2006 No.03
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エネルギー農業の発展を

――バイオエネルギーの発展は中国の農業革命を推し進め、近い将来、一部エネルギーは農業が原料を提供して生産されることになるだろう。

蘭辛珍

エネルギー価格の上昇、とくに2005年上半期の原油価格急騰を契機に、中国は普通ガソリンの代替政策を大々的に推し進め、多くの都市でトウモロコシを原料に生産されたアルコール混合ガソリンを使用することになった。2006年1月から、石油生産地の黒竜江や山東、経済が発達した江蘇や河北、湖北など9省の主要都市で、ガソリンスタンドでは普通ガソリンは販売せず、すべてアルコール混合ガソリンに切り換える予定だ。

政府は2001年4月、アルコール混合ガソリンの国家基準を公布。2002年6月30日から、河南省の鄭州市と洛陽市、南陽市、黒竜江省のハルビン市と肇東市の5都市でアルコール混合ガソリンの試験的使用を実施した。その結果、普通ガソリンへの代替は可能で、自動車エンジンを改良する必要のないことも確認された。

また、バイオディーゼルも準備・普及段階を迎えている。2005年3月、バイオディーゼルの重要な生産技術は大きな進展をとげた。製品の各指標は米国のASTM6751基準に達し、使用性能は良好で、完全にディーゼルエンジン燃料として使用できるようになった。今後5年以内に、2万〜5万トン規模のバイオディーゼル産業化モデルプロジェクトを実施する計画。

これはバイオエネルギーが、中国がエネルギー問題を解決する1つの選択肢になることを予期するものだ。

バイオエネルギーとは、主にでんぷん質の穀物やイモ類、わらなどを燃料アルコール、バイオディーゼルや生物水素などにして、動力源として直接使用するというもの。

科学技術部中国生物技術開発センターの王宏広主任は「バイオエネルギーには3つの利点がある」と指摘し、(1)農村人口の就業を促進し、農民の収入増の問題を解決できる(2)国のエネルギー供給を直接増やせる(3)二酸化炭素の排出量を減らし、生態環境を改善できる――ことを挙げている。政府はバイオエネルギーの発展を非常に重視するとともに、明確な発展目標を制定しており、今後数年内にアルコールの年間生産能力は1000万トンに達する見込みだ。現在、アルコール燃料の生産規模は200万トンで、生産量では世界第3位。

原料に大量の農作物を必要とするため、バイオエネルギーの発展は、中国の農業の発展方向を変えることになるだろう。

中国工程院会員の石元春氏は「豚や牛、羊などを飼育し、稲や麦、綿花などを栽培するのが在来型の農業だ。だが、この範囲を超えれば非農業と考えられており、今では農産物の生産と加工を統一したチェーンが形成されつつある」と指摘する。

こうした変化による見通しが最も明らかなのは、中国農業が単純な食物提供からエネルギー、あるいはその他の製品を提供する方向へと発展することだ。

バイオマス育成計画がスタート

政府はこのほど、「バイオマス(燃料用植物・生物)育成計画」をスタートさせた。計画では、バイオマスは4分類されている。第1類は、アルコール生産を目的とする1年生あるいは多年生作物。例えば、トウモロコシやサトウキビ、高糖分コウリャン、サツマイモ、キャッサバなど。第2類は、燃料油(バイオディーゼルや炭化水素類物質)生産を目的とする植物。例えば、アブラナやアオサンゴ、オウレンボクなど。第3類は、直接燃焼に使われる植物。第4類は、嫌気性発酵に使われる藻類あるいはその他の植物。計画に基づいてバイオマスを栽培した場合、一定の経済的支援が受けられる。また冬と夏の間に休耕地となる約900万ヘクタールの田畑で、バイオマスを専門に栽培していく方針だ。

海南省の正和バイオエネルギー有限公司は、河北省に約7300ヘクタールのオウレンボク栽培基地を設立。果実の生産量は2万〜3万トンに達し、バイオディーゼルの原料を8000〜1万2000トン生産できる。同公司はこれを踏まえて年産量5〜20万トンのバイオディーゼル工場を設立する計画だ。

石元春氏が指導する国の特定農業林業生物プロジェクトも2005年9月にスタート。バイオディーゼルの年産量で2010年に200万トン、2020年に1200万トンを目指す。このほか、2005年には代替燃料発展戦略の研究も始まった。

政府はバイオエネルギーの発展を政策面から支援する方針だ。アルコール混合ガソリンなどのバイオエネルギーの試験的普及を大々的に推し進めるとともに、メーカーの技術問題を解決し、企業のコストダウンを援助し、市場参入を支援していく。現在、企業は燃料アルコールを1トン生産すれば、国から800元の助成金が支給され、同時に5%の消費税が免除される。自動車用アルコールガソリンを普及させるため、一部地方では交通庁と物価局が相次いで関連政策を制定している。

福建省の源華エネルギー科学技術有限公司は2005年10月、バイオディーゼルの生産を開始した。年間生産量は3万トンに達する見込み。国家発展改革委員会がアルコール試験生産企業の設立を認可した4社の1つ、安徽省の豊原グループでは、年間生産量がすでに60万トンを超えている。同グループの李栄傑理事長は「2トンの穀物で1トンの石油に置換できる。原油価格が1バレル35ドルを下回らなければ、穀物価格は1トン1400元を超えることはないだろう。農産物資源を利用して石油化学製品に転換することで、企業は収益を上げられる。技術面では、アルコールを生産するに当たり、小麦やトウモロコシなど原料の総合的な利用技術はすでに成熟しているため、環境汚染をもたらすことはない」と強調する。

中国はトウモロコシの主要生産国の1つだ。年間栽培面積は約2000万ヘクタール。だが食用や飼料、酒類の醸造に使われた分を除いても、余剰量は年間約400万〜600万トンにのぼり、売れ残れば古物と化してしまう。

交雑アブラナの品種でも中国は世界をリードしている。栽培面積と総生産量で世界のトップを占めており、種子の資源も豊かで、バイオディーゼルを開発する上で原料は充実している。綿花でも世界最大の生産国だ。年間生産量は1300万トン余りで、バイオディーゼルの生産に利用できる。

「バイオエネルギーを発展させる重要技術はすでに成熟しており、原料となる資源もきわめて豊富で、投入するコストは石油採掘や原子力エネルギー開発よりはるかに低い」と王宏広主任は強調する。

石元春氏も「バイオエネルギーの利用が拡大するに伴って、中国の国際エネルギーへの依存度は次第に低下していくだろう」と指摘。 中国は1993年に原油の純輸入国となり、2004年に輸入量は1億2000万トンに達し、輸入依存度は40%に達した。現在のスピードで推移すれば、2020年には60%に達すると予想される。60%は危険の臨界点であり、そこに達すればエネルギーの安全が問題となるだろう。

遺伝子技術を応用へ

「遺伝子技術を用いれば、穀物を増産することができる。もちろん、こうした穀物は食用ではなく、原料に使うものだ」。2005年11月11日に北京で開かれた農業発展会議で、全国人民代表大会の蒋正華・副委員長はこう語った。

中国では遺伝子食品をめぐる論争が続いているため、農業生産に遺伝子技術はまだ使われていない。一方、バイオエネルギーの発展によって、穀物のさらなる生産が強く求められている。

蒋副委員長は「今後、穀物生産は、食用とバイオエネルギーの原料に2分類されるだろう」と指摘する。

中国の遺伝子技術の研究はすでに成熟しているため、穀物を増産することは完全に可能だ。中国農業大学生物学院の朱登雲氏が組織したグループは2004年、「高たんぱく質・高リジン遺伝子のトウモロコシ自殖システムと交雑組合せ育種の選択」の研究に成功。同グループは7年にわたる研究を経て、ジャガイモの花粉にある遺伝子の1つをトウモロコシに組み込めば、リジンと蛋白質の含有量が普通のトウモロコシよりそれぞれ30%、90%ずつ増えることを突き止めた。これは世界的な難関だった。同グループが開発された遺伝子トウモロコシから10品種を選んで試験栽培を実施した結果、生産量は27.1%増えた。全生育期間は88日。中国の気候により適していることも判明した。

穀物の安全に影響はない

衣食の問題が解決されたばかりの中国では今後、穀物の安全が13億の人口が直面する問題となるだろう。穀物をエネルギーの発展に用いれば、その安全は脅かされるのか。

これについて王宏広主任は楽観的だ。「バイオエネルギーの発展と穀物の安全の保障は決して矛盾しない。社会には、バイオエネルギーの発展は国の穀物の安全に影響を及ぼすという誤解がある。だが実際には、人と穀物との争いではない。農業手段と穀物加工の過程で出る廃棄物を主に利用するからだ。また人と耕地との争いでもない。荒れた山や傾斜地、アルカリ化土壌、荒れた砂浜や砂地を主に利用するからだ」と説明する。

中国ではアブラナの大半は冬季作物であるため、穀物栽培地への影響はかなり少ない。

李栄傑理事長は「穀物の安全問題が制約的要素になることはない。バイオエネルギーの主な原料は古くなった穀物や、穀物の加工や飼料の生産過程での廃棄物だ。その数量はきわめて多く、普通は廃棄されており、浪費する量はきわめて多い。荒れた砂浜やアルカリ土壌などでキクイモ、高糖分コウリャン、サツマイモ、キャッサバといった高生産バイオマスを栽培すれば、貴重な耕地を占用せずに、大量の生産原料を提供することができる。また生態環境を改善し、農民の収入を増やすこともできる。合理的にコントロールしさえすれば、バイオエネルギーの発展は穀物の安全を脅かすどころか、かえってある程度、安全は保障される」と指摘。

中国農業大学の李十中教授はこう見ている。「エネルギー農業の開発分野は非常に幅広いため、穀物と耕地の間で争いが起きないようにする、あるいは争いを軽減することは可能だ。古くなった穀物や飼料用穀物は年間約1億トンに達しており、加工すれば5000トン相当のエネルギーに転換できるが、そうしても30%は飼料に使うことができる。開発されたスイートコーンは、1ヘクタール当たりの生産量が70トンに達しており、6トン以上のアルコールを生産することができる。南部では、キャッサバやサトウキビ、キクイモ、ジャガイモ、サツマイモなどは主要な穀物ではなく、バイオエネルギーにとっては最良の原料だ。西南部では、タイワンアブラギリなど木質植物油原料の生産が急速に伸びている。含油率が50%もあり、栽培面積は現在約6700ヘクタールだが、2010年には66万7000余ヘクタールまで増大するだろう。廃棄される作物の茎や林業関連の廃棄物も年間10億トンと、約1億トンの燃料ガソリンに相当する」

耕地面積は1兆3004万ヘクタール、荒地面積は1兆800万ヘクタールで、両者の比率は1:0.83と大差ない。開発されず利用されていない荒地もまだ多い。環境への強い適応性と資金の低投入、高生産量という特徴から見れば、とりわけ中国のような国土面積が広く、荒れた山や土地の多い、しかも水資源不足が深刻(とくに北部地区)な国にとってバイオマスの栽培は適していると言える。

とはいえ、2004年に一時、穀物不足が起きていることから、食用できない古い穀物が違法に市場に流れ込むことで食品の安全に問題が生じるのではないか、と懸念する声も多い。3大穀物では現在、小麦と水稲が不足しており、トウモロコシだけが供給が需要を上回っている。吉林省はトウモロコシの一大生産地だが、今は大量の在庫を抱えていても、今後2、3年の内に供給不足状態に陥る可能性があるからだ。