみるつもりだ。記者に手軽に必要な情報を取得させるのがわれわれの職責だからだ。
これまでに、記者会見や報道官の制度は、部・委員会(省庁)とその直属の国家クラスの局を含む国務院所属の70の機関や、31の省・自治区・直轄市のうち28の省・自治区で実施されており、報道官は合わせて80数人いる。
この制度は創設されたばかりであるため、幾つか問題がある。(1)制度の整備にさらに力を入れる(2)記者会見のレベルを高める(3)報道官の資質を高める(4)記者会見制度を利用してメディアとの交流を強化する――などの解決が待たれている。
国務院新聞弁公室は今年、各機関の報道官を“主役”とする「自主報道」を推し進め、記者会見をより適正化、専門化させるなどして、メディアに寄与することに努めていきたいと考えている。
問:記者会見や報道官の制度はここ数年、全面的に強化されてきたが、突発事件が起きた場合、記者会見が遅れたり、報道官に会えなかったりすることもあった。これはなぜなのか。体制に問題があるのではないか。
答:これがまさに解決しようとしている問題だ。その原因を大別すると、三つの要素があると思っている。第1は、記者会見制度や報道官制度は創設されたばかりなので、完備するまでには時間が必要だということだ。とりわけ報道官としての立場からどういう風に突発事件に応対するか、これはまだ経験が足りず、実践を繰り返して経験を積む必要がある。第2は、突発事件は往々にして状況が複雑であるため、基本的な状況をはっきりさせるには、関係機関に一定の時間を与える必要があることだ。第3は、体制上に問題があることだ。各機関はそれぞれ職務が異なるため、複雑な事項に関しては、各機関が協力し合わなければ、真相を究明して対応措置を取ることはできない。この過程でいかにタイムリーにメディアに情報を知らせるかが、解決すべき問題だ。国務院は危機対応処理について、すでに素案を作成しているので、今後逐一公表していくだろう。各地方政府もこの問題を重視するようになってきた。
取材の手続きについては、特定の手続きはないと思う。各部・委員会に対しては、メディアと固定された連絡ルートを設けるよう求めている。国務院新聞弁公室はすでに原則的に24時間電話で連絡が取れる記者連絡室を設置しており、記者が必要な援助ができるようになった。
だが、メディアの友人として、報道界にちょっとお願いしたいことがある。突発事件が起きた場合、記者の皆さんもジャーナリズムのルールに基づき、事件の真相が明らかにされる前に絶対に主観的な憶測をしたり、一部だけ見て全てがそうだと断定したりしないで欲しい。われわれと緊密に協力してはじめて、問題の解決に役立ち、事件への公衆の関心も満足させることができるのだから。
問:報道官制度は多くの部・委員会に設けられていても、実施状況はだいぶ違っている。いつ電話をかけても通じる部・委員会があるかと思えば、電話に出なかったり、あちこちの部署に回されたりと、困惑させられたところもある。報道弁公室はこの問題を具体的にどう考えているのか。
答:今日はまた、69の政府部門報道官の電話を公表した。記者の皆さんに説明したいのは、毎回電話を受ける者が報道官自身とは限らないことだ。報道官(係官が受けるのが普通)は忙しくて時間がなかったり、メディアへの応対に慣れていなかったり、あれこれ憂慮することや障害があって出ないこともある。確かに以前、記者の報道がインタビューを受けた責任者の話とだいぶ違って、責任者に大きな迷惑をかけたことがあった。このようなことは避けたいと願っている。
今年の重点は、国務院の指示に従って記者会見制度や報道官制度の整備を大々的に推進し、協調と指導を強化して、全体のレベルを高めることだ。この重点を実現するには、第1に、各地方の指導者や報道官の意識を高め、考え方を転換させ、とりわけメディアとの応対を恐れる心理を克服させる必要がある。
第2に、記者会見の設定レベルを高める必要がある。政府が語るべき話やメディアの関心、公衆の関心、この三点を結び付けなければならない。また、記者会見の権威性、対応性、有効性を強化する。このほか、技術設備や組織のレベルを高めることも必要だ。
第3に、記者会見に対する評価を行う必要がある。制度や会見の質はどうか。われわれが良いと感じているだけではだめで、科学的な評価を行わなければならない。
繰り返して宣伝したり、訓練したり、メディアの皆さんに肩を押されたりすれば、自ら進んでメディアと交流できる指導者が増えていくと思う。メディアと情報交流の面で良好な関係を構築できれば、自分たちの仕事にとって障害とはならず大きな助けになる、と認識する機関が増えてきた。状況はよい方へと向かっている。今後、記者の皆さんが各部・委員会の部長や副部長とより円滑に交流する機会は増えていくだろう。
問:記者と中央政府、国務院の関係機関との交流は非常に増えた。しかし、北京以外の省・自治区の対外宣伝弁公室にインタビューを申し入れると、取材する内容にマイナスな面があるためか、またはそれに全く興味がないためなのか、取材を拒否されることがある。今後、こうした規定は変わるのかどうか。対外宣伝弁公室の支援が得られるよう、わたしたち記者に便宜を図ってくれるのか。
答:われわれは今、全面的な対外開放の枠組みの構築に取り組んでいるところだ。地方政府、とりわけ対外弁公室側に指摘されたような事があるのは、主に経験が足りないからだろうと思う。外国メディアのインタビューはご法度だ、といった規定があるわけではない。だが、中国には外国人記者の取材活動に関する管理条例があり、条例に合致する活動であれば、関係機関は手助けすべきだ。
各地方によって開放の程度、発展の状況が違っているため、問題を処理する方法も同じでない。例えば、上海では取材が容易にできるが、内陸部では、開放度が東部地域より遅れているため、経験が足りない。先ほど私が言ったように、外国メディアとの交流をスムーズに行うには、各地方の幹部、とりわけ指導者の考え方の転換が必要だ。ただし、それには時間がかかる。この問題を解決するために、今、報道官の訓練を行っているところだ。われわれはできる限り皆さんの取材に手助けしたいと思っている。もちろん、記者の皆さんが中国の法律を遵守するよう望んでもいる。こうなれば、われわれの協力はスムーズに行くだろう。
問:情報公開に関する立法が論議されて久しいが、法的拠り所がない状況下で、国務院新聞弁公室が進める具体的な仕事に何か問題が出てきたのではないか。関係機関はよいことだけ発表して、悪いことは発表しないようになるのではないか。何か制約するメカニズムでもあるのか。つまり、必要とする情報を公表しなければ、関連する法的責任を含むある程度の責任を負うことになるのではないか、ということだが。
ご存知のように、改革・開放政策が実施されて以来、政務に関する情報公開を大々的に推し進めてきて一定の時間が過ぎた。これまでは主に政策面で推進していたが、まだ立法化はされていない。だが法体制整備が進むにつれて、法律や規則、制度の制定に拍車がかかってきた。
各地方政府の記者会見制度は、外国人記者の取材に応えるために1993年に創設されたものだ。われわれは、普及するにつれてこの制度は、実は公衆の情報を知る権利を満たし、社会主義民主政治を発展させる上で重要な手段であり、同時に政府の職能を転換し、政治体制改革を深化させ、国民に寄与する政府を作るための重要な措置でもあると認識するようになった。法体制が整備されれば、情報公開の法制化も必ず進むと考えている。
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